【イナイレ二次創作】超次元転生~必殺シュートで成り上がリーヨ!~ 作:雨内 真尋
冒険者ギルドだと思って入った施設は、まさかの傭兵団アジトだった。門番にも場所を間違えるなよと言われていたのにやらかしてしまうとは。
「すみません、どうやら場所違いだったみたいです……」
「はぁ?どういうことだよ?」
「僕は冒険者になる予定だったんですけど、何かの手違いでここに来てしまったんです」
「冒険者?それなら西の通りだろうに、何で真反対の東通りに来てんだ?」
「あ、こっち東だったんだ……」
どうやら僕はそもそもの道を間違えてしまっていたらしい。西と言われたから左に進めばいいかなんて安直な考えで行動していたら、まさかの事態を招いてしまった。
あとはガタイのいい人達がここに入ってたから、何も考えずそれについてきたというのも影響している。
「馬鹿だなお前は……腕っぷしは大したもんだが、その辺りはまだまだお子ちゃまってところか!」
「ぐぅ……」
子どもと馬鹿にされたが返す言葉もない。実際アレッシアの言う通り凡ミスを犯しているのだから。
「じゃあこれからどうするんだよ。今から冒険者ギルドへ向かうか?といってももう夕暮れ時だから相手してもらえないと思うけどな」
「そうですね、でも一応行ってみます……」
到着した時が既に日の沈み始めていた時間帯なので、恐らく新規登録などの受付はもう締めてしまっているだろう。
なんだか今日一日を無駄に過ごしてしまったみたいで一気にテンションが下がった。
「まぁウチ的にはこのままカーミルには傭兵団に入ってもらっても構わないけどな。それにお前はたぶんこっち向きだろうし」
「え?」
「カーミルは確か人助けがしたいんだろ?だったらむしろ冒険者よりも傭兵の方が適任だって話だよ」
「何言ってるんですか、傭兵は戦争屋でしょ?人助けよりもむしろ、争いの火種を大きくしている印象なんですが」
一人落ち込んでいると、何故かアレッシアにそのまま勧誘されてしまった。僕が傭兵向きかどうかは一旦置いておいて、傭兵が人助けということをまず上手く飲み込めない。
「まぁ確かにそういう依頼もあるにはある。だが全部が全部戦争に加担しろっていう仕事じゃあないぜ」
「じゃあ他には何があるんですか?」
「要人の護衛から夜間の警備、あとは魔物退治なんかもやってるな」
「なるほど、それなら僕のやりたいこととも結構近い気がする……ってあれ?魔物退治は冒険者の仕事では?」
「あっちは素材採取目的での依頼だな。対してこっちは町や村の治安を脅かす危険の排除が目的だ。どうだ、カーミル的にもウチの方が人助けしてるっぽくないか?」
「た、確かに……」
実を言うと冒険者になりたい理由は特にない。単純に知り合いでやってる人がいて色々教わったから経験を活かせると思っての判断だ。
そこへいくとアレッシアの話を聞く限りでは、傭兵団の方が僕のやりたいことと合致している点も多い気がする。それにせっかく訪れて入団審査も通ったのだから、その経緯を無駄にしたくないという気持ちもあった。
「でも僕は戦争に参加はしたくないですよ」
「別に強制じゃねぇから仕事は好きに選べよ、こっちも回す仕事は厳選するし。それに戦争つっても、敵と戦うだけが仕事じゃない。巻き込まれた一般人の救護や支援も含まれるから、カーミルはそっちをメインにやればいいさ」
「なるほど、それは是非協力したいところですね」
戦争被害者を助けるための傭兵、それならば是が非でも協力したいところだ。
だが片方だけの意見で全てを決めるのは早計な気もする。やっぱり冒険者ギルドの方でも話を聞いて、答えを出すのはそれからでも遅くはないだろう。
「やっぱり明日冒険者ギルドに行ってみます。両方からの話を聞いてから答えを出そうと思いますので」
「そうか、まぁそれがいいだろうな。じゃあこの話はそれで終わりとして、そういやお前今日は泊まる所決まってんのか?まだならウチの空き部屋を貸してやるが……」
「いえ、そこまでお世話になるわけにはいきませんので遠慮しておきます。ここへ来る途中魔物を狩ってきたので、それを売って足しにしますよ」
