【イナイレ二次創作】超次元転生~必殺シュートで成り上がリーヨ!~ 作:雨内 真尋
「それで、お前の使う得物はどれなんだよ?」
「僕が使うのはこれですよ。ボール生成」
木剣を肩に担ぎながら尋ねてくるマルクスに対し、サッカーボールを作り出してアピールした。
それを見たギャラリー達は、一瞬の静寂の後盛大な嘲笑が巻き起こる。ボールを見て馬鹿にする者や、マルクスに向けて舐められてるぞと煽る者など様々だ。
「おいガキ、本気でそれで戦うってのか?」
「もちろんです、これが僕のスタイルですからね」
「ちっ、やっぱまともに相手するんじゃなかったな。ボール遊びなら、他所でやれやぁ!」
ギャラリーに煽られたせいか、マルクスは苛立ちながら突撃してきた。開始の合図とかはないみたいだけど、もうやっていいのだろうか。
「もう開始ってことでいいんですか?なら、僕もっ!」
「ん?どわぁっ!」
まずは挨拶代わりとばかりに、マルクスの顔面目掛けノーマルシュートをお見舞いだ。魔物相手に狙い撃ちの練習をした甲斐もあり、思った通りの場所にボールは吸い込まれていく。
マルクスも咄嗟に木剣でガードしたが勢いまでは完全に殺せず、ボールに押されて尻餅をついた。
「何だあの蹴りの力は、子どもの遊びじゃねえぞ?」
「魔力で肉体強化をしてるんだろ。あれくらいなら大したことないだろ」
「いやいや、あの歳でマルクス相手に力押しで勝ってるんだぞ。十分優秀だって……!」
意表を突いた先制攻撃に、先程まで嘲笑っていたギャラリーの評価が一転する。遊び半分の暇潰しではなく、真剣に分析し出す者も出始めた。
「今日は調子がいいね。よしどんどんいくよー、ボール生成!」
「ふざけんな!何度も撃たせてたまるかよ!」
「おお、図体に似合わず意外と速い」
「うっせえ!こんなボール近づいたらそれで終わりだ。これで逝けやぁ!」
再度シュートを放とうとする僕に対し、マルクスはすぐさま立ち上がると予想外の敏捷性を見せて距離を詰めてくる。これだけ近いとシュートを撃つのはまず無理だろう。
そして驚きを見せている僕に対し、マルクスは振り上げた木剣を勢い良く叩き落としてきた。
「熱血パンチ!」
眼前まで迫る木剣に対し、僕は拳にオーラを溜めて殴るキーパー技の、熱血パンチを使う。
パンチを受けた木剣は心地良い木片の砕ける音と共に粉砕した。
「す、素手で木剣をだと……!」
「痛た、これは技選択ミスったかな」
自分の武器が拳一つで粉砕したことに驚きを隠せない様子のマルクス。そんな彼を無視して僕は腫れ上がった自分の拳をさすって痛みを冷ます。
流石に木剣みたいに頑丈なものを熱血パンチで殴るのはもう止めておこう。
「くそっ、妙な技使いやがって……!おい、予備の剣よこせ!」
「お、おう!」
戦闘前の余裕はどこへやら、マルクスの表情には困惑の色しか残っていなかった。彼は仲間に呼びかけ新しい木剣を投げ渡されたが、もう攻撃のチャンスをやるつもりはない。
「コイルターン!」
「なっ、この、グルグルと回りやがって!くそ、速くて捉えきれねえ……!」
マルクスを中心にその周囲を高速で走り回るコイルターン。その速さに追いつくことが出来ず、彼の剣は虚しく空を斬る。
ゲームではブロック技だったが、対人戦だとこういう使い方もできるのだ。コイルターンで視界から外れた僕は、その隙にシュートの距離を稼ぐ。
「ガキが、どこに消えやがった!」
「後ろだぞマルクス!」
「何っ!?いつの間に……!」
背後を取り再びボールを生成する。シュートの準備が完全に整ったところで、マルクスは仲間に助けられてようやく僕の居場所を捉えた。
「もう遅い。これで終わりです、ドラゴンクラッシュ!」
