俗世が好きで何が悪い!?   作:みども

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八雷神②

 ジョン・ドゥの有する能力は、門を作る能力と醜鬼を作る能力の他に、主要なものとして2つがある。

 

 1つは自らを霧に変化させ、その霧を広げる『霧の世界(ヨツンヘイム)』。

 雷煉の落雷を地面の隙間に霧となって入り込み中に消えることで躱すなど敵の攻撃を回避できるようになるのが最大の利点だが、広範囲に展開できるこの霧には触れた特定の相手の力を封じる特別な作用がある。

 この特定の相手に壌竜は該当しており、蹴りを防御するために触れた際に本来の力を発揮できなくなったことを察知したため“厄介”と称した能力である。

 

 もう1つは、物質を石化させて操る『石化の呪い(エウリュアレ)』。

 生物、醜鬼、八雷神などは石化できないが、それらを除けば建造物に砂や水、果ては空気にプラズマなどなど触れているものならばどんな物質でも石に変えそれを操ることが可能な能力である。

 雷煉を突き飛ばした岩もこの能力により生じたもの。

 複数持つ能力の大半が補助・回避に偏っているジョン・ドゥの有する能力の中でも、直接的な殺傷能力が高い。

 

 霧に変化し広がる能力と、触れたものを石する能力。

 この2つを組み合わせることにより、ジョン・ドゥは例えば霧に触れた空気を石に変え雨あられのように一帯に降り注ぐなどの攻撃を行う。

 

「ハッ! 石塊ごときで我を傷つけようなど滑稽なり!」

 

「紫黒」

 

「わかってるよ、壌竜。黒渦巻(くろうずまき)──」

 

 石の雨が降り注ぐ中、頑強な肉体が自慢の雷煉は妨害にすらならぬと無視。

 壌竜も特に避けたり防ぐことはなく、紫黒に声をかける。

 それを応じた紫黒が掌に黒い何かを生み出した。

 

「…………!」

 

 紫黒の力の1つである、狙った相手を自身に引き寄せる引力を操る力。

 それにより、壌竜に殴りかかろうとしたジョン・ドゥの足が止まり、強制的に紫黒の方に引き寄せられる。

 

「醜鬼の分際で神たる僕らに逆らうとは、実に愚かだ。躾が必要だね」

 

「そちらに用はありません」

 

 引き寄せて捉えた上で、抵抗する術をなくし屈服させようとした紫黒だったが。

 ジョン・ドゥは再び霧に変化することで、自らを軽くして紫黒の力から逃れた。

 

「僕の黒渦巻を躱すのか」

 

 自身の力から逃れたジョン・ドゥに対し、紫黒が驚くような、感心するような表情になる。

 それを無視して霧のまま壌竜に接近し、腕だけを戻して壌竜に殴りかかるジョン・ドゥ。

 その拳を表情1つ変えず片手で受け止めた壌竜は、ジョン・ドゥを捕まえたまま霧に向かって蹴りを叩き込んだ。

 

 何もない空間だが、壌竜の一撃によって空間に地震が発生するという摩訶不思議な現象が起こり、衝撃波が一帯に発生する。

 それは周囲の醜鬼たちを消しとばし、ジョン・ドゥの構成する霧も吹き飛ばし、ついでに石の雨に対してハハハ! と笑っている雷煉も吹き飛ばした。

 

「おい壌竜!」

 

「すまない」

 

「雷煉だっさい! あはは!」

 

「喧しいわ!」

 

 避けると思っていた壌竜は悪気があったわけではないが、吹き飛ばしてしまったのは事実だと素直に謝罪するのに対し、紫黒は吹き飛ばされる雷煉をみて大笑いをしている。

 完全におもちゃ扱いの雷煉だが、やはりこれでも傷1つつかない。

 ……吹き飛ばされてゴロゴロと転がりはしたけど。

 

