【イナイレ二次創作】超次元転生~必殺シュートで成り上がリーヨ!~ 作:雨内 真尋
「……ん、あれ、ここは……」
目が覚めた時、僕が居たのは小さな六畳の一間だった。周囲は白い壁で覆われ窓は無し。床はフローリングで、二脚のイスがありそのひとつに僕は座っている。
もうひとつのイスは空席だ。
「どこなんだろ。と言うか僕って確か、病院にいたはずなんだけど……」
「あ、やっと目が覚めた?おはよー」
いまいち状況が把握出来ず困惑しながら部屋の中を観察していると、突然どこからか声が聞こえてきた。
「えっ、だ、誰!?と言うかいつの間にそこに!?」
慌てて声の聞こえた方に振り返ると、先程まで空席だったイスに誰かが鎮座している。
ありえない。この何もない部屋で気づかれることなく座るなんて。まるで、突然その場に現れたみたいじゃないか。
「あははー、驚かせちゃったみたいだね。ごめんごめん」
「えっと……」
「随分と困惑しているみたいだね。なら何でも答えるから気になることは全部質問していいよ?」
全く知らない部屋に突然現れた謎の人物、目まぐるしく変わる状況。脳が追いつけていないでいると、それを察したのか謎の人物は余裕のある表情と仕草で僕に質問をする様促してきた。
そんな態度を受けてか、僕も少しは冷静さが戻ってくる。だからまずは、目の前の人物が何者なのか、そこから確認しよう。
「そ、それじゃあ、まずあなたは誰なんですか?」
「僕?僕はアル!とある世界の神様だよ!」
「アル、なるほど神様ですか。……って、え?か、神様?」
「そう!神様だよっ!」
アルはそう言ってウインクしながら、顔の横でピースを決めてくる。
何を言っているんだろうか。僕をからかっているのか?いや、そうに違いない。こんな奇天烈な状況に放り込んで混乱している僕をからかっているんだ。
「あー!その顔は信じていないって顔だね。酷いなーもー」
「す、すみません。でもいきなりそんなこと言われても、信じる方が無理ですから」
「うーん、まぁそう言われるとそんな気もしてくるな……。よし分かった!じゃあ神様っぽいことをするからそれで信じてもらおうか!」
そう言うやいなや、アルは手のひらを上に向けて胸の前辺りで留める。すると同時に、アルの手から謎の光が発生しだした。
「え?え?ちょ、どういうこと?何をする気……!?」
「神獣召喚!おいで、フルブレイブ・レオ!」
「ガルゥオオオォォォォォ!」
「ひ、ひいぃぃぃぃ!」
僕の困惑など気にも止めず、アルがそう宣言すると同時に、手のひらの光から金色に輝くライオンの頭が姿を現した。
頭だけでも3メートルはありそうなその巨体から、刺すような鋭い視線が寸分違わず僕を射抜く。大きく開かれた口から覗く牙は一本一本が宝石の如く七色に煌めいている。
ライオンの強烈な咆哮にあてられた僕は、思い切り仰け反りイスごと後ろに転げ落ちてしまった。
「あははははっ!驚きすぎだよー。まだ顔しか出てないのに」
「わ、分かった!アルが神様だってのは十分理解しましたから!もうしまって下さい!」
「えーそう?まだまだこれからなんだけどなー。まぁしょうがないか。それじゃ帰っていいよレオ君」
「ガウッ!」
降参とばかりに膝立ちで両手を高く上げそう叫ぶ。するとアルは若干不満げにしながらも、ライオンを帰らせるのだった。
ライオンが去り命の危険が無くなったことに安堵した僕は、大きく溜息を吐くとイスを立て座り直す。
「さて、これで僕が神様だってことは信じてくれたね?」
「はい、信じました……」
仕切り直すように、改めてアルはそう尋ねてくる。つい1分前までは全く信じていなかったけれど、何も無い所からライオンを呼び出せるのだから信じる他無いだろう。
幻でも作り物でもなく、正しく本物の息づいた命を感じた。死という恐怖心と合わせてなのは不服だけど。
「でも最初信じれなかったのはアルのせいでもあると思いますよ。あ、アル様の方がいいですよね?」
「呼び方はどっちでもいいよー。でも何で僕のせいなのさ?」
「だって、そんな格好をしている人が神様と名乗ったって、誰が信じるんですか……」
そう言いながら僕はアルの全身に視線を移す。彼の格好はセミロングの黒髪とTシャツにハーフパンツであり、顔立ちからしてもどこからどう見ても、ラフな格好の日本人にしか見えないのだ。
相手に神様だと信じてほしいのなら、それに相応しい格好というものがあると僕は思う。短パン小僧スタイルなど断じて違う。
「いやー、僕って堅苦しい礼式は嫌いなんだよねー。他の神からもよく言われるけど、自分のしたい格好でいいと思うんだよなー」
「そうですか……」
僕と会うのは礼式じゃなくて良いってことか?初対面の人に神様と信じてもらいたいなら、礼式以外有り得ないだろうに。他の神様の方がまともそうだ。
