不老少女、海に出る。   作:千樹 星百

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第2話

 ザァーン、ザザァー、と波が寄せては返る音が繰り返される砂浜に豊は仰向けの状態でいた。

 

「んっ……………」

 

 豊は、波の音と潮の香りで、目を覚ます。

 

(ここは?……………って、ああ。『ONE PIECE』の世界に転生したんでしたっけ)

 

 豊は体を起こして、グッと体を伸ばす。

 周りを見渡すと、前には広大な海、左右は広い砂浜、後ろには鬱蒼としたジャングル。

 そして、足元には謎の宝箱。

 

(この中に特典が入っているのかしら?)

 

 宝箱には、鍵が掛かっていなかったようで、豊はすんなり開けることができた。

 その箱の中には、サーベルが一本、拳銃が一丁、長い鎖が五本、そして、折りたたまれた一通の手紙が入っていた。

 豊は手紙を手に取る。

 宛て名には「黒原 豊様」と書かれているので、豊はそれを広げて読んでみる。

 そこには、綺麗な字でこう書いてあった。

 

『豊ちゃんへ

 

 そちらには、無事に転生できたかな?

 『ONE PIECE』について何も知らない人が行っても問題のない場所にランダムで送った訳だから、無事に転生出来たことを前提に書いていくね』

 

(一応、そんな気遣いは出来るのね)

 

 豊は(馬鹿)とは思えない気遣いに、少し驚きながらも、手紙を読み進める。

 

『取り敢えず、まずは世界について話していくよ。

 まず、一つ目に、この世界には多くの島々があって、島と島の行き来は基本的に船だよ。

 だから、頑張って船とか用意してね!

 

 二つ目に、〝世界政府〟っていう地球でいう国連みたいな組織があるんだけど、それとは違って、大きい軍事力と加盟国に対する大きな影響力を持っているんだ。

 世界政府には〝海軍〟とか〝サイファーポール〟なんて言う下部組織もあるけど、それは後で書くね。

 で、先に世界政府のトップについて話すと、〝五老星〟っていう〝世界貴族〟と呼ばれる人たちの最高位にいる五人のおじいちゃんたちだね。

 この世界貴族にいてなんだけど、通称として〝天竜人〟って呼ばれることが多いかな。それでこの人たちなんだけど、先祖が原作が始まる八百年前に世界政府を作った二十人の王の末裔らしくてね、凄い権力を持ってるんだ。その権力は加盟国の王族でさえ従うしかないほどなんだけど、問題は、基本的に天竜人って人間のクズだから。人を人とも思わない、ぶっちゃけ奴隷としか見てないようなやつらだから。

 五老星の人たちはずっとマシだけど』

 

(『ONE PIECE』の世界って意外と殺伐としてるのね……………)

 

『三つ目に、海軍について話すね。

 海軍は、世界政府の指揮下にある軍事組織だね。基本的には、海上での治安維持が主な仕事だね。

 他にも、天竜人や王族の護衛とかもするかな。

 海賊とかになったら、基本的に追いかけられるよ!

 まあ、たまに見逃してくれるルーズな人もいれば、「悪は絶対殺す」っていう感じのクレイジーな人もいるけどね。

 

 四つ目に、サイファーポールについて話すね。

 サイファーポール、通称〝CP〟は世界政府の指揮下にある諜報機関だね。

 天竜人直属のCPー0と、CP1からCP8、そして、市民の暗殺を許可された非公開の暗躍部隊でCP9があるね。

 たまに、長官が腐ってたりするよ』

 

(うわぁ……………)

 

 豊は想像以上の世界のヤバさに軽く引いた。

 

『五つ目は、それぞれの海について話すね。

 この世界の海は、「赤い土の大地(レッドライン)」と「偉大なる航路(グランドライン)」で東西南北に分割されているんだ。

 それぞれ〝東の海(イーストブルー)〟〝西の海(ウェストブルー)〟〝北の海(ノースブルー)〟〝南の海(サウスブルー)〟って呼ばれているよ。

 

 「偉大なる航路」は、「赤い土の大地」と垂直に交わる天候や海流、磁場が超でたらめな海域で、東の海(イーストブルー)南の海(サウスブルー)に面している前半の海を「楽園(パラダイス)」、西の海(ウェストブルー)北の海(ノースブルー)に面している後半の海を「新世界」って呼ぶんだ。

