ポケットモンスター・ライフ   作:ヤトラ

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ピクシブなどで人気のザングースが登場します。

やっぱ戦闘描写ってポケモンでも難しいですね。時間が掛かってしまいました(汗)
とりあえず、ポケモンの強さは種族よりも技や経験、その時その時の技の選択の方が大きいってことを示したかったです。
一応ポケモンの技は最新(XY)の物を採用しております。BW2時代の教え技とか無くなったそうで残念です。

7/3:誤字修正


その8「きのみ屋さんとザングース」

 パットー、パットー、とマメパト時計(せっかくなので別の時計にしてみた)が鳴って目が覚めるが、少しダルい……しかし止めないと鳴り止まないので、仕方なく止める。

 いつもより早い時間帯に起きたので日がまだ差しておらず、ローちゃんが寝ぼけている。けど起きなきゃいけないから水を掛けて起こしてやった。怒られた。ショボン。

 

 どうして早起きしなきゃいけないのかと言うと……昨日のドクケイル対策をしなきゃならないからである。

 

 ドクケイルにしては珍しく日中に活動するタイプのようで、夜に僕と3匹で張り込みをしたが全く出てこなかった。

 ならば朝方に出てくると予想して早起きをし、ドクケイルが来る前に撃退準備を整えようと考えたのである。

 ちなみにガーさんとヤーやんはポケモンセンターで回復済み。ミツル君のメンバーも含めて怪我ポケが大勢居たから、ジョーイさんがてんてこ舞いだったよ。ごめんね。

 2匹ともリベンジに燃えている(……らしい。ヤーやんは表情が読めなくて解りづらいんだよなぁ)が、今回はアーさんが主役(の予定)。ざぁんねんでしたぁ。

 

 

―さて、まだ暗いし眠いけど、いざ裏庭へ―――そこに居たのは、なんと!!

 

 

 

―――

 

「なしてザングースがいるの?」

 

「「「「(´д`;)(知らんがな)」」」」

 

 うわ、揃いも揃って顔文字みたいな顔しやがって。ゴーさんは強面のまま、ヤーやんは表情が変わらないのでそのままだが。

 

 イシ爺が大事に育てていた高木。その根元にネコイタチポケモンことザングースが丸まって寝ていたのである。

 山岳地帯の114番道路で見かけたことがあるポケモンだけど、ここまで来るなんて珍しい。はぐれザングースかな?

 しかしこのザングース、よく見ると口元に皺があるし、痩せて見えるし……もしかして結構なご老体かな?ちょっと失礼して毛並みを……。

 

「フシャー!」

 

「スイマセンっしたー!」

 

▼うまく逃げ出せた!

 

 怖かった凄く怖かった!『ネコ』イタチポケモンが寝ていたからって油断してた!ザングースって素で怖いんだった!

 ヨシヨシしてくれるローちゃんとサンちゃんのおかげでビックリしてドキドキする心臓が落ち着きついてきた。

 その迫力はガーさんですら怯むほど。喧嘩好きなガーさんが躊躇するなんて、あのザングースは気迫ってもんが違っているわ。

 しかしこっちが遠ざかったらすぐに寝たので、とりあえず向こうから襲い掛かったりはしないようで安心した――――ん?

 

―バサバサ

 

(げ、ドクケイル!?)

 

 羽ばたいた音が聞こえたからなんだろうと視線を向けたら、高木の幹にドクケイルが留まっていたじゃないか!もしかしてアイツ昨日の!?

 夜中に忍び込んできたのか僕達よりも早く来たのか解らないが、バサバサと微量の粉を撒き散らしながら羽ばたきするドクケイルは、僕達に向けてアピールしているかのよう。

 その粉がザングースの元に降り注ぐが、「めんえき」持ちのザングースは眉を顰めるだけで、ドクケイルに向けて短く鳴いた。「五月蝿い!」とでも言っているんだろうか。

 しかしその威嚇がドクケイルを刺激したらしく、高木から飛び降りたと思ったらザングースの前でヒラヒラと……ちょ、ちょっかい掛けるのやめとけって……。

 

「フギャー!」

 

 あちゃー、とうとうザングースが怒り出した!短気なやっちゃなー。

 それにしても、さっき触ろうとした時とは比べ物にならないぐらいに迫力があって怖い!ポケモン達もちょっと引き気味です。アーさん寝るな。

 しかしドクケイルは間一髪で後ろへ飛び、ヒラヒラ舞いながらザングースをからかう。既に『ちょうのまい』を行っているらしく、戦闘準備満タン。喧嘩好きなのか?

