【イナイレ二次創作】超次元転生~必殺シュートで成り上がリーヨ!~   作:雨内 真尋

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17.ルチアの家族

 ルチアが帰宅すると、魔物達は一斉に彼女の元へ集い思い思いに甘え始めた。はたから見れば小さな女の子が襲われているようにしか見えない光景だが、当の本人は楽しげに笑っているので何も問題はないのだろう。

 

 

「カーミル、皆にエサあげるから手伝って」

 

「分かりました」

 

 

 驚きのあまり一周回って無心になった僕は、考えることを止めてただルチアの指示を聞くだけの下僕と化した。決して冷静になってはいけない。この状況お前に深く思考したら負けなのだから。

 

 

 

 

 

 

――

 

 

 

 

 

 

 その後現在僕はルチア宅、と言っても敷地の割にやたら小さなあの小屋にお邪魔している。広さはたぶん前世のワンルームアパートくらいだ。対して庭は学校のグランドくらいはあるから面白い。

 

 場所は南東方面の一番端に位置しており、周囲には廃墟みたいな建物がチラホラあることから、土地代があまりかからないエリアなのかもしれない。

 

 

「疲れた?」

 

「はい、ちょっとだけ……」

 

「手伝ってくれてありがとうね」

 

「いえいえ、こちらこそ道案内や泊めてもらったりなどしてもらってるんですから、あれくらい大したことないですよ」

 

 

 先程までの喧騒が嘘のように、今は二人で静かに夕食をとっていた。ルチアはあまり口数の多い子ではないみたいだしこんなものだろう。

 

 せっかくだらか少し疑問に思っていたことを聞いてみる。

 

 

「そう言えば、どうしてあの場で僕の道案内を名乗り出たんですか?」

 

「それは、この子がカーミルのことを気に入ったから」

 

「へぇー……え?それだけですか?」

 

「そう」

 

「な、なるほど」

 

 

 色々と手伝ってくれたのは、あの愛玩動物みたいな魔物が僕のことを気に入ってくれたかららしい。

 

 たったそれだけのこと。でもだからこそ僕を気にかけてくれたということか。つまりルチアは、それだけ家族のことを大切に想っているということなんだろう。

 

 

「ルチアさんは家族想いなんですね」

 

「家族想い?」

 

「あれ、違いました?だってここにいる皆、ルチアさんと遊んでいる時とても幸せそうでしたし」

 

「……ううん、そうね。私にとっては皆大切な家族だよ。間違ってない」

 

「ですよねー」

 

 

 ここにいると、孤児院での生活を思い出してなんだか懐かしい気持ちになってくる。大家族だけど皆仲が良くて家族想いで、見ているだけで胸がいっぱいになるような光景だった。

 

 ルチアもなんだか嬉しそうな顔をしているから、本人の言う通り間違ってはいないのだろう。

 

 

「にしても僕がその子に気に入られたんですか。もしかしてこれが原因かな?」

 

「キュー!」

 

「あ、やっぱりそうなんだ。ほら遊んでいいよ」

 

「キュキュッ!」

 

 

 魔物に気に入られたと言われて思い当たるのは一つしか無かった。ボール生成をしてみると案の定くいついてきたので、やっぱりこれが目当てだったらしい。

 

 クレフにいた時もよく近所の犬を相手に遊んでいたからなんとなく予想はついた。

 

 サッカーボールを渡してあげると目を輝かせて夢中になってじゃれ始める。

 

 

「その子の名前はヌコ。力は弱いけど魔法が使える優秀な魔物よ」

 

「へー魔物も魔法が使えるんですね。あ、そ言えば前に戦ったレッドイーガルも火炎弾を吐いてきたっけ……」

 

 

 ルチアに言われてあの時のことを思い出した僕は、ちょっとだけテンションが下がる。いい加減乗り越えて前に進むべきだというのは分かってるが、それでも根底に染み付いたこの気持をそう簡単に拭うことは出来ない。

 

 

「カーミルはレッドイーガルと戦ったことがあるの?」

 

「はい、2年前にですけど」

 

「2年前ってあなたまだ8歳?それでよく生きてたね」

 

「たまたま都合よく倒せただけです。それにその時僕は自分の家族を犠牲にしましたから、決して褒められるようなことじゃない」

 

