【イナイレ二次創作】超次元転生~必殺シュートで成り上がリーヨ!~ 作:雨内 真尋
ここは、どこだろう……。僕は今、何を……。あ、そうか、確か神様に出会って、そこから新しい世界に転生させてもらったんだ。となると、ここは転生先の世界なのか?
「あら、目が覚めたみたいですね。こんにちはー」
「!?」
寝転がっている僕を覗き込むように、知らない女性が現れた。年齢は20代後半といった見た目だが、彼女は何者だろうか。
「ふふっ、元気そうですね。よかったです」
見知らぬ女性は柔らかな笑みを向けると、そっと包み込むように優しく頭を撫でてくる。もうすぐ15歳になろうというのにこの対応はいささか恥ずかしさがあるが、撫でられていると落ち着いてくるから不思議だ。
「それじゃあ目も覚めたことですし、ご飯にしましょうか」
「えっ、あぅ!?」
気恥ずかしい癒しに身を委ねていると、突如彼女が僕を軽々と抱き上げてしまった。まだ子どもとはいえ14歳の体を軽々と持ち上げるだなんて、なんという筋力の持ち主なんだ。
と、困惑しかけたところで思い出した。今のこの体は赤ちゃんになっているのだから、抱き上げるなんて簡単だということに。そう言えば僕は転生したんだったか。
「あー」
「はいはーい、たくさん食べれて偉いですねー」
「あうー」
言葉を出そうとするのだが、まだまともに喋ることが出来ないのがもどかしい。
早く成長してサッカーをしたいのだから、食べて食べまくって力をつけておこう。今出来ることから一つずつ、コツコツ積み重ねることが肝心だ。
「はいごちそうさまです。皆の所へ遊びに行っていいですよー」
「あーう」
食事を終えると、子ども部屋のような所へ連れて行かれる。キャッキャッと小さい子ども達の笑い声が響いていた。
こんなに子どもが多いということは、ここは保育所とかそういう施設なのだろうか。年齢は若干ばらつきがあるが、僕と同い年っぽい子も何人かいる。
「あーお」
「あうあうあー」
「あーあうう!」
どういう環境かはよく分からないが、何事も最初は挨拶からということで、近くにいる子に声を掛けた。お互い何を言っているのは全く分からないのだが、何故か会話が成立している気がする!赤ん坊の世界、恐るべし。
ともあれこんな赤ちゃんの姿じゃ、やれることは少なそうだ。まずはこの世界のことを知ることから、ゆっくり始めていくとしよう。
――
新たな世界に転生してから、4年の月日が流れた。これだけの年月が経つと、世界情勢までとはいかずとも、自分の置かれている環境くらいは十分理解出来る状況になっている。
まず僕が暮らしているこの場所は、少し大きめな町の一角に佇む孤児院のようだ。そして最初に出会ったあの女性は、この孤児院を管理している院長らしい。名前はサテラ・オーロレー、近所の教会でシスターもしている治癒魔法使いだ。この孤児院は彼女の治療院も兼ねており、町からの寄付と治療費で回っている。
「カーミルー!一緒に遊ぼ―!」
「うん、いいよー」
カーミル、それがこの世界での僕の名だ。どうやら僕は自我が覚醒したあの日の朝方、孤児院に運ばれてきたらしい。両親のことは詳しく教えてもらえていないが、もうこの世にいないということだけは暗に伝わった。
「ボール生成。ほいっ」
「わっ!とと。もうー、強く蹴り過ぎだよ!」
「あはは、ごめんごめん。それよりほら、パス頂戴よ」
「うん、それっ!」
今僕と遊んでいるこの女の子は、マリーナ。確か年齢は僕よりも2つ上で、彼女はサテラ先生から僕の遊び相手などを頼まれていたこともあり、一番仲良くなった。少し茶の入った金髪をセミロングに切り揃えた、お姉さん気質な性格の子である。
この院では年上の子が年下の子の面倒を見るというルールがあるのだ。
