【イナイレ二次創作】超次元転生~必殺シュートで成り上がリーヨ!~   作:雨内 真尋

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6.逃亡の先にあるもの

 平和な日常に突然飛来した巨大な鳥の化物。あれは恐らく、この世界に存在する魔物と呼ばれる生き物だ。

 

 

「クソが!あの怪鳥完全にガキ共に狙いを定めてやがる……!サテラ先生、さっさとガキ共連れて逃げろ!お前らは矢で迎撃だ!」

 

「はい!皆こちらへ集まってください、非難しますよ!」

 

 

 僕らの暮らしている町の周辺は比較的安全な地域である。だからこそ今回はこうして遠出をして遊びに来たのだが、まさかこのタイミングで稀にある不運に苛まれるなんて。

 

 念のためサテラ先生が護衛の冒険者を雇っており、彼らは率先して迎撃に動き出す。

 

 

「ピギュウ……、ギャオオオオオォッ!」

 

「なっ、火炎弾だと!?」

 

「通常のイーガルじゃない、あれは上位種のレッドイーガルです……!」

 

「放った矢が全部飲み込まれて……はっ、まずい!火炎弾が真っ直ぐ先生の方へ向かってる!危ないぞ!」

 

 

 先生に引きつられて全速力で草原を駆けていた。だがそんな僕らの元へ正確に狙い澄まされた火の玉が迫ってくる。冒険者の放った矢など妨害にはならないとばかりに、火炎弾の威力は一切衰えることなく直撃した。

 

 

「あ、これ、死――」

 

「セイントウォール!」

 

 

 赤々と燃える火炎弾が目の前に来た時、僕は一瞬死を覚悟した。だがその炎はサテラ先生の唱えた魔法の防壁によって阻まれ、直撃はしていない。微かな炎の熱が頬を撫でるだけに留まった。

 

 

「う、うぅ、うわぁーーーーん!こわいよぉーーーー!」

 

「僕たちみんな、食べられちゃうよー!」

 

「そんなのやだ、助けてよせんせー!」

 

「み、みんな落ち着いて!大丈夫ですから、先生がいるから何も心配はいりませんよ……!」

 

 

 火炎弾にはやられなかった。しかしそれでも、目前まで迫った死の恐怖は子ども達の心に深く刻まれ、恐怖によりパニック状態に陥ってしまう。このまま集団で行動していては、逃げ切ることなど不可能だ。

 

 

「このクソ鳥め!俺達が相手だ馬鹿野郎!」

 

「こう飛ばれてちゃ近距離組はお手上げだなぁ」

 

「だったらお前らはガキ共の護衛にでも行ってろ!どういう訳か狙われてるのはあいつらなんだからよ!」

 

「分かったからそう怒鳴るなよ。迎撃は任せるぜ」

 

「そちらもお願いします!」

 

 

 上空から遠距離攻撃を放つ怪鳥に対し、近接攻撃が主体の冒険者は役に立たない。それを察してか冒険者はチームを二手に別けて迎撃と逃走補助にそれぞれ努め始める。

 

 そうか。チームの分担、それなら僕達もここから逃げることが出来るかもしれない。

 

 

「サテラ先生!先生と冒険者の方々をそれぞれ一人ずつ別けて、バラバラに逃げましょう。このままじゃ皆怯えて一歩も動けず、あの怪鳥の餌食になりますよ!」

 

「でも、それだと必ずどこかの班が狙われてしまいます……」

 

「それでも少数の方が先生も冒険者さん達も守りやすいはずです。何より一塊になっていたら、追いつかれたとき一気にやられてしまう!」

 

 

 僕の出した案は、何手かに別れて逃亡するという策だ。確かに狙われた班は危険が大きいが、少数ならば大人組も守るものが小さくやりやすいはずである。そして何より、別れた方が生存数は格段に上がるのだ。効率を求めるならそれが最善手だろう。

 

 

「……分かりました。私達はバラバラに逃走しましょう」

 

「おいおい、それでいいのか?」

 

「はい、冒険者の方々もそれでお願いします」

 

「それが依頼主の希望だってんなら仕方ないな。ならとっとと行動するぞ!」

 

「「「おう!」」」

 

 

 サテラ先生はほんの数秒の間であるが目を瞑り思案していた。そして最終的に出した結論は、バラバラでの逃走である。

 

 そう決まるやいなや、僕達は別れて逃走することとなった。そして逃走を再開したと同時に怪鳥も遂に動き出す。冒険者の放つ矢の雨を搔い潜り、力強い羽ばたきと共に一瞬で真上へと襲来してきた。

 

 

「ピギャアアアアァァァァァァ!」

 

 

 複数に別れて逃走したからか、怪鳥は一瞬考えるような仕草をしている。だがその硬直も一瞬のもので、奴は一つの班に狙いを定めると急降下し襲い始めた。遠距離からの火炎弾ではなく直接攻撃だ。

 

 

 僕の提案は、効率面で見れば最善の案であった。これならより多くの子達が助かるだろう。

 

 だが、人情として考えた時に本当に正しい選択が出来たかと問われると、自信をもってハイとは言えない。だってそれは、多くを助ける為に一部を最も危険な状況に追い込むという、非情な提案なのだから。

