ポケットモンスター・ライフ   作:ヤトラ

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「元したっぱ達の集い」シリーズが意外と人気なのが驚きです(笑)
年末ということで、忘年会風に書かせていただきました。最も、内容は忘年と関係ありませんが(苦笑)


ポケライフ「元したっぱ達の集い・その3」

 もうすぐ今年も終わり、新年が始まろうとしている。

 社会人は仕事仲間と、友人らは親しい友達と一緒に、今年の最後を締めくくる忘年会を開いていることだろう。

 忙しい人も忙しくない人も、何かしらの交友関係を持つ人達と飲みに行ったり、遊びに行ったりする。そうすることで、来年を気持ちよく迎えるのだ。

 

 それは「元したっぱどもの集い」も同じであった。

 

 

 

―――

 

 エンジュシティの居酒屋「炎舞(エンマイ)」。伝説のポケモン・ホウオウの掛け軸が目印の純和風飲食店。

 高級感溢れる仕様でありながらお値段は優しく、しかも料理は美味しくて団体さんもどんとこいな心強いお店である。

 今回は複数の団体さんが忘年会に来ているらしいが、「元したっぱどもの集い(ジョウト支部)」にとってはどうでもいい事だ。

 

 

 

「あー……堅苦しい挨拶は抜きじゃ!今年もご苦労さん!……乾杯!」

 

『かんぱ~い!』

 

 総勢30人を越える人々(全員元したっぱ)が各々の杯を掲げ、その後きゅーっと飲む。

 それを起爆剤にするかのように、各々のグループに分かれてお喋りに興じ、飲み放題の酒を楽しむのだった。

 ちなみにこの忘年会の経費の殆どが、ジョウト支部の古株5人の奢りなのだという。寄せ合った集金を含めても相当太っ腹な話だ。

 

 飲んで食べて喋って。元したっぱ達は心行くまで楽しんでいく。

 今年も大変だったな、来年も穏やかに過ごせると良いな……したっぱ達の平穏を求める声は意外と多かった。

 

 

 

「ふう……今年も、もうすぐで終わりなんじゃなって実感するのぉ」

 

 長くて白い顎鬚を伸ばした老人・ダキが賑わいを眺めながら、しみじみと焼酎を飲む。

 

「せやなぁ。……そや、今年も新規の元したっぱがぎょーさん集いましてん」

 

 目が弱いらしくサングラスをかけた妙齢の男・チュウネンがダキのお猪口に酒を注ぎながら言う。

 

「毎年、新規者も転職者も増える一方!『元したっぱどもの集い』を開いた甲斐があったってもんだ!」

 

 ガハハと笑うのは禿頭の中年・トウマ。豪快にジョッキのビールを飲んでいるが未だに酔っている気配が無い。

 

「ほんに早いですなぁ。こーいんやのごとしやねぇ」

 

 はんなりとした口調でお猪口の焼酎を飲む少女の名はテンナ。見た目は20代後半だが、声色と気配が大人の色気を醸し出していた。

 

「ロケット団から始まってフレア団まで入るとはな。……それだけ悪の組織がつぶれたって聞くと悲しい気がするがな」

 

 右頬に爪で斬られたような痣を宿す目つきの鋭い男・ツダは微妙に疲れた吐息を吐く。

 

 

 

 この5人は「元したっぱどもの集い(ジョウト支部)」の幹事であり、全員が初代ロケット団のしたっぱなのだ。

 その他の会員はジョウト地方で暮らしてはいるが、元の組織はバラバラだ。

 彼ら5人は大きな仕事を成功させ出世した資産家でもあり、「元したっぱどもの集い」を開いた「最初の10人」に数えられている。

 その事については追々話すとして、今は忘年会を楽しむとしよう。

 

 

 

「……う、ううっ」

 

「ど、どないしたんやダキはん、何を泣いておりますねん」

 

「いやのぉ、実は今年の春に旅立った孫娘の事を考えると、歳を取ったなぁと思ってのぉ」

 

「チハルちゃんか!ありゃ良い女になるぜ、ガッハッハ!」

 

「あかんわぁトウマはん、ダキはんの大事な孫ですぇ?」

 

「今は何しているんだ?」

 

「憧れのホウエン地方で旅をしているんじゃないかのぉ……この間、ぼくれー?ちゅうのを捕まえたとか言っておったな」

 

「ボクレー?カロス地方におるんやなかった?」

 

「俺、仕事柄ホウエン支部によく行くから知ってるぜ?なんでも近年、ホウエン地方に他地方のポケモンが出たとか……そうそう、イーブイも出たってよ!」

 

「イーブイ?ほんまどすか?」

 

「それって激レアなポケモンじゃねぇか」

 