 島々にある特殊な鉱石で磁場が狂ってるから、「記録指針(ログポース)」とか「永久指針(エターナルポース)」がないと、次の島に行けないから気を付けてね。

 

 「偉大なる航路」に入る方法は二つ。

 一つは、全ての海に接する山、リヴァース・マウンテンの斜面を駆け上がる海流に乗ること。

 これは、入口があるんだけど、入り損ねると、船ごと沈むよ。

 もう一つは、「凪の海(カームベルト)」っていう「偉大なる航路」を挟む無風の海域を渡ること。

 ただ、この海域には、海王類っていう馬鹿デカい海の化け物が住んでるから、この海王類を上手く躱す方法か、海王類を倒せるだけの力がないと、全くおススメ出来ないね。

 

 「赤い土の大地」は、世界を分かつ超巨大で、両端がほぼ垂直な崖でできた壁のことだよ。

 天竜人が住む「聖地マリージョア」はこれの上にあるんだ』

 

(地形が明らかにおかしいでしょ……………)

 

 豊はこの世界の地形や海域に戦慄しながらも、手紙を読み進める。

 

『六つ目は、悪魔の実について話すね。

 これは、とても不思議な果実で、一口でも食べると、その実に宿っている特殊な能力を手に入れることが出来るんだ。外見も、明らかに普通の果実じゃないし、滅茶苦茶不味いらしいよ。あと、泳げなくなる。

 そして、同じ悪魔の実は同時に存在しないし、一つの実からは一人の能力者しか生まれないんだ。あ、能力者っていうのは、悪魔の実を食べた人たちの総称ね。

 因みに、能力者が死ぬと、その人が食べた悪魔の実は復活するらしいよ。

 

 特殊な能力は、大別して「超人(パラミシア)系」「動物(ゾオン)系」「自然(ロギア)系」の三つに分けられるんだ。

 まず、「超人系」は、特殊な体質や能力を持つことが出来るんだ。一番数も多くて、特殊だから、相性によっては下克上を起こしやすいね。

 次に、「動物系」は、動物への変身能力を持つことが出来るんだ。人型、獣型、その中間形態の人獣型の三種類に変形出来て、鍛えれば鍛えるほど身体能力が上がるっていうことから、純粋な白兵戦では一番だね。

 最後に、「自然系」は、身体を自然の物質そのものに変化させることが出来るんだ。弱点を突いたり、海楼石の武器や覇気による攻撃じゃないと、基本的に攻撃が通らないし、三種類の中では最も希少とされる悪魔の実だからか、最強種って呼ばれてるんだ』

 

(悪魔の実、ねぇ。強いんだろうけど、泳げなくなるなら、海に落ちたらお終いだし、別に無敵って訳じゃないなら、正直、いらないわね。あと、海楼石と覇気って何かしら?)

 

『七つ目は、海楼石について話すね。

 これは、「偉大なる航路」の一部の海域で採れる鉱石でね、「海と同じエネルギーを発する」っていう特性を持っているんだ。言わば、海が固形化したようなものなんだ。

 その特性から、能力者はこの石に触れると、海に落ちたのと同じ状態になる訳で、力が抜けて、能力が使えなくなるんだ。だから、対能力者の切り札としては結構有用なんだけど、ダイヤモンド並みの強度を持つから、加工が凄く難しいから、そんなに出回ってないんだよね。強いて言うなら、海楼石製の手錠とか檻かな。

 因みに、これを船底に敷き詰めると、海中の生き物たちからは海水と同じように認識されるから、「凪の海」を渡るんだったら、そうした方がいいと思うよ』

 

(やっぱり、悪魔の実の能力者って、弱点多くないかしら? 悪魔の実は見つけても食べないでおきましょう。まあ、売れば好事家とかが買ってくれるでしょう)

 

 原作での悪魔の実の強力さを知らない豊には、「悪魔の実=デメリットがあり過ぎるもの」と認識しているらしく、売れば、最低でも一億ベリーはするのだが、悪魔の実に価値を感じていないようだ。

 

『あとは、お金の単位が「ベリー」で大体「1ベリー=1円」くらいとか、通信手段として〝電伝虫〟っていうカタツムリみたいなのがいたり、他には、手長族とか足長族とか魚人とか巨人がいるくらいかな~。