 

 

「こ、こっちに来たよ……!」

 

「大丈夫だ、ここにはサテラ先生もいるんだから安全に決まってるだろ!」

 

「皆伏せていてください!セイントウォール!」

 

 

 狙われたのは先生達だ。レオンも一緒に逃げていたらしく、怯える子達を鼓舞して元気づけようとしている。サテラ先生が一緒ということで、比較的幼い子が多くいるようだ。

 

 一直線に降下した怪鳥は、先生の展開する防壁によってまたも阻まれた。かなり危険な状況だが、防壁自体はびくともしていない様子で怪鳥の嘴や鋭い爪を阻んでいる。そして少し離れた所からは遠距離攻撃組の冒険者が駆けつけていた。これなら全員無事に追い返せるかもしれない。

 

 

「あっちが襲われたか……!」

 

「それなら僕達は今のうちにもっと遠くへ逃げましょう。このチャンスを無駄にしてはいけません!」

 

「ミル、いいの……?」

 

「いや、この小僧の判断が正しいな。俺の仲間ももうすぐ駆けつける。邪魔しないためにも俺達は安全圏まで逃げるべきだ」

 

 

 サテラ先生達の方を襲撃しているその隙にもっと遠くへ逃げようと催促する。僕と共に逃げていたリタは不安げな声を漏らすが、冒険者が同意することで再び走り始めることとなった。

 

 

「大丈夫だ、この判断は間違っていない。ここまで上手くいっているんだ。先生が守っているなら、あそこの班がやられることはない……」

 

 

 走る中で小さく独り言のようにそうこぼす。それはまるで、不安な自分に言い聞かせる様な言動であったが、このきっぱくした状況でそこに気付く余裕はなかった。

 

 

「ピギャアアアアァァァァァッ!」

 

「あと少し堪えろ先生!」

 

「魔法準備します!」

 

 

 冒険者はすぐ傍まで追いつく。

 

 

あと少しで倒せるとそう安堵しかける。しかしその瞬間、最悪の事件は起こった。

 

 

「も、もう嫌だ、食べられたくないよぉ――――!」

 

「だ、だめ!離れないで!」

 

 

 目の前に迫る恐怖にとうとう限界が来たのか、子どもの一人が叫び声を上げながら走り出す。サテラ先生の展開する防壁から離れた瞬間起こりうる悲劇が脳裏によぎり、血の気が引いて僕の顔は一瞬で青く染まった。

 

 

「ピギャァ……」

 

「は、そんなまさか……、やめてぇーーーー!」

 

「ちっ!」

 

 

 これ幸いとばかりに、逃げ出した子を狙って、怪鳥は再び火の玉を放とうと溜めに入る。分かっていても動けず妨害もままならない状況に、サテラ先生の悲痛な叫びが響き渡った。

 

 そんな最悪な事態の中で、一人脇目も振らず駆けだす者がいた。それはレオンだ。

 

 

「ギャオオォッ!」

 

「きゃあああぁぁ……!」

 

「させるかよっ!」

 

 

 サテラ先生の訴えも虚しく無慈悲な火炎弾が放たれた。そして逃げた子どもに命中する直前、間一髪間に割って入ったレオンは庇うようにして直撃を受ける。

 

 煙が立ち込めて何も見えない。どうなった?レオン達は無事なのか?

 

 

「ピギャアアアア!」

 

 

 怪鳥はサテラ先生への攻撃が無意味であることを悟ったのか、攻撃を止めてレオン達の方へと羽ばたき始める。

 

 

「……止めてよ。もう、何もしないで!」

 

「マリーナちゃん!?あなたまで何をしてるの!?」

 

「マ、マリーナ……!」

 

 

 最悪な状況の中で、事態はさらに悪化しようとしている。サテラ先生の班にはマリーナも同行していたらしく、いつの間にか彼女はレオン達を庇う様にして怪鳥と向き合っていたのだ。

 

 煙のせいでレオン達の安否は不明。その上マリーナまでも今この瞬間にも怪鳥に狙われている。このまま何もしなければ、確実に彼女は怪鳥に喰われることになるだろう。

 

 

 僕はこのまま指を咥えてこの惨劇を傍観しているだけか?

 

それでいいのか?

 

否、いいわけがない!マリーナを、大切な幼馴染を失ってたまるものか!

 

 

「これ以上お前の好きに、させるかァァァァァッ!」

 

「ピギャ?ガギャァァァッ!」

 

 

 全力の雄叫びと共に僕はボールを生成し、肉体強化も最大に籠めた全力の蹴りを叩きこむ。渾身のシュートは見事怪鳥の顔面に激突し、その威力によって奴は地面へ墜落した。

 

 

「僕の判断が間違ってた。戦う術を持ちながら、身を守ることだけを考えていた僕は臆病者だ。だから今度こそもう間違えない、僕がお前を倒して見せる。さぁ怪鳥……。サッカー、やろうぜ」

 

 

 自分の愚かさを悔いながら、怪鳥の元へ目掛け駆け出す。

 

 逃げるのはもう終わりだ。皆を守るため、僕はサッカーでこの怪鳥を倒す!

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