 

 レッドイーガルを討伐したという話にルチアは前のめりになって食いついたが、それでも暗く重い雰囲気を察したのか深くは追求してこない。

 

 僕も全てを語る気はないのでそうしてくれると助かる。

 

 

「何があったかは知らないけど、子どものあなたが背負い込む責任のレベルを超えた内容であるのは確かね。レッドイーガルに遭遇したんだから、生きててラッキーって思っておけばそれでいいんじゃない?」

 

「ありがとうございます。そう簡単に割り切れるほど僕は器用ではないですが、それでも少し楽になった気がします」

 

「ならいい。それよりそろそろ寝るから、ほらヌコももう遊びは終わり!」

 

「キュー……」

 

 

 ルチアなりの気遣いはとても暖かく、本当に少しだけ楽に慣れた気がする。こんな事言うと絶対怒られるだろうから言わないけど、やはり彼女はちゃんと歳上なんだと実感できた、そんな優しい言葉だった。

 

 ヌコはまだ遊び足りないといった様子だったが、ルチアに促されて渋々寝床に入っていく。僕ももう眠るとしよう。今日は色々とあって少し疲れた。

 

 

 

 

 

 

――

 

 

 

 

 

 

 翌朝、ルチア宅でぐっすりと眠れた僕は朝日が昇るよりも少し早く起床した。空が薄っすらと白んできて、朝の透き通った空気が心地良い。

 

 

「キュー」

 

「ヌコもおはよーさん」

 

 

 庭に出て伸びをしていると、ヌコが肩に乗って頬ずりしてきた。昨日のボール遊びが効いたのか随分と懐かれた気がする。

 

 

「ガウー」

 

「キィイー」

 

「ブルルッ」

 

「キャウゥーン」

 

 

 庭に設置された井戸から水を汲み上げ顔を洗っていると、周りの魔物達も目が覚めたようで近寄ってくる。

 

 昨日は若干警戒されていた僕だが、エサやりを一緒にやったのとヌコが懐いているということもあってか少し距離感が縮まった気がした。

 

 

「皆もおはよー、せっかくだから一緒に遊ぼっか。ボール生成!」

 

 

 ヌコも気に入っていたことだし皆も気に入ると思ってサッカーボールを作り出した。すると予想通りというかなんというか、全員目をキラキラと輝かせてこちらを見つめてくる。

 

 

「よーし、じゃあ一番にボールをキャッチ出来た子が優勝だ!取ってこーい!」

 

「キュー!」

 

「ガルルウッ!」

 

「ギャオオー!」

 

「ブルオッ!」

 

「キャオオーン!」

 

 

 そう宣言してボールを放ると、魔物達は我先にと一斉に走り出す。行動だけ聞くとととても可愛らしいのだが、全員体躯が化け物じみているから魔物の大騒動みたいでちょっと引いた。

 

 

「でも、こうして誰かと一緒に遊ぶのは久しぶりだから楽しいな。よっし、今度は僕からボールを奪ってみろー!」

 

「キュー!」

 

 

 ルールなんて存在せず、全員が無我夢中で一つのボールを追いかけるただの遊び。こんなものはサッカーでも何でもないだろう。

 

 でも、だからこそ僕は久しぶりに心の底から楽しめた。誰かと一緒にボールを蹴って遊ぶ楽しさを、サッカーの本当の楽しさを再確認出来たんだ。

 

 

「カーミル、何してるの……?」

 

「あ、おはよールチアさん!ルチアさんも一緒に遊びます?」

 

「遠慮する。そんな事したら一瞬で潰されちゃうもの。と言うか何であんたは生きてるのよ……」

 

「あはは、やだなールチアさんは。サッカーで人が死ぬわけないじゃないですかー」

 

「ああそう……」

 

 

 そうしてルチアの魔物達と遊んでいると、いつの間に起きたのか唖然とした顔でこちらを見つめている彼女に声を掛けられた。その瞳はまるで狂った化け物を見ているかのようで、顔は完全に引きつっている。

 

 きっと昨夜は怖い夢でも見たんだろう。そんなもの一緒にサッカーをすれば一瞬で忘れられるというのに、断られてしまって残念だ。

 

 

「本当に変なやつ。でも、嫌いじゃないけど」

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