ポケットモンスター・ライフ   作:ヤトラ

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10話も経っていないのに、きのみ屋さんに大ピンチが!

それはそうと、乱雑とはいえ最新話を書くのに二日かかりました。


その7「きのみ屋さんとドクケイル」

「なんという事だ……」

 

 僕は久方ぶりの絶望感を味わっていた。旅でも様々な絶望を体感してきたが、全身に重くのし掛かってくるように落ち込む気持ちは初めてだよ。

 僕は膝をつき、伸ばした手を地面につけて身体を支える。このまま重力に任せ倒れてしまった方が楽かも知れないが、そうは問屋が卸せない。

 目の前ではローちゃんが僕を見上げ、必死に何かを訴えていた。よく聞けば他にも声が……ああ、サンちゃんか。君も励ましてくれるんだね。

 

 けどさ二人とも、目の前の現実を見てみなよ……。

 『リフレクター』と『ひかりのかべ』を失ったきのみ畑は半分以上が食散らかされ。

 その壁を張るはずのヤーやんは瀕死になって置物のように倒れたまま動かず。

 バトルが上手いガーさんは池の上で犬神家状態となってコイキングに囲まれ。

 攻撃力だけは高いゴーさんは怖くてお店の方へ逃げちゃって。

 こうなる直前まで寝ていたアーさんは吹き飛んでどっか行っちゃった。それでいいのか鳥ポケモン。

 

―全てはアイツ……ドクケイルがやって来たからだ!

 

-ひらひら

 

 ちくしょー、目の前でひらひらと舞う姿がからかっているようにしか見えん!毒を撒かないし、完っ全に遊んでいるなコイツ!

 そんなドクケイルにケチをつけるローちゃんとサンちゃんたが、ドクケイルは「やーいやーい」と言っているかのように遠ざかりながら舞い続けている。腹立つ~!

 どうしてこうなったのかを話す為に思い返そう。誰に話すかなんて解らないけど。

 

 

 

―――

 

 始まりは朝早く。裏庭を整備しようと赴いたら、いつの間にかドクケイルがきのみ畑をうろついていた。

 『ステルスロック』が撒かれていたはずの畑を悠々と飛ぶドクケイルは僕を見た途端に飛びかかって来たのだ。ビックリして尻餅ついたわ!

 ドクケイルの燐粉ってプロレスラーも寝込む猛毒と聞いていたので慌ててハンカチで口と鼻を塞いで後退りするが、それを楽しんでいるかのようにドクケイルは追いかけてきた。なんでや!?

 

 そんな時、同じルートを浮遊していたネンドールのヤーやんが動き出した。ヤーやんは畑のガードポケモンなのだ!今更出てきたのかよ、なんて言っちゃダメよ。

 さっそく『サイケこうせん』を発射するがドクケイルはヒラヒラと優雅な動きで避ける。連射しても避ける。頭上で『サイケこうせん』と毒の粉が舞っていたので僕は死ぬ気逃げた。

 

 しかし確実に当てなかったのが悪かった。なにせこのドクケイルは避けながら『ちょうのまい』で積んでいたのだ!

 『ちょうのまい』は特攻・特防・素早さを上げる強力な変化技だ。そんな技を覚えているコイツは、『サイケこうせん』をヒラヒラ避ける技術も含め、相当強いんだろう。

 

 そう考えていたらヤーやんが『むしのさざめき』を受けて一発KOしちゃいました。攻撃性よりタフさを目指して一生懸命育てたヤーやんがあっさりと倒れた……だと!?

 

 ヤーやんが倒れたとなれば、うちの中で一番バトルに適したガーさんに出てもらうしかあるまい!

