ちなみにORAS女の子主人公ハルカはグラードンを捕まえる予定なし。
―ざわ……ざわ……
「ユウキ君はやく帰ってくんない?」
「最後まで聞いてくださいよー」
だってさー、お客さんが騒めいていて、とてもお店を続ける雰囲気になれないもん。
幼い頃なら誰もが一度は見て、しかしいつしか忘れ去られるというお約束の夢「伝説級ポケモンゲット」。
実は今の技術力を考えれば、決して幻想や子供の夢とは言い切れない。
何せライコウやレジスチルといった伝説に近いポケモンを所持するトレーナーが増えてきたのだから。どこで捕まえるのだろう。
それにしたってカイオーガはレベル高すぎでしょう。海を創造したポケモンですぜ?
目の前の少年はマジな目をしているし、ガチでやりそうだからある意味で怖い……。
「じゃあ希望に応えるとして……なしてカイオーガをゲットしようなんて思ったん?」
「忘れられないんですよ」
「忘れられない?」
「昔カイオーガに出会ったことがあるってことは話しましたよね?」
「あ~……ホウエン事変が起こった頃だっけ?」
確かあの時の大雨もカイオーガが原因で、それを鎮めてくれたのがユウキ君なんだっけか。
ダイゴさんもそんなこと話してたし、嘘ではないんだろう。さすユウである。
「水に深く潜る度に、あの姿が脳裏に浮かぶんですよ。
浮力に身を任せて海面を見上げると、そこに溶け込むようにしてカイオーガの蒼い姿が重なって、『ああ、海ってカイオーガみたいに美しいんだ』……と思うんです。
だから、僕は海が、そして水ポケモンが好きになったんだと思います。変な話ですよね。
けどもっと知りたい。全て知れる程僕は浮かれてはいないけど、出来る限り見てみたい。海の、水ポケモンの全てを。ダメならその一端を。それでもダメなら目の前で見れる景色だけでも」
まるで夢遊病者みたいでちょっと怖い……。
なんというか、淡々と、そして真剣に語るユウキ君を見ていると……怖くとも美しくとも思えてくる。
まるで夢を見ている子供のようにキラキラしていて、しかし幻覚を見るかのような危険で暗い色にも見える。
直接ユウキ君の顔を見ていないはずの野次馬ですら、ユウキ君に何かを感じたのか、少し距離を置き始めたし。
――ていうかユウキ君の目って、こんなに蒼かったっけ?
――バタンッ!
「こんにちわぁ~!パインの実ジュースくだぁ~い!」
おや、入って早々にジュースを頼むのは何処の何方……ありゃ?
「は、ハルカ?」
「ハルカちゃんじゃん。久しぶり~」
ずぶ濡れで髪の毛グッショグショだけど、息切れしてテーブルに手をついている女の子はハルカちゃんだった。
あーあ、タンクトップやらスパッツやらが肌に張り付いちゃっているよ……それを見たからって、ユウキ君赤くなっちゃって、初心よのぉ。
「それにしても随分と濡れているね。どしたの?」
「キンセツから、走って、きた、けど……さっきまで、スゴい、大雨で……!」
「マジで?」
息切れしながらも話してくれたハルカちゃんにパインの実ジュース入りのコップを手渡し、外へ出てみる。
うわほんとだ、分厚い雲がすぐそこまで来ている!店のお客さんも僕に倣って次々と外を確認、すぐに自宅へと戻っていく。
「こりゃイカン!ゴーさん洗濯物取り込むの手伝って!」
ハルカちゃんにタオルを手渡したのを確認してからゴーさんにお願いする。
バクオングだからといって大声を出すことなく、しかし慌てて裏庭に走っていく。
「よかったらユウキ君も手伝って!」
「は、はい!」
せっかくだ、知り合いなんだしユウキ君にも手伝ってもらおう!元チャンピオン?知らんな!
今日こそは大丈夫だろうと作業着沢山洗濯したのにぃ!
(……気のせいだったよね?)
隣でワタワタと洗濯物を取り込んでくれるユウキ君をチラリと見て、先ほどのは勘違いだと気づく。
人間の目が急に蒼く見えるとか、どこの厨二病だって話だよね~。AHAHA!
「……はぁ」
バクオングことゴーさんから貰ったタオルで髪の毛を拭き終えたハルカは、溜息を零した。
苛立ちと怠惰を込めた溜息。それを吐き終えると、空に浮かぶ暗雲――正確には近づきつつある大雨――を睨みつける。
「雨なんて……キライ」
雨雲を見つめるハルカの眼は、灼熱に染まった鉄のように朱く染まっていた。
――まるでグラードンのように。
同時刻……嵐吹き荒れるおくりび山の様子を見に来た四天王・フヨウが、ある異変に気付く。
おくりび山の頂に置かれている2つの宝玉「あいいろのたま」と「べにいろのたま」。
それらが突如として強い輝きを放ち、その形状と外観を大きく変化させたという。
―あいいろのたまには「α」、べにいろのたまには「Ω」というマークが。
それっぽいフラグを立ててみました。完全オリジナル設定。
ちなみにハルカちゃんは過去にユウキ勲とは別にグラードンを抑えたとう経験が。