俗世が好きで何が悪い!? 作:みども
八雷神①
青羽たちと別れ洞窟の隠れ里を後にしたジョン・ドゥ。
次の目的である魔防隊七番組の拠点、七番組寮に向かうべく魔都を歩く。
道中で醜鬼たちとすれ違うが、ジョン・ドゥは姿形こそ人間だがその本質は特殊個体の醜鬼である。意思の疎通もできない醜鬼同士には同族意識などないが、しかし争う理由もない。お互い殴りかからなければ無視し合う存在にすぎず、特に問題なく魔都の荒野を歩いていく。
醜鬼の群れを作り襲撃を仕掛ける前に、七番組の偵察を行うつもりだったが。
唐突に足を止めると、周囲には会話など通じない醜鬼たちくらいしかいない中で後ろに向かって声をかけた。
「警告します。暗幕を纏い追跡を続ける場合、敵対行為と認識し攻撃します」
ジョン・ドゥの発した言葉は、人間に対する本能的な敵意を持たないため理由も目的もなければ他者を傷つけることはない特異な個体であるはずの者らしからぬ敵対の意思が込められたもの。
その言葉が向けられたのは、我関せずで後ろを闊歩している通常の醜鬼ではなく──
「へえ、僕の暗幕を見破るなんてやるね」
「……霧か」
「ハハハ! なるほど、そこらの雑魚とは違うようだな」
道中より身を潜めてジョン・ドゥを追跡していた、謎の3人組に向けられたものだった。
暗幕という身をひそめる闇を纏っていた3人組は、見つかっていたのならば仕方がないと姿を表す。
「光栄に思いたまえよ。君が崇め讃える神である、僕自ら姿を見せてあげたのだから」
中央に立つのは暗幕を生み出していた3人組の長で、髪が蛇になっている自らを神と称する少女の姿をした存在。
名を
「…………」
自称神の左隣に立つ無口な者は東洋の龍を彷彿とさせるようなツノを持つ女性の姿をした存在。姿を現した時に、ジョン・ドゥが暗幕に隠れる自分たちの存在を認識した術に気づいていた様子である。
名を
「ここは我がやる。紫黒、壌竜。文句はあるまい」
自称神の右隣に立つ巨漢は中世の陰陽師のような装束に身を包んだ、他の2人と比べ人から離れた姿をした存在。好戦的な笑みを浮かべながら、ジョン・ドゥと戦う気が満々のようである。
名を
理由は不明だが、3人組はジョン・ドゥに何らかの目的があって接触してきた様子。
見てくれは人に近いが、明らかに人間とは異なる存在であり、その様子も友好的というには程遠いものであった。
外見は人間と変わらないジョン・ドゥを明確に醜鬼として認識しており、また紫黒が最も分かりやすいが明確に格下の存在であるとして一方的に見下していた。
「名前と目的の回答を要求します」
ジョン・ドゥは見下されていようとも、危害を加えられなければ敵対する意思はない。
目的を尋ねるジョン・ドゥに対し、それに答えたのは紫黒と雷煉。
「僕たちは八雷神。君たち矮小な存在を支配し、滅ぼす者さ」
「ひとまず使えるコマか見極めてやろう」
自らを『
答えるなり、問答無用と言わんばかりに雷煉が腕を上げ、直後にジョン・ドゥの頭上へ落雷が発生した。
雷鳴が轟き、爆ぜた地面。
砂埃が晴れると、そこにジョン・ドゥの姿は欠片も存在しない。
「フン、この程度で消し炭になるとはな」
その結果を見て、大したことないと嘲る雷煉。
一方で、すでに仕留めたと思い込んでいる雷煉と違い、紫黒と壌竜は感じ取っていた。
あの特殊な醜鬼は、この程度で消える存在ではない──
「雷煉、君はバカだね」
「ぐっ──!?」
直後、3人の足元の地面が割れ、そこから突き出てきた尖った岩により雷煉が突き上げられた。
割れた地面から吹き出た霞が集まり、人の形を形成する。
それは先ほど雷煉の落雷で消し炭になったはずの銀髪の人の形をした特殊醜鬼、ジョン・ドゥがいた。
攻撃をしてきたのならば、敵対の意思がある。
ジョン・ドゥは理由がなければ戦わないが、戦う理由があるならば敵に対して容赦はしない。
雷煉を岩で突き上げたジョン・ドゥは、次にその攻撃を予見して回避していた残る2人の片方、壌竜に狙いを定めて蹴りかかる。
「──! 厄介だな……」
それを容易に受け止めた壌竜だが、ジョン・ドゥに触れた際に何かを感じ取ったのか一瞬驚いたように目を見開いた。
一瞬の攻防の後、割れた地面に降り立つ4者。
……雷煉だけは紫黒に引っ張られて態勢を直せずに地面に激突していたが。
「紫黒お前、我を地面に引き摺り下ろすなぁ!」
「あははごめん!」
「…………」
文句を言いながら無傷で立ち上がる雷煉をからかう紫黒。
2者がじゃれ合いをしている間、ジョン・ドゥと壌竜は互いに牽制し合うように対峙し、お互いから目を離すことがなく、じゃれあう2人が見せているあからさまな隙にも何らアクションは起きなかった。