【イナイレ二次創作】超次元転生~必殺シュートで成り上がリーヨ!~ 作:雨内 真尋
テレーザとの模擬戦で言い訳の仕様もなく惨敗してしまった。だが自分の中での反省会はもう終わりだ。
「もう一戦お願いします」
「敗因が分かったということか?」
「いえ、でも仮説は立てたので後は実践あるのみということです」
「いいだろう。ならまたこの硬貨が地面に落ちたらスタートだ」
「はい!」
これが負けた要因だという確証はないが、一つだけ自分でも失敗したと思うことはある。それは技の選択ミスだ。
必殺技は出来ることが多いのだから、それ故常に最適な選択肢を選ばなければならない。さっきの模擬戦だと視界を狭めたり無理にシュート技を撃とうとしたりと、戦い方が稚拙だった。
「……だったら今度は、相手に合わせて最適の技を返すまでだ。疾風ダッシュ!」
再びコインが落ちると同時にテレーザは森の中へ姿を晦ます。だがそう何度も同じ手を食らうものかと、僕もドリブル技で追従した。
「むっ、私の速度についてくるか」
「奇襲に対応しきれないなら見失わなければいいだけの話です。僕だってそれなりに走れるってところを見せてあげますよ!」
索敵能力の低い僕はどうしても奇襲に対して後れを取ってしまう。ならば答えは簡単、奇襲されないために見失わなければいいだけの話である。
テレーザに対する最適解は、ドリブル技ということだ。
「面白い発想だ。ならばその易い考えごと振り切ってやる!」
「くっ、速さだけじゃなくて機動性も高いな……!でも絶対逃さない!」
森の木々を足場にして忍者の如く縦横無尽に駆け巡るテレーザ。対する僕は木登りは得意でないので、ひたすらに地を蹴り見失わないよう追い駆ける。
模擬戦2戦目はうって変わり、激しい追従線の幕開けであった。
「しつこい、思ったよりも粘るな……」
「まだまだぁ!」
「だがお前の足元にあるもの、そのボールがないと高速移動も出来ないんじゃないか?」
「うわっとと!あれ、まさかボールの重要性に気づかれた?」
様々な手を使い振り切ろうとするテレーザに必死に食らいつく。そんな状況でも僕は常にドリブルを続けていた。
正確に言えば、ボールがなくても技は使える。だがあるのと無いのとでは技の完成度も威力も格段に違ってくるのだ。
テレーザの速さについていくためには最大限の力を発揮しなければならない。だからドリブルし続けることは必須である。
「強さの源はそのボールか。ならば奪えばそれで終いだ!」
「今度はボール狙いか。へへっ、奪えるものなら奪ってみなよ!」
逃亡から一転しボール狙いとなったテレーザ。その切替に対し込み上げてくる笑みを隠しきれない。
だって、ボールを取った盗られたの攻防戦なんて、サッカーそのものなのだから。これで興奮しない奴はサッカープレイヤーじゃないね。
「ふぬっ、くそっ!何で奪えないんだ、こいつ足しか使ってないのに……!」
「ああ、楽しいなぁ……」
「こいつ……!そのふざけた顔を止めろ!」
木々を足場に全方位から襲いかかってくるテレーザだが、こちとら転生してからひたすらサッカーと向き合ってきた人間だ。その辺の子どもとはボールのキープ力が違うんだよ。
しかし突然のサッカーバトルにテンションが上がりすぎてしまった。ニヤけが止まらずテレーザがキレている。
「もういい、本気でやるから死んでも後悔するなよ」
「え?何その台詞、めちゃ怖いんですが!?」
「暗殺術、影泳擬殺!」
「消えた……!?これは、影の中を移動してるのか!」
僕の態度が相当不快だったのか、静かながらに凄まじい怒りの気配を漂わせたテレーザは、暗殺術という明らかに殺しに来てそうな技を使ってくる。
影から影へと移動し、生じた死角から攻撃するという空間系の魔法のようだ。突然足元から手だけが伸びて、危うくボールを盗られそうになった。
「まだだ、暗殺術、分身投射!」
「うぉわ!四方八方の影から刃物の投擲とか、流石にやりすぎじゃないですか!?」
「殺す気で狩る。お前も気合で生きてみろ!」
「んな無茶な!」
テレーザは追撃の手を緩めることなく、今度は影より無数の刃物で強襲してくる。
今のところどうにか回避しきれているが、それでも掠った手足からは薄っすらと血が流れていた。あの女なに模擬戦に本物のナイフ用意してきてんだよ!