「ま、その話はもういいか。それで他に聞きたいことは?」
「あっとそうでした。じゃあ次に、ここはどこなんでしょうか?」
「そうだねー、ちょっと説明が難しいなー。ここは神界と現界の狭間に位置する空間だね。言ってしまえば人間が神様に会うための、謁見の間?みたいな感じ」
「謁見の間、ですか……」
この謎のワンルームはなんと、神様と会うための部屋だそうだ。その割には随分と簡素すぎて、これでいいのかと疑問が湧く。
神界というのは神様の暮らす世界で、現界が僕のいた地球のことなのかな。
「なら、こんな所に居るということは、僕はあの時死んだということで間違いないですか?」
「うん、間違いないよ。随分と病に苦しんでいたみたいだね。大手術だったけど助かる確率は1%も無かったんじゃないかな」
「そうですか。まぁ、覚悟は出来てましたけど……」
僕は生まれつき厄介な持病を持っており、一生涯を病院で過ごしていた。死んだのは確か誕生日の3ヶ月前だったかな。となると僕は14歳と9ヶ月で死んだことになる。
昔から医者に治る可能性は低いとはっきり言われていたし、覚悟は当然出来ていた。だから死んだと言われてもすんなりと受けいれられる。
「ふむ、未練はあるって顔だね」
「それはそうですよ。今もまだ、お母さんの最後の叫び声が耳に木霊してます……」
覚悟はしていたとしても後悔が無いわけじゃない。こんな身体でも放り出さず最後まで育ててくれた家族には感謝で溢れている。その恩を返せなかったというのが、最大の心残りだ。
「まぁ家族のことは気掛かりだろうけど、そこは神だからって贔屓出来ないから諦めてね」
「……分かりました。少し期待してたんですけど、当然のことですよね。受け入れます」
こうして神様と出会えたのだが、それでもお母さん達には何も返すことは出来ないらしい。もう会えないのだという実感が少しずつ湧いてきて寂しさで目が霞む。
「へー、なかなかに素直なんだね。感心感心」
「茶化さないでください。それよりも、この後は何があるんです?天国か地獄、どちらかに振り分けられるんですか?それとも元の世界に生まれ変わりですか?」
「良い質問だねー。そしてそれこそが今回の本題でもあるんだよ!」
アルは待ってましたとばかりにテンションが上がり、前屈みになり満面の笑みを見せる。どうやらこれからについてを話したくて仕方なかったらしい。
「実はねー、君には僕の管理する世界に転生してもらいたいんだ!」
「はぁ。転生、ですか……」
「むむ、ピンと来てないみたいだねー。剣と魔法、己の力が物を言う群雄割拠な弱肉強食のファンタジーワールドだよ!どう?興味出てきたでしょ?」
「剣と魔法……、はよく分かりません。何しろ病院で一生を終えた身ですので。でも、健全な身体には少し興味があります。全力で駆け回るとかしてみたかったので」
アルの言うファンタジー世界と言うのは正直よく分からない。でも、転生ということなら是非健全な身体に生まれ変わりたいものだ。病弱だったせいで、これまで運動とは無縁の人生だったから。
「おーおー!なんだよ結構乗り気じゃーん!」
「……まぁいいか。でも何で僕を転生させたいんですか?」
テンションの上がり具合に若干イラッとするが、他のことが気になるので無視しよう。
地球には何十億人という人間が暮らしている。1日でどれくらいの人が死んでいるのかはよく知らないけど、その中からわざわざ僕を選んだ理由が気掛かりだ。
「あー、そこ気になる?これまた説明するのがちょっと難しいんだけど、まず大前提として僕の世界に転生出来る人ってのは、極々僅かな数しかいないんだよー。で、その中でも転生して問題ない人とダメな人いるわけ。そこから最終的に選ばれたのが君ってことさー!」
「色々と条件があるんですね。じゃあ僕が選ばれたのはほとんど運ってことですか」
なんとなく予想はしていたけど、やっぱり選ばれたのは運がほとんどみたいだ。
神様側の裏事情はよく分からないけど、死んでから幸運に恵まれたってことになるのかな。まだアルの世界が良い所って決まったわけじゃないけど。
「まぁ運も大事だねー。でも僕は君の人間性にも惹かれたところはちゃんとあったよー」
「え、それってどこですか?」
「さっき君自身が言ってた通り、生まれてから死ぬまでのずっと病院で過ごしていた人生ってことかな。こういう特殊な環境で育った人間っていうのは、その楔から解き放たれた時に偉業を残しやすいんだよねー。これ、僕の経験上ねっ」
「はぁ……」
最後のセリフと共にウインクをかましてきてウザい。ずっと思ってたけど、この神様色々と言動が軽いんだよな。イマイチ信用出来ない。
それはそうと、抑圧された生活をしていたからそこから開放された人間は、何か大きなことをしがちってことかな。確かに好きなだけ走りたいとは言ったけど、それだけで何かを達成出来るのだろうか。