【イナイレ二次創作】超次元転生~必殺シュートで成り上がリーヨ!~ 作:雨内 真尋
目覚めると、僕は何故か孤児院にある医務室のベッドで横になっていた。外は明るいが、朝なのか昼なのかは不明だ。
「あ、ミル起きた」
「リタか。僕達、いつ孤児院に帰ってきたんだっけ?」
「もう何日も前、冒険者が運んだ」
「冒険者さんがか……、って、え?何日も前!?」
ベッドの横にイスを用意して座っていたらしいリタが話しかけてきた。何日も前とは一体どういうことなのだろうか。僕はそんなに眠っていたのか?
「ちょっと待って、今何があったか思い出すから……!」
まだ起きたばかりで意識がはっきりとしていないが、それでも可能な限り意識を集中させて記憶を掘り起こす。
まず覚えているのは……、そうだ、たしか僕達は皆で町の外へピクニックに行ったんだ。それで広い草原でサッカーをしていた時、あの怪鳥がきたのか。
怪鳥は僕達を捕食しようと襲って来て、それで分散して逃げるように提案した結果、レオンが……。そうだ、全部思い出した。僕があんなことを言ったせいで最悪の惨劇が起こり、その後怪我をおって気を失ったんだ。
「リタ、知っていることを全部話してくれ。僕が気絶した後、何が起こったんだ?」
「それは、ダメ。言えない……」
「な、何で」
「ダメ。絶対に言わない!」
リタにその後の状況を尋ねたのだが、何故か頑なに喋ろうとせず最後には走り去ってしまった。知らないではなく教えないか。それはつまり、そういうことなのだろう。
「……ふう、大丈夫。覚悟ならあの時からすでに出来てる。辛い現実だからって目を逸らしていい理由にはならない。僕にはすべてを受け止める責任があるんだ」
小さく息を吐き意を決した僕は、痛む体を抑えて医務室を後にした。怪鳥に焼かれた傷はある程度塞がっているみたいだが、それでも一歩進むたびに鈍痛が身体中に響く。妙な汗も流れ始めて少し気分が悪い気がするな。
でもこの程度の状態なら、前世では嫌というほど経験してきたし何の問題もない。
「サテラ先生、いますか?」
「えっ、カーミル君!?どうしてここに、まだ寝ていたはずじゃ……!」
「ついさっき起きました。それであの後何があったのか話を聞きたくて」
「馬鹿なこと言わないでください!あなたは処置が遅れていたら間違いなく死んでいたほどの重傷をおっていたのですよ。顔色も真っ青です、すぐに戻りましょう!」
治癒魔法の使い手でもあるサテラ先生は、僕の状態が悪いことを瞬時に見抜き医務室へ戻るよう促してくる。いや、今の僕なら誰が見ても不調なのは明らかか。
目眩がして更に気分が悪くなってきた。今この状況では、先生の言うことが全て正しく、間違っているのは僕なのだろう。それでも引く気は毛頭ないが。
「嫌です。あの後何が起こったのか全て聞くまでは、僕はここを動くつもりはありません」
「っ、ですがそれは……」
「言いづらい事が起きたってことは僕だってもう察しています。覚悟ならあの時、戦う前に決めてますから」
ここへ何をしに来たのか、その目的を知ったサテラ先生は途端に言葉を濁し視線を逸らされる。そういう反応をされることは、リタを見て十分に予想していた。だからそこで一歩強く踏み込み、真っ直ぐ逸らさず視線を送る。自分の意志を主張するように。
「怪我人がなにやら無茶してるみたいだな。おい小僧、あんまり先生を困らせるような真似するものじゃないぜ」
「あ、あなたは……」
「よう、数日ぶりだな」
サテラ先生にそう詰め寄っていると、不意に後ろから肩を掴まれた。慌てて振り返ると、そこにいたのはなんとあの時行動を共にしていた冒険者だった。リーダー風な男ではなく、分散して逃げる時一緒に逃げていたあの飄々とした男である。
「ランプレヒトさん……」
「小僧の様子を見に来たらチビが騒いでたんだが、医務室にはいやしねえ。で、なんとなく予感がしてきてみれば案の定だったってことだな」
「そうでしたか。気にかけていただいてありがとうございます」
「小僧には個人的に興味もあったから問題ないさ。ついでにお困りみたいだからな、小僧は俺が預かっていくぜ」
ランプレヒトと呼ばれた冒険者は、そう言うやいなやいきなり僕を担ぎ上げて歩き始めた。
「ち、ちょっと!まだ先生に話が……!」
「ガキが生意気言って先生を困らせるもんじゃねえ。そんなに話が聞きたきゃ、俺が全部話してやるよ」
「え?そ、そうですか。それなら……」
「へっ、聞き分けが良くてよろしい」
突然連れ去られたことには驚いた。だがこの冒険者、ランプレヒトが教えてくれるというので黙ることにした。
