「あちゃー、こりゃ酷い」
「(´・ω・`;)(ほんとうだねー)」
朝の強い日差しで目覚め裏庭を見に来た僕ことハヤシは、目の前の光景を見てぼやく。
いつもなら腕白リーフィアのイー君が飛び出てはしゃぎだすけど、今回ばかりは困ったように裏庭を眺めているだけだ。
空は気持ちいまでの快晴だけど、芝生はずぶ濡れ、畑の土は泥濘となり、木々や湖には木の葉や飛んできたゴミで装飾されてしまっている。
悩ましい景色にボリボリと頭を掻いていたら、いつの間にか足元にナゾノクサ達とスーちゃんが摺り寄ってきた。おーよしよし、怖かったねー。
水に弱いヤーやんとサンちゃん以外の手持ちポケモン達は、裏庭に散らばるゴミを片付けようとする。
昨夜は凄い嵐だったなぁ。猛烈な風が吹き、バケツをひっくり返したような豪雨がシダケタウンを襲った。
ハルカちゃんが教えてくれなかったら洗濯物が濡れるどころの話じゃなかったよ……急いで裏庭の物を片付けてよかったぁ。
ちなみにユウキ君は、これ以上酷くなる前にと、ハルカちゃんと一緒にペリッパーに乗って帰っていった。
さてさて、ナゾノクサ達を宥め終えたし、次は畑をどうするかだなぁ。
ビチャビチャと水音を立てながら芝生を歩き(足元をローちゃんが嫌そうに歩いてる)、畑に近づく……うわ泥濘が酷い。
それでも木の実は生きているんだから、その生命力につくづく驚く。流石はポケモンの胃袋を支える植物です。
今日は快晴な上に日差しも強いし、少し乾いてから片付けようか……?
「ん?」
ふと畑の周りを歩いて見ていたら、足元の泥濘に変な物が生えているのを発見。
ローちゃんが不思議そうに見ているソレは……どうみてもキノコです本当にありがとうございます。
しかも2本。畑の泥濘からぴょっこりと生えている小さなキノコは可愛らしいが、どうして生えたのやら。
「……」
僕もローちゃんも気になるので引き抜こうと身を屈ませ、手を伸ばす。
すると不思議なことに、2本キノコは互いの距離を維持したままなのに、伸ばした僕の手からヌヌヌっと逃げ出したのだ。
手を伸ばしては離れ、手を伸ばしては離れてを繰り返し……キノコは僕の手と回り込んだローちゃんに挟み込まれる!
「そりゃっ」
両腕を伸ばし、2本のキノコをガッチリとキャッチ!キノコゲットだぜ!
そう思ってキノコを泥濘から引き上げようとすると、両手に結構な重さを感じ、大きな何かがキノコごと出てきた。
泥濘が垂れて見えたのは、オレンジ色の身体に鋭い爪、そして大きな目を持った―――!
「パラスじゃん」
宙ぶらりんでワチャワチャと慌てる、きのこポケモンのパラスであった。
「(・ω・;)(離してあげなよ)」
足元のローちゃんがそんな風に言っているように見上げている……感じがする。
―――
裏庭に生息する半野良ポケモン達用に用意した、大皿に盛り付けたポケモンフーズ。
その大皿に寄って集るナゾノクサ達(とスーちゃん)に紛れてモソモソとポケモンフーズを食べるパラスをじっと見る。
先ほど僕が捕まえたことで観念したのか、今は逃げる素振りも見せず大人しくしている。大人しい性格だろうか。
最初は手持ちポケモン達と一緒に食べるか聞いてみたが、パラスはスルーしてナゾノクサ達の方に。ちょっと寂しい。
「やっぱり昨日の大嵐が原因なのかねぇ?」
朝ごはんのオボンブレッドを頬張りながら呟く。お行儀が悪い?すみません。
ラジオでも大嵐の影響で小型のポケモン達が飛ばされ、各地に落っこちているとか言っているし、十中八九それだろうね。
それにしたってだ、ニュース番組内で専門家も話していたけど、あの嵐は流石に異常だよねぇ。
そもそも最近の天候は本当に変だ。急に晴れたり雨になったりってのは解るけど、その差が極端すぎる!
全くもう、どうしてこんなに荒れているのやら。あれだ、カイオーガとグラードンがまた復活でもしたんじゃないのか?
「いやだなぁ、あんな大荒れの日々がまた来ると思うと」
「キリキリ」
「お、君もそう思う?」
「キリキリ?」
いつの間にかテーブルの上に上がってきたらしい、小さなポケモンが首を傾げている。
ピンクと緑色が合わさっていて、中々に可愛らしいポケモンだなぁ。
「……?」
なんか違和感を覚えたので、堂々とオボンブレッドを食べ始めたポケモンをよく見てみる。
ピンク色と緑色の混じった、虫ポケモンにも草ポケモンにも見える小さなポケモン。
「うん。全然知らないポケモンだね」
自身の小さな身体ほどもあるオボンブレッドを平らげ、満足そうに腹を擦る見知らぬポケモン。
するとピョイ~ンという効果音が似合う跳躍でテーブルから降り、呆然としている僕を含めた手持ちポケモン達を気にせず歩き出す。
そしてナゾノクサ達が群がる大皿へ……あれ?
スーちゃんことスボミーとパラスは解る。
チュリネとボクレーは知識としては知っているが、裏庭に生息していた覚えはない。
そしてそこに混ざるは見知らぬポケモン……体格的に似通っているからか、仲良しな印象を持つ。
うん、ナチュラルに混ざっているけど、増えているね―――知らないポケモンが。
―もしゃもしゃ
隣で咀嚼する音がするのでもしやと思ってテーブルに視線を戻すと……
皿の上で食べかけのオボンブレッドを食べる、葉っぱを纏ったビードルみたいなポケモンが。
「……みりゅ?」
食べちゃダメだった?と言っているように首を傾げる、つぶらな瞳が可愛らしいポケモン。
「……遠慮せずお食べ」
つぶらな瞳に許して朝ごはんを譲ってあげようクルミル君。
もしゃもしゃと嬉しそうに食べているクルミル君を他所に、僕の手持ちポケモンを見る。
「どうしよ」
「「「「「(´д`;)(知らんがな)」」」」」
個性も性格もバラバラな僕の手持ちポケモン達の心が1つに。
―ちなみにナエトルのダイトさんは普通にチビ草ポケモン達に混ざっていた。おこちゃまめ。
―続く―
●裏庭にやってきたポケモン一覧
・パラス
・カリキリ
・チュリネ
・ボクレー
・クルミル
アローラ地方のポケモンがどうしてホウエン地方に来たかって?
これも全部異常気象の性なんだ!(強引すぎる設定)