【イナイレ二次創作】超次元転生~必殺シュートで成り上がリーヨ!~   作:雨内 真尋

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10.月夜の晩に

 その日の夜中、不意に目が覚めた。火傷の痛みはさっきまでと比べてもだいぶ引いている気がする。おそらくはサテラ先生が寝ている間にも治癒魔法を施してくれたのだろう。

 

 

「……少し歩こうかな」

 

 

 変に目が冴えてしまい眠れそうになかったので、夜風に辺りに行こうと外へ向かう。もうすぐ冬が来るこの季節の夜は空気が冷え、若干肌寒くはあるがそれが心地良い。

 

 外灯などのない真っ暗な町ではあるが、微かな月明かりが世界を照らし幻想的だ。ぼくはそのまま月の光を頼りに孤児院の裏手、慣れ親しんだ林の修練場へと向かう。

 

 

「はは、この丸太ボロボロだな。もう変え時か」

 

 

 毎日の特訓で受け止めたり蹴り上げるなどしているから、ダメージの蓄積された丸太は半分ほど削りられている。これでもう何代目の丸太だったか。数えることすら億劫なほど交換した気がする。

 

 

「これだけの力があって、ホントに何で最初戦う選択が出来なかったのかな……」

 

 

 今は話を聞いた直後程の動揺はない。ただ冷静になったからこそ余計に自分の不甲斐なさが浮き彫りになっただけだ。これじゃライナルトに怒られるのも無理ないのかもしれない。

 

 

「カーミル、何してるの?」

 

「ん、マリーナ。ダメだよこんな夜中に院を出歩いちゃ。サテラ先生に怒られるよ?」

 

「ごめん、ってそれはカーミルもでしょ!」

 

「あはは、確かに」

 

 

 一人感傷に浸っていると、林の陰からマリーナが現れた。ここ最近の彼女のブームは、突然どこからか現れることなのかな。

 

 茶の入った彼女の金髪は、月明かりの中で美しく照らされている。

 

 

 

「それより、何してるの?」

 

「別に、ちょっと目が冷めちゃったから夜風に当たりに来ただけだよ」

 

「そう……」

 

「うん……」

 

 

 それっきり会話は途絶え、二人の間に沈黙が生まれる。普段ならもっと気安く色々と話が出来るというのに、今だけはそれが出来なかった。きっとお互い、なんて声をかけたら良いのか分からないのだろう。

 

 

「そ、それにしても、凄いわねここ。カーミルはいつも一人の時ここでサッカーしてたんだ。私全然知らなかった」

 

「え?ああ、そう言えばここに誰かを呼んだことはないからね。僕にとってとても大切な場所なんだ」

 

 

 気まずい空気を裂くように、マリーナは話題を提供してくれた。いつもここには一人で来ていたから、誰かがいるというのは新鮮だ。

 

 

「ふーん、そうなんだ。その丸太は何に使うの?」

 

「これは蹴ったり受け止めたりして使うんだよ。僕のキック力とキャッチ力はこいつに鍛えられたと言っても過言じゃない」

 

「だからあんなに凄い技を使えたんだね。私びっくりしちゃったよ」

 

「あはは、ありがとう。でも戦う力を持っていながら逃げる選択をしたんだから、僕は凄くも何ともない。ただの卑怯者だ」

 

 

 必殺シュートなどを見せるのもあの場が初めてだったので、マリーナには目新しく写ったことだろう。だがそれだけの素晴らしい技があったとしても、使い手がこんなでは意味などない。

 

 

「カーミルは、卑怯者なんかじゃない!守れなかったものばかり考えるのはもう止めてよ。もっと全体を見て、カーミルは私を助けてくれたじゃない!」

 

「え……」

 

「私だけじゃない。リタやサテラ先生、あの場にいた皆を助けるためにカーミルは命を賭けて戦ったんだよ。責任を背負うって言うなら、守ったものにもちゃんと目を向けなさいよ!」

 

「僕が、守ったもの……」

 

 

 卑屈な思考が極まっていた僕をマリーナは一喝した。確かにレオンとズザナは守れなかった。二人がやられる瞬間を僕はただ傍観しているだけだった。

 

 でもあの場でしたことは、それだけじゃない。マリーナはきっとそう言いたいんだ。一点だけに視野を狭めるのではなく、総合的に見てほしいと。

 

 

「そうだね、確かに僕は君を守りたいと思って戦ったよ。でも、それで僕の罪が消えるわけじゃない」

 

「うるさい!一人で何もかも背負い込もうとするな!そんなこと言ったら、一番近くにいた私が一番罪深いんだから……。皆悪くなくて、皆に平等に責任はあるんだよ。私はそう思う」

 

 

 マリーナの叫びに、僕は言い返す言葉が出てこなかった。彼女の言葉が心の奥底にまで響き渡り、まるで自分の黒い心を眩しい光で照らしてくれるような、そんな暖かな力が感じられたのだ。

 

 辛いと思っているのは僕だけじゃない。皆悔しくて、皆悲しくてどうしようもないんだ。そんな中でも前に進まなきゃいけない。それをするために、たぶん誰か一人に責任を押し付けたいというのが人の心理なんだろう。誰よりも僕が、僕自身に責任を押し付けていたのだから。

 

 

「ありがとうマリーナ。本当はかなり滅入ってたけど、頑張れそうな気がしてきたよ」

 

「うん、うん!」

 

「決めたよ。僕はもう二度と同じ過ちを繰り返したりはしない。助けられる命があるのなら、何ふり構わず力を使う。僕の人生を賭けて、レオンとズザナの分まで誰かのために生き抜いてみせる」

