【イナイレ二次創作】超次元転生~必殺シュートで成り上がリーヨ!~   作:雨内 真尋

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2. 世界の狭間 下

「で、肝心の転生させる目的なんだけど、それはね……」

 

「それは……?」

 

「ざんねーん、まだ秘密でーっす!」

 

「何ですかそれ!?」

 

 

 わざわざ溜めてきたから身構えたのに、予想外の返しに力が抜けた。思わずイスから転げ落ちそうになったじゃないか。

 

 

「ある程度余裕が出てきたなーと思ったらお告げに行くから、楽しみにしててねー!」

 

「凄く嫌ですけど分かりました。……って、ちょっと待ってください!もしかして僕が転生するのって、強制なんですか?」

 

「うーん、別に強制ではないけど、メリットの方が多いいよ?今持ってる記憶や知識は忘れないで持って行けるしー、あとは神様からの特別なプレゼントもあるよー!」

 

 

 先程から僕がアルの世界に転生することが前提みたいに話していたけれど、どうやら強制ではないらしい。それならこの妙に軽い神様に変な使命を課される厄介な転生は、断るのも手段としてはアリなのかも。

 

 

「あーただ、僕の世界に転生しないなら君のいた世界の法に任せることになるねー。だからそっちでどういう扱いになるかは分かんないよ?」

 

「え?それってどういう……」

 

「それこそ君自身が言っていた通り、天国か地獄に割り振られる可能性もあるんだ。今世のことは綺麗さっぱり忘れて、清浄した状態で転生なんてことも有りうるねー」

 

「そ、そうなんですか……」

 

 

 地球に帰る場合はアルの管轄外になるってことか。神様のルールはよく分からないけど、確かに言ってることはもっともな気がする。

 

 そうなると、最悪の場合今の記憶は全部失ってしまう可能性もあるということか。それは嫌だ。

 

 あんな人生だったけど、僕は不幸だったとは思っていない。家族との大切な思い出は、叶うならずっと胸に秘めていたいに決まってる。

 

 

「ほとんど選ぶ自由は無いみたいなものですね」

 

「全然そんなことは無いでしょー。悩めるだけ君は恵まれているさ」

 

「そ、それは確かに。失礼なことを言いました、すみません……」

 

「いいっていいって、気にしてないよー」

 

 

 アルの言う通り、普通は考える余地など存在しないのだ。死後の道を選択出来るというのは、それだけで特別なことということか。その辺り考えが及ばなかった。

 

 アルは全く気にしていないようで気安く許してくれた。その優しさに感謝し、そして僕はとうとう自分の進む道を決めた。

 

 

「決めましたアル、僕は……アルの世界に行きます」

 

「あはっ、そう言うと思ったよー!じゃあ早速転生記念プレゼントの話をしようか!」

 

「プレゼントですか。どういうものがあるんですか?」

 

「そりゃあもう色々だよー。なんたって神からの贈りものだからね。ほらほら、君からは何か希望ない?例えば偉い人になりたいとか、世界一になれるほどの力が欲しいとか」

 

 

 プレゼントのことを尋ねられ、僕の中ではとある1つの作品が浮かぶ。それは僕の長い入院生活の中、僅かに与えられた自由時間で熱中していたもの、『イナズマイレブン』だ。

 

 ド派手な必殺技と子ども向けながらも奥深く熱中出来るストーリーに惹かれ、どっぷりとやり込んでいたあの頃が脳裏に蘇る。

 

 『イナズマイレブン』に憧れ、元気になったらサッカーをするのが何よりの夢だった。だからそれが、僕のやりたいことだ。

 

 

「アル、僕は……サッカーがしたいです!」

 

「なるほどサッカーか。僕の世界は少々殺伐とした世界だから、そういうスポーツの類はあまり無いんだよねー。確かに目新しくて面白いかも。じゃあ君には僕の世界で、サッカーの伝道師兼最強プレイヤーとなる能力を授けようかなー」

 

「本当ですか!?やった、これで僕も必殺シュートを打てるんだ!」

 

「ん?必殺、シュート……?」

 

 

 アルは快く僕の願いを聞き入れてくれた。これで僕の念願が叶うのかぁ。ああー、今から新しい世界が楽しみで仕方ない。

 

