ポケットモンスター・ライフ   作:ヤトラ

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なんでナタネかって?自然が好きなジムリーダーの一人が彼女だからです。
後、ホミカの次に好きなジムリーダーだからです!

そういえば活動報告でポケモンに関するコラボ小説のアンケートを行っています。よかったら見てください。

7/15:アニメ版ナタネの性格にギャップを感じたり中の人で悲しくなった方が居たので修正。ゲーム版とポケスペを参照にしています。


その10「きのみ屋さんとナタネ・前編」

―ジムリーダー。

 

 それは若きポケモントレーナーを導く為、自ら壁となって立ち塞がる強者である。

 ジムリーダーは老若男女関わらず、優れた判断力と豊富な知識、自分なりのポケモンへのこだわり、そして責任能力が備わってさえいればなれる者とされている。

 

 常人より優れたポケモンを育てる責任。

 若きトレーナーを自分なりの教示で導く責任。

 地方に君臨する8つのジムを任される責任。

 リーダーとしてジムを、町を、そして時には地方を守る責任。

 

 偉人になるとは、常に責任が伴われるものだ。そしてジムリーダーはこだわりと個性に溢れている。

 

 高い教養と知識を兼ね備えた者もいる。

 ポケモンバトルに美を求める者もいる。

 人を引き寄せる何かを持つ者もいる。

 ジムの傍らで副業に励む者もいる。

 ジムの傍らで趣味に走る者もいる。

 ジムに妙な仕掛けを施す者はかなり多い。

 

 そんな自分のこだわりを貫けるのも、責任能力や仕事の能力が常人よりも優れている証拠。

 つまりジムリーダーとは、職務を全うさえできれは基本フリーダムなのだ。

 

 

 

―――

 

 爽やかな朝の日差しが差し込む早朝。

 ポケモン達と裏庭で朝御飯を食べようと玄関を開けたら、目の前で人が倒れていました。

 

「うふふふ、トロピウスゲットぉ、むにゃむにゃ」

 

 前言撤回、目の前で人が寝ていました。

 

 明るい茶色のボブカットに緑のケープを着ており、ハーフパンツを穿いた女の子だ。うつ伏せになって倒れているので顔は解りません。

 目立った外傷が無い事から、どうやら野宿で休んでいるというより力尽きて眠ってしまったらしい。目の前に店が、というか町に着いたのにワザワザここで倒れたか。

 そんな事を考えてはいるが、やはり倒れている女の子を見ていると不安になる。僕の足を小突くローちゃんも心配してそうに女の子を見ていた。

 

「とりあえず起こそっか。『アロマセラピー』よろしくね」

 

 コクリと頷いたローちゃんは女の子の前に立ち、両の花からミントのような香りを放つ。爽やかでスーっとする匂いは眠気覚ましにはピッタリだろう。

 女の子は身動きこそ示したものの、「エヘヘヘご馳走だー」と寝言を呟くだけで起きようとしない。駄目かー。

 

 ……ん?ごちそ―――きゅ~くきゅるるる―――あら、可愛い音。

 

 どーやら倒れた理由はベタな藻様子……ローちゃん、しばらくこの子を見ていてね。

 さて、朝御飯のチャーハンを追加で作らないと。それもたっぷり。きのみスープはそのままでいっか。お昼の分が無くなるだけだし。

 

 

 

―――

 

 所変わって、ここは裏庭。女の子は無事に復活しました。

 

「ご馳走様でした。どうもありがとう!」

 

 米粒一つもスープ一滴も残さず空になった食器を並べ、彼女は明るい笑顔で応えてくれた。改めて見ると可愛い。

 彼女のポケモンであるロズレイド、ドダイトス、チェリムも「ゴチになりました!」とお礼を述べいるかのようにお辞儀をする。トロピウスはまだお食事中。

 大食いのゴーさんですら唖然とするほどの食べっぷりは見事だったよ君達……おやおや、照れない、照れない。

 

「どういたしまして。お茶のおかわりは?」

 

「いただくね。あ、私の紅茶はミルク多めで」

 

 素直なんだが図々しいんだか。けど素直可愛いから許す。食器の片付けはゴーさんにお願いしよっと。

 紅茶を淹れながら彼女を見ていたら、彼女の視線は裏庭の光景に釘付けのようだ。造園した僕達からしたら嬉しい限りだ。

 

「そういえば君、どこから来たの?」

 

 そもそも何であんなところで倒れていたのか、という質問は後回し。

 

「おっとっと、そういや名乗りですらまだだったね!じゃあ自己紹介から」

 

 はっと気づいた彼女。そういえばお互いに名前ですら明かしていなかったよね。

 

「私はナタネ。シンオウ地方から来ました」

 

「次はこちらの自己紹介。僕はハヤシといって、この店の店主をしています」

 

 そして僕らはお互いに「よろしく」と笑顔で握手。トレーナーにとって挨拶と握手は大事、だと思いたい!