 

 しかしザングースは怒っているもののすぐには動かず、ドクケイルに爪をクイクイ動かし……あ、あの動き、『ちょうはつ』か?

 案の定ドクケイルは途端に怒り出し、ヒラヒラと舞うような動きを止め、羽を羽ばたかせて『ぎんいろのかぜ』を放つ。

 

 そう、このドクケイルは素で強い!ガーさんが変化技を止めるために『ちょうはつ』したら猛攻が凄いのなんの。

 風を使った広範囲の攻撃技は勿論、『サイケこうせん』による射撃や『ヘドロばくだん』など技も豊富なのだ。

 そんなドクケイルを相手にする年老いたザングースはひとたまりも……ん?ザングースが大きく息を吸い始めた。

 

 そして息を吐いた途端、『ぎんいろのかぜ』にぶつかるようにして『ふぶき』が……え!?『ふぶき』!?

 白い雪が入り混じった吹雪は風とぶつかり合い、相殺。余波で冷たい風が肌を刺激してきた。寒い。

 

 今度はドクケイルからピンク色のオーラが溢れ出て、それと同じようなオーラがザングースを包み込む。これは『サイコキネシス』か?

 苦しそうな顔を一瞬だけしたザングースは口から炎……『かえんほうしゃ』を発射。火に弱いドクケイルを怯ませ『サイコキネシス』から解き放たれる。

 その瞬間を逃さず、ザンクースは四足歩行で素早くドクケイルに接近!『でんこうせっか』で確実に近づくつもりか!?

 しかしドクケイルは『ちょうはつ』が切れたが幸いして『まもる』で……おっとここで跳躍したザングースの『フェイント』がドクケイルの腹(?)にヒットぉぉ!

 

 続けて空中から『ブレイククロー』!しかし『かげぶんしん』の残像だ!ぐるりと空中で身を捻らせ『やきつくす』!焼かれながらも『むしのていこう』!受けた衝撃で落ちるも空中で『つるぎのまい』!

 

 ドクケイルの『ちょうのまい』!ザングースの『いばる』!ドクケイルは混乱し暴れまわる!ザングースの『つるぎのまい』!『ひかりのかべ』!『かえんほうしゃ』!混乱が治って『むしのさざめき』!『みきり』で回避!

 

 ……えっと……。

 

「すげーハイスペックな戦い」

 

 確かテレビ番組で放送していた特番『夢の四天王対決!カゲツVSフヨウ!』で似たような光景を見た気がする。

 皆もそう思っているのか、無言で頷いてくれた。……ヤーやん、寝ているアーさんに『サイコショック』お願い。

 

 これにはガーさんも唖然とするしかないだろう。正直割り込む隙が無いので脳内実況しか出来ないよ。

 ドクケイルの熟練した技も凄いが、あのザングースの技のレパートリーも半端無い。口から火を吐いたり冷凍ビームを吐いたり、爪使えやって話。

 こんなに派手な戦いなのに木の実畑にも庭木にも大きな損害を与えていないのだから、2匹のバトルセンスの高さも侮れない。

 

 そんなこんなで2匹の争いは続き、短時間にも関わらずお互いに限界が近づきつつあった。苛烈な戦いだから仕方ないね。

 受けたダメージはドクケイルの方が大きいが、ザンクースは軽傷にも関わらず息が荒い。やはり老いには敵わない、ということだろうか。

 

 ここで勝負を仕掛けるつもりか、ドクケイルが天高く飛び上がり、そのまま急降下!多分あれは『ギガインパクト』か!?

 真上から落ちてくるドクケイルをザングースは……普通に「ひょい」と横へ跳び、ドクケイルは地面に激突してズズンと地面が揺れた。

 土ぼこりが晴れて見えたのは……地面にめり込んだまま痙攣しているドクケイルの腹が。うん、あの勢いで落ちたらそうなるわな。

 

 にしても、あの壮絶なバトルの結末にしては……言っちゃ失礼だけど、凄く呆気なかった。なんだかなぁ……。

 呆然と地面に埋まったドクケイルを見下ろす僕らを余所に、ザングースは「やれやれ」と息を吐いて眠り出した。

 

「……さてと、ドクケイルを抜いて穴埋め作業をしなきゃ」

 

 お、サンちゃんが「お仕事ですか!?」と瞳を輝かせて見上げてきた。やる気があるようで結構!

