それにしてもナタネもそうだけど原作キャラクターの口調が合っているのか不安でたまらないです(汗)
今日は営業日。曇り空だからかあまり元気のないナゾノクサ達+αに与える水の量を控えめにし(この辺ワガママで困る)、木の実も控えめに収穫。もうそろそろ新しい畑の木の実が生るかな?
庭の芝生や庭木の手入れをした後、ナタネちゃんとポケモン達で店の準備をする。今日は木の実が少ないこともあり、保存しておいたジャムや飴、乾燥して粉にしたものがメイン。
「そういえばさ、なんで頭にタオルなんか巻いているの?」
今ナタネちゃんを見て気づいたけど、頭に白いタオルをバンタナみたいに巻きつけていた。
確かに今朝みたら寝癖があったけど、洗って直したんじゃなかったっけ?
「ああこれ?食べ物を扱うし、髪の毛が落ちないようにしてんの。ハヤシさんだって緑のバンタナを巻いているでしょ?」
「なるほど」
僕は庭弄りすることもあって汚れやすく、調理もするから常日頃バンタナを頭に巻いている。
そして店内の仕事は木の実やその加工食品を配る仕事があるから、髪が落ちないようにするのは確かに大事。忘れていましたわ。
それに気づくとは……ナタネちゃん、もしや出来る子?今後の働きに期待しちゃう!
(早々バレたらつまらないしね)
「ナタネちゃん何か言った?」
「独り言でーす」
―――
さて、営業時間になってお客さんが来ました。今日はそこそこの賑わいでホっとした。
玄関に置かれた黒板には木の実が少ないと書かれているけど、それでもお客さんは保存食や焼きたての木の実パンを買ってくれる。
趣味で出来た店とはいえ、お客さんが来てくれるのはやっぱり嬉しいもんだ。ありがたや、ありがたや。
そういえばナタネちゃんはどうしているかといえば……立派にお仕事してくれています!
なんていうか、イメージでいえば「出来るOLさん」って感じ。そう思えるぐらいにスムーズな働きぶりを見せてくれる。
接客よし、会計よし、商品の並べ方よし、要領よし、そして笑顔よし!んもうパーフェクツじゃないですか!見習いたいぐらいよ。
「ハヤシさん、確かカゴの実の予備って物置にあったよね?とってきまーす」
「あ、はいはーい」
って、もう行っちゃったし……いやぁ本当に凄い人だ。高い能力からして結構なお偉いさんだったり……ああ、また頭に何かが引っかかる……。
「ハヤシさんちゃーっす」
おっと、この声は確か。
「あ、イサミちゃんか。こんにちは」
「ご無沙汰っすー」
光るおでこに赤毛のポニーテール、そして頬の絆創膏が特徴的な10歳ぐらいの女の子。
シャツに半ズボンのみというボーイッシュな格好をした彼女はイサミちゃんと言って、うちの常連さんであるアサ婆ちゃんのお孫さんだ。
イサミちゃんは女の子だけど、見た目どおり男の子のような口調で話す元気な子だ。アサ婆ちゃんの子供の頃もこんな感じだったとか。
あ、アサ婆ちゃんで思い出した。
「そういえば今日はアサ婆ちゃん来なかったけど、イサミちゃん何か知っている?」
「それがさー、婆ちゃんったら今朝ギックリ腰になっちゃって」
「ギックリ腰?」
あんなに元気なアサ婆ちゃんがギックリ腰なんて珍しい。軽くビックリしたよ。
「そーそー。そんなんだからアタシが婆ちゃんの代わりに買い出しに来たんすよ」
「それはお疲れサンダース」
「つまんねーっすよ」
ズバっというねこの子は。まぁ自分でも10点も行かないようなポケモンダジャレだと思うけどさ。
けどあれだよ、キンセツっ子はダジャレをついつい言っちゃいますから……そうだよね?
それにしても、アサ婆ちゃんがギックリ腰かー……いつも木の実パンを楽しみにして来てくれていたのに。
早く売ってくれと急かすイサミちゃんに木の実パン入りの紙袋を渡す直後、僕は決めた。
「あざーっす。んじゃアタシはこれで」
「ねぇイサミちゃん、今度お見舞いに行っていいかな?」
「婆ちゃんの?……お土産にパン持ってきてくれたら喜ぶんじゃないッスかね?」
「もちろんだよ。ここんとこ畑弄りに夢中でフエン温泉に行っていないし」
「フエン温泉ですか?」
「「どわっふ!?」」
び、びっくりした!居たなら事前に声かけてちょうだいよナタネちゃん!
しかしナタネちゃんの目がキラキラと輝いているような……もしかして温泉目当て?
