ギンジはHGSS主人公のライバルの名称です。作者が名づけました。
HGSS未プレイな上にポケスペの設定が少し混ざっています。ご了承ください。
どうでもいいけど、スパイってカッコイイよね(笑)
シンオウ地方各地で騒ぎを起こしていたマグマ団の残党。
世間は珍しい石があればどこにでも現われ騒動を起こす迷惑な集団として捉えており、シンオウ地方のお茶の間で有名となった。
しかし近日になって一斉に逮捕。シンオウ地方に蔓延るマグマ団の残党を根こそぎ捕らえたのだという。
何故今更になって、そしてここまで徹底的に捉える必要があったのか。そもそもマグマ団残党の目的はなんだったのだろうか。その答えをお見せしよう。
―――
シンオウ地方のバトルゾーンに聳える火山・ハードマウンテン。その麓では激戦の跡地が広がっていた。
岩が飛び交い、草木が芽吹き、炎によって溶けた岩が散らばる。全てポケモンが起こした現象であった。
幾多のマグマ団らしき人間とそのポケモン達が倒れており、中でも一際目立つのは、宝石のような突起を地面にめり込ませて気絶しているメガハガネールだろうか。
そのメガハガネールの主……赤毛赤スーツの男・エンザンが呆然と己のメガハガネールが倒れる様を見ていた。
「まさか、ここまでやるとは……っ」
ギリ、歯軋りを鳴らすエンザン。マグマ団残党を率い、マグマ団復活を説いたリーダー格。
彼の足元では同志であるカトリとヒバナが倒れており、これで残党全てが
そんなエンザンに足音を立てて近づくのは、メガハガネールを含め、全てのポケモンと人間を倒した少年だ。
エンザンは普段の落ち着いた仕草からは思えぬ程の鋭い目つきで少年を睨むも、少年の目つきはその上を行き、エンザンを怯ませた。
「まぁ、ご愁傷様だな。残党にしちゃ頑張った方じゃねぇか?」
どうやら少年の目つきは元からこうだったらしく、目つきとは裏腹に口調は穏やかで、むしろ労いの言葉ですら投げかけていた。
ゆっくりと近づいてくる少年を前にエンザンは怨念を抱かずにはいられなかった。このような少年1人に夢を費やされるとは思っていなかったからだ。
「各地のジムを半壊させてジムリーダーを動けなくしたまではよかった……しかしまさか国際警察が動き出すとは予想外でしたよ」
怨めしい目つきで少年を睨むが、少年は気にした様子も無く歩を進めている。
このような悪がきのようなポケモントレーナーが唐突に自分達の前に立ちふさがり「国際警察だ」と言って証明書を掲げた当初は、冗談かと思っていた。
しかし、彼がマグマ団の復活の狼煙である「火山の置石の回収」及び「ヒードランの復活」、そして「リバースマウンテンの噴火」を暴いた時は驚愕したものだ。
組織の障害になる……そう判断したエンザンは偶然手に入れたメガストーンとキーストーンを用いてメガハガネールを繰り出し、全員で襲い掛かったが……結果はコレだ。
そんな事を思い返していたエンザンが我に返ると、目の前には少年の姿が無い。
どこに行ったのかと視線を彷徨わせて後ろを向けば、少年が死屍累々の中から一人の団員を引きずり出していた。
自分をリーダー格と見抜いておきながら何を……そう思って見ているエンザンを余所に少年はしたっぱの胸倉を掴み、徐に顔を掴む。
「おい、起きろ」
―
「ん、んん……ひ、ひぃっ!?」
脳を揺らされたことで意識を覚醒した紫の髪を持つ男が、少年の顔を見た途端に顔を青くし、驚愕と恐怖に染めた。
「
「会いたかったぜぇぇぇ
したっぱだった男―ラムダ冷や汗を掻いて曖昧な笑みを浮かべるが、ギンジと呼ばれた少年の三日月のような笑みを目の当たりにして倍の汗が出る。
何がどうなっている。この男は誰だ。ギンジとはこの少年の事か。
2人のやり取りを横で見ていたエンザンは様々な疑問が過ぎるが、それでも2人はエンザンを無視して話を続ける。
「な、なぜ坊ちゃんが、へばっ!?」
「その呼び方は止めろっつってんだろ。何べん言わせんだ屑。もっぺん殴るぞ?」
「す、すいやせん、つい癖で……と、ところでなんで貴方様がここに……それも国際警察なんかになっているんで?だって貴方様は……」
「一つ目。俺がここに居るのはクソ親父を探し出すため。二つ目。クソ親父をとっ捕まえたい国際警察とは馬が合うんで協力することにした。以上」
「
「俺はいたって本気だよ。その為にマグマ団残党を隠れ蓑にかくれんぼしてた手前を着き出したんだ……さぁ、本題に移るぞ―――吐け」
「な、何をでしょうか?」
「クソ親父の居場所だよ」
「むしろ俺が
「……なんだよ、手前が居るって情報を聞いた時はもしやと思ったが、ココも外れかよ……使えねぇ」
そう言うとギンジは途端に興味が失せ、ラムダの胸倉を離して踵を返す。
