身勝手な夢   作:カクレオン268

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長編ストーリー系は苦手意識がありますが完結できるように頑張ります


出会い

選抜レース当日

 

 

芝1200m 右回り(短距離) 良・内

 

 

授業以外では初めてのレース。選抜レースということもあり、トレーナーだろう人たちが何人もいる。

 

正直1200mは少し短く感じるが、早く終わる分短い方がマシと思うようにした。

 

隣で「緊張するなぁ…」と聞こえた。選抜レースとはいえ、内容は授業と変わらない。緊張する意味が分からなかった。

ただ、渋々走る自分と比べると結果を出してトレーナー契約したい子にとっては緊張するのかもしれない。

 

全員のゲートインが終わりその1秒後、ゲートが開き走り始めた。

正直授業には出ているが真面目に走ったことはない。レース説明の際に短距離は逃げ、先行が有利と言っていたのでとりあえず先行で走ることにした。

 

 

結果は2馬身差で1着。

 

 

真面目に走る気はなかった。特別練習をしたわけでもない。私にはレースを走る才能があった。それに他の子たちがついてこれなかった。それだけのことだ。

 

戻ろうとしたときにまず、中堅くらいだろうトレーナーに声をかけられた。

 

 

「君の走りは素晴らしい。これから磨けばGlでも通用する。俺にはそれができる。君をスカウトさせて欲しい。」

 

 

そこから多くのトレーナーに声をかけられた。が、そのスカウト全てを断った。練習しなくても1着になれる。それに、才能が有れば努力をする必要がない。トレーナーがいようがいまいが自分だけで勝つことが出来る。今日のレースで改めてそう感じた。

 

スカウトも軒並み終わり、周りの人も少なくなった頃、帰りの準備を始めた。その最中、後ろから1人の男性に声をかけられた。

 

 

「君は今日の選抜レースをどう感じた?」

 

 

正直、変なのに絡まれたと思った。最初の一言目がそれかと。レース結果に興味がない。授業でレース練習するときも真面目に走ったことがない。今日の選抜レースも1回は絶対に走れと担任に言われ、渋々走っただけだ。

 

 

「一緒に走ってる子たちが可哀想だなって思いました。」

 

 

 私は思っていたことをそのまま話した。

 

 

「そう思うのはなぜ?」

 

「どれだけ頑張ったところで才能には勝てないからです。」

 

 

実際、今日走った選抜レースの1着は私だ。2着の子が「どうして…」と言っているところ耳にした。あの緊張していた子だ。

彼女が授業を真剣に取り組んでるのは知っている。1人で走ってるのも見ている。それでも彼女は私に勝てなかった。

 

結局のところ努力は才能に勝てていないのだ。

 

 

「入学して間もないのにそこに目を付けるのはいい着眼点だ。確かに実際レースで勝てるのは才能ある子たちだ。ただ、中には努力をして才能に勝ってるウマ娘もいる。その結論を出すのはちょっと早いんじゃないかな?」

 

 

実際、黄金世代の1人と言われているセイウンスカイ先輩は表ではのんびりしている印象を受けているが、裏で人気がない場所で走り込みしていた。才能と渡り合おうと先輩なりに努力していると言うことだろう。

 

こう考えると一概に才能が全てというわけではなくなる。

 

 

「なるほど、あなたが言いたいことはわかったわ。この結論を出すのはもう少し後にするわ。で、あなたはそれを聞きたいがために声をかけたの?」

 

 

気になったこと聞いてみた。もしスカウトなら先にその件を話すだろう。それを聞かずにレースのことを聞いてくるのは少しおかしいと思った。

 

 

「おっとすまん。本来先に聞くべきことを飛ばしてしまったな。では、俺は君をスカウトしたい。君の走りは磨けば輝る。その手伝いを俺にさせて欲しい。」

 

 

察しはついていた。レース後に声をかけてくるトレーナーの目的は大体スカウトだ。分かりきっていた。

 

 

「悪いけど、私より他の子を当たった方がいいよわ。それに、似たようなことをさっき別のトレーナーに言われたわ。」

 

 

1着になれなかったとはいえ、2着の彼女も将来有望だろう。彼女のトレーナーになった方が彼女も強くなるだろう。そう思った。

 

そう言った途端、彼は慌ててるような仕草をし始めた。厳密に言うと目が明らかに泳ぎ始めた。

 

 

「マジか…こう言えばオッケーくれると思ったのに…マジかよ…てかやっぱりテンプレ通りじゃだめか…」

 

 

本人は言ってるつもりはないのだろうが丸聞こえである。さっきまでクールな印象の人は消え、目の前には頭の悪そうな人がいた。というより、多分こっちが素なのだろう。スカウトのために冷静を偽っていただけのように感じる。それがおかしく感じて少し笑ってしまった。

 

 

「人がせっかく台本考えて物静かなイメージを与えてスカウトしたのに笑うとは失礼じゃないか?」

 

 

 やはりこっちが素のようだ。

 

 

「まぁ…こうなったら演じる必要もないだろう。気づいてるだろうがこっちが素だ。変な見栄を張ってごめんな。だけど、台本とは言っても努力が才能に勝ちづらいのは事実だ。だが、才能に勝てないわけではない。努力すれば実力が上がる。君の走りは今の段階では才能で勝ててる。ただ、努力して実力を磨けば出てくる才能もある。きっといつか、その子たちが君の前に立ち塞がってくるだろう。」

 

 

「まぁ…現段階だと確証できないけど…」

 

 

小声で何か言っていたが気にしないようにした。才能だけで今後も勝てるかどうかは正直なところ自分でもわからない。この彼が言っていることを一蹴りに否定できないのだ。

 

それに、もしここで断った場合、またあの鬱陶しい人たちが声をかけてくるだろう。

自分のことは自分でやるので専属トレーナーは必要ないと思っているが、暑苦しい人よりはマシだろう。

それに、レースには興味はないが、走ること自体は好きなので、レース場を使うとなると専属トレーナーがいた方が何かと楽なのは事実。

 

 

「はぁ…訂正。わかったわ。そのスカウト受けましょう。」

 

 

 その瞬間彼は顔をあげ、目を輝かせて私の目をまっすぐ見てきた。

 

 

「ありがとう!君が勝てるように練習メニュー考えるよ!これからよろしく!」

 

 

 子供のようにはしゃいでいた。トレーナーってことは私より年上のはずである。実際身長は175cmくらいはある。それなのに私より子供に見えるのは彼の言動ゆえだろう。

 

 

「そういえば、君の名前聞いてもいいかな?訳あってスタートのときにここにいなかったんだ。」

 

 

「ディディスティ」

 

 

「ディディスティだね。ちょっと長いからディディって呼ばせてもらうね。改めて、これからよろしくね。ディディ。」

 

 

「よろしく」

 

 

「じゃあ僕は一旦部屋に戻って書類持ってくるからちょっと待っててね!」

 

 

そう言って彼はトレーナー室に走っていった。時間は18時を過ぎている。本当は帰りたいが、あの調子だと書類を持って戻ってくるだろう。

 

そもそも契約が目的なのになぜ書類を持ってこなかったのか。あの調子だと慌てて部屋を出たときに、机の上に置きっぱなしになってるとかそんな感じだろう。

 

本当に演技だったのか、思い返すと一人称すら変わっていた。

 

 

そんなことを考えながら近くにあったベンチに座った。

 

 

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