ポケットモンスター・ライフ   作:ヤトラ

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というわけで何ガナさんの正体が明らかに!(バレバレ)

後、個人的に計算に弱いヒガナさんは萌える(ぉぃ)

5/31:誤字修正。やはり一気に書き上げようとするとミスが多いですねぇ(汗


その43「きのみやさんとヒガナ」

 衝撃的な朝を迎えて少し経ち、時刻は昼。

 

「いあぁ、むぇんもむむぁいむぇ(いやぁ、めんもくないねぇ)」

 

「食べながら喋るなら、まず頬いっぱいに溜めているソレを飲み込んでからにしてね」

 

 ムガムガモガモガ言いながら喋っても解りませんから。

 

 小さな木の実の山に手を伸ばし、次々に口に放り込んでいく褐色肌の少女とゴニョニョ……凄い構図だ。

 喉に詰まることなく、しかし時々木の実ジュースを飲みながら休むことなく。余程お腹が空いていたんだなぁ……ホロリ。

 

 今朝方に裏庭で倒れていた少女の名前はヒガナちゃん。ゴニョニョの名前はシガナ。

 ホウエン地方各地を旅して回っているが、その生活はほぼ野性的なもので、宿泊施設とか外食とかしたことないんだと。

 食料も現地調達が基本で、時には罪悪感を持ちつつも人の畑に盗みを働くこともあったらしい。

 

 そして運悪く、『どくびし』『まきびし』『ステルスロック』がこれでもかと撒かれた畑に侵入した、と。

 

「んぐ……っ。いやアレには参ったなぁ。罠は覚悟の上だったけど、あの時は切羽詰まっていてね。暗くて見え辛かったし、あんなに罠が張っていたとは思わなかったよ」

 

「そりゃそうでしょうね」

 

 安心してくださいヒガナちゃん、あなたの常識は間違っていません。想像力豊かな人間だって中々思いつかないよ、あんな裏庭。

 おかげでヒガナちゃんをシダケタウンのポケセンに運んで毒抜きしてもらった後、ジョーイさんにカンカンに怒られたし。

 ヒガナちゃんはヒガナちゃんで不法侵入に関して凄く怒られたけど。反省はしているので良しとしよう。

 

「にょっぷ」

 

「おなかいっぱいになったか?シガナ」

 

「にょい!」

 

「そっかそっか!よかったなぁ」

 

 満腹になってご満悦なシガナを見るヒガナちゃんの顔はお母さんそのもの。

 そもそも窃盗をしてまで木の実畑に侵入したのは、自分よりも空腹なシガナの為だったという。

 その親心に感心したから、こうして木の実をお裾分けしてしまったわけである。

 

「ヒガナちゃんもお腹いっぱいになれたかな?」

 

「うん!久しぶりに満腹になったよ~、ご馳走様!」

 

 拝むように両手を合わせ満点の笑み。八重歯と明るい笑顔が合わさり眩しいよ。

 だがしかし……働かざる者食うべからず、がウチのモットーである。

 

「じゃあ、まずはトラップのお掃除から手伝ってもらおうかな」

 

「はいは~い」

 

 裏庭の『まきびし』と『どくびし』を箒で寄せ集めているゴーさんを指さし、ヒガナちゃんはシガナを連れて裏庭へ向かう。

 あんな目に合ったとはいえ泥棒しようとしていたのは事実なので、今日1日ヒガナちゃんにお店のお手伝いをお願いすることにした。

 ヒガナちゃんも悪い事をしたという自覚はあるし、ご馳走して貰った以上はお礼をしなきゃ、と快く受け入れてくれたし。

 

「……大丈夫。まだ時間はあるから、これぐらい」

 

「何か言ったー?」

 

「なんでもないよー……って、あいだだだっ!」

 

 あ、そこまだ『まきびし』が残っていたか。念入りに箒で掃いたと思ったんだけどなー。

 シガナちゃんは幼いみたいだし、向こうでイーくんとダイトさんと遊んでいてね。

 

 

 

―――

 

 ポケモン達の助力(ヒガナちゃんはドラゴン使いらしく、強そうなドラゴンポケモンばかりだ)もあってお掃除完了。

 例の木の実が植えられた畑も無事だし、軽く畑を整理したら次はお店の準備だ。ヒガナちゃんには品並べをお願いしよう。

 

 

 そうして開店し、お客さんが混み合って来た頃。

 

 

「ハヤシさん、50円と100円と210円を合わせるといくらだっけ?」

 

「違うよお姉ちゃん、このウブの実キャンディーの瓶は250円だよ!」

 

「あと、50円の木の実は3個あるんだけど……」

 

「あーっと……50円が3個で……えっと……?」

 

「はいお嬢ちゃん達、合計500円ね。まいどあり」

 

「ありがとうお兄ちゃん!お姉ちゃんガンバレ!」

 

「う、うん!バイト頑張るよ!」

 

 笑顔が強張っているよヒガナちゃん。それにしても双子ちゃんに励まされるって……。

 

 ヒガナちゃんはアレだ。想像力はあるけど(おつむ)は悪い方だ。

 とにかく計算問題が苦手。掛け算どころか足し算も暗算では出来ないようだ。紙と鉛筆があれば出来るというが……正直怪しい。

 まぁお金とか計算とか程遠い、それこそ文明の利器を利用しない程に野生じみた生活を送っているから仕方ない……か?

