ポケットモンスター・ライフ   作:ヤトラ

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久々の更新ですが、今回は物凄くサックリしております。こんな感じで書く方が楽でいいかなーと思いまして。
(以下、本音)
カブラ亜種めぇぇ!爆弾岩なんか捨てて掛かってこぉぉい!!亜種装備作るんじゃぁぁ!!!

10/16:誤字修正


その22「きのみ屋さんとツツジ」

 今日は木曜日。

 

「いい加減にライブキャスターを買ってください」

 

 店内のカウンターの向こう側に居るカナズミジムリーダー・ツツジちゃんが怒り顔で迫ってきています。

 

「ちゃん付けはやめてくださいっていつも言っているじゃないですか!」

 

「心を読まれた!?」

 

 

 

 穏やかな晴れの日で、木の実畑の栽培にはもってこいの天気。

 腕白リーフィアことイーくんは嬉しそうにはしゃぐけど、ゴーさんという遊び相手がいるからか他に迷惑をかけることもない。

 臆病なロトやんもようやくココでの暮らしに慣れ、最近の日課となっている芝刈りに精を出している。芝刈りの先輩であるサンちゃんから指導を受けているようだ。

 僕もノンビリと畑仕事をしようかなーと思った時、ツツジちゃ……ツツジさんがやってきたのである。

 

 ちなみにホミカをさん付けで呼ぶのは僕の中でカッコイイ系にカテゴリしているから。

 

 ツツジさんは近所のトレーナーズスクールでたまにやっている木の実講座に使う木の実をうちの店で購入してくれる。曰く「質の良い木の実ですから」とのこと。

 しかしジムリーダーの仕事はもちろん、トレーナーズスクールの臨時教師として教鞭を持つこともあるのでテッさん以上に多忙で、手紙を寄越すかジムトレーナーの誰かを向かわせて注文するかして木の実を届けに行く。

 ついでに心機一転を謀りたいと言ってトレーナーズスクールの生徒として勉学に励むようになったんだとか。相変わらず真面目な子だなぁ。

 

「……で、そんな忙しいツツジさんがなんでうちに?」

 

「忙しいのに連絡手段が訪問か手紙だけ、というのが不便で仕方ないんです!」

 

 追い討ちで「前々から言っているでしょ!」と怒られちゃった。

 

 そう、うちには通信手段が手紙しかない。パソコンはあるけど、実はメールが全然使えない。

 僕は流行に弱い人間だからか、ポケナビが発売されても「安売りしてから買う」と言っていつしか時代遅れになって使えないどころか買えなくなってしまった。

 現在の主流はテレビ通信も出来るライブキャスターとされているが同じ理由で買うのを躊躇っている。

 それになんていうか、新しい通信機器が出るかもしれないとお告げが。具体的にはポケナビのパワーアップ版みたいな。

 

「言っておきますが、そのうち買うよ、なんて言わせませんからね?」

 

「ありゃ」

 

「ありゃ、じゃありません!」

 

 バン!とカウンターを叩いて怒鳴るツツジさん。なんか鬼気迫るものを感じて怖い。肩に乗せたローちゃんが怖さで頭に抱き付いてきたよ。

 ふと我に戻ったのか、叩いた手を引っ込め、コホンと咳き込んでから照れくさそうにメモ用紙とチラシをカウンターに置く。

 

「注文する木の実の種類と数、それと届けに来て欲しい日付と場所を記した物です。こちらはデボンコーポレーションのチラシです」

 

 スラスラと説明する中、僕は簡単な地図とメモが書かれた紙、そしてチラシを見る。

 

 何々……「ライブキャスター・カラーバリエーション倍増キャンペーン」?

 

「丁度デボンコーポレーションでライブキャスターのキャンペーンをしていますから、木の実を届けるついでに買っておいてください」

 

「へぇ~、色々出たんだなぁ」

 

 主体の赤だけじゃなくて青や緑、紫やピンクとか色んなカラーが出てきたんだね。しかもキャンペーンなだけあって、最新機器を除いた全種が2割引と来た。

 ふとチラっとツツジさんの顔を見てみる……うわ、「買ってこなかったら怒りますよ?」と言わんばかりの不機嫌そうな顔。

 

「わ、わかったわかったよ。トレーナーズスクールに届ける前に買っておくよ」

 

 いい加減に通信手段を増やすべきなのは確かだし、イッシュに行っちゃったマサやミサトに連絡したいしね。

 そういえばナタネちゃんの連絡先も貰ったんだし……買ったら先に連絡しよっかな?手紙見てくれたかな?

 

 なんて事を考えていたらツツジちゃんが「よし!」とガッツポーズを決めていた。何故に?