「友達に、ホウエンに行くなら絶対にフエン温泉に行っておけって言われていたんですよ。行くなら私も連れて行ってよ」
「けど僕は一応お見舞いで行くんだよ?ナタネちゃんはナタネちゃんで温泉入りに行けばいいじゃない」
「こういうのは誰かと一緒に行った方が楽しいじゃない!」
うわぁ、ナタネちゃんから「連れてけ~、連れてけ~」ってオーラが溢れ出ている……ように見え る。気のせいかロズレイドもキラキラとした目でこちらを見ているし。
……む、隣では生暖かい視線で見られているような、ていうかイサミちゃんじゃないか。どしたのそんな目でコッチを見て。
「はっはぁん?ついにハヤシさんも彼女もちですか?」
そういえばイサミちゃんって普段は男の子っぽいけど、色沙汰とか恋人(ユウキ君とハルカちゃんみたいな)を見る目ってこんな感じになるよね。
それで、女の子であるナタネちゃんが傍に居るからそう思ったわけか。
「「そんなことないない」」
おお、ナタネちゃんの台詞と被っちゃったよ。ナイスシンクロ。
「ハヤシさんは恩人で友達みたいなもんだよ。それに草ポケモン好き仲間でもあるし」
「確かにナタネちゃんは可愛いけど、そんな風に捉えたりはしないよ」
可愛いと思っているのは認める。素直な所とか、自然と触れ合う姿とか、草ポケモンを可愛がる所とか。
僕って、僕を知る友人曰く、「自分よりも小さな子なら誰でも可愛いと思える性質」らしいからねぇ。
ホミカさん?彼女は僕の憧れです。
「……相変わらずッスね、ハヤシさんって」
ほっとしたようなそうでないような、と呟くイサミちゃんの顔はどこかつまらなさそう。
そんな期待されても困るなぁ。そういうイサミちゃんこそ彼氏の1人ぐら、いだぁぁぁぁ足踏まれたぁぁぁぁ!!
―――
商品が少ない事もあって11時にはお客さんが居なくなったので、午前中の仕事はここまでにしておこう。調理品増やさないとなぁ。
せっかくなのでお昼の準備。ポケモン達はその辺で遊んでいるのだが……いい光景だ。
まだ慣れていないからかキョロキョロと辺りを見渡すトロピウスをローちゃんとロズレイドが宥め。
はしゃぐドダイトスを遊びで持ち上げるゴーさんを見たポジフォルムのチェリムが拍手を送り。
トロピウスに喧嘩を挑もうと跳ねるキンさんを慌ててガーさんが止める。
……あ、ハーさんとスーちゃんがトロピウスの背中に登ろうとしている。トロピウスは子供ら相手に困っている。可愛い。
ああ、草ポケモンが居る光景っていいなぁ……タネボーとかナゾノクサとかもいるけどさ。
「ああ、草ポケモンが居る光景っていいねぇ……」
「あ、ナタネちゃんもそう思う?」
「当然でしょ、やっぱり草ポケモンは自然の中ではしゃぐ姿が美しいよね」
その通り!やはりナタネちゃんとは感性が合うなぁ。
「……それで、フエン温泉にはいつ行くの?」
お仕事モードが終了したナタネちゃんはテーブルを広げながら僕に聞いてくる……目をキラキラさせながら。
広げたテーブルにテーブルクロスを敷きながら、僕は彼女にピシリと言わせてもらう。
「言っとくけどお見舞いが主体だからね?温泉にも入るけど」
「解っているって」
解っているならいいけど……まぁ、友達と一緒に温泉に行くのは久々だし、楽しみには違いないけどさ。
「明日の午前中から行くよ。お見舞いついでにフエンタウンで一泊するつもり」
「おっけー!なら今日中にお目当ての草ポケモン捕まえてくるね!」
「頑張るぞー!」と自分の手持ちポケモンに伝えるようにして叫ぶナタネちゃん。
早く行く理由だけど、アサ婆ちゃんに早く木の実パンを届けてあげたいからね。明後日はお休みだし。
―さてさて、久々のフエンタウンだ。アスナさん元気にしているかな?
――
その日の夜。
「ただいまー!」
「遅かったねー……って、うわナタネちゃん砂だらけじゃないのさ!?」
「いやー、あの砂漠って凄いわねー。侮ってたわ」
どうやらサボネア目当てで111番道路の砂漠へ行ったみたいだけど……ナタネちゃんって強い子だなぁ。
―続く―
ボーイッシュ少女イサミちゃん。名前の由来は「アサ」婆→「イサ」ミとシンプル。彼女もトレーナーです。
ちなみにナタネちゃんの言う友達とはスモモとスズナの事。
―オマケ・お客さんの反応―
(なぁ、あのアルバイトの子ってナタネちゃんじゃね?)
(あ、本当だ。ヘアバンドしていないから解んなかった)
(あの噂は本当だったんだなぁ)
(トロピウスを追っかけてたナタネ似の女の子って、本物のナタネさんだったんだな)
(どうする?サインでも貰う?俺、実はジムリーダーのサイン色紙を集めているんだよね)
(うーん、わざわざトレードマークを隠すってことはお忍び旅行じゃね?黙っておいてあげようよ)
(だなぁ。周りの人もそっとしてあげているみたいだし……)
(おい、なにロズレイドに近づいているの?)
(せっかくだし、こっそりロズレイドにサインでも貰おうかなって)
(ポケモンにサインねだるなって)
(あ、サインあざーっす)
(本気でサインしてくれたんか!?)
―続かない―