【イナイレ二次創作】超次元転生~必殺シュートで成り上がリーヨ!~ 作:雨内 真尋
魔物に襲われている冒険者を助けるため駆けつけた僕は、女性剣士を庇う形で対峙する。
ザ・ウォールに勢いよく頭を打ち付けたボアレストは目を回していたようだが、すでに回復しているようで鬼のような形相を向けてきた。相当頭にきているんだろう。
「ブルルァ!」
「来い!ゴッドハンド!」
正面からの突撃を今度はゴッドハンドで受け止めた。そして掴んで動きを止めたまま、力技で押し返していく。
攻撃に移るには冒険者達の距離が近すぎて巻き込みそうなので、まずは距離を取るところからだ。
「あ、あんた一体何者なんだ!?」
「もっと後ろに下がって下さい。魔物の相手は僕が代わりますから!」
「そんな無茶な……!」
「いいから早く、じゃないと巻き込みますよ!」
突然現れた僕に対し、女性剣士はどう対応したらいいのか分からず動けなくなっていた。
そんな状況でもこちらの身を心配してくれるのは嬉しいが、正直抑えられていると言っても楽ではないので早く逃げてほしい。
「わ、分かった、すまん!」
「ねぇ、あの子一人で大丈夫なの?」
「何か隠し玉があるみたいだから一旦任せる。それよりも今のうちに安全な場所まで引くぞ!」
「う、うん、分かった……!」
女性剣士は僕の意図を汲んでくれて、仲間を引き連れ下がっていく。これでようやく心置きなく戦えそうだ。
人助けがモットーではあるが、それでもやはり守る対象が近くにいるのは精神的に少しきついものがあるから、一人の方が気楽でいい。
「ブ、ルルルァ……!」
「さてと、それじゃあせっかくだし、今回は次世代の技でいこうかな。まずは……そよかぜステップ!」
「ブルォッ!?」
穏やかな風のように身を翻して相手を躱す、GOの主人公、松風 天馬のドリブル技だ。風に巻かれたボアレストは力の逃げ道を失い無様な転び姿を晒す。
困惑と羞恥、そして出し抜かれたことに対する怒りが顔を真赤に染め上げていた。
「もう遅い、勝負は僕の勝ちだ……デスソード!」
浮かせたボールに前蹴りを入れて力を溜め込む。そして蹴りつけた足で踏み込むと同時に、刀を振り抜くように右腕を大きく振り降ろすことで、鋭い闇の剣が狙った相手を突き抜ける。これがGOでのエースストライカー、剣城 京介の必殺シュートだ。
「ブヒガッ!」
「っし」
デスソードが直撃したボアレストは、胴と頭を真っ二つに分断され絶命する。重い体が地面に倒れ込み土煙が巻き上げられる中、小さく拳を握り勝利を喜ぶ。
自分の何倍もの体躯を持つ魔物相手にも後れを取ることはない、非常に優秀なシュート技だ。
「で、あの人達は僕の希望通り逃げたから、どこに行ったか分かんないな……まぁいいか。それよりもちゃっちゃと解体しちゃお。夕飯もまだ食べれてないからお腹空いてるし」
夕飯はもう出来上がっているが、食べる前に救助へ駆けつけたから空腹なままである。ちゃんと食べておかないと、技を使うための魔力が枯渇してしまったら大変だ。
「お、おい!さっき凄い音がしたが大丈夫か――って、もう倒してるだと!?」
「ああどうも、怪我人の方は大丈夫でした?」
「あ、ああ、それは今魔法使いが治療してるが……」
簡易的にではあるがボアレストの解体があらかた終了したところで、先程の女性剣士が戻ってきた。彼女の折れた腕は添え木と包帯で固定し応急処置は済ませてあるようだ。
他の怪我人も治療中らしい。大事にならずに済んでよかった。
「そうでしたか、それは何よりです。あ、そうだ。この魔物大きすぎて僕一人じゃ処理しきれないんで、後をお願いしてもいいですか?売ったらそれなりの金額になると思うので、治療費にでも当てて下さい」
「ん?え?な、何を言って――」
「じゃあ僕は夕飯まだなんでこれで失礼しますねー」
問題が片付いた以上、あまり長々と話をしていたくはない。過去の失敗からというのもあるだろうが、前世でも他人との関わりが皆無だった僕は元来人見知りみたいだ。
知らない人と居る空間は気まずくてしんどいので、逃げるように退散した。
――
「遅くなってごめんジーナ!ってあれ?もう全部終わってる!?」