 まあ、今上げたのは、興味があったら自分で調べてみてね』

 

(まあ、金銭の単位が違うのは当たり前だとして、価値が大体日本円と同じなのは、普通に楽でいいわね。それにしても、カタツムリでどうやって連絡を取るのかしら? 種族とかは純粋に気になりますし、自分で調べましょう)

 

『そして、漸くお待ちかねの特典についての説明に入りたいと思いまーす!!』

 

「……………」

 

 そして、手紙の終盤に近付いてきたころ、遂に豊が不安視していた特典の説明がきた。

 

(こちらも、せめて手紙の用に気を遣えてるといいんだけど……………)

 

『特典その1、絶対に壊れないサーベル!!

 この手紙が入っていた宝箱に一緒に入っているはずだよ。

 そしてなんと、切れ味は、最上大業物クラスだよ!!

 銘は「ワイバーン」!!

 あ、刀剣の位階についての知識はまた後でね。

 

 特典その2、絶対に壊れないピストル!!

 これも、手紙やサーベルと同じく宝箱に入っているはずだよ。

 ちゃんと、弾丸もたくさんあるから、頑張って射撃の練習をしてね!!

 

 特典その3,純海楼石製の鎖!!

 敵に能力者が現れたら是非とも活用してね!!』

 

(私、サーベルも銃も使ったことなんてないのだけれど。後、鎖は相手を縛るのにでも使うのかしら……………ていうか、弾丸なんて何処に――)

 

 豊には、これが全部ではないとは言え、神のチョイスには趣味が入っているようにしか見えない。

 閑話休題。

 弾丸の在り処には、一瞬何処にあるか分からなかったが、宝箱の底が妙に厚かったのを思い出し、宝箱の底を弄ってみると。

 

「やっぱり」

 

 宝箱の底には、びっしりと鉛玉が大量に敷き詰められていた。しかも、ご丁寧にも製造方法の書かれた紙と一緒に。

 豊は少しそれを読んでみる。

 

「…………………………道具と材料があれば、私でも作れそうね」

 

 豊は、少し驚きつつも、一旦、弾丸のことは置いておいて、手紙の続きを読む。

 

『特典その4、覇気と六式!!

 これに関しては、豊ちゃんがこの手紙を読み終わり次第、自動的に豊ちゃんの脳に、知識と使い方の感覚を刻み込むから、あとは知識と感覚を頼りに頑張って取得してね!!

 

 特典その5、高い身体能力!!

 豊ちゃんの身体能力を地球にいた頃と比べて、大幅に強化してあるよ!!

 ついでに、回復力とか免疫能力とか、『鬼滅の刃』の隊士みたいになってるけど、大丈夫!! 気にするな!! 『ONE PIECE』の世界なら、そういう奴が絶対そこそこの数いるから!!

 

 特典その6、不老長寿!!

 人類の夢を半分、神様パワーで叶えてみました!!

 年はそれ以上取らないし、寿命で死ぬこともない。永遠の現役だよ!! やったね!!』

 

「…………………………はっ」

 

 自身の脳に知識と感覚が刻み込まれるという情報と、自身の体が『鬼滅の刃』の隊士化しているという情報。そして、不老長寿になったという情報。

 ちょっと情報量が多すぎて、豊は思考が完全に遠いところに旅立ちかけるが、なんとか自力で現実世界に帰還する。

 

「鬼滅ボディ…………悪いことはないけど、自分が知らないうちに身体が人間辞めてるって、何か複雑ね…………」

 

 豊は、凄い身体を手に入れて嬉しいような、人間辞めてて悲しいような、そんな複雑な表情をしながらも、手紙の最後を読む。

 

『以上、神様からの『ONE PIECE』世界の紹介と特典の説明でした!!

 それでは、良き人生を!!

 

・追伸

 原作の五十年前に転生させようと思ったら、桁一つ間違えて、二百年前にしちゃった(汗)』

 

(まあ、別に原作と関わるつもりはないから、原作の何年前でも――)

 

「痛っ!?」

 

 そこまで考えたところで、頭に激痛が走り、豊はそのまま気を失った。

 

主人公が海に出た後。

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