 

 とりあえず計算は苦手だが、品並べや接客は上手なので良しとしよう。頑張る子は十分偉い!

 

「……解ったぁ!全部で500円だ!」

 

「それ今言ったから」

 

 その「やった!私やったよ!」的な笑顔が眩しすぎるよヒガナちゃん……。

 足元のシガナちゃんも拍手を送り、それをヒガナが持ち上げ、嬉しそうに抱き着く。

 なんだろう、目から涙が止まらないや……よっぽど機械や計算とは程遠い生活を送っていたんだろうね……。

 

 生暖かい目で見ていたら、ヒガナちゃんがピクリと動き、鋭い目を店の外に向けていた。

 な、なにそのシリアスな雰囲気……ん?なんか外が騒がしいような。

 

「オウ、邪魔するゼ!」

 

―うわ、凄い大男が現れた!

 

 上半身裸のプロレスラーみたいな大男は大声でそう言うと、恐れ慌てる他のお客さんを大きな腕で払いのけてズカズカと上がり込む。

 余りにも大きいので天井と頭がスレスレだ。この店小さいから……ってそんな事考えている場合じゃないか。

 

「い、いらっしゃいま、せ?何かお探しで?」

 

「オウホウ!オレっちみてぇな奴でもお客さんってカ?大した奴だゼ!」

 

 そんな楽しそうに言われても、僕から見たら威圧しているようにしか見えないんですが……。

 するとヒガナちゃんが前傾姿勢で立ちふさがった。なんていうか、威嚇しているっぽい。

 

「ハヤシさん、いくらここがお店でも、こいつはお客さんじゃないよ。なんてったって、アクア団だもんね」

 

「あ、アクア団?」

 

「そのトーリよ!つうわけでな、オメーにウラミはネェんだが……コッチにも都合があるんでな!」

 

 そういえばこの大男の胸元にソレっぽいマークが……なに、この人も残党か何か?

 すると大男がギロリと店内を見渡し、腕を振りかぶり……ちょ、なに?まさか!?

 

―ガシャンッ!

 

「この店と庭を、ブッツブさせてもらうゼ!」

 

 ギャーッ!ミナモデパートの屋上で買ったテーブルがぁぁぁ!安売りの割には丈夫で気に入っていたのにぃ!

 太い腕に叩きつけられ跳ね返ったのをキッカケに悲鳴が上がり、お客さんが入口へ逃げ出していく。大男は追いかけなかった。

 

「ナ、ナニヲスルダー!いけゴーさん!」

 

「グオォーン!」

 

 仕方ない、ゴーさんに任せ……何ぃ!?ゴーさんの怪力を受け止めただとぉ!?

 それどころか大男はそのままゴーさんを持ち上げ……店の外へ投げ出した!?

 

「フッハァァァ!パワーが足りねぇぜ!」

 

 余裕綽々でガッツポーズする大男。あんた、人間の皮を被ったゴーリキーですか……?

 ていうかヒガナさん、妙なステップをしながらモンスターボールを構えないで……って投げたーっ!?

 

「ハヤシさんゴメンね!チルタリス『コットンガード』!」

 

―モッフン!

 

「ふごっ!?」

 

「オオウッ!?」

 

 目、目の前、というか店の中が真っ白に……フカフカ。

 大男の叫びも聞こえたから、もしかして店いっぱいに広がった綿で外に押し返されたのかも。

 その証拠に直に綿が縮んでいき……あ、ヒガナちゃんもモフモフ天国にやられたのか、顔が火照っている。大事にシガナを抱えているけど。

 

「ハヤシさん、直に裏庭に行きなよ!きっと手下が荒らしている頃だと思う!」

 

「ちょ、それヤバいよ!」

 

 そういえばあの大男、店と庭を、って言っていたよね!?ヤバイすぐに向かわないと!

 ヒガナちゃんは速攻で店を出て大男と対峙したので、僕は裏庭へダッシュ!ごめんゴーさん、後回しね!

 

 

 肩にローちゃんを乗せ、急いで庭へ!

 まったくもう、レアな木の実をもらえてラッキーと思ったらコレだよ!

 

 

 




そんなわけでウシオさん登場。次回、軽くバトルします。

ウシオさんはきっとゴーリキー相手でもタイマン張れるぐらい強いと思う。

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