「あ、ああ。なんか、さっきの子どもが全部片付けて消えていった」
女性だけで構成された4人組の冒険者パーティ、そこでリーダーを務めるのは先程前衛で身を挺し仲間を庇っていたこの女性、ジーナだ。
軽装で素早く敵へ切り込み、スモールシールドで攻撃を受け流し反撃を繰り出すのが彼女のスタイルである。短く切りそろえた濃い茶髪が凛々しさを引き立てていた。
そこへつい先程仲間の治癒を終え戦場へ駆け戻ってきた魔法使いの女性エルマが声をかける。
魔法使いらしくとんがり帽子と身の丈程もある長い杖を用いた高威力の魔法が持ち味で、このパーティの主力でもあった。そんな荒々しい戦い方とは真逆に、今どきの若い女の子のようなノリがギャップとなり界隈での人気を集めている。
「消えたって、帰っちゃったってこと?まだお礼も言ってないのに。て言うか倒した魔物も残ったままじゃん!」
「それは私達にくれるんだと。治療費にでも使えって」
「はぁ?何そのお人好し全開な態度、何が目的?」
「さぁ……」
窮地に突然現れ、苦戦していたはずの魔物をさっそうと片付け、そのまま挨拶も程々にあっさりと帰ってしまう謎の子ども、もといカーミル。しかも倒した魔物の部位はほとんど自分達へ譲るという。
そんな理解の追い付かない状況の数々に、普段はハキハキとして頼もしいリーダーのジーナも放心状態であった。
「ホントに何者なんだろ。来た時は土壁を作ってたから魔法使いかな?」
「いや、ボアレストを仕留めた傷を見る限りそうとも言い切れない。この切り口は相当な剣の腕前だぞ」
「どれどれ?うわっ、ホントだ。よくこんな太い首を真っ二つにできるねー。ジーナも出来る?」
「相手が死体で動かないならあるいは、戦闘中ならまず不可能だ」
「そ、そう……」
登場時は魔法使いかと思わせておいて、仕留めた傷を見ると達人並みの切り口がある。戦闘を直接見ることが出来なかった彼女達は、カーミルがどういう存在なのか掴み切ることが出来ず混乱は深まるばかりであった。
きっとその正体がサッカープレイヤーだと知ったら、また更に混乱することは間違いない。
「二人ともー、ロベルタが目を覚ましたわよー!」
「ごめんみんな、足引っ張った……」
そこへ先程頭部を負傷していた女性、ロベルタに肩を貸しながらもう一人の剣士グローリアがやってくる。
グローリアは大剣を用いた一撃必殺の戦闘が得意で、ジーナとは対象的な戦い方をする。そしてそんなスタイルに反して内面は非常に女子力が高く、掃除洗濯裁縫に料理などなど、身の回りのお世話を任せたら彼女の右に出るものはいないほどだ。
グローリアが抜ければ別の意味でジーナのパーティは壊滅すると言われている、そんな長い金髪を振りまく要のメンバーである。
「もういいのか?」
「うん、どうにか……」
「ロベルタはお子様だから仕方ないねー」
「うるさい……」
そして最後の一人がロベルタ。小柄な体躯の彼女は斥候やルート選択、作戦の立案といったパーティの頭脳担当だ。
唯一の欠点は夜に弱いことで、暗くなると途端に睡魔に支配され頭が回らなくなる。今回ボアレストの発見が遅れ重症を負ったのもそれが要因である、ちょっと残念な薄緑色の髪を持つ女の子だ。
これが女性4人で構成された、ペールマンを拠点とする冒険者パーティ「桜花乱舞」である。
「あれ、さっきの子はどこなのよ?」
「あいつはもう帰ったよ」
「え、帰っちゃった!?」
「その反応になるよねー。実は人じゃなくてこの森の妖精だったりして?」
「何の話……?」
ジーナやエルマと同様、グローリアもカーミルがすでに帰ってしまったと聞き素っ頓狂な声を上げる。淑女たる彼女にしては珍しい反応だ。エルマに関してはもう人外ではないかと考えることを放棄すらしていた。
そんな中唯一気を失っていたロベルタだけは、状況が理解できず話に置いていかれている。
「あの子どものことは一旦後回しだ。怪我人の多い状況で探索継続は不可能だろうし、明け方街へ帰還するぞ」
「「「はい!」」」
雑談で気が緩みかけてきたメンバーをジーナの一言で締め直し、4人は各々作業に取り掛かる。
こうして、カーミルの人助けアンドアウェイ人生の幕は静かに上がっていくのだった。