不老少女、海に出る。   作:千樹 星百

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第4話

 豊の転生からおおよそ一年が経った。

 

 その一年間の豊の修業の成果と言えば、当初の最優先して取り組むべき課題である〝自身の身体に慣れる〟というものはおおよそ達成したと言えるだろう。

 事実、六式を未完成であるものの、ある程度は再現出来ているのである。これも、六式の「ろ」の字も使えないような一年前と比べれば、大分進歩したと言えるだろう。特に〝(ソル)〟と〝月歩(ゲッポウ)〟、〝嵐脚(ランキャク)〟の再現は順調と言える。

 

 そして、二番目に優先すべき課題である覇気の鍛練では、〝武装色〟は十回中三、四回は硬化出来るようになったとはいえ、維持時間もあまり延びておらず、あまり進んでいないが、〝見聞色〟は大きく進歩していた。

 〝見聞色〟は今や、半径数百メートルの気配をほぼ常時感知出来るようになっていたのだ。

 

 まあ、そうなったのには、豊の得意な色が〝見聞色〟と言うのもあるのだろうが、それ以上に、普段の行動の方が大きいだろう。 

 具体的には──

 

 

 ◇◇◇

 

  

 ドゴーンッ……ドゴーンッ……

 

 ジャングルの奥からいつものように(・・・・・・・)、大地を揺らす破壊がたてた音が鳴り響く。

 そんな中、豊は。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ」

 

 息を切らしながら、破壊が行われているジャングルの奥を走っていた。

 

 何故、そのような危険な場所にいるのか?

 理由は二つある。

 

 一つ目は、食料調達だ。

 豊のサバイバルでの食事は、基本的に野生動物の肉と野生の果実である。

 このジャングルでは、奥に行くほど動物の体が大きくなり、一つの木に実る果実の数が増えるという特性がある。

 豊は、何故かは知らないが、胃袋の許容量が以前の何十倍にも増えていることから、出来るだけ多くの食事を摂ることにしていた。

 そのことから、ジャングルの奥に住んでいた方が、食料調達が楽だからだ。

 

 二つ目は、修業のためだ。

 このジャングルでは、奥に行くほど動物たちの体が大きくなる。つまり、ジャングル最奥に〝異常な動物〟たちがいるのだ。

 彼らは、豊にとっての覇気の先達であり、自分を喰らおうとする(捕食者)である。

 そんな者たちが、毎日のように顔を合わせれば、どうなるか。

 それは、

 

「グオォォォォォオンッ!!」

 

「うっさいわよッ!!」

 

 豊と〝異常な動物〟との鬼ごっこである。

 つまり、「豊が危険な場所にいる」というのは半分間違っており、正確には、「豊が危険な場所で、危険な状況を生み出している」といった方が正しい。

 

 何はともあれ、おおよそ九ヶ月前から毎日のように、豊は〝異常な動物〟にわざと見つかって、今のように〝異常な動物〟――今日はライオン型と――鬼ごっこをしているのだ。

 勿論、ただ走り回って逃げているのではない――と言うか、覇気を使ってる相手からそんなことで逃げれる訳がないのだが。

 豊は鬼ごっこの際、〝見聞色〟を使って、周りを索敵しながら逃げているのだ。

 走っている場所は当然ジャングルの中。近くにある岩や木を目眩ましにしたり、追い駆けてくる〝異常な動物〟に、別の〝異常な動物〟を押し付けたりしながら、逃げる。

 これを毎日、一日二回、数時間ぶっ通しで行う。

 この鬼ごっこでは、豊には、〝見聞色〟による感知と、高い走力を生み出すための脚力が必要になってくる。

 しかも、一日の訓練では、これが一番時間が長い。

 そうなれば、自ずと〝見聞色〟と脚力が特に鍛えられ、〝見聞色〟は上達し、脚力が重要な〝剃〟〝月歩〟〝嵐脚〟の三つの六式も上達するというものだ。

 六式の〝剃〟と〝月歩〟をこの鬼ごっこで使えればよいのだが、生憎と、完成度もまだ完全ではないし、たまに失敗するので、ちょっとしたミスで死ぬかもしれないこの鬼ごっこでは、流石に豊でもその失敗したときが恐ろしいので、使っていなかった。

 

 そうして、今日の鬼ごっこ(午前の部)開始から数時間後、〝異常な動物〟が豊を追い駆けるのに飽きて、漸く鬼ごっこは終わった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 鬼ごっこ(午前の部)が終わった後、豊は決まって、ジャングルの中心から少し外れた場所にある岩山にいた。

 この岩山は、ジャングルとは違い、生き物がほとんどいない。いるとしても、精々普通サイズの猛禽類やネズミ程度だ。

 

 豊は、岩山に転がっている、自分よりも二回り大きな岩に海楼石の鎖を縛り付ける。

 そして、

 

「フッ………!!」

 

 その岩を背負い(・・・・・・・)そのまま腕立て伏せの(・・・・・・・・・)体勢に移った(・・・・・・)