 

「それにしてもシンオウからかぁ。遠路遥々からようこそホウエンにいらっしゃいました」

 

「なんか照れるなぁ……」

 

 ホウエン代表として歓迎のご挨拶をしたら彼女は照れくさそうに笑った。

 良く見れば彼女を囲んでいるドダイトス・ロズレイド・チェリムはシンオウ出身だったよね。トロピウスはホウエンでも良く見るけど……食べるのおっそいなぁ。

 

「……で、なんでうちの前で行き倒れに?」

 

 では次は倒れた理由。するとナタネちゃんは「う……」と恥ずかしそうに頬を掻きだした。

 

「……実はカイナシティの港に着いて早々トロピウスを見つけて、感極まって追いかけちゃって」

 

「感極まって?」

 

「私、草ポケモンが大好きなの」

 

 あ、だからナタネちゃんの手持ちは草タイプばかりなんだ。しかも見た感じからして強そうだ。

 見た感じで解るほど強さを証明できるポケモンを持つってことは、育て方が上手な証拠。育て方次第では弱そうなエンティ、強そうなピカチュウがいるぐらいだからね。

 庭を眺めていたこともあり、この子はきっと草タイプというより自然そのものも好きなのだろうか。ならホウエンの大自然はきっと気に入るはずだ。

 

「けど飛行タイプのポケモンを持ってないから仕方なく走って追い続けたんだけど、捕まえた頃には夜中になってて、ようやくお店を見つけたと思ったらお腹が空いて……」

 

「うちの前で倒れて眠っていた、と」

 

「恥ずかしながら……」

 

 照れくさそうに笑うナタネちゃん。可愛い。

 このトロピウスってゲットしたばっかりなんだ。だから慣れていない事が多くて動作が緩慢なのかも……おっとりしているだけにも見えるが。

 するとナタネちゃんはテーブルに身を預ける。落ち込んでいるのか、投げやりな感じだ。

 

「あーあ、いくら珍しい草ポケモンを見つけたからって、もう一つの目的を忘れちゃうなんてさー」

 

「本来の目的?」

 

「大きな庭のきのみ屋さんって言う噂の店を訪ねたくて」

 

「それってうちじゃん」

 

「はい?」

 

 思わず即答しちゃったよ。ナタネちゃんは首を傾げてこっちを見上げている。……紅茶ウマー。

 さて、紅茶を飲み終えた所で、改めてこのお店を紹介するといたしましょうか。笑顔、笑顔。

 

「ここがそうだよ。ようこそ、大きな庭のきのみ屋さんへ」

 

 しばし目を点にしてこちらを見ていたナタネちゃんだが、少ししてから目を輝かせた。

 

「ホント?ちょっとゴメンね」

 

 そういってナタネちゃんは玄関へと走りだして……あ、戻ってきた。

 

「本当だった!」

 

「本当だってば」

 

 まぁ疑うのも無理はないけど。その様子だと看板を見て確信したみたいだね。

 するとナタネちゃんは喜びの表情を浮かべて……あ、裏庭に向けて走りだした。

 

「うわぁ、雑誌で見た通り綺麗!ちょっとお邪魔するね」

 

「ちょっ、ま、そっちにはまきびしが」

 

「あいだだだだ!」

 

 お店の事を知っていたんなら『まきびし』を撒いてあることを知っているとばかり……あ、ナタネちゃんのポケモン達が。

 

「「「Σ(>皿<;)(痛い痛い痛い!)」」」

 

 まきびしの餌食に……いくらナタネちゃんの為に駆け出したとはいえ、それはどうよ?トロピウスはまだナタネちゃんに懐いていないのか、遠巻きで見ていた。

 うーん、ポケモンはトレーナーに似るっていうけど、穏やかなようで意外とハイテンションな子達だなぁ……歳いくつだろ?