「いやテンナはんにツダはん、昔はそうやけど、今はそうやないんです。今じゃイーブイは各地に広まっていて、一般家庭のペットとしても有名になっとるんですわ」

 

「あれまぁ驚きどすなぁ。うちらロケット団は随分貴重なポケモンやったのに」

 

「世代ってやつか……そういや化石ポケモンも最近じゃメジャーらしいな」

 

「復元装置ってやつでんな。もはや化石やあらへんっちゅーな(笑)」

 

「俺らの時代じゃ、プテラ、カブト、オムスターが有名だったな!」

 

「わしゃガチゴラスが欲しいのぉ。男のロマンをくすぐられるわい」

 

「解ってあらへんなぁ。男のロマンちゅーたらラムパルドやろ!」

 

「あらあら、男のロマンっちゅうもんは解りまへんなぁ。それよか、うちはニンフィアが好みどす」

 

「イーブイの進化系も色々と増えたらしいな……ていうか、どんどん面倒になるよな」

 

「言うたらあきまへん(苦笑)」

 

「面倒っつーたらあれだぜ、昔はデカい交換装置だったが、今じゃ片手で通信できる品物になったよな」

 

「がははは!世代ってのは便利になっていくもんだよな!昔は交換っつーたら近くの友達か現地集合しかできなかったのによ!」

 

「わしもついにオンラインデビューできたし、簡単になったものじゃのぉ」

 

「世代ゆたら、わいが一番驚いたのはアレやな、アレ」

 

「「「「「メガシンカ!」」」」」

 

「じゃの~」

 

「そうどすよね~」

 

「実物を見た時は『え?そこまで進化しちゃうん、ポケモンって?』って感じやったわ」

 

「実際は『シンカ』であって『進化』じゃないが、あそこまで行っちまうたぁポケモンってぇのはすげぇなオイ!」

 

「今じゃメガシンカはお強いトレーナーはんの基本らしいわぁ。メガボーマンダやメガミミロップが人気ゆーとりましたわ」

 

「メガシンカに使う奴って、確か大層な貴重品じゃなかったか……?」

 

「道具を持たせて進化するポケモンが増える度、もしかしたら4段階目が出るかもと一度は考えたことがあったがのぉ」

 

「来年も新しい発見があるんやろうなぁ。ありえる話ですわ」

 

「ポケモンってのは奥が深いぜ!そりゃ悪の組織が増えてもしかたねぇわ!ガッハッハ!」

 

「まぁ、足を洗ったうちらには関係のない話どすな。ポケモンはともかく」

 

「全く、俺らみたいな年寄りには驚きの連続だぜ」

 

 

 

「「「「「けどそれが世代ってもんだよね~」」」」」

 

 

 

 

 

 

――

 

 一方、隣の宴会場にて、互いの宴会場を隔てる襖に耳を傾けている人が6人いた。

 

(いや~、それはワシも歳を取る度に思うのぉ)

 

(けど世代ってドンドン進むものですよね。僕は最近頭の毛が寂しくなってきて)

 

(いや、ポケモンの世代の話じゃなかったかい?私も初めてポワルンを見た時とか驚いたなぁ)

 

(懐き、特性、フォルムチェンジ、道具を使った進化、メガシンカ……ポケモンとは謎が多いのぉ)

 

(あ、けど私、博物館で飾られた昔の通信機器を見て驚いた経験があります)

 

(んー、それもそうだけど一番不思議だなーって思ったのって何かといえば……さぁ皆さんご一緒に)

 

 

 

(((((マーイーカの進化方法ですよねー)))))

 

 

 

隣の個室で忘年会を開いていたポケモン博士達ですら、年を重ねる度に驚きの連続を体感しているようだ。

 

 

 

「元したっぱどもの集い」―――それは、足を洗い真っ当な暮らしを始めた、元したっぱ達が集う飲み会サークルである(全国各地受付中)。

 

 

 

―完―




今回のしたっぱさん達


シルフカンパニーのお偉いさん・ダキさん(元ロケット団したっぱ♂)
カントー地方運送会社社長・チュウネンさん(元ロケット団したっぱ♂)
ポケモンレンジャー・トウマさん(元ロケット団したっぱ♂)
エンジュシティの大手旅館の女将・テンナさん(元ロケット団したっぱ♀)
カントー地方警備会社社長・ツダさん(元ロケット団したっぱ♂)

飲み会の場所:「居酒屋・炎舞(エンマイ)
飲み会の切欠:「ジョウト地方の会員35名の忘年会」
飲み会の話題:「世代毎に驚いたこと」

ホント、ポケモンの新シリーズを知るたびに驚きが絶えませんでした(笑)
きっとポケモン博士も驚きの連続だったんだろうな~と、混ぜてみました(笑)

それでは皆様、良いお年を!

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