前回のあらすじ:迷子の腕白イーブイはあざとかった
10/2:誤字修正
突然だが僕ことハヤシはシダケタウンにお店を構えているものの、実家があるキンセツシティには度々立ち寄っている。
都会寄りだからフレンドリーショップの品揃えが良くて買い物にしょっちゅう行くし、ご近所さんや友達からお茶会やバトルに誘われることもたまーにある。
中でもアキコおばちゃんは、知り合いであれば誰でもお茶に誘い、ぺちゃくちゃとお喋りをする気のいいおばちゃんだ。息子のゲンタ(ジムトレーナー♂)が遠くに行っちゃったこともあって寂しいんだろう。
「あらあらそうだったのぉ。ごめんなさいねぇわざわざ伝えに来てくれて」
「ゴメンナサイネー」
「いえいえ、お気になさらず」
そんなアキコおばちゃんにイーブイの事を話したと思ったんだが、いつの間にかお家の小さな庭でティータイムと洒落込んでいた。
流石アキコおばちゃん。何気なく(良い方向へ)誘い込む術が時に恐ろしくなるぜ。ペラップのペッコ(♀)も一緒。
「実はねぇ、あのイーブイは息子のゲンタから貰ったタマゴから孵ったのよね。最初は大人しかったんだけど、育つに連れて腕白になって手がつけられなくなったのよぉ。お部屋をいっつもグッチャグッチャにしちゃうのよ」
「グッチャグッチャー」
「あー、確かにあれは凄かったですね」
おばちゃんが困ったように頬を当てて言うが、それは全力で同意する。ペッコもイーブイの被害にあったのか、嫌そうな顔しているし。
食べた分をすぐに消費するかのような腕白っぷりだったからなぁ。元気なのは良い事なんだが、加減を間違えると厄介だよね。
「でね、ここんとこ首輪をさせてお外で遊ばせているんだけど、遠くまで遊びに行っちゃうことも多くてねぇ。ハヤシ君みたいに隣町から来たっていうのはまだいい方なのよぉ。この間なんかトウカシティのセンリさんが連れてきてくれたぐらいで」
「トウカシティって……」
真面目なセンリさんの事だから帰りは彼の手でアキコおばちゃんの家まで届けたにしても、片道だけでも結構な距離があるはずじゃ……。
あのイーブイの行動力は底知れないなぁ……あの子、本当に生まれたて、しかも人の手で孵化したポケモンか?野性味がありすぎる。
そういや子煩悩(無自覚)なセンリさんで思い出したけど、ユウキ君どうしているかな。相変わらず海に潜っているんだろうか?
「……話が逸れましたが、イーブイを引き取ってもらえますか?」
「あらあら、私ったらついつい」
「ツイツイー」
お喋りは楽しいけど、下手したらアキコおばちゃんは2~3時間は話しちゃうからね。さっさと用件を済ませよう。
―――
さて、腕白イーブイを引き取ってもらう為、アキコおばちゃんを連れて店にやってきたわけなんですが。
「フィ!」
裏庭で片方の前脚を上げて元気よく挨拶をするリーフィアが出迎えてくれました。
「あら、ハヤシちゃんの新しいポケモンかしら?可愛いわねぇ」
おばちゃんがリーフィアの頭を優しく撫でる。アキコおばちゃんはペッコを含め、可愛いポケモンならなんでも好きだからなぁ。
リーフィアも嬉しそうに撫でられるが、そんなリーフィアを見つめる視線が幾つか……ローちゃん・ゴーさん・ガーさんの3匹だった。
困ったように見ている3匹の視線の先はリーフィアっていうより首元……あ。
「アキコおばちゃん」
「なにかしら?」
「そのリーフィア、おばちゃんのイーブイが進化したっぽい」
「……あらあら」
目を丸くしたアキコおばちゃん。彼女に抱かれたリーフィアが「どうしたの?」と言っているかのように見上げている。
そのリーフィアの首には、つい先刻まで裏庭をはしゃぎまわった腕白イーブイがつけていた首輪があったのだった。
―なぜにリーフィアに進化したし?