「ど、どちらへ?」
「もう用は無ぇよ。俺相手なら知っていたら居場所を吐くだろうからな。……それと、横流ししたバトルハウスの景品は全て部下が回収しといたから。時期にこっちに来るけど」
「そ、そんなぁ!あれだけの物を盗み出すのにどれだけのしたっぱを用いたかご存知ないんですかい!?」
「知るか」
そのまま歩き続けて……ふと思い出したかのように足を止める。
「あ、そうだ」
「?」
振り向いてこちらへ歩み寄るギンジを見て首を傾げるラムダ―――そのラムダの顔を。
「面倒かけんな屑」
―頭蓋骨が陥没しそうな勢いで、殴った。
今度こそ鼻血を出して気絶したラムダに踵を返し、ギンジは鼻血のついた手を振りながら歩き出す。
呆然と立ちすくむエンザンの横を通り過ぎようとした所で足を止め、告げる。
「多分お前の知りたい答えはコレだろうな……お前らは利用されたんだよ。金になるキーストーンやメガストーンを集める為にな……じゃあな」
その一言は、エンザンの膝を地面につけるのに充分であった。
自分達は利用されただけ。そして利用されたまま、目的を果たすことなく費えて終わってしまった。
なんという呆気ない最後。そして無意味な最期。我々の努力は何だったのだろうか。
―シンオウ地方に身を置き過ぎたエンザンは、ホウエン地方の裏側を知らぬまま、呆気なくお縄につくのだった。
―――
―ピッ
『モロバレル』
「スグバレル」
『ナゼバレル』
「タマゲタケ」
『銀の匙』
「ハンサム」
『……コードネーム・銀の匙、ご苦労だったな』
「それよりこの合言葉変えたいんだが」
『む……私は悪くないと思うのだが……まぁいい。それより、例の情報は?』
「クソ親父の居場所は知らない、だと」
『そうか……元ロケット団の幹部なら
「残念無念また今度、てか。だが、まだアポロとアテナが残っている。そいつらを探し出してやるさ」
『解った。引き続き、暗躍しているロケット団の捜索を続けてくれ。マグマ団残党に関してはこちらで処理を行う』
「了解……ついでに聞くけどよ、ホウエンでの噂なんだが」
『ああ、
「マジか……残党の連中が可哀想に思ってきた」
『お前が他人を思いやるなんて珍しいな。明日は砂嵐が起こるか』
「ぶっとばすぞおっさん」
『ゲフンゲフン……では通信を切る。健闘を祈る』
「了解。後、次ぎ合ったらマジでぶっとばすから覚悟しとけ」
―プツッ
「……さてと」
―ピリリリ……ピッ
『私だ』
「今度ぶん殴らせろ
『その物騒な物言いはギンジで間違いないな。事は済んだと捉えさせてもらおう』
「誰のせいでこんなことしていると思ってやがる。自分の部下ぐらい自分で片付けやがれ、ドッカリ座っているだけのナマケロ野郎」
『せいぜいケッキングに進化しないよう努力しよう。それよりも欲しい物が私にはあるんだが?』
「離反した雑魚どもはぶっとばした。ついでにラムダもぶっとばした。横流しした景品は警察に返した。マグマ団復活は本当。以上」
『相変わらずの単調な報告で結構。国際警察の動きはどうなっている?』
「注文の多いナマケロ親父だな……今の所は本拠地を明かしてはいないし、俺が
『ほお……流石は変装を得意とする国際警察。疑心暗鬼はお手の物、ということか』
「面倒なこと押し付けやがって……」
『ああ、そういえばお前が欲しがっていたキーストーンとメガストーンがようやく手に入ったが』
「おめでとう、ナマケロ親父からヤルキモノ親父に進化した」
『それは光栄だな。では通信を切るぞ』
「おう」
国際警察のギンジ―――その正体は、ロケッド団が送りつけたスパイ。
彼がその姿を明かす日が来るか否かは、定かではない。
―完―
●ギンジ
ジョウト地方出身のポケモントレーナー♂。生意気な性格。負けん気が強い。
己の信念と欲望に忠実で、目的の為なら国際警察でもロケット団首領でも利用するカリスマ。
普段は国際警察兼トレーナーとして世界を渡り、裏では貴重品を条件にスパイとして暗躍している。
『かげうち』『こおりのつぶて』と言った超高速戦闘を得意とする。攻撃型。
そんなわけで「国際警察に紛れ込んだスパイ」、ギンジでした。
悪の王子としての才能と立場を受け入れつつ、己の信念に沿って気ままに行動するエリートトレーナー。
国際警察をやっているのは世界中を遠慮なく巡る為の権力と権限を得る為であり、
ロケット団のスパイをやっているのは国際警察でも入手しにくい貴重品を得る為。
両者を両立させる程の優れた能力を持ち、両者を利用しきっている頭脳を持つ超人。それがギンジです。
悪の王子って聞くと完璧超人を浮かべるのは私の悪い癖です(苦笑)
後書きは後日書き足す予定です。何せ勢いで書いたので(汗)