正直ほぼ他人みたいなこの人に教わるのはどうかと思うが、サテラ先生もリタも教えてくれそうにはなかったので僕にとっては都合がいいのかもしれない。
「ほらよ、まずは横になれ。歩き回っていい状態じゃないのは事実なんだからな」
「ありがとう、ございます」
そのまま医務室のベッドに降ろされ、僕は再び横になった。正直あのまま立ち続けているのは相当きつかったからだいぶ楽にはなっている。
「さてと、それじゃ何から話すかな」
「じゃあまず、あの怪鳥は何者だったんですか?」
「ああ、あいつはレッドイーガルっていう魔物だ。あの草原地帯には本来現れない魔物だったから、さすがの俺らもビビッたね」
ランプレヒトは怪鳥、レッドイーガルのことを語らりながら笑っている。どう考えてもそんな態度になれるような状況じゃなかっただろ。
なんだろう、直感だけど僕はこの人を好きにはなれそうにない。
「まぁ、普段なら苦戦こそすれど驚異と呼べるほど危険度の高い魔物ではないな。俺達も初見だったが、あのレベルの強さならまず勝てる」
「……つまり、何が言いたいんですか」
「ははっ、はっきり聞くなぁー。そんじゃ俺もはっきりと言うが、今回あんな苦戦したのはお前らっていう護衛対象がいたからだ。ただまぁそれはそういう仕事である以上、受け入れてきっちりこなすしかないわな。だけどよ、最も悪手だったのは何か、お前ならもう分かるよな?」
「分散して逃げたこと、ですね……」
嫌な言い方をする。淡々と事実だけを述べてこっちの感情なんてすべて無視だ。当事者の僕が思うのはどうかと思うが、8歳の子どもに言う話し方じゃない。
「なるほど、随分と自分を卑下してるみたいだな」
「それが事実でしょ。現にあなただってそう思っているはずだ!」
「いや、残念ながら違う。俺はあの時分散して逃げるのは悪い手じゃないと思った。あの状況なら最も多くの命が助かる選択だろうし、なにより効率的だ。だから変に否定せず従った」
「は?じゃあ、一体何が悪手だったと言うんですか!?」
僕が最大の失敗だったと思っていることをこの男は否定してきた。
あれ以上に最悪の選択なんてない。犠牲を強いる選択を淡々と提示できる奴なんて、人の心がないロボットと同じなのだから。
あの惨劇のことを延々と考えると、心が張り裂けるように苦しくなる。そんな僕に対し、ランプレヒトはそれはなと前置きをして語りだす。
「お前が自分の出した案を無視して単独行動をしたことだ」
「単独行動……?って、レッドイーガルに攻撃したあれのことですか?でもああしないとマリーナは危なかったし、結果として僕は倒しはした。何も問題はないはずですよ……!」
「いいや、それは違う。お前の言っているそれは単なる結果論だ。たまたま勝てたから今回は良かったが、もしあの場でお前が負けていたら、どうなっていたと思う?」
「ま、負けた時……?」
あの時の僕は無我夢中で、敗北した結果を想定することなんて出来なかった。そんな状況を今改めて考え直してみる。
敗北した場合、僕はレッドイーガルの餌食となりその後僕と一緒に逃げていた子たちの方へ標的を移すか。そうなればランプレヒトが守るため動くだろうが一人ですべてを守りきれる保証はない。結果より多くの子どもの命が散ることになる。そしてその中には、一緒に逃げていたリタも含まれているんだ。
「なんとなくだが分かったみたいだな」
「はい……」
「俺達冒険者はな、常に命を懸けて危険な仕事に臨んでいる。そういう場面では仲間との信頼関係が何よりも大事なんだ。無鉄砲な突撃、命令違反、そういう自分勝手な行動は最悪パーティ全滅を招くことだってある。そのことを肝に銘じておきな」
「分かりました……」
ランプレヒトは、冒険者としての視点から僕の行動を非難してくれた。彼に言われなければ、自分がした行動の危険性を理解することは出来なかっただろう。よかれと思ってしたことだが、集団で行動している以上チームの輪を乱す行為はしてはならない。
「だとしたら、僕は分散を提案した時点でもう何もかも手遅れだったのか。一つの選択が生み出す結果を予測しきれなかった。そしてそれを背負う覚悟すら足りていない。最低だ、僕は……」
「ったく、さっきも言ったが分散までは悪い手じゃねえって言ってるだろ?まぁ結果としてあのやられたガキ共は焼け死んじまったわけだが、それ以外の犠牲はお前の怪我以外出てないんだ。それは誇りに思いな」
ランプレヒトは僕を慰めているようだったが、その中には衝撃の事実が含まれていた。彼は何でもなかったかのようにサラリと流しているが、それを聞き流すことは出来ない。体の奥底から震えが走り、寝ているにも関わらず今にも倒れてしましそうな感覚に襲われた。