―――
リーフィアをアキコおばちゃんとペッコに任せるとして、裏庭の状況を確認しよう。
裏庭そのものが荒らされた様子は無い。流石ザンさんとクケちゃん、他ポケを寄せ付けないその強さに痺れる憧れるぅ!ただしクケちゃん、遊ぶなら後にしてちょうだいね。
次に水辺。コイキング達は普通に泳いでいる。しかし水辺に近い陸地ではサンちゃんがびしょ濡れで気絶していた。地面タイプがたっぷり水を浴びたらダウンするわな。
原因は……まぁあのイーブイなんだろう。問題はどうしてリーフィアに進化したかだ。
しかし僕には心当たりがあった。陸と水辺の境目に置かれている、苔むした小さな岩だ。
シンオウ地方の「ハクタイの森」、イッシュ地方の「ヤグルマの森」、僕が知っている限りではそういった場所でリーフィアに進化するらしいが、いずれも進化する条件として「コケで覆われた岩の付近」というものがある。
うちの庭にある岩は頭ほどしかない大きさだが、もしこの傍でイーブイがサンちゃんを倒したとしたら条件は当てはまる……当てはまるんだが……。
「それにしたってこの裏庭でリーフィアに進化するなんて……驚きモモンの実サンの実だよ」
モモンの実はともかく、サンの実は育てたことも見たこともないけどね。一度お目にかかってみたいなぁ。
緑溢れる森の中で進化するというリーフィアがうちの裏庭で進化するって、それだけうちの庭は自然豊かってことなのかな?
それにしたって人の手が加えられた人工的な自然だし……草タイプ好きとはいえ生態に詳しいわけじゃないし、ましてや進化ポケモンの謎は専門家じゃないとわからないよなぁ……。
―草タイプで思い出したけど、ナタネちゃんに手紙届いたかな?
「ちょっとハヤシちゃん、聞こえているかしら?」
「は、はへ?」
「まったくもう、あなたは考え事が多いわねぇ」
うう、いつの間にか思考に耽っちゃった。おばちゃんが声を掛けてくれなかったらもうしばらく考え込んでいたかも。
おばちゃんに抱かれていたはずのリーフィアは裏庭でゴーさんとペッコの3匹で駆けっこを始めたらしい。駆けっこ好きなのかな。
「そういえばおばちゃん、リーフィアを連れて帰らないんですか?」
「そのことなんだけどねぇ」
おばちゃんは諦めたような顔で駆け回るリーフィアを見つめている。
「リーフィアちゃんをあなたの家において欲しいのよ」
「……え?」
これまた唐突ですね。ちょっと僕、頭の処理が追いつかないよ。
「ほら、リーフィアちゃんったらあんなに嬉しそうにはしゃいでいるでしょ?窮屈なうちじゃ滅多に見られない顔よ。そう思うとねぇ、おばちゃんの家よりハヤシ君の家で暮らした方が幸せじゃないのかって」
「いいの?せっかくゲンタさんから貰ったタマゴから孵したっていうのに」
ここから遠いムロジムでジムトレーナーとして働いているゲンタさんが、久しぶりにアキコおばちゃんの元に帰って来た時に貰ったというイーブイのタマゴ。
そのタマゴから孵ったイーブイを我が子のように可愛い可愛いと、キンセツシティの知り合いに自慢しまくっていたのに。ちなみに僕は1時間聞かされました。
「可愛い子には旅をさせろっていうでしょ?息子もリーフィアちゃんも大事だから、遠くでも幸せに暮らして欲しいと思うのよ。……で、どうかしら?」
寂しがりなアキコおばちゃんだが、こういった所も含め、しっかりとしたおばちゃんだね。
けど肝心のリーフィアに聞かなきゃ始まらないので、僕はリーフィアを呼んでみる。パタパタと尻尾を振りながらこっちに向かってきたよ、可愛い。
パタパタと振ってお座りするリーフィアの頭を撫でながら、僕は尋ねる。
「おばちゃんがココに住んでもいいっていうけど、君はココに居たいかな?」
撫でていた手を離すとリーフィアは、少し考え出し、ちらりと後ろを振り向く。
そこには期待しているかのようにリーフィアの見つめるゴーさんの(怖い)顔が。すっかり仲良しになったね、君ら。
「……フィ!」
リーフィアは、今後ともよろしく、と言っているかのように良い笑顔を見せてくれた。
後ろでゴーさんが喜びのダンスを踊るのを無視し、もう一度リーフィアの頭を撫でる。
「これからもよろしくね」
―あ、このリーフィアって男の子だ。
サンちゃん「(;ω;)(私、忘れられてる・・・)」
アーさん「(―ω―)zzzZZZ(グーグー)」
ロトやん「(@_@;)(知らない子コワいコワい)」
―続―
おめでとう!イーブイは(なぜか)リーフィアに進化した!
かなり不可解な進化になりましたがご了承ください(汗)
今後はこの謎を解く為、他地方に旅行に出かけます。
これは投稿序盤から考えていたネタで、最初はイッシュにしようと思ったんですが、話の流れから解るようにシンオウを目指す予定です。
変った理由?リーフィアが登場したシンオウが関わりが深いし、ナタネに愛着が沸いてしまって(笑)