 噂をすれば「おうおうケンカ売っているんかいワレ!」と言わんばかりに水辺からガーさんが上がって来た。後ろで舎弟(?)のコイキング達が水面から顔を出して応援している。特にキンさんは熱狂的だ。

 

 しかし特攻が高まったドクケイルの『むしのさざめき』で一発KO。その間、僅か13秒。

 そうだよなーそうでしたわー、ヤーやんもガーさんも虫タイプの技に激弱だったよねーアハハー……涙が出ちゃう。

 

「ま、まだだ!出て来いゴーさん!」

 

 次はバクオングことゴーさんだ!バトルは苦手だが、『ハイパーボイス』と『ほえる』の威力は桁違いなんだぞ!近所迷惑になるけど!

 呼んでしばらく経ったけど……出てこない。なんでだろうかと思って後ろを振り向いたら……。

 

「怖いからイヤですよぉ」

 

 そう言っているかのように物陰に隠れているゴーさんの姿が。そして視線が合うと、そのままお店へゴートゥバック。

 そんなんだからいつまで経っても中身はゴニョニョなんだよぉ!けど無理強いできない!だって毒にやられたらかわいそうだもん!

 

 最終手段!虫タイプ・毒タイプに強い飛行+鋼タイプのアーさんに頼むしか……って居眠りしてんなや―――!!

 しかもドクケイルの『ふきとばし』で寝たままどっか飛んで行った―――!それでいいのかよろいどりポケモォーン!!

 

 

 

―そして冒頭へ戻るのである。

 

 

 

―――

 

「さーて、どうするかねぇコイツ……」

 

 畑の半数以上の木の実を食べ終え、何故か僕の回りで嫌がらせのように飛び回っているドクケイルを見ながらそう呟いた。頭の緑のバンタナを口元に巻いております。

 ローちゃんの攻撃は虫/毒タイプのドクケイルに殆ど通じないし、サンちゃんは飛んでいるポケモンの相手に弱い。空中戦が苦手なのよ、サンちゃんって。

 ドクケイルが僕に構っていることもあり、2匹に畑の整備をお願いしてもらうことに。幸い、きのみは全滅とまでは行かず、全ての木の実が1個以上残っていた。

 

 それにこのドクケイルが暴れてからというものの、裏庭のポケモン達が隠れてしまい、静観するだけに留めてしまった。庭木にはスバメやタネボー、畑では地中に潜ったナゾノクサなど。スーちゃんは庭木に、ハーちゃんは池に避難しました。

 しかし不思議なことに『リフレクター』などが無くなったのに余所から鳥ポケモンや虫ポケモンが寄り付くことはなかった。特にしつこかったアメモースですら近づく事を躊躇っている様子。

 つまり天敵の鳥ポケモンですら恐れるほどこのドクケイルが強いのだろう。そうとしか考えがつかない。

 

 しかしなぁ……ちょっかいを出してくるドクケイルを手で払おうとしたら難なく避けて「やーいやーい」と遊んでいるコイツがねぇ……随分と生意気な子だ。

 

「……仕方ない、かなー」

 

 ドクケイルに帰る気配は無さそうだし、このまま放っておいたら危険だよね。

 

 

 

―――

 

『申し訳ありません。ドクケイルがうろついているのでお店はしばらくお休みです』

 

 そう書かれた黒板とローちゃんを乗せた鉢植えをゴーさんに手渡すと、ゴーさんは申し訳ないオーラを漂わせて玄関へ歩いていった。

 それを見送った僕は溜息を吐く。視線を逸らせば今度はサンちゃんをからかうドクケイルの姿が。イタズラ好きにも程があるよ。

 だが好機と見た僕はヤーやんとガーさんをモンスターボールに戻してポケモンセンターへと足を運ぶ。サンちゃん留守番お願いね。

 

―あ、ミツル君発見。

 

「うわ、予想以上に凄いことになっているじゃないですか!」

 

 畑の惨状を見て驚くミツル君。どうやらゴーさんとバッタリ出会ったらしく、黒板の内容を見ていた様子。

 

「いやぁ、あのドクケイルが予想以上に強くてね……万が一お客さんが襲われたら大変だし、しばらくお休みさせてもらうよ」

 

