俗世が好きで何が悪い!?   作:みども

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特殊醜鬼ジョン・ドゥ①

 醜鬼の中には、特異な力や形態を持つ特殊個体が存在する。

 ジョン・ドゥもその一体であり、中でもさらに希少な特別な力を複数行使することが可能で人間と意思の疎通ができる極めて高度な知性を持つ存在であった。

 ちなみに、魔都と現世を繋ぐ門を自在に作り出す能力がその特殊な能力の1つであり、ジョン・ドゥを特殊個体に位置付ける理由にもなる能力でもある。

 

 特殊な醜鬼だが、ジョン・ドゥは自らを特別視することはなかった。

 個体としての性質か、自己の存在意義に対する意思が希薄であり、他の醜鬼のように人間を敵対視するような本能もなく、人間に極めて近い形態をとることが可能である自らの能力を利用し、気ままに現世に赴いては旅をし、娯楽を嗜み、現世を観光するというもはや外国人観光客ならぬ醜鬼観光客となっていた。

 

 発生してからは魔防隊と遭遇することもほとんどなく、現世に来ても人間に危害を加えることはせず気ままに観光しているだけであり、醜鬼の特殊個体を調査・追跡している日本製府側もジョン・ドゥの存在は認識していない。

 ……パスポートなしの違法入国なので犯罪者にすることはできるかもしれないが、そもそもジョン・ドゥは人間ではないので人間の法律が適応させるべきかなどというどうでも良いこともあるが。

 

 ただ、この無害だったはずのジョン・ドゥだが、人間に危害を一切加えたことがないかと問われればそれは否定することになる。

 ジョン・ドゥは1ヶ月ほど前から、現世に赴き観光客として楽しむ傍で摂食など必要ない身の上でありながら食料や衣類、布団、スポーツ用品に医薬品、冷蔵庫やテレビにゲーム機などなど様々なものを買い込むことがあった。

 そして、それと同時期から多数の醜鬼からなる群れを作り上げ、それを操作して魔防隊の魔都側に存在する拠点を襲撃するという事件を幾度か起こしていた。

 

 現状、魔防隊に確認されていないためその存在を認識されていないが、仮に発見されれば間違えなく危険な存在として討伐対象になるだろう。

 何しろジョン・ドゥの能力には、自由に魔都と現世をつなぐ門を作るというものがある。

 醜鬼を作り上げ操る術も合わされば、現世に大きな被害を容易に発生させることが可能である。

 

 しかしジョン・ドゥにそれを行う能力こそあれど、そのつもりはない。

 ジョン・ドゥが生活必需品から娯楽用品まで買い漁ったり、醜鬼の群れを作り上げて魔防隊を襲ったりするのはとある目的で行っていることであり、人間に対する敵対の本能が存在しないジョン・ドゥ自身は娯楽であふれた現世の人間社会を楽しむことはあれど傷つける意思は微塵もないのだから。

 

 ジョン・ドゥが観光客よろしくいろいろなものを爆買いしたり、魔防隊の戦闘要員たちから見れば所詮は雑魚に過ぎない通常の醜鬼で構成される群れを作ったり、それで勝てないと承知の上で魔防隊の拠点を襲ったりするのは、『友達』と呼び合う存在のためであった。

 

 その答えは、魔都に降りたジョン・ドゥの歩く先にある。

 

 魔都のはずれにひっそりと存在する、桃のなる木も存在しない洞窟。

 見つけたところで陰陽寮は見向きもしないだろう資源も何もないその洞窟に足を踏み入れると、立派な一本のツノを額より伸ばす大型の特殊個体に該当する醜鬼と、その背に乗る人としてうまれながら人ならざる存在になってしまった人型醜鬼の女性がでてきた。

 

「誰かと思ったら、ジョンジョンじゃない!」

 

「訂正を要求します。ジョン・ドゥ、貴女につけてもらった名前のはずです」

 

 人型醜鬼はジョン・ドゥの姿を確認すると、それまで侵入者を警戒していた空気を霧散させ天真爛漫という表現の似合う明るい満面の笑みを浮かべて歓迎する。

 ジョン・ドゥにとっては名付け親に当たるその人型醜鬼は、さりげなく自ら与えたはずの名前を堂々と間違えており、それに対する訂正の要求も聞こえていないらしく、おとなしく馬になっている一本角の醜鬼から飛び降りて駆け寄ってきた。

 

 ジョン・ドゥと彼女の声が聞こえたらしく、洞窟の奥から続々と人型醜鬼が出てくる。

 いずれも人間として生を受けながら、不幸により陰陽寮が秘匿する存在である人型醜鬼となってしまった者たち。

 彼女たちがジョン・ドゥにとって爆買いと魔防隊襲撃をしている理由であり、そして生まれた種族を異なりながらも『友達』というものを教えそして受け入れてくれた存在であった。

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