青き龍がボールの威力を最大限に高める必殺シュート。ドラゴンクラッシュが無防備なマルクスに襲いかかる。
「うお、な、何だこの技は……ぐああぁっ!」
慌てた様子で木剣を盾にしたマルクスだが、ノーマルシュートとは比べ物にならないその威力に呆気なくへし折れ、それでもドラゴンは勢い衰えることなく強襲した。
ドラゴンが通り過ぎた後に残ったのは、地面に横たわるマルクスのみである。
「マ、マルクスが負けた……」
「何だよ今のは、魔法か?」
「いやいや、足から出す魔法なんて見たことなぞ」
「さっきの拳もなにか妙なものを纏ってたよな……」
「俺は至近距離でマルクスの攻撃を掻い潜っていた、あの技が気になる」
マルクスの敗北がよほど信じられなかったのか、仲間達は困惑と焦りに塗り固められている。まぁ技に関しては、詳細を知っているのが僕しかいないから驚くのも無理はないだろう。
サテラ先生からも、ほとぼりが冷めたあたりで改めて質問攻めにあった程だし。
「あっはっは!なかなか面白いのがやって来たみたいだな!賭けはウチの一人勝ちってことでいいか?」
「げっ、ボスいつから見てたんですか?」
「結構最初からですよ。こっそりとあの子どもに結構な額賭けてきました……」
「まじかよ……」
なにやら賭けがどうのとかで盛り上がってる。そう言えば戦う前にそんな話してたなあの人達。
そしてあの豪快な笑い声を上げている女の人が一人勝ちしたみたいだ。僕が言うのも何だけど、こんな子どもに大金を賭けるって相当なギャンブラーだな。
「ったく、お前らもまだまだ人を見る目がないねぇ。あの子どもは既にそれなりの修羅場を通ってきた顔つきしてるってのに」
「えぇっ、そうなんですか?全然分からねぇ……」
「こんなガラの悪い連中に囲まれて、それでも物怖じ一つしない精神の持ちなんだから、それで気づきそうなもんだがね」
「あのー、そろそろいいですか?いい加減僕の話も進めたいんですけど」
修羅場がどうのこうのとあの女性は語っているが、別にそんな大層なものを潜り抜けてきた記憶はない。僕はただ逃げただけの臆病者なのだから、あれ以上に怖いことがないだけだ。
「ああ悪い悪い。そんでお前さんはウチに入りたいんだって?」
「はいそうです。あのマルクスって人を倒したから合格ですか?それともまだやります?」
「いやぁテストはもう十分さ。これ以上はウチの連中が使い物にならなくなっちまう。あんたは合格だ」
「そうですか、ありがとうございます」
皆からも慕われているらしいあの女性は、恐らくこの冒険者ギルドの長かそれに親しい立場の人なのだろう。彼女の許しを得れたから、ようやく冒険者になれそうだ。
「お前さん、名前は?」
「カーミルです。隣町のクレフから来ました」
「よろしくなカーミル。ウチはアレッシアだ」
「はい!」
女性の名はアレッシアというらしい。鈍色のボブヘアと少し露出の多い服装が目立つ、なんとも頼りがいのあるオーラを持つ人だ。
「改めて歓迎するよカーミル。ようこそウォース傭兵団へ!」
「はい、よろしくお願いしま――へ……?すみません、今、なんとおっしゃいました?ここは何団ですって……?」
妙な単語が聞こえ合格の喜びは一瞬で霧散した。
落ち着け、これは何かの間違いだ。もう一度聞き直せば、きっと僕の勘違いだったんだと証明されるはず。
「だからウォース傭兵団だよ。お前も傭兵志願者なんだろ?」
「え、あれ、え……あれえええええええぇぇぇぇぇぇ!?」
あまりの衝撃に人生最大級の絶叫を上げる。
改めて確認してみたが、残念ながら聞き間違いでは無かったようだ。僕が冒険者ギルドだと思っていた場所は、まさかの傭兵団の拠点だったらしい。
組織を間違えた上にそのまま試験を受けて合格しちゃうとか、何やってんだよ僕はーーーー!