「そ、そんなに強いんですか?」

 

「そらもー強いのなんの。半分以上やられちゃったし……なによりアイツ『ちょうのまい』を覚えているんだもん」

 

「うわ、それってかなり強い変化技ですよね」

 

 ポケモンバトルの経験も豊富なミツル君も『ちょうのまい』の強さを知っているのだろう。

 ポケモンバトルの番組やマサの記録が主だが、『ちょうのまい』を覚えているモルフォンはかなり活躍できるとされている。つえー。

 

―あ、バトルで思い出した。

 

「ねぇミツル君、よかったら君のポケモン達であのドクケイル追い払ってくれない?」

 

 ミツル君もポケモンバトルに強いんだし、案外なんとかしてくれるかも!

 なのでお願いしてみると、ミツル君は虚を突かれたように目を丸くしてこっちを見た。

 

「え?あ、僕らがですか?」

 

「僕の時は『ちょうのまい』を沢山積まれたからやられちゃったけど、今ならなんとか出来るんじゃないかな?」

 

 今なら変化技の効果が切れているだろうから、速攻で決めればいいんじゃないかな?

 ミツル君の相棒サーナイトやチルタリスなら相性バッチシ。レアコイルなら毒は効かず虫・エスパーは半減するし。エネコロロとロゼリアは微妙だが。

 

「んー……解りました。ハヤシさんにはお世話になっていますし、なんとかしてみます」

 

「やった!ありがとうミツル君!」

 

 本当にありがとう!今日は無理だけど、きのみの収穫期が来たら沢山あげるからね!

 

 ふっふっふ、覚悟しろよドクケイル、君の野望はこのミツル君とそのポケモン達が阻止してくれるわぁ!

 

「なんか偉そうにドクケイルを指差してますけど、頑張るのは僕達なんですからね?」

 

 うう、最近のミツル君はドライで辛いっ!それだけ心を許してくれた仲ってことなんだけどさー……。

 

 

 

 

 

―――

 

「キュウ……」

 

「ああ、サーナイト!」

 

 ドクケイルの『ぎんいろのかぜ』で吹き飛ばされたミツル君のサーナイトが吹き飛び、そのまま地面に伏す。

 

「やだ、このドクケイル、強すぎ……?」

 

 まさかミツル君相手に5タテで勝利するとは……思わず声に出ちゃったよ。何このドクケイル、本当に強すぎ!

 まさか希少な回復技である『はねやすめ』まで持っていただなんて!持久戦に最適な回復技じゃないですかヤダー!

 そんなことよりミツル君のポケモンだ。毒に侵された子もいるし、急がないと。

 

「ミツル君、君は早くポケモンセンターに行って視てもらって」

 

「くっ……解りました、すみませんハヤシさん!」

 

 倒れたサーナイトをモンスターボールに戻すミツル君は申し訳無さそうに頷いて走り去っていく。仕方ないよ。

 そんなドクケイルは多少ボロボロながらもミツル君に向けて「やーいやーい」とヒラヒラ舞っていた。

 

「くっきぃ~!生意気な奴めぇ~!」

 

「♪」

 

 あ、今さっき笑ったなチキショー!

 

 

 

―――

 

 結局、ドクケイルは夕焼け頃に帰っていった。お店?もちろんその時まで閉めていましたよ。

 

「クケー」

 

「おいおい、今頃になって帰ってきたんかいアーさんや」

 

 しかも寝ぼけ眼で「ごはんまだー?」ってねだってくるし。お前まさか吹っ飛ばされた先で寝てたんじゃ……?

 

 

 

―続く―




ミツル君のパーティーはかなり強いです。ドクケイルはもっと強いです。
まぁ上記を上回る格上は世界から見れば山ほどいるんですがね。サブマスとかフロンティアとか四天王とか(笑)

次回、大きな庭のきのみ屋さんに救世主あらわる!

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