 だが、その中で壌竜の前に再び集まってきた霧は無傷のジョン・ドゥの姿に戻り、石を纏ったもう片方の手で壌竜の顔面を殴り飛ばした。

 

「──っ!?」

 

 ジョン・ドゥの手を離して飛ばされながらも、すぐに態勢を立て直す壌竜。

 しかし今の攻撃が一切通っていないのはさすがに予想外だったらしく、僅かに驚いている。

 

「大丈夫かい? 無用な心配だけど」

 

「すまない紫黒。霧で封じられた今の私では、あの醜鬼に傷をつける手段がない。相性が悪すぎる」

 

 そして傷はついていないが汚れがついた頬をぬぐいながら、隣に降り立った紫黒に相性の悪さから戦力にならないだろうことを伝える。

 それを聞いた紫黒も霧の性質を理解しているのか、壌竜の力を考えた上で同じ結論に達した様子。

 

「確かに、壌竜だと相性が悪い──いや、最悪だね。それこそ、天敵って言っていいくらいに。あれには雷煉の方が向いているかもね。とりあえず、僕の護衛に専念してよ」

 

「ああ」

 

 短く返答し、紫黒の指示に了承する壌竜。

 壌竜にはジョン・ドゥに攻撃を通す手段がない。ジョン・ドゥと壌竜では能力の都合上あまりにも相性が悪すぎる。

 自らの強さに誇りはあるが、流石に天敵と言えるほどに相性の悪い相手の能力を過小評価するほど愚かではない壌竜は潔く自分が戦力にならないことを認め、紫黒を石の雨から守る傘の役目に勤めて引き下がることにした。

 

「ハハハ! 嬲り甲斐があるというものよ!」

 

 一方で石の雨をものともしない雷煉は、今度は俺の番だと言わんばかりにジョン・ドゥに襲いかかる。

 まずは挨拶代わりだと口から火炎を放つ。

 当たれば通常の醜鬼など軽く消し炭になる強力な火炎に対し、ジョン・ドゥは自身の前に能力で空気を石に変えた即席の盾を作りそれを防ぐ。

 

「ハハハ! 我の煉獄が石塊ごときの盾で防げるものか!」

 

「訂正します。石は耐熱性に優れた存在、火炎攻撃には有効な防御手段です」

 

「何ぃ!?」

 

 石の盾程度では火炎を防げないと豪語する雷煉だが、直撃を受けた石の盾は健在。当然後ろのジョン・ドゥは無傷である。

 そして自慢げに自身の力を語りながら思いっきり格好悪い醜態をさらした雷煉に対し、無機質な声でジョン・ドゥは淡々と石の盾の有効性を説明するという煽っているとしか思えない恥の上塗りをしてきた。

 

「ヒヒヒ! 待って、あの醜鬼面白い面白すぎる!」

 

「お前ら笑うでないわぁ!」

 

 雷煉の醜態に、笑いが止まらない紫黒。

 腹を抑えながら笑い転げる仲間に羞恥から怒る雷煉に、冷静な壌竜が注意喚起をする。

 

「雷煉、敵が来るぞ」

 

「そん──がアッ!?」

 

 そんなこと分かっておるわ。

 そう言おうとした雷煉であったが、隙を見逃さず距離を詰めたジョン・ドゥに腹を蹴られ飛ばされる。

 若干無様な声を出しながら、荒地に立つ岩にまで蹴り飛ばされる雷煉。

 岩を破壊して砂埃を舞い上がらせながらも、さすがに怒った様子で殆ど傷もない体を立ち上がらせた。

 

「少し特殊な醜鬼だからと調子に乗りよって……楽に死ねると思うな!」

 

 生物とは呼べない存在である醜鬼に、死の概念が通用するのかという疑問はあるが。

 そこには突っ込まず、観戦を決め込んだらしい紫黒と壌竜をひとまず置いてジョン・ドゥは雷煉と対峙する。

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