今回はブラリ旅です。特に大きな意味はありませんが、すれ違いの出会いを楽しんでください。
思い出せ、思い出すんだハヤシ。僕はなんの為にシンオウへ来たんだ?
1つ!ハクタイジムの修復!挑戦者を待たせてはいけないから早い目に来て欲しいってナタネちゃんから頼まれたじゃないか!
2つ!ミサトに頼まれていた衣装を買いに行く事!こっちもなるべく早く郵送しておかないと!
3つ!マサに頼まれていたマキシさんのサイン!もし忘れたりしたら絶対マサにボコボコにされる!
そう、このシンオウ地方へは旅行に来たんだが、同時に頼まれ事も受けたじゃないか!
だから道草し過ぎちゃいけない……いけないんだけどさぁ……!
―ショキショキ……うーん、なんかバランスに納得がいかない。
「……もう少し切るか」
邪魔になる枝をハサミでチョキっと。野性の若木を相手に切り過ぎてはいけないから、慎重にね。
ソノオタウンを出た僕達一行は、昼の日差しが零れるハクタイの森に到着しました。
思いっきり息を吸って森の香を楽しんだ後、思いっきり吐いて幸せを噛み締める。これ、僕なりの森への礼儀です。
で、目の前に丁度良い高さの若木があったもんで……ついつい専用のハサミでいじっちゃっています。
木々から漏れる光で照らされているとはいえ、ここは深い森の中。草ポケモンのローちゃんとイーくんは結構はしゃいでいます。ソノオタウンでもはしゃいでいたがな。
ロトやんとミノちゃんは僕がいじっている木の根元でお昼寝。静かにしてくれるならありがたいので、集中してハサミ弄りを……。
「(▽A▽#)(退屈~。遊びなさいよ~)」
「ぶぼっふっ!?」
ク、クケちゃんの燐粉を吸ってもうた……ゲホゲホ、く、苦しい……っ!
―――
僕が吸った燐粉が毒だと思った?残念むせるだけの燐粉だったよ!……何がしたいんだ僕は。
ドクケイルの粉って気分次第で毒性とか変わるものなのかはさておき、毒の粉でなかったことに一安心です。
そんなわけでクケちゃんを怒らせた事もあり、さっさとハクタイの森を抜ける為に歩く。
まぁこういった森で道草を食ってしまうのは悪い癖だったので、あんな目にあったとはいえ中断できたのはよかったかも。急ぎの用もあるし。
しかしハクタイの森は美しい。トウカの森とは違った趣があるよ。
トウカの森はキノココがいるから時々胞子を吸っちゃうこともあるが、ここハクタイの森はそれが無さそうなので悠々と深呼吸できるのもグー。
ちょこちょこ見える珍しいポケモン。葉と葉の間から零れる光。なんか不気味な館は全力でスルーします。コワイコワイ。
そんなわけでハクタイの森を練り歩く中、旅の楽しみをいくつか見つけました。
―――
「こんにちは」
「こんにちわぁ」
チェリムを連れたお婆さんとご挨拶。背中に籠を背負っており、中には木の実がいっぱい。
「すごく沢山採るんですね」
「毎日ここに来ては水遣りをしていてねぇ、おかげさまにこんなに実ったよ」
どうやらハクタイの森へは散歩で来るらしく、水遣りをしてはたまに木の実を採取するんだとか。
いくつか木の実を土に植えて水をやった後、木の実スムージーのレシピを聞いてお別れ。
―――
「こんにちわー」
「こんにちは」
バイクを停めて森の風情を撮影している若いカメラマンと挨拶……あ、ビリリダマで発電するタイプの電動バイクだ。
「写真撮影ですか?」
「うん。今はシンオウ地方を旅しながら、こうして気に入った風景を写真に撮っているんだ」
バイクに乗った撮影の旅……いいね!一ヶ月以上シンオウに居るけど、撮りたい風景が多すぎて半分も回れていないとか。
いくつか彼がお勧めしてくれた写真を見せてもらい、これから行くというソノオタウンについて話した後に別れた。
―――
「おーっす!バトルしねぇ?」
「いきなりですか」
マッスグマを連れた元気な短パン小僧にバトルを挑まれました。どっちも絆創膏がアッチコッチ貼ってあるよ。
「一応急ぎでもあるんだけどなぁ」
「1対1でいいからさ!いいだろー?なーなーなーなーなー!」
「(▽■▽#)(うっさいわねこのチビ!)」
「(`■´#)(ご主人に何するんだ!)」
元気に駄々をこねる短パン小僧にクケちゃんが怒り、ご主人を守ろうとマッスグマが立ちはだかる!
