【イナイレ二次創作】超次元転生~必殺シュートで成り上がリーヨ!~ 作:雨内 真尋
魔力操作による肉体強化を覚えてから、早くも1年の月日が経過した。
肉体強化による特訓の効率アップ率はすさまじく、おかげで遂に僕は必殺技を習得するまでに至ったのだ。しかもほぼ同時期に3つの技が完成したため僕は歓喜に溺れた。
「でもまだまだこんなものじゃ終わらないぞ。もっともっとたくさんの技を習得して、最高のサッカープレイヤーに僕はなるんだ!」
そう息を巻きつつ今日も朝一のランニングから開始した。
このランニングも最初はただ町内を走っているだけだったが、最近は縄に丸太を括りつけて引きながら走っている。これも本当は大型車のタイヤがいいのだが、例に漏れずそんなものは存在しない。
「おうカーミル!今日も精が出るな―!」
「おはようございまーす!」
毎日欠かさずランニングをしていたお陰か、朝の町中で僕のことを知らない者はいない。こんな変なランニングをしているものだから、妙に目立ってしまいいつの間にか顔と名前を憶えられてしまったのだ。
「栄養つけねーと強くなれねーぞ。これでも食ってけー!」
「わっとと、ありがとうございます!」
八百屋の前を通り過ぎる間際、品出しをしていた親父さんから差し入れの果物を頂いた。ここの親父さんはこうして時折食べ物を分けてくれるし、孤児院用の食材を格安で配達もしてくれている僕達の父親の様な存在だ。少し言動が荒っぽいところはあるが、そんなことはたいして気にならない。
「ふう、帰宅っと。この丸太の負荷ももう慣れてきたな。そろそろ少し重いものに変えるか」
今日も何事もなくランニングを終え、少し負荷を大きくしようかなど考えながら、外の井戸で顔を洗って汗を拭う。なんてことをしていると、孤児院からマリーナが出てきてこちらへと駆け寄って来るのが見えた。
「どうしたのマリーナ?」
「どうしたのじゃないわよ。今日は皆で町の外にピクニックに行くって決まってたのに、どこ行ってたわけ?カーミルだけ準備全然出来てないんだからね!」
「あ、ヤバ、忘れてた……」
マリーナに言われて今日は皆で町の外へ出かける日だったことを思い出した。外での昼食は事前にお弁当を作って持って行かなければならないのだが、僕はそれを完全に失念していたのだ。このままだと僕だけお昼ご飯抜きになってしまう。
「はぁ、そんなことだろうと思って私が余分に一つ作っておいたから、これでよかったら挙げるわよ」
「本当!?ありがとうマリーナ!たすかるよ」
「う、うん。別にこれくらい、気にしないでいいわ……」
今から急いで準備をしても間に合うかギリギリの時間だったのだが、なんとマリーナが僕の分もお弁当を作っておいてくれたそうだ。これには頭が上がらない。
思わず彼女の手を握りお礼を伝えるたのだが、何故か急に余所余所しくなった。
「でも朝食は用意してないから、それくらいは我慢しなさいよね」
「うん、それは全然平気だよ!」
朝食に関してはランニング中に八百屋の親父さんから貰った果物を食べたのでまったく問題ない。
「皆揃っていますかー?そろそろ出発しますよー!」
「あ、もう出るみたいね。私達も早く行きましょっ!」
「うん!」
孤児院の方からサテラ先生の声が聞こえてくる。もう出る時間らしいので僕達も皆と合流し、こうして僕達は楽しいピクニックへと出かけるのだった。
後にこのピクニックで起こる大事件において、この新しい人生で最大の失敗をすることなど露程も思わずに。
――
町から徒歩2時間ほど移動したところにある、見晴らしのいいなだらかな草原。ここが本日の目的地だ。まだ幼い子達には少しハードな散歩かと思ったが、見たことの無い景色の数々に子ども達は大興奮であった。疲れ知らずとはこのことだ。子どもの元気、恐るべし。
「ど、どう?あんまり上手く出来なかったんだけど……」
「凄く美味しいよこれ!ありがとうねマリーナ」
「うっ、そ、そう?なら良かったわ!ほ、ほら、折角だし私のも食べていいわよ!」
「いいの?やったね、ありがとー」
僕達は現在草原の一角に思い思いに座り昼食を取っている。マリーナの作ってくれた料理は普通に美味しく、おかずを取る手が止まらない。
「ミル、食べ過ぎ」
「えー、でもマリーナが食べていいって……」
「ダメ」
そんな僕の食事を遮るものがいる。まぁそれは案の定リタのことだ。今日も今日とてべったり引っ付いてくる彼女は、何故か僕の膝に陣取って食事を邪魔してくる。
「ちょっとリタ、食事中におふざけしちゃダメでしょ!」
「いいの。じゃないとリーナが何も食べれない。それとも食べさせたい理由が?」
「ぐっ、わ、私は別にいいのよ!えーっと……、そう!私今、ダイエット中だから!」
「……ふーん」
マリーナとリタは何やら言い争っているようだが、よく分からんな。
と、そんなやり取りを聞き流していると、ちらほらと食事を終えた子がいて遊び始めていた。よし、僕もそっちに混ざろう。
「皆―、サッカーやろーぜー!」
「やるやるー!早くボール出してくれよカーミル兄ちゃん!」
「おっけー!」
俺の声掛けに真っ先に反応したのはライナルトだ。
毎日広場で一緒にプレイしているが、あそこは少し人数が増えると途端に手狭に感じてしまう。その点今日はこのだだっ広い原っぱで自由気ままに走り回れるのだ。これでテンションが上がらないサッカー好きはいない。
「お、いいねー。俺達も混ぜろよカーミル」
「もちろん!あ、でも魔法は禁止だからね」
「わーってらー。チビ達相手に本気出してどーすんだよ」
「あはは、いらない心配だったか」
ライナルト達と盛り上がっていると、そこへレオン達年長組も混ざって来た。彼は相変わらず適当な所があるから念のため釘を刺しておいたのだが、いらぬ心配だったようだ。
「はぁ、またサッカーしてる」
「全部リーナのせい」
「あんたが生意気なこと言ってくるからでしょ!」
「こっちのセリフ。リタとミルの間に入ってこないで」
「何ですって!?」
続いてマリーナとリタも、互いに視線で火花を散らしながら僕達の輪へとやって来た。というかまだ口喧嘩してるんだ。いい加減仲良くすればいいものを。
「二人もやるの?」
「当たり前よ。その生意気なマセガキに年長者への礼儀ってものを叩きこんでやるわ!」
「返り討ちにしてあげる」
「やれるもんならやってみなさい!」
「えーと、サッカーってそういうスポーツじゃ無いんだけどな。まぁいいか……」
その後なんだかんだでこの場にいた子ども達全員が混ざり、超大人数でのサッカー大会が開催されたのであった。サテラ先生に審判をお願いし試合は展開していき、その中でも最もサッカーにのめり込んでいる僕が率いるチームと、年長組を指揮するレオンチームが激戦を繰り広げていく。
こんな楽しい時間が永遠に続けばいいのに。ふとそんなことが脳裏によぎった時、まるでそんなことは叶わないと天からのお告げが下ったかの如く、悲劇は無情にも降り注いできた。
「か、怪鳥だー!お前達逃げろぉぉ!」
「ピギャアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッ!」
冒険者の危険を知らせる怒号に被さるように、空高くから巨大な鳥の魔物が飛来する。そしてその照準は、真っ直ぐ僕達の一団を狙っているものだった。