ちなみに僕は固有魔法である『ボール生成』を問題なく使用出来るようになっている。最初は皆に驚かれたが、今ではこうして遊び道具生産者としての地位を確立しているのだ。若干都合のいい奴扱いをされている気がするが、まぁそれは置いておこう。
「お、もうボール出してたのかカーミル。よっしゃ!皆で一緒に遊ぼうぜー!」
「あーごめん、僕はちょっとやることがあるからやめとくよ。ボールは好きに使っていいから」
「そうか?じゃ、もらってくからな」
彼の名前はレオン。この孤児院のガキ大将みたいなポジションで、暗い赤毛が特徴の元気いっぱいな男の子だ。悪い奴ではないのだが若干荒っぽい。年齢はマリーナと同じく僕の2個上で6歳だ。
ボールさえ渡せば基本的に僕の役割は終了と言える。そうなると一人で行動していても特に何か言われることはない。
別に苛められているでも嫌われているでもないが、僕にはやらなければいけないことがあるのだ。
「ねぇ、カーミルも一緒に遊ぼうよ」
「僕は一人で大丈夫だから、マリーナは皆と行ってきなよ」
「でも……」
「気にしなくていいって。それじゃまた後でね」
マリーナはこうしてよく僕が一人になりそうになると気にかけてくれる。姉に近い立場でもある為かとても面倒見がいい。その優しさは嬉しいけれど、それよりも僕には大切なことがある。それは必殺技の習得だ。そのための特訓をこなさなければならないのだから、今は遊びは必要ない。
「よし、今日も頑張るぞー!」
孤児院の裏にあるちょっとした林、ここが僕の特訓場だ。
この林で一番大きく太い木の幹に、丸太を縄で括り吊るしてある。これはよく治療院にやって来る冒険者?という職業のお兄さんに頼んで作ってもらったものだ。流石に僕一人の力じゃ絶対出来ないので。
「よし、今日も一日頑張ろー!まずはキーパーの練習からだ、ふん!」
ぶら下がった丸太を両手で突き飛ばす。すると振り子の要領で勢いそのまま帰って来るので、それを両手を使い受け止める。
始めた当初は容易く吹き飛ばされて何度も地面を転がっていたけど、ここ最近は受け止めるコツが掴めてきたのか、足腰の踏ん張りを意識することで耐えることが可能だ。
「この勢いはもう余裕そうかな。そしたらもう少し強く押してみようか」
今度は先程よりも力を加えて、帰って来た丸太を再び受け止める。というのを何度も繰り返し、自分の限界を日々更新していくのがキーパー特訓の日課だ。
そして最終的に耐えきれない程の勢いを浴びて吹っ飛ばされるまでが1セットとなっている。
「ふう、欲を言えば大型車のタイヤが良かったんだけどね。流石にそんなものはないから、今は丸太が僕の相棒だ」
今日も今日とて地面に転がされた僕は、少し休憩とばかりに空を見上げ一息つく。
まだこの町しかこの世界のことを知らないが、車は一度も見たことがない。移動方法はというと、よく分からない生物が馬車のようなものを引いているくらいだ。だから当然タイヤも存在しないため、丸太で代用したのである。
この日中の特訓とは別に、毎朝町中を走り込みしているのだが、本当はその時もタイヤを引きずって走りたかった。でもそれは叶わなかったため、一旦今は何も身に付けず走っている。
「でも、やっぱり自由に動き回れるって、本当に楽しい……!走る時の景色が流れ去って行くあの感覚も、息が切れると苦しくなる感覚も、そして何より、ボールを思い切り蹴った時のあの高揚感、何もかもが新鮮だ!この世界に来れて、転生出来て僕は今最高に幸せだ……」
ただ走るだけ、ただボールをけるだけ。極論を言ってしまえばたったそれだけのことである。しかし、それだけのことが僕にとっては全て大切な宝物だ。病院のベッドに寝ているだけだったあの日々では決して味わうことの出来ない幸せがここにはある。
「よーし、まだまだ特訓頑張るぞー!」
そろそろ休憩は終わりだ。その後もシュートにブロック、ドリブル技の練習を積み重ね、充実した日々は過ぎてゆく。