 ごめんなさいお母さん。死んだばかりだというのに、もう次の世界のことで頭がいっぱいになっている僕を許してください。

 

 

「ありがとうございますアル!さぁ、僕をアルの世界へ転生させてください!」

 

「ちょ、ちょちょちょ、ちょーっと待ってくれないかな。必殺シュートというのはなんだい?ボレーシュートとかそういう、かっこいいい蹴り方の話かな……?」

 

「何を言ってるんですか、ボレーはただのノーマルシュートじゃないですか。必殺シュートはその名の通り必殺シュートのことです。ほら、ファイアトルネードとか」

 

「え、なに?ファイア、トルネード……?」

 

 

 ボレーシュートを必殺シュートと勘違いするだなんて、アルはイナズマイレブンを知らないのかな。でもサッカーは知っているみたいだし、サッカーを知っててイナズマイレブンを知らないだなんて変な話だ。

 

 

「えーと、もしかしたら君と僕の知っているサッカーの情報に齟齬があるのかもしれないねー。念のため詳しく教えてもらってもいいかな」

 

「サッカーというのは、イナズマイレブンの題材にもなったスポーツのことですよ。シュート、ドリブル、ブロック、キャッチと大きく4種類に分けた必殺技があって、相手のゴールにボールを入れて点を取り合うスポーツです」

 

「イナズマイレブン?4種類の必殺技?えっと、それって何かゲームの話でもしているのかな?」

 

「イナズマイレブンはゲームですけど、サッカーとはそういうものじゃないですか。二次元の作品も現実も差異はないですよ」

 

 

 サッカーのこと、イナズマイレブンのことを簡潔に説明してみたのだが、アルはいまいち理解していない様子である。

 

そういえばサッカーの話をする相手なんて今までいなかったから、改めて説明するのは難しいな。僕の要領が悪いせいで困らせてしまっているみたいだ。

 

 

「もしかして彼は、いやでもそんなまさかね……。よし、じゃあもう一つ確認なんだけど、君は現実の人がサッカーをプレイしているところを見たことある?」

 

「……言われてみれば、現実のサッカーは見たことないです。ゲームかアニメに夢中になってたので」

 

「なるほどねー、そういうことかー。オーケーオーケー、どうしてこんなにも話が食い違っているのか、その原因はよく理解したよ」

 

 

 どうやらアルは何かを理解したらしく、額に手を当てながら天井を見上げていた。心なしか呆れ交じりの念が感じられる。たぶんだけど、馬鹿にされている気がして若干腹立たしい。

 

 

「あの、何が分かったんですか?」

 

「いやーごめんごめん。やっぱり僕の知ってるサッカーと君の知っているサッカーは違うってことがねー」

 

「え、サッカーって何種類もあるんですか?」

 

「うーん、別にそういうわけじゃないんだけど、まぁ君は知らない方が面白くなりそうだから気にしなくていいよー」

 

「はぁ……」

 

 

 結局アルが一人何に納得していたのかは不明なままである。この様子だと答えは教えてくれそうにないみたいだ。一体何なのか非常に気になるが、神様の考えることなど僕には理解出来ないということで納得しておこう。

 

 

「さて、それじゃあ君の中のサッカーを、そのイナズマイレブンっていうのを詳しく教えてもらおうかなー。そうすることで、プレゼントにどう反映させるか考えるからさ」

 

「……なんか釈然としませんが分かりました。もっと詳しく話せばいいんですか?」

 

「いや、君の頭の中から直接読み取った方が早そうだから、君は何もしなくていいよー。そのまま大人しくしててねっ」

 

「はい」

 

 

 そう言うやいなや、アルは僕に向けて両手を伸ばし読み取りというのを始めた。手のひらから淡い光が伸び、僕の頭を覆ってくる。感触とかは特にないけど、覗き見されているようで気分はあまり良くない。

 

 

「はーい、読み取りかんりょーっと」

 

「どうですか?僕はサッカーやれそうです?」

 

「うん!これなら何とかなりそうだよー」

 

「おおっ、さすが神様です!」

 

 

 アルは随分と余裕気に指で問題ないとサインをし、同時にウインクをくれた。挙動がちょいちょい軽いのはやっぱり気になるけど、それだけ余裕の表れなのだろう。今は少し頼もしく見える。

 

 

「まぁさっきも言った通り僕の世界には魔法っていう特殊な力があるからね。そこに上手く織り交ぜれば再現は容易いよー」

 

