ポケットモンスター・ライフ   作:ヤトラ

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 なんで木の実屋さんかって?ルビサファの趣味がきのみ栽培だからさ。
 なんでガーデニングがメインなんだって?ガーデニングに憧れていたからさ。
 金銭感覚とか土地とか食料事情とか電化製品とかどうなっているのかって?僕にも解らんよ。

 そんな適当さも混ざっている微妙な小説ですが、楽しんでもらえれば幸いです。


その1「きのみ屋さんの朝」

 かつてホウエン地方に伝わる伝説のポケモンによって地方各地の陸と海が荒れに荒れ、ホウエン全体を騒がす大事件に見舞われた事があった。

 そんな大事件は「ある者達」の協力により見事治められ、3年も経った頃には自然と落ち着き(この間にも他地方で大騒動があったが、ここでは伏せておく)、再び平和な日々が訪れた。

 そんな日々の中、世間は他地方の技術やブーム、新たなポケモンに目が行くが、ここホウエン地方では少なからず注目を集めている店がある。

 

―曰く「きのみの専門店」

 

―曰く「お子さんでも優しいお値段」

 

―曰く「野生のポケモンが出没する、大きくて綺麗な裏庭」

 

―曰く「元・キンセツシティのガーデニングマニア」

 

―曰く「今も昔も趣味で出来ている店」

 

 その店の名は「大きな庭のきのみ屋さん」。

 先人が隠居する前よりシダケタウンで人気の小さな店の名前だ。

 

 

―――

 

 僕ことハヤシの朝は、窓から差し込む光で目を覚まし、近所のドードリオの鳴き声で眠気を覚ます事から始まる。

 まぁ子供の頃から早寝早起きを習慣としていたこともあるけど、一番の理由は「趣味の為」に尽きるだろう。人間、やりたいことがあると早く起きられるもんです。

 遅れて鳴り響くポッポ時計を止め、背伸びをする。時刻は6時を指していた。

 窓辺に置かれた鉢植えの上では、ローちゃん(ロゼリア♀)が一先早く起きており、気持ち良さそうに朝日の光を浴びていた。

 そんなローちゃんに「おはよう」と言って頭のトゲを優しく撫でやると嬉しそうにはしゃぐ。可愛い。

 ちなみにうちの子の特性は「しぜんかいふく」なので安心。以前「どくのトゲ」持ちのロゼリアのトゲに触れたらえらい目にあった……。

 

 ローちゃんには先に降りてもらい、僕は洗顔と歯磨きをさっと済まし、2階に設置しているポストから新聞と手紙を出す。窓を見たら配達員を乗せたペリッパーの後ろ姿があったので手を振って見送る。

 「カロス地方で話題のハチクマン、ホウエンムービーズで上映決定!」と書かれた記事に目を配りつつ、手紙の差出人を確認。一つはマサ、もう一つはテッさんからだ。

 けどうちは朝から忙しいので、手紙は私室のテーブルに置いて後回し。さっさとツナギに着替えようっと。

 

 新聞を読みながら階段を降りていると、「バクォーン!」というデカい音が木製の壁を通じて耳に響く……が、慣れっこなので効果は今一つ。

 ご近所さん家のダブルス(ドードリオ♂)を見習いなさい。音量は劣るけどキレがいいんだ。

 1階にたどり着くと、朝日に照らされた、僕がよく見ているお店の光景が広がっていた。

 

 右側からは窓から漏れる朝日が入り、左側に並べられた商品棚とテーブルが照らされ……あ、ローちゃん、テーブルクロス掛けてくれてありがとね。

 今は商品が無いからガランとしているけど、これから棚やテーブルに品を並べると思うとやる気があがるってもんだ。

 

「よし、今日も頑張ろっか!」

 

「ロー!」

 

 うん、いい返事だローちゃん。

 

 意気込みを注入してからローちゃんと一緒に背伸びをして、僕は厨房から朝御飯を出す。昨日の売れ残りのオボンブレットとモモンのみのジャム、モーモーミルク、そして各種ポケモンフーズと受け皿。