 

「「「「(´・ω・`;)(早く助けてやれよ)」」」」

 

 うちの子の訴えるような視線が気になるので早く助けよう……というわけで起きてアーさん。

 

 

 

―――

 

 アーさんを起こして『まきびし』を吹き飛ばした後、ナタネちゃんはおおはしゃぎ。

 芝生の上で転がったり、きのみ畑を見てはしゃいだり、畑に居着くナゾノクサを眺めたり、庭木を見上げ「いやーいい仕事してますねー」と感心したり。

 ガーデニングマニアである僕は鼻が高いけどね。ドヤァ……。

 

 そして今は何をしているのかといえば。

 

「ん~、ハスボーって可愛いな~♪」

 

 ほっぺすりすりされてもハスボーのハーさんは嫌がるどころか楽しんでいる様子。そんな様子を羨ましそうに見上げるスーちゃん。和む。

 ナタネちゃんのポケモン達も各々が庭で好き勝手過ごしている。特にロズレイドはローちゃんと親しげに話して……なんつーか、おばちゃんの井戸端会議っぽい。

 ちなみにドクケイルことクケちゃんは今朝は居ない。ザングースことザンさんが追い返したんだろう。後でお礼の木の実を進呈しなければ。

 

 さて、ナタネちゃんが和んでいるのはいいが、彼女の今後を聞いておこう。

 

「ナタネちゃん、店を見つけた後はどうする予定なの?」

 

「ホウエンの草ポケモンをゲットしに一週間の旅に出ようと思って」

 

 ハスボーを頭に乗せたナタネちゃんは気合を込めてそう告げた。告げるのはいいんだけど……。

 

「……じゃなくてさ、飛行ポケモンがいるとはいえ宿とかどうするの?地図とかある?」

 

「あー……地図はあるけど施設とかはまだ……け、けど探せばあるよきっと。飛べるし!」

 

 行き当たりばったりな旅なこって。それじゃあ一週間で回れないわな。

 肝心の「飛べるし!」と言っていていたトロピウスは……あ、アーさんと一緒に日向ぼっこしていた。

 捕まえたばかりでスキンシップも取れていないだろうし、僕の提案を聞いてもらおう。

 

「ならさ、旅する間うちに泊まらない?」

 

「ん?」

 

「店でアルバイトを募集してて、住み込み用の部屋が空いているんだ。資金稼ぎしながらそこを拠点にするのはどう?」

 

 女の子を家に連れ込んでどうするつもりだって?どうにもしないさ。宿に困った人は老若男女関係なく放っておけないもんです。

 まぁナタネちゃんは困ってはいないけど、確認ぐらいはしてもバチは当らないでしょ。ナタネちゃんも顎に手を添えて考えているし。

 

「お金に不自由はしていないけど……ここに泊まれるのは魅力的かな」

 

 ナタネちゃんは頭に乗せていたハスボーを両手で抱えこみ、裏庭全体を見渡す。気に入ってくれたみたいで嬉しい。

 それでも結局は諦めるかも。いくら助けてくれたとはいっても、見ず知らずの人の店に泊まるってのも抵抗ってもんが……。

 

「じゃあお言葉に甘えて、ここでアルバイトしよっかな」

 

「するの!?」

 

 決断はやっ!しかしナタネちゃんは自信ありげにこっちを見ている。

 

「自然を愛する人に悪い人はいないよ。助けてくれたし、ここで働くのも悪くないし」

 

 そういって微笑むナタネちゃんの顔は、こちらを疑う要素が全く無い。ま、眩しい……。

 侮っていました、あなたは旅の上級者です。年季や経験が豊富な人ほど、無条件に相手を許し信じる寛容な心を持つのです。ダイゴさんとかテッさんとか。

 そんなナタネちゃんを見て小さく溜息を吐く。色々な意味で勝てない人だと悟ったのだ。

 

「それじゃ今日はお休みだし、色々教えておかないとね」

 

 お店の事とか、裏庭の事とか、お仕事の事とか、部屋の事とか、頼み事とか色々ね。まずはそれを聞いて最終的な判断を仰いでもらおう。

 心なしか、ナタネちゃんがワクワクしているような気が……まぁ、やる気があるならよし!旅の目的を忘れていなきゃいいけど。

 

 

 

―そういえばナタネって名前とその格好、どっかで見たような気が……。

 

 

 

―続く―




当作品で描くナタネはアニメの影響を受けています。穏やかだけどテンションあがりやすい子です。

ちなみにナタネの手持ちはプラチナ強化後の手持ちを参考にしました。
現在の手持ちが3匹なのはホウエン地方のポケモンを手持ちに加える予定だからです。

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