僕の答えを聞いてアレッシアは食い下がることなくすんなりと納得してくれた。
とても理解のある人だ。それに寝床まで提供しようとしてくれるなんて、相当面倒見のいい方なんだろうな。
「じゃあ誰かカーミルを買取屋まで案内してやってくれ」
「えっ!?いやそんな、悪いですよ!」
「遠慮すんなって。こっちから喧嘩を売るようなマネをした、その詫びみたいなもんだからよ。それに方向音痴なお前じゃどのみち誰かしらに迷惑かけそうだしな」
「はは、そうかもですね……」
アレッシアは気にするなと肩をたたいてき、そして豪快に笑われた。
別に僕は方向音痴のつもりはないんだけどな。第一印象がよくなかったか。
「じゃあ私が連れて行く」
「お、ルチアが動くなんて珍しいな」
「そろそろあの子達のエサが尽きそうなだけよ」
「なるほどな。まぁいいや、じゃあ任せたぜ」
僕の道案内として一人の少女が立候補してきた。薄水色の癖っ毛を肩の少し上で綺麗に切り揃えた、少し眠たげな空色の瞳が特徴的な女の子だ。
そして何よりも気になるのは、彼女が胸に抱えている一匹の生き物である。タヌキなのかイタチなのかよく分からないが、そんな小型哺乳類タイプの魔物だ。毛並みが金色に輝いていて神々しい。
「えっと、僕はカーミルだよ。よろしく」
「……何で私にはタメ口なの?」
「え?それは、同い年か年下に見えたからだけど」
「私は15歳。こう見えて成人してるんだけど」
「っ!そ、そうだったんですか!?ごめんなさい、勘違いしてました!」
僕よりも背が低いから絶対同い年以下の年齢だと思っていた。
まさか5つも上だとか予測できるわけもなく、物凄く不機嫌そうな目で睨まれてしまう。本当に申し訳ない。
「ふん、まぁいいけど。早く行きましょ」
「は、はい!」
そうして僕は、若干小柄な女性ルチアに案内されて、魔物の素材を売りに向かうのだった。
――
買取屋に到着した僕は、荷袋いっぱいに詰め込んでいた素材を取り出し買い取ってもらう。ボアレストを倒していたのが幸いしたのか、思っていたよりもだいぶ高く引き取ってもらえた気がする。
「それとあれと、あとそっちの肉もお願い」
「あいよ!」
と、僕が素材の取引をしている横で、ルチアはなぜか大量の魔物肉を買い込んでいた。
さっきアレッシアとの会話であの子達のエサがなんとか言ってたけど、あれを食うほどの獣がいるというのか。それともまさか、あの金色タヌキが全部食べるというのか!
「カーミル、運ぶの手伝いなさいよ」
「え、何で僕が――」
「私の年齢」
「はい!喜んで運ばせていただきます!」
ルチアに雑用を押し付けられそうになり疑問を抱いたが、先の無礼をはたらいた一件があるため拒否権はない。荷物運びでもパシリでも喜んで引き受けようではないか。
ただ泊まる宿も決めなければいけないので、そこだけがちょっと心配だけど。宿の受付も遅くなるとしてもらえなさそうだし。
「宿なら気にしないで。今日は私の家に泊まればいい」
「いや、女性の家に泊めてもらうわけには……」
「私一人じゃないから気にしなくて平気よ。それに子どものあんたが生意気なことしても叩きのめすだけだし」
「そ、そうですか……ではご厚意に甘えさせていただきます」
寝床を気にしていることを察せられてしまったのか、今晩はルチアのお宅に厄介となることになった。叩きのめすとか、言動がちょいちょいおっかないけど他にも人はいるみたいだし安心だろう。
と、そんな呑気なことを思っていたのだが、僕の考えは甘かった。
「ガルルウッ!」
「ギャオオー!」
「ブルオッ!」
「キャオオーン!」
ルチアの家、そこは数多の魔物が吠え唸る獣の館であった。と言うかここ、もうほぼ外と一緒じゃん。
敷地はかなり広くその全体を巨大な鉄柵が囲っている。そして殆どは魔物のために用意されたようなワイルドな内装で、人の居住区は申し訳程度に建てられた、あの隅にある小屋なのだろうか。
「ここは動物園か何かですか?」
「私の家よ。遠慮しないで上がってちょうだい」
「はい、お邪魔します……」
驚きを通り越してもはや無心となった僕は、ただルチアに言われるがままお邪魔した。
たぶんこの異世界に来て過去最大の驚愕を目にした気がする。