 肩に乗せたローちゃんにミルク瓶を持ってもらい、残りを両手で抱えた僕は裏庭に向かう。

 

 「大きな庭のきのみ屋さん」の名の通り、ここの裏庭はかなり広い。低木で囲まれた庭の半分はきのみ畑、後の半分は庭木が並んでおり、奥には綺麗な水辺がある。

 イシ爺が営んでた頃の庭は荒れまくっていたのに……趣味のガーデニングが旅で鍛えられた結果がコレだよ。ドヤァ。

 

「みんなー、朝御飯だよー」

 

 それは置いといて、今は戦前の腹ごなしだ。

 裏庭のテーブルに自分の朝食を並べながら声を掛けると、庭に居たローちゃんを除く全員がやってくる。

 

 奥の水辺からガーさん(シザリガー♂)が。

 

 ケムッソを外に逃がしてたゴーさん(バクオング♂)が。

 

 警備メカみたく決まったルートを浮遊していたヤーやん(ネンドール)が。

 

 地中からサンちゃん(サンドパン♀)が。

 

 アーさん(エアームド♂)は寝ぼけてたのか庭木から落っこちてきた。

 

 そしてローちゃん(ロゼリア♀)は皆の分のポケモンフーズを配膳済み。

 他の子を差し置いて自分だけ先に食べるような卑しい子じゃないんだよ、うちの子らは。

 

 これが、店を継ぐ前から苦楽を共にしてきたポケモン達です。タイプ相性とか考えず、気に入ったから捕まえた子ばかりです。

 畑に散らばる各種トラップに注意しつつこっちにやってきて

 

「「「「「( ゜▽゜)ノノ(ごはん、ごはん!)」」」」」

 

 と言わんばかりにご飯をねだってくる。個性豊かなうちの子だが、ごはんとなると気持ちが一つになるんだよね、あっはっは。

 

 

 

―――

 

 時刻は朝の7時。

 ラジオを聴きながら朝御飯を食べ終えた後は、いよいよ趣味兼仕事の時間。腕がなるぅ~。

 

「よーし、今日も頑張るぞー!」

 

―え、さっきも言っただろって?こういうのは気分で言うもんだからいいの!

 

 まずはきのみ泥棒対策にに敷いておいた各種トラップの駆除から。

 アーさんの『ふきとばし』で『まきびし』や『ステルスロック』を吹き飛ばし、ローちゃんに『くさむすび』をほどいてもらい、ヤーやんに畑を囲んでいる『リフレクター』と『ひかりのかべ』を取り除いてもらい、駆除完了。

 これだけ厳重にも関わらず、しつこくきのみを狙ってくるポケモンがいるんだよね。『どくびし』を撒かないのは優しさです。

 

 ちなみに罠を解除した後から鳥ポケモンや虫ポケモンが狙ってくる事もあるが、ゴーさんとアーさんが番ポケしているので大丈夫。

 

 次はきのみ畑で採取と雑草抜き。

 今日多めに採るきのみはクラボ・ヒメリ・フィラの辛いきのみ三種類とオレン。今日の特売品はきのみスパイスとオレンパンにしよっかな?

 モモンとチーゴはほどほどに採り、珍しいきのみは5個ほど、人気のオボンとラムは実がなっていないので諦める。実るのは明日とみた。

 

 あ、カゴとナナシが枯れてた。畑の土も寂れてきたし、そろそろ耕そっか。

 

 新しく落ちてたカゴとナナシのきのみを拾い、畑に生えているきのみの草木を根ごと抜き取る。枯れたものは畑の端に置いといて、それ以外は鉢植えに移植する。

 

「サンちゃん、この畑に『たがやす』よろしくー」

 

 呼ぶとサンちゃんは「待ってました!」と地中から顔を出し、自慢の爪で畑の土を掻き回す。がんばり屋なサンちゃんは働く姿が一番似合うよ、うん。

 にしても農作業に便利な技だよね、『たがやす』って。『じならし』よりも丁寧にしてくれるからありがたい。

 