 豊がこの場所で行うことは、主に三つ。

 一つは、この岩を使った筋トレだ。

 岩を縄代わりにして自分に縛り付け、岩を重しとして身体を鍛える。

 腕立て伏せでは、地面に着けるのは、手のひらだけでなく、指先でやるときもある。当然、六式の一つ〝指銃(シガン)〟の再現のためである。

 行うのは、腕立ての他にも、スクワットや上体起こしもする。

 

 これら全てで、海楼石の鎖を使っている訳だが、どの海を探しても、海楼石の鎖を縄扱いするのは、後にも先にも豊くらいだろう。

 きっと、豊に海楼石の鎖をプレゼントした神も、愕然としているか、一周回って笑い転げていることだろう。

 

 閑話休題。

 

 筋トレで一定の数をこなした後は、海楼石の鎖を仕舞い、代わりに、最上大業物クラスの位階なし・サーベル「ワイバーン」を取り出す。

 そう、狩った動物の皮を剝いだり、肉や果物を食べやすい大きさに切れるので、未だ一度も使ったことのないピストルよりも活躍している「ワイバーン」である。本来の用途とは違う使い方をされているが。

 「ワイバーン」に人格があれば、きっと滂沱の涙を流しているだろうが、今、取り出されたのは、単純に素振りのためである。

 流石に豊も、刀剣の最上位クラスの性能を持つ「ワイバーン」を包丁や解体ナイフ代わりで終わらせるつもりは毛頭ない。

 寧ろ、ある程度戦えるようになったら、本格的に使わせてもらう気満々である。

 そして、豊は「ワイバーン」を上段からの振り下ろし、袈裟斬り、振り上げなど、様々な振り方をしつつ、自分のフォームを感覚で試行錯誤を続ける。

 

 これが、一定の回数を終えた後は、「ワイバーン」を仕舞い、岩山を降りて、昼食の狩りに出掛ける。

 

 

 ………さて、お気付きだろうか?

 豊は普通に、海楼石の鎖や「ワイバーン」を仕舞っているが、それが何処に(・・・)仕舞われているだろうか。

 

 答えは、豊の腰にあるポーチにである。

 

 いや、ポーチに鎖やサーベルが入るか!! と、思う人もいるだろう。

 だが、入るのである。

 神様パワーによる代物故に。

 

 ことの発端は、今日より約十一ヶ月前、つまり、豊の転生一ヶ月後のことだ。

 この日、就寝した豊の夢に、神が干渉して、豊の夢と〝神域〟を繋いだのだ。

 神がそんなことをしたのには、勿論理由がある。それは、

「マジでヤバい無人島に転生させちゃってごめんなさい(土下座)」

 である。

 なので、豊が神に対して説経し、神を涙目にさせた後、何処からとなく天使たちが現れて、何故か豊に次々と感謝を述べてきたのだ。

 どういうことかと、豊が天使たちに聞くと、どうも、あの時の一件から神が大分反省し、真面目に仕事をするようになったのだとか。

 前は真面目に仕事してなかったんかいと、思った豊だが、真面目にやってれば、私が死ななかったか、と言うことに気付いた。

 豊は、天使たちに優しく労いの言葉をかけた。

 天使たちは、豊の言葉に涙を流した。

 尚、神は優しい豊を見て、不気味がっていたので、イラッとした豊から拳骨を一発食らった。

 

 その後、豊にとても感謝している天使たちは、神に、

 

「豊様の夢の中で、豊様に感謝するパーティーを月一で開きます。いいですね?」

 

 と、命r──もとい、提案し、神もそれを承諾し、夢の中ではあるが、豊は月一でサバイバル飯ではない料理にありつけることになったのだ。

 

 そして遂に、神が、謎ポーチが豊の手にあることの直接的な原因を言った。

 

『豊ちゃん、ボクからのお詫びとして、月一のこのパーティーで、豊ちゃんからのお願いを遣り過ぎない範囲で何でも叶えるよ』

 

 と。

 

 その結果として、何回目かのこのパーティー、「豊様に感謝する会」(天使たち命名)のときのお願いで、謎ポーチ、もとい、「マジックポーチ」(神命名)が豊の手に渡ったのである。

 

 

 閑話休題。

 

 

 昼食が無事終わると、豊の午後の修業一つ目、鬼ごっこ(午後の部)が始まる。

 尚、これは、午前にやったのと変わらず、〝異常な動物〟との鬼ごっこである。

 

 それが終われば、少し休憩した後に、何か漂流でもしてないかと、砂浜を〝見聞色〟を使いながら、ランニングである。

 

 それも終われば、あとは、夕日が射し込むジャングルで夕食の狩りをして、夕食を無事食べて、就寝である。

 

 豊は、今日も無事、無人島での修業とサバイバルを終えた。

 





「マジックポーチ」
:豊がお願いを複数回使って強化した、神様パワーによって作られた特殊なポーチ。
 尚、入るのは無生物のみ。

・容量:10㎞×10㎞×10㎞(強化済み)
・重量の軽量化(十億分の一)(強化済み)
・絶対に壊れない
・防水機能付き(海の中に入っても、中身は濡れない)
・物の大きさに関係無く、入り口に触れさえすれば、何でも入る。

主人公が海に出た後。

  • 海賊
  • 海軍
  • 賞金稼ぎ
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