豊が転生してから、おおよそ十年が経った。
つまり、転生一年目から九年が経っている訳だが、豊はあれからどれだけ成長したかと言えば―――
「喰らいなさいッ!!」
ドゴンッ!!
「ゴアァァァァアッ!!」
―――〝異常な生物〟と真っ正面から殴り合えるまでに成長していた。
……………成長し過ぎではないだろか。
現在の豊は、六式の〝剃〟〝月歩〟〝嵐脚〟を完全に修得し、更に〝指銃〟〝
覇気に関しては、〝異常な動物〟と真っ正面から殴り合っている時点でお察しだろうが、かなり上達している。
実はこれで、二年前、つまり、転生から八年目時点では、〝武装色〟は精々及第点レベルで、〝見聞色〟は「未来予知」に二、三歩及ばないレベル、と当時三、四年ほどの間、停滞気味だったのだ。
最早、この二年間に一体何があったんだ、という思わず言ってしまいそうな現状だが、勿論その何かがあったのである。
それこそ、〝覇王色の覇気〟の覚醒だ。
二年前のある日、豊はいつも通り〝異常な動物〟と鬼ごっこをしていた。
そして、鬼ごっこで〝異常な動物〟の気を逸らして、逃げ道を確保するときの常套手段の一つであった「〝異常な動物〟に〝異常な動物〟をぶつける」というやり方をやったら、その日は何があったのか、二体の〝異常な動物〟が共闘して、豊に襲い掛かってきたのである。
そこから、当たり前のように豊は、あっという間に追い詰められた。
そんなときである、〝覇王色の覇気〟が覚醒したのは。
無論、覚醒したところで、当時の豊は〝異常な動物〟よりも格下としか言えない相手だ。だが、この無人島には今まで〝覇王色〟を使える者がいなかったのだろう。当時の豊の〝覇王色〟でも少し怯む程度ではあったが、隙を作ることが出来た。豊はその隙をついて、何とか逃げ出したのだ。
だが、前述にもあった通り、これが一つの転機になったのだ。
この〝覇王色〟の覚醒で、豊は「何かのピースがピタリとはまって、覇気のコツが分かった」らしい。
それからの豊の覇気の上達速度は凄まじく、それから二年経った今となっては、原作の四皇の最高幹部に勝らずとも劣らない実力となっている。
〝武装色〟は、サーベルの「ワイバーン」やピストルの弾丸に纏わせる武装硬化は勿論のこと、触れずに相手を弾き飛ばすことが可能な段階に来ており、内部破壊まではあと一歩と言ったところ。
〝見聞色〟は、「未来予知」の段階にとっくに上がっており、現在は動揺していても、ある程度正確な「未来予知」が出来るように、その精度を更に高めているところである。
〝覇王色〟は、全方位への発散から特定の方向への発散、そして、物理的な破壊も可能となっている。「纏う〝覇王色〟」は取っ掛かりは掴めているが、習得には至っていない、という状況だ。
身体能力の方も大分上がっている。それはもう、「その細腕の何処にそんな力があんの!?」とか、「あれ? コイツもしかして動物系の能力者?」とか、正直思われても可笑しくないレベルだ。
勿論、悪魔の実は何も食べていない。
尚、豊が少し疑問に思って神に聞いてみたところ、神曰く、「身体のスペックを超上げたときの副作用みたいなものじゃない?」とのことだった。
「ワイバーン」を使った剣術やピストルの狙撃に関しては、まともな実戦が、ここ二年間だけであるにも関わらず、剣術では飛ぶ斬撃を八割の確率で飛ばし、狙撃はピストルの射程のこともあり、距離は短いが、だとしても、百発百中に近い精度である。
さて、ここまで成長した豊であるが、サバイバルと修業の生活の内容は、かなり変わった。
まず、朝。
転生一年目では、〝異常な動物〟との鬼ごっこ(午前の部)だったわけだが、今は〝異常な動物〟とのステゴロなタイマンになっている。
このように変えた当初こそ、ボロ負けした挙げ句に逃走という散々な結果ではあったが、それも回数を重ねる内にメキメキと実力が上がり………二年経った今では、冒頭のように、互角以上に殴り合えるレベルになっている。