 ドクケイルをどかすのはゴーさんにお願いしよう。虫ポケモン苦手なのは解っているけど、我慢してね。

 

 

 

―――

 

 とりあえずドクケイルをお送り(という名目の『ともえなげ』)して差し上げて、畑と店に平和が訪れた。

 邪魔者(ドクケイル)が居なくなったことで荒れたきのみ畑を再生する作業に集中できた。この調子なら来週には元通りになるだろう。

 追い払ってくれたザングースだが、寝ていた時に添えておいた山盛りのオボンのみをモソモソと食べてくれた。お礼、受け取ってくれてよかった。

 その後も高木を陣取っていたが、近づきさえしなければ攻撃してこないので安心できる。ガーさんもしばらくは様子見に留めるようだ。

 

 そして畑仕事が終わった後は一日ぶりの営業。心配してくれたお客さんから色んな言葉を送ってもらったよ。優しいなぁ。

 ただし裏庭への看板に新しい注意書きとして「ザングースに近づくべからず」と追加しておいた。近づく奴は容赦なく威嚇する怖いやつですので。

 

 

―――で、もう一つ厄介なことは……。

 

 

「……あの、ハヤシさん」

 

「なぁーにーミツルくーん?ウブのみを使った手作りのど飴の味が悪かったぁー?」

 

「いえ、美味しいんですが、その……」

 

「なんだよミツル君、言いたい事があるならハッキリ言いたまえよ」

 

「あのドクゲイル、ずっとハヤシさんを見ていますよね?」

 

 ああ、窓に張り付いてこっちを見てくる、焦げ目が目立つドクケイルね。

 

 お客さんにもポケモンにもちょっかいを掛けず、窓に張り付いてじっとしているドクケイルに一部のお客さんも唖然として見ている。

 とりあえず暴れる気配が無いのでお客さんも安心しているが、なんで追い返したはずのあいつが大人しくしているのか……ザングースに目をつけられて暴れられないのか?

 

「もしかしたらあのドクケイル、ハヤシさんの事が好きなんじゃないですか?どうやらメスみたいですし」

 

「はぁ!?冗談言わないでよ!?」

 

 ふふって微笑んでいて良い話っぽく言っているけど、あんな生意気なイタズラ者に気に入られるなんてゴメンだよ!

 

「あ、ドクケイルが羽をばたつかせていますよ?もしかして脈ありなんですかね?」

 

「ミーツールーくーんー!!」

 

 今日の君はやけに絡んでくるね!?本気でやーめーてー!!

 

 

 

 

 

 

―気のせいかな?ミツル君、笑っているのにどこか寂しげだな……。

 

 

 

 

 

―――

 

 その日の夕方。

 閉店し、一喝したら珍しく帰ってくれたドクケイルの後姿を眺めた後の事だ。

 

「うわぁぁーーんハヤシくぅーん!」

 

「ぶぼっふ!?」

 

 ご飯にしようかなって思った時に後ろから『とっしん』を受けた!痛い!

 何事かと思ってみたら、僕に抱きついてきたのはミツルの叔父さんだった。小太りなおじさんだが、髪型は甥っ子のミツル君に似ている。

 

「うおぉぉん君からも何か言ってやってくれぇぇぇ!」

 

「ななななんですか一体!?」

 

 穏やかなミツルおじさんがここまで泣き喚くのは珍しい。一体なにがあったんだ?

 

 

 

 

「ミツルが、ミツルがぁ―――――イッシュ地方へ旅に出るって言い出したんだぁ!」

 

 

 

 

―――この日、僕はミツル君が抱いた新たな夢を聞く事になる。

 

 

 

―続く―

 




ピンチに続く突然の展開!ミツルの意図とは!?そして何故イッシュ地方なのか!?

今回登場したザングースは元はトレーナーに居たものが野生化したものです。野良化した理由は追々。
それとミチル君のお父さんはほぼオリキャラ化しています。すみません(汗)

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