結局バトルしたが、結構な場数を踏んだマッスグマ相手に拮抗し、最後にはクケちゃんの勝利。やっぱ強いなぁ「はらだいこ」。
成り行きとはいえバトルしてくれた礼に「ゴスの実」をくれてお別れ。店にも無い木の実だったから嬉しかった。
―――
突然ですがお昼のランチターイム。簡単な調理器具と木の実、保存用のパンがあれば美味しい料理が作れるもんさ。
そしたら匂いに釣られたのか、お腹を空かしたバックパッカーの少年が草むらから出てきて、せっかくだからとお昼をご一緒した……大食いウォーグルと一緒に。
食べながら話を聞くと、彼はイッシュ地方出身で、今は事情があって全国を旅しているらしい。
「ご馳走様でした!ありがとうございます!」
「お粗末さまです」
なんかデジャヴが。
「そうだ。実は人を探しているんですが……こんな人を見ませんでしたか?」
彼がゴソゴソとリュックから出して見せた物は、綺麗に折りたたまれた人相書きだった。
ふむふむ……綺麗な絵だし特徴も解り易く、名前はもちろん性格や好きな物まで書かれていてとても丁寧。
「残念だけど見ていないなぁ」
こんな目立つ子を一目でも見たら一生忘れない自信がある。なので会っていません。
「そうですか……」
―ピリリリリ
「ちょっと失礼……もしもし?……本当!?どこに……テンガン山の頂上だね?すぐ行くよ!」
彼のライブキャスターが鳴ったと思えば即座に繋ぎ、急に立ち上がってウォーグルに跳び乗った。
「すみません、探している人が見つかるかもしれないんで、これで失礼します!」
そういってバサバサと吹く羽ばたきの風に吹かれながら、僕はウォーグルに乗って飛び去った彼を見送った。
なんていうか、行動力に溢れた子だなぁ。荷物の量といい、人相書きの丁寧さといい……よほどその人に会いたいんだろうね。
「頑張れよトウヤくーん」
もう届かないだろうけど、一応ね。
……にしても、ナチュラル・ハルモニア・グロピウスかぁ。長い名前の探し人だな。
―――
トウヤ君と別れて少し休んだ後、ハクタイの森にある岩を見つけ、その前で佇んでいる人を発見。
「こんにちわー」
「こんにちは。良い天候に恵まれましたね」
穏やかな表情だけど目が鋭い、赤い髪に赤いスーツを着込んだ青年だった。雰囲気がバトルジャンキーなマサに似ている気が。
足元には彼の手持ちらしいイーブイがおり、陰に隠れながらこちらをチラチラ見上げている。可愛い。
「何をしているんで?」
「いえ、私のイーブイをリーフィアに進化させようか悩んでいるところでして……どうやらあなたもリーフィアをお持ちのようですし、何かアドバイスなどあれば」
「あ、うちのイーブイも進化したばっかで、まだ良い点が解らないんですよね」
可愛いっていのは確かなんだが、それを言ったらブイズは大抵可愛いよなぁ。
そうですか、と小さく囁いた後、赤毛の男は再び苔生した岩を見上げる。それほど進化が重要ってわけでもなさそうだ。
「それにしてもイーブイとは不思議なものです。高エネルギーが込められた進化の石で進化するかと思えば、このような地域で進化することもある」
岩の表面……水気と冷気を吸って冷たいであろう苔に触れながら彼は言う。
「イーブイは大地の恵みによって進化する……そう考えると、大地に敬意を持たざるを得なくなるってものです」
「けどイーブイって懐き具合でも進化するじゃないですか」
……あ、つい突っ込みを言ってしまった。
「……あっはっは、それは1本取られましたね」
軽く笑って流してくれた。この人ええ人や……!
一応急ぎの用事もあるということで、一言二言会話を交わした後でお別れ。
こんな森の中でも色んな人に出会えるから旅って楽しい。庭弄りをしたり店を開いたりする方が僕としては好きだけど。
さて、そろそろハクタイの森を抜けるかな?オヤツ時にはハクタイシティに着くでしょ。
―続く―
まさかのトウヤ登場。電話の相手はトウコ。2人揃って「Nを探し隊」(笑)
こちら2名もいずれポケライフとして登場させたいですね。ちなみに作者はN主派です。
他、感想板でピンときた者が1人、読んでいればどこかで見たはずの人も出てきました。
まぁ今回は出あっただけの話で、大きな意味はございません(苦笑)
すれ違いっていいですよねぇ。
次回はメインの1つ、ハクタイジムに到着!