次に、昼近く。
転生一年目では、岩山での筋トレだったわけだが、今でもそれは変わらない。
但し、重しにしている物が、岩山の岩から、神様パワーによる巨大且つ、超重量のダンベルに変わったが。
尚、ダンベルの重りの部分には、「5t」の文字が……………。
因みに、神はこれについて、「ゴリラかよ…………」と呟いたのを豊に聞かれ、ガツンッと音が出るほどの拳骨を喰らった。
そして、正午。
転生一年目では、「ワイバーン」の素振りだったわけだが、今ではそれに加えて、ピストルの狙撃訓練も行っている。
「ワイバーン」の素振りでは、フォームの試行錯誤だけでなく、直接岩を斬ったり、飛ぶ斬撃で岩を斬ったりしている。
狙撃訓練では、岩の上にジャングルで採った果物を置いて、それを撃ち抜いたり、岩山付近を飛び交う猛禽類の動きを〝見聞色〟で「未来予知」して撃ち落としたりしている。
因みに、「ワイバーン」の素振りの後に行っていた昼食の狩りはなくなり、現在では、週一で大量の動物を狩って、それを、神へのお願いで〝時間経過なし〟や〝保管空間の拡張〟などの更なる魔改造を施した「マジックポーチ」に保管してあるため、それを飯時に調理して食べている。
尚、神へのお願いで、解体ナイフや果物ナイフ(神様パワーで絶対壊れない)を貰っているので、「ワイバーン」涙目なことには、もうなっていない。
さて、それも終わって、昼過ぎ。
転生一年目では、〝異常な動物〟との鬼ごっこ(午後の部)だったわけだが、今では、〝異常な動物〟とのタイマンになっている。
こちらは、午前のとは違い、豊は素手でなく、「ワイバーン」とピストルを装備して行う。
こちらも、変えた当初は午前のと同じく、ボロ負けからの逃走であったが、現在では、互角どころか、勝率百パーセント。
〝異常な動物〟たちにも、ある程度の個体差はあるため、勝ちとは言っても、辛勝から圧勝まで、様々ではあるが。
そして、夕方の少し前。
転生一年目では、〝見聞色〟を使用しつつの砂浜をランニングしていたが、現在では、〝見聞色〟を使いつつ、無人島周辺の海を泳いでいた。
因みに、この無人島周辺の海には、五十メートルから百メートルクラスの海王類がそこそこの数生息している。
なので、そこを泳ぐ豊は、海王類にとって良い餌のように思われる訳だが、
ドバァァンッ
と海が大きく水飛沫を上げ、そこに海王類の首が切られた死体が、プカァーと浮かび、同じくそこに上がってきた豊によって「マジックポーチ」に保管され、その日の夕食となる。
夜は、夕食を食べ、神へのお願いで貰ったテント(神様パワーで絶対壊れない)の中で、これまた神へのお願いで貰った布団で就寝する。
以上、強キャラへの道を順調に進みまくる転生十年目の豊であった。
☆☆☆
~〝神域〟サイド~
神は、いつものように、豊の一日の様子(ダイジェスト版)を見て思った。
「豊ちゃん、強くなりすぎじゃない?」
「あの世界においては、戦闘力はあるに越したことは無いと思いますけど」
「いや、まあ、そうなんだけどさ」
神の台詞に、豊の転生を担当した天使がそう返す。
神はそれに、少し困ったように返す。
「でもさぁ、豊ちゃんがこのままのペースで成長していったら、原作が始まるどころか、ロックス時代の時点で世界最強になってそう。ロックスの詳しい強さは知らないけど」
「ロックス………確か、原作の数十年前の最強格の海賊でしたっけ? それに勝てるなら、その時代では安泰ですね」
「う~ん、でも原作ファンとしては、ロックスとは最高でも互角であってほしい……」
「…………………」
天使は、原作ファンとして悩んでいる神に呆れた視線を送りながら、仕事に戻っていった。
おかしい、主人公の台詞が殆ど無い。主人公なのに。
誤字報告であったんで、修得した六式の部分を書き直しました。
主人公が海に出た後。
-
海賊
-
海軍
-
賞金稼ぎ