 

「では失礼しますね。く・れ・ぐ・れも!よろしく頼みますわよ?」

 

 僅か0.5秒(体感)で雰囲気を切り替え、優雅に背を向けるツツジさん。

 付き合いは長い方じゃないけど、今日だけでツツジさんのイメージがガラリと変わったよ。なんであんなに張り切っていたのやら。

 

 あ、思い出した。

 

「ちょっと待ってツツジちゃん」

 

「ちゃん付けはやめてくださいと」

 

 背を向けたツツジさんが勢いよく振り返ってきた。よし、食いついたね。

 

「ちょっと見て欲しいものがあるんだけど、いいかな?」

 

 頭のいい彼女なら、あの苔むした石の事で何か解るかも。

 

 

 

―――

 

「ふむ……この石でリーフィアに進化したんですか」

 

 ある程度の話を聞いてくれたツツジちゃんは興味深い物を感じたのか、屈んで苔生した石をマジマジと見つめる。

 顔は至って真面目だが、「遊んでー遊んでー」とツインテールにじゃれつくリーフィアで台無し。この腕白っ子め。

 しかし博識かつ聡明な彼女が集中すればそんな事どうでもいいとばかりに顎に手を当てて考え込み、やがて区切りがついたのか立ち上がる。

 

「ハヤシさん、実はこういった事例は僅かながらあるんですよ」

 

 立ち上がったことで若干の差はあるが視線が合い、ツツジちゃんは予想外な事を言ってきた。

 

「……人ん家の庭にある岩で進化したことがあるの?」

 

「流石に裏庭の石で進化した、というのはありませんがね」

 

 話が長くなりそうなので、せっかくだからテーブルでお茶でもしよう。お茶請けはブリーの実のジャムを使ったスコーン。

 淑女みたいに優雅に紅茶を啜っているかと思えば、ジャムをつけたスコーンを一口食べた途端に年相当の女の子に。好物だったのかな。

 

 口にジャムがついたのを知らぬまま、彼女は軽く咳き込んでから語る。

 

 リーフィアの進化条件は知ってのとおり、苔生した岩がある場所。ハクタイの森やヤグルマの森など、深い森に置かれていることが多い。

 だが実はそれ以外でも場所で進化したという事例はいくつかあるが、前者で挙げた場所が有名なので雲隠れしてしまっている。

 

 その場所はバラバラではあるが、ツツジ曰く丁寧に手入れされた庭や畑にポツンと置かれた石……僕の裏庭にあったような苔生した石があるんだそうだ。

 森の中に比べて人の手が加えられたということもあり石から放つエネルギーの範囲は狭く、石にピッタリ寄り添うなりしないと進化しない、という報告もある。

 そもそも草タイプのエネルギーが豊富に含まれているリーフの石があるのにどうしてリーフィアに進化する条件がそんなややこしい物なのかも解っていない為、まだまだ謎が多い。

 

「……そんなわけですので、今度あの石を持ってシンオウに行ってきてください」

 

「話が唐突すぎるんですが」

 

 未だに口元にジャムがついていることを知らないツツジさんが真面目な顔で言ってきたので反射的に突っ込んでしまう。

 うちの裏庭で進化したのは異質じゃないってのが解っただけで充分なのに、なんでわざわざ遠い地方まで行かなきゃならんのさ?

 

「ハヤシさんは知らないから無理もありませんね」

 

 そういってツツジさんは再度、コホン、と咳き込む。相変わらずジャムには気づいていない。

 

「先も言いましたが、こういった事例は極僅かなものです。なので見つかった場合は私達ジムリーダーのような事情を知る者がナナカマド博士に報告・仲介する義務があります」

 

「ナ、ナナカマド博士に?」

 

 それぐらいなら僕でも知っている。シンオウ地方どころか各地方のポケモン博士でも最年長とされる偉い人だ。

 ポケモンの進化に関する研究の権威者でも有名で、最近はメガシンカについても色々と調べているとかニュースで言っていたな。

 

「ですからこの場合、私がナナカマド博士に報告し、あなたがその石を運んできてもらう必要があります」

 

「なんで僕が持っていく事になるの?この裏庭を調べるんじゃなくて?」

 

「私も詳しくは知りませんが、なんでも石そのものにエネルギーがあるかどうか調べるんだそうですよ?それにアチコチ回っていて忙しいようですし」

 

 そういえば地形などで進化したりメガストーンで進化したりと地方毎に新しい進化が見つかるから、調べる人は忙しいことこの上ないだろう。

 

「丁度よかったです。あなたがライブキャスターを買えばナナカマド博士へ報告する手間が省けますわ」

 

 ナイスタイミング、とツツジさんは大喜び。そんなに僕のアナログな通信手段が面倒だったんですか。

 

「とにかく、この件は私も仲介役を務めますので、後日お話の続きと致しましょう」

 

 そういってツツジさんは「話はそれで終わりだ」と言わんばかりに立ち上がる。

 なんというか、色々と唐突なことばかりでちょっと頭が混乱しているけど……。

 

「色々ありがとうね、ツツジちゃん」

 

「私にも色々と事情がありますからね。後、ちゃん付けはやめてください」

 

 なんてことないとツインテールを片手でかき上げるツツジさん。

 とりあえず明日買うライブキャスターを早く決めておかないと。濃緑と若葉色のどっちにしようかなぁ。

 

 

 

 

 

「そういえばツツジさん、口元にジャムついているよ」

 

「……あ」

 

 言われて口元を触ったツツジさんがやっと気づいたらしく、顔を赤くしだした。

 

 

 ……やっぱり、ちゃん付けで呼んじゃダメかなぁ。

 

 

「ダ・メ・で・す!!」

 

「心を読まれた!?」

 

 最後の最後にテンドンでした!

 

 

 

―続-

 




 この小説を書いていた時に最新情報で新ポケナビに気づきました。なのでこの作品におけるライブキャスターは若干中古品です。
 どうしていきなりツツジがライブキャスターを買うよう勧めたのかは次回明らかに!
 ちなみに作者の中のツツジは、聡明で賢いけど大人ぶりたい背伸びっ子、というイメージがあります(笑)

(以下、余談)
Q:今作者の中で一番熱いメガシンカポケモンは?
A:メガスピアー

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