 サンちゃんが耕している間はローちゃんと一緒に畑の雑草抜きに励む。時々ナゾノクサがいる事もあるので慎重に。

 広い畑の雑草抜きは一人と一匹がやる事で短縮され、終わる頃には耕しが完了してる。お疲れさまサンちゃん、ローちゃん。

 同じルートを巡回するヤーやんを尻目に新しいカゴの実とナナシの実を植え、畑全てに肥料を蒔く。新しく植えた畑にはより良い肥料を蒔くのがうちのやり方。

 

 肥料を蒔いたら水やり。ちなみにガーさんは水タイプだけど水は蒔きません。ガーさんは水辺の番ポケだから。

 水やりはホエルコ如雨露で一つ一つ丁寧に。必要な水の量をローちゃんに教わりつつ、少なすぎず多すぎずを見極める。

 この時、草木に紛れて畑に埋まっているナゾノクサにも水をかけてやる。クサイハナに進化したら自分から出ていくし。

 

―なんでこんな面倒な事をしているかって?ポケモン同様に愛があるから手間を掛けるのさ。

 

 そうやってきのみとナゾノクサに水を蒔いて廻ると……お、居た居た。

 

 きのみの草木に紛れ込むようにして、しかしソワソワしてるからバレバレな草ポケモンが一匹いる。

 この子は最近になって畑に混ざってきた、ロゼリアの進化前であるスボミー♀だ。

 毎朝水やりの時に欠かさず現れるので、今では常連さん扱い。スーちゃんと名付けてます。

 スーちゃんはバレていないと思っているのか堂々と立っており、今か今かと水浴びを待っている。

 気付かないフリをしながら水を蒔くと、スーちゃんは花が咲いたような笑顔を浮かべて喜ぶのだ。うん、いつ見てもめちゃくちゃ可愛い。ローちゃんなんてメロメロだよ。

 

 他のナゾノクサ達も「はやくー」と水浴びをせがんできたので、広範囲に如雨露を振って雨を降らす。これぞ人間の『あまごい』……無いな、うん。

 

 

―――

 

 さて、これで水やりは終了。スーちゃんはいつも通り茂みの中に消えていった。

 ヤーやんに壁を張ってもらい、居眠りしてるアーさんを起こして「まきびし」を蒔いてもらう。昼間の防犯はこれで十分。

 

 時刻は8時30分。やはりポケモンに手伝ってもらっても時間が掛かるなぁ。

 心地よい疲れ、そして満足感と達成感を味わった所でツナギを脱ぎ、私服に着替える。

 アーさんとヤーやんとガーさんに畑の警備を頼み、ゴーさんとローちゃんを連れて開店の準備を始める。

 

 第一にやる事は、裏庭への入り口に「まきびし注意!勝手に入らないでね」と書かれた看板を置く事。いるんだよね、勝手に庭に忍び込んで痛い目に逢う輩が。

 

 次は今朝取れたばかりのきのみを商品棚に並べる。辛い、甘い、苦いと、きのみの味ごとに分けるのがポイント。

 

 その次はきのみで作った商品をテーブルに並べる。

 お得なきのみの詰め合わせセット、モモンのみのジャム、カゴのみドリンク、乾燥させたきのみの粉袋、12種類のきのみ汁などなど。昨日の売れ残りは半額コーナーに。

 

―ゴーさん、売れ残りのオボンクッキーをつまみ食いしないの。

 

 色んな商品を並べ終えた頃には九時を少し過ぎてたので、急いで玄関に向かう。今日はまだ人が来ていないようだ。

 玄関の黒板に今日のオススメや特売品を記し、「クローズ」の札を裏返して「オープン」と表示させ、看板ポケモンことローちゃんを専用の鉢植えに置いて準備完了。

 

 

 

 さぁ、「大きな庭のきのみ屋さん」、本日も元気に開店だ!

 

 

 

 

 

 さて、これからきのみスパイスときのみパンを焼かないと。

 

 

―続く―




 変なネーミングセンスだと思うでしょう。けど私としてはポケスペみたいな名づけ方ができて満足です(笑)

 ちなみにネーミングの基準は♂なら「●●さん」、♀なら「●●ちゃん」、性別不明は「●●やん」です。

 現在プレイしているポケモンブラックも全てこれです(酷ぇ)

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