 

 

 心が晴れ視界がクリアになった時、僕は自分自身が何をしたいのか、何をすべきなのかをはっきりと理解した。今回の事件のように理不尽に振り回される人々を一人でも多く手助けする。それが僕の贖罪だ。

 

 この世界に転生した当初はサッカーだけ出来ればいいと思っていたが、今はもう違う。新しく生きる意味を見つけた僕は、本当の意味で強くならなきゃいけないんだ。

 

 

「凄い目標だね。でもカーミルらしいよ。私も協力するからね!」

 

「ありがとう、でもマリーナはもう僕と関わっちゃいけない」

 

「え?な、何でよ!」

 

「僕は今皆から嫌われてるんだ。そんな僕と一緒にいたらマリーナまで孤立しちゃうからね。マリーナには僕と同じ目にあってほしくないんだ」

 

 

 きっと僕はもうこの孤児院で誰かと楽しく笑って過ごすことは出来ないだろう。でもそれはあの時、逃げの選択をした結果なのだから仕方ない。誰も悪くなんてないのだから受け入れるのが筋だ。

 

 

「大丈夫、こう見えて僕は一人にはかなり慣れてる方だからね。何も心配はいらないよ」

 

 

 不安げな表情が拭えないマリーナに対し、精一杯の笑顔を見せて大丈夫だとアピールする。実際今日までもこうして一人で特訓する時間は多かったし、前世では病院暮らしで友達がいなかった。だから何も問題はない。

 

 

「さて、それじゃあそろそろ戻ろうか」

 

「……カーミルはそれでいいの?」

 

「もちろんさ。だからマリーナももう僕に話しかけたりしちゃダメだからね?」

 

「……」

 

 

 出来るだけ砕けた調子でそう返し、そのまま孤児院へと戻るため歩き始める。最後まで曇った表情だったのが気になるが、それでももう僕は関わってはいけない。関わらないと決めたのだから。

 

 その後僕達は二人静かに、寝静まった孤児院へと帰ってくる。きっとこれからは、普段とはまた変わった日常が始まるのだろう。

 

 

 

 

 

 

――

 

 

 

 

 

 

 新しく生きる目標を決めたあの夜から数週間が経過した。傷跡は残ったがそれでも火傷はもう完全に完治したといっていいだろう。

 

 そんな僕は現在、とある人物に会うために冒険者の集うギルドを訪れていた。

 

 

「いいですかカーミル君。あなたが無事だったのはランプレヒトさんが手持ちのポーションを使用してくれたからです。それがなければ即死していた程の重傷だったのですよ。ですから元気になった今、改めてお礼を伝えに行ってきなさい」

 

 

 と、そんな新事実をサテラ先生から教えられ、僕はランプレヒトに会うためここへやって来たというわけだ。

 

 

「すみません、少しいいですか?」

 

「あら、どうしたの僕?」

 

「ここにランプレヒトさんっていう冒険者さんいますか?」

 

「ランプレヒトさん?それならちょうど併設している飲み屋にいたと思うわよ。あっちね」

 

「そうですか、ありがとうございます」

 

 

 強面な大人達が多くいる中で子どもである僕は完全に場違いだ。怪訝な視線を向けられとても気まずいなか、受付のお姉さんにランプレヒトの居場所を聞いて言われた通り酒場の方へ移動する。するとそこには一人で悦に浸った感じで飲んでいる目的の人物がいた。

 

 

「こんにちは、ランプレヒトさん」

 

「おー小僧か。どうしたんだこんな所まで?」

 

「サテラ先生から聞きました。僕を助けるためにポーションを使っていただいたんですよね?助けてくれてありがとうございます」

 

「ああそのことか。それなら気にしなくていいさ、そういう仕事だったんだからな」

 

 

 恩人であるランプレヒトに礼を告げると、彼は何でもないという風にあっさりと流す。本当に仕事と割り切って僕を助けたんだろうということがよく分かる態度だ。

 

 

「それより小僧には聞きたいことがあったんだ。お前さんのあの魔法、あれは一体何なんだ?」

 

「ああ、それは僕の固有魔法ですよ。ボール生成でボールを作り出して、それを使って色々な技、魔法が使えるようになるんです」

 

 

 必殺シュートなどは、厳密には魔法という枠組みに分類される。ただあんな攻撃的なモーションが必要な魔法を僕は見たことがないので、他の人から見ても目立つのだろう。

 

 

「なるほど、固有魔法か……」

 

「何かあるんですか?」

 

「ああ、気にしなくていい。ただその強さに納得したってだけだ」

 

「……?そうですか」

 

 

 固有魔法と聞いて、普段の飄々とした表情から一瞬だけ鋭い圧のようなものが感じられた気がした。でもそれはほんの一瞬の変化だったため、単に僕の気のせいかもしれない。

 

 

「固有魔法持ちなんて滅多にいないからな。大事にしろよ小僧?」

 

「分かりましたから撫でるのは止めて下さい。はぁ、改めてありがとうございました。それじゃあ僕は失礼します」

 

「おう、気をつけて帰れよ」

 

 

 荒っぽく頭を撫でられ、凄くバカにされた機がしたので無理やり振りほどく。やっぱり僕はこの人が苦手だ、どうしても好きになれそうにない。

 

 ともあれあまり長居しても仕方ないし、お礼もちゃんと告げたのでこうして僕は冒険者ギルドを後にするのだった。




これにてチュートリアルは終了といったところです!
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