ちなみに猫はボイロで1番好きなのはアイちゃんですね、次にゆかりさんです。
皆さんは誰が好きですがね?
私を含めてみんな茫然と立ち尽くしているBARの店内、現実味の無いこの状況を頭が理解しようとしないのだろう。
静まり返った店内に、ドンドンと扉を破壊しようとする音が響く。
「……はっ、ケビン!ワイン樽を押すのを手伝え、扉を塞ぐぞ!」
「…あ、おう!」
マークさんとケビンさんが窓際のワイン樽を押して扉を塞ぐ、扉だけだと長く持たないだろうけど、樽で塞げばそれなりに長持ちするはずだ。
とはいえいつか破られるのは確実、なんとか脱出を試みないと…そう考えて行動に移ろうとするも、私の体は震えてまともに動けない。
当然だろう、私はマークさんの様な元軍人でもなければケビンさんの様な警察官でも無いのだ。
ただの一般人で、ただの女子大生の私がこの恐怖に耐えられるはずも無かった。
体は正直等とは良く言うものだ…
「シンディ、状況が状況だ…何か使える物はないか探しても良いか?」
「えぇ…もちろん、あっ!確かカウンターに2階のスタッフルームに上がる扉の鍵を置いてたはずよ…あとは包丁と…殺虫スプレーがカウンターの下に置いてあるわ、あとは…女性用トイレに置いてるデッキブラシなら武器になるかしら…」
「充分だ、ありがとよ…とりあえず俺は武器になりそうなデッキブラシを取ってくるから、シンディは鍵と殺虫スプレーを頼む」
「えぇ、分かったわ」
ケビンさんは武器になりそうなデッキブラシを取りに、シンディさんはスタッフルームの鍵と殺虫スプレーを取りに行った。
私、マークさん、ボブさん、顔面蒼白のウィルさんともう1人が残った。
「ジョージ、すまないが…ウィルを見てやってくれないか?」
「もちろんさ、私は医者だからね…さぁウィル、傷口を見せてくれるかい?」
「………」
一言も発さず、ただ茫然と扉を見つめるウィルさん。
そんなウィルさんの噛まれた傷を的確に手当する、灰色のスーツを着たジョージさんと言う人。
ボブさんに肩を貸しながら、マークさんがジョージさんについて教えてくれた。
ジョージ・ハミルトン
39歳のお医者さんで、自然に周囲の信頼性を得ていく包容性があり、紳士的な態度で周囲に友人が多い、何があっても良い様に常にメディカルキットを持ち歩いているらしい。
薬剤師としても優秀なんだとか
ジョージさんについて聴き終わった所でケビンさんとシンディさんが戻って来た。
ジョージさんもウィルさんの手当が終わった様で、近づいてきた。
「とりあえず使えそうな物は持ってきたぜ、何でか知らないが男性用トイレにハンドガンが置いてあったからこれも持ってきた」
「なんでトイレに拳銃が…?えと、あたしは鍵と殺虫スプレー、あと包丁を取ってきたわ…ジョージ、ウィルはどうかしら…?」
「あまり良いとは言えないね、軽い傷の手当は終わったが…出血が激しく貧血になっている。無理に動かすのも危ないだろう…扉は樽で塞いであるから少しあのままにしておこう」
「そう…とりあえず鍵を開けてくるわね」
シンディさんが小走りで鍵を開けに行く、するとガタンッと大きな音が鳴り響く。
……扉が、破られた。
「……!? おいおい、いくら何でも早すぎるぜ…?」
「だが、樽で塞いである…そう易々とは…」
余りにも早い扉の破壊に驚いていると、あの正気を失った人達 (映画に出てくるゾンビみたいだから、仮にゾンビと呼ぶ事にする) が樽をよじ登って入って来た。
「不味い…!ウィル、逃げろ!」
「何してんだウィル!早く逃げやがれ!」
「…あ、うわあぁぁぁぁ!!!!」
茫然としていたウィルさんが、マークさんとケビンさんの叫びでハッとするが、気が付いた時には遅く…ゾンビ達に群がられて…喰い殺された。
友人が喰い殺されると言う余りにも惨い光景を見て、私達は強烈な吐き気に襲われる。
なんとか堪えるが、ウィルさんを喰っていた1部のゾンビは起き上がるとこちらを見て、ゆっくりと歩きながら襲いかかって来た。
「クソッタレ!来んじゃねぇ!」
ケビンさんが腰のホルスターから拳銃を取り出して発砲する。
心臓に1発、弾丸が撃ち込まれたのにも関わらずゾンビはのろのろと歩いてくる。
「おいおいなんだよコイツら…心臓に弾丸ぶち込んだんだぞ…!?」
「くっ、ジョージ!ボブを上に連れて行ってくれるか!?ゆかりもシンディ達と先に上へ行くんだ!」
「でも、危ないですよマークさん!?」
「良いから行くんだ!わしとケビンで少しでも食い止める!」
「……分かりました、行きましょう!」
私はボブさんに肩を貸したジョージさんと一緒に階段を駆け上がっていく。
後ろからは銃声が聞こえて来るけど、大丈夫だろうか……? 不安を抱えながら、私はジョージさんと共に2階にあるスタッフルームへと向かって行った。
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2階のスタッフルームに着くと、シンディさんが使えそうな物を集めてくれていた。
ジョージさんがボブさんを床に座らせると、シンディさんが心配そうに聞いてきた。
「さっき銃声が聞こえたけど…何があったの?」
「それは…気をしっかり持って聞いて欲しい…」
「……まさか」
「あぁ、そのまさかだ…扉を破って、樽をよじ登って奴らが侵入してきた…ウィルは…喰われたよ…」
「──そん…な…っ」
「ウィルを喰った奴らの一部がこちらに襲いかかって来たんだ、そこでケビンが咄嗟に拳銃を抜いて発砲したんだが…心臓に1発撃ち込んだのにピンピンしてたよ…」
「何それ…それじゃ奴らは…死なないの…?」
「死なない生き物なんていないさ…きっとなにか弱点があるはず…」
「あ、あの…シンディさん、脱出に使えそうな物はありましたか…?」
「あっごめんなさい…もちろんあるわ、さっき従業員用のロッカールームでなにか使える物がないか探したら、日記を見つけたの。」
「日記…ですか?」
「えぇ、日記に書かれていた事によると、隣のマンションからイタズラ好きの子供達が良く屋上から飛び移って来てイタズラしてたみたい」
「……あぁ!つまり隣のマンションになんとか飛び移って降りていけば……!」
「…そうか!外へ出られる!」
脱出の手掛かりを見つけた事で幾分か暗い気分が払拭される。
あとは2人がスタッフルームに来るのを待って、屋上へ向かうだけだ。