「凄いですアル!」

 

「へへーん、僕に掛かればこんなの朝飯前さー!っと、それで肝心の必殺技を使う方法なんだけど、今回は『ボール生成』という固有魔法を君に付与したよ」

 

「『ボール生成』ですか?」

 

「そうそう、サッカーをするには絶対にボールは必要になるからね。それをいつでもお手軽に召喚出来る魔法ってわけさ」

 

 

 アルの世界でサッカーは可能という言葉を受け、僕は歓喜に震えた。

 

生まれてからこの方病院暮らしで運動とは無縁の生活を送って来たが、ようやく長年の夢が叶うのだ。こんなに嬉しいことはない。

 

今からボールを追いかけ自由に走り回る姿が思い浮かぶ。早く実現したくて仕方がない。

 

 

「早く!早くアルの世界に連れて行ってください!」

 

「まぁまぁ落ち着きなよ、まだ魔法の詳細を説明していないんだからさ。と言ってもそんなに難しいことはないけどねー。一言で言えば、必殺技獲得は特訓あるのみ!ってだけだから」

 

「それはつまり、自分を鍛えなきゃ、使えるのはボール生成のみってことですか?」

 

「そーいうことー。君の使いたい必殺技をイメージして、実現に向けてひたすら特訓する。そうすれば新たな魔法として再現出来るようにしたんだ。どう?君の言うイナズマイレブンに寄せてみたんだけど、かなり良くない?」

 

「何ですかそれ、最っ高じゃないですか!」

 

 

 特訓に特訓を重ね、極限まで追い込んだ果てに必殺技を手にすることが出来る。そんなのまさにイナズマイレブンそのものじゃないか。

 

こんな素晴らしい魔法を授けてくれるなんて、アルは本物の神様だ。今僕は間違いなくそう確信した。

 

 

「いやーそこまで喜んでもらえると、魔法を構築した甲斐があったよー」

 

「ありがとうございます!僕、アルの世界でめいいっぱい頑張ります!さぁ、早く転生してください!」

 

「予想以上に気が早くて驚きだよ!」

 

 

 嬉しさのあまりアルの手を握り何度も上下に上げ下げを繰り返してしまった。アルも常に笑顔なのは変わらないが、その顔色も若干引き気味な気がするのはただの勘違いだろうか。

 

 

「あはは、まぁやる気があるのはいいことか……。それじゃあお望み通り、そろそろ出発してもらおうかなー」

 

「はい!サッカーをするチャンスを作ってくれてありがとうございます!」

 

「全然気にしないでいいよー。後は頃合いを見てお願い事もしに行くからよろしくねー。ではいってらっしゃーい――」

 

 

 見送りの言葉を最後に僕の意識は薄れていく。最後は笑顔で手を振っていたような気がするが、アルがどんな格好をしていたのかもう思い出せない。神様という特別な存在を覚えておくことは出来ないということなのだろうか。

 

 どんな会話をしていたのかすらも既に朧気となりつつある中、ただ一つはっきりとしていることがある。それは、これからは病に振り回されることなく、思いのままサッカーに夢中になれるということなのだ。

 

 そんな新たな人生の幕開けに心を躍らせながら、僕の意識は途絶えていく。

 

 

 

 

 

 

――

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、無事に送り出すことが出来たかー。それにしても今回の子は近年まれに見る個性の持ち主だったねー。まさか現実のサッカーも、あのイナズマイレブンという作品と同じレベルのものが繰り広げられていると思い込んでいたなんて。あはは、今思い返しても驚きでつい笑っちゃうよ」

 

 

 転生者を送り出した後、一人残っているアルは、先程までの光景を思い出し笑みが零れる。

 

これまで何億という数の人間を見てきた彼にとって、新鮮な個性を持つ人物と出会う機会は極端に減りつつある。だからこそ今回の出会いは、久しぶりの新しい刺激だったのだ。

 

 

「思い込みの力ってのは案外馬鹿に出来ないものだからねー。彼に現実のサッカーを教えなかった結果がどう表れるのか、また新しい楽しみが出来ちゃったよ。お願い事はちゃんとしてもらうつもりだけど、それはそれとして期待させてもらうからねー、能見 秀全(ノウミ シュウゼン)くんっ」

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