「これはいくらなんでもやり過ぎだろうが……!ああくそつ、絶対に負けるものか!」
「シュッ!」
「また背後、そう何度もやられはしませんよ、アクロバットキープ!」
刃物の投擲は囮で本命は再び背後からの奇襲だった。どうせテレーザのことだから、同じ状況を作り僕の対応力でも試しているんだろう。
ならば彼女の期待に応えようと、ドリブル技を繰り出す。豪快なパフォーマンスとそれを支える柔軟性によって、ギリギリで届かない絶妙なボール捌きを見せる技だ。
「まだ隠し技を持ってたのか。だがそう何度も出し抜かれはしない……!」
「どわあああぁぁ!?」
アクロバットキープによって華麗な回避を披露したが、あまりにも距離が近すぎたためか腰を捕まれそのままボールごと上空に投げ飛ばされた。
こんなの反則だと思わず叫びそうになったが、よくよく考えてみれば今やっているのはサッカーではなく模擬戦なのだ。何を言っても無駄だろう。
「このまま仕留めて終わりだ!」
「目が本気過ぎますってテレーザさん!」
上空へ無防備を晒す僕に対し、テレーザは木を伝って追従してくる。彼女の両手には鈍く輝く二つの刃物が握られており、どう考えても確実に殺しに来ていた。
あの人こそこれが模擬戦だってことを忘れているんじゃなかろうか。
「流石にこんな所で死ぬわけにはいかない。この状況で撃てる早技は……これだ!疑似、イナズマお落とし!」
「なっ、あの体勢から攻撃に転じただと!?」
上空に投げ飛ばされ体勢は頭が下の状態。オーバーヘッドシュートが放てそうな状況だったので、擬似的にだがイナズマお落としを再現した。
本来であれば二人の選手が宙へ跳び、空中で片方を土台にして更に跳ね上がるという連携必殺シュートである。
オーバーヘッドで落雷のように強烈なシュートを放つ、イナズマお落としが追従していたテレーザを捉えた。彼女は驚愕の表情を見せながらも、浴びせられる雷の一撃により地面に叩きつけられることとなる。
「がはっ、よもやこの私が、反撃を受ける側になろうとは。カーミルの手数の多さを甘く見たか……」
「今度は僕の勝ちでいいですね?」
「……ああ、参った。私の負けだよ」
「よっし!今度は勝てたぞー!」
地に伏すテレーザの真横に着地した僕は、彼女の敗北宣言を確認して大いに喜ぶ。先程の敗北のリベンジが出来た上に、ボールの奪い合いまで出来たのだから大満足だ。
「はしゃぎすぎだ、バカが……」
「とっても楽しかったですテレーザさん!ありがとうございます!」
「ったく、仕方のないやつだな」
痺れが治まったのか起き上がったテレーザさんは、優しげな柔らかい表情をしていた。最初は恐怖しか感じなかった真紅の瞳も、今は暖かさに溢れている気がする。
今の彼女の顔を見て、暗殺が専門の傭兵だと思うものは少ないだろう。実際殺されかけた僕は体の芯では若干怯えが残っているが。
「楽しかったのはいいですけど、本気で殺そうとしてきたのは許しませんからね」
「そ、それはすまない、つい熱くなりすぎてしまった。しかし私の攻撃を凌ぎあまつさえ勝利するとは、いったいカーミルはいくつ技を持っているのだ?」
「そーですね、真面目に数えたことは無いですけど、多分100は超えてると思いますよ」
「100!?な、なるほど、その歳に似合わない桁違いな強さの片鱗が垣間見えた気がした……」
テレーザは技の数を聞いて心底驚いている様子だ。確かに冷静に考えてみれば、100を超える技を扱える僕は異常なのかもしれない。でもそれらは全て努力によって習得した賜物なのだから、ずるいことなど一つもしていないが。