Dies irae -elysium-   作:湯瀬 煉

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ほんっっっとうに長らくおまたせしました!!



■■■■ルート分岐
第十二話 ROSEN VAMP


「さーて。これでいいのかね?」

「オーケイ。ありがとう、エリー」

 

 いつものボトムレスピットのVIPルーム。綾瀬の部屋に留守電を残し終えた私たちは、そろそろ次の段階へと進もうとしていた。

 綾瀬には一応、街に作られた鍵十字から外れた場所にある商店街へ買い出しに行ってもらい、私、本城、遊佐で話し合っている。

 

「それで、()()()()()だっけか」

 

 遊佐が悪戯っぽく笑いかければ、本城も同じような笑みで此方を見る。

 そう。私たちボトムレス・ピットは、藤井蓮なしで黒円卓に挑むつもりである。私は最初止めたが、戦力としては私がいるし、遊佐司狼も強力だ。ゆえ問題はあるまい、と2人に押し切られてしまった。

 そもそもでいえば、「()()()()()()()()()()()()()()()()」という遊佐の意見が根底にはあり、私もちょっと同感だった時点で決着は着いていた。

 

「来るとすりゃ、誰が来ると思う?」

「シンプルに考えれば、ベイ──ヴィルヘルムだな。遊佐とも因縁がある」

 

 なるほど、と遊佐が手を叩くと同時に、本城は背後で何やらコンピュータを弄り始める。国連にハッキングを仕掛けている……らしいが、私にはさっぱり分からない。まあ真偽や過程はともかく、情報を引き出してくれるならばありがたい。

 

 

 

 私は聖槍十三騎士団という組織ではほぼ新兵である。ラインハルト・ハイドリヒとカール・クラフトが初め、まず最初にヴィルヘルムと第十二位が入り、ヴィッテンブルグ少佐、それに次いで今は亡き第五位、第十一位、次にクリストフやマレウス、第二位が入り、クリストフがシュピーネを連れて来て、シュピーネが私を連れて来て、最後に第七位が入団した。

 一応、団員全員と面識はあるし、誰が誰より強い、程度は分かるが、経歴の詳細を知っているのは、元々軍部にいた者のみであり、現存団員に関しては知らないことの方が多い。強いて言うなら、レオンハルトについてなら幼少期から知っているが、私たちの『黒円卓蓮抜きでぶっ潰そうぜ計画』においてあまり重要度は高くない。

 

 

 

 問題はベイだろう。計画において警戒レベルがトップクラスに高い相手が、まさかの初戦でぶつかるかもしれない相手なのだ。危険度未知数のクリストフが出張るよりはマシといえるが、より現実的な脅威であるベイは、段違いに絶望度合いが高い。

 

「結構、複雑な家庭っぽいね。んで、何と幼い時分に家族をぶっ殺して家を放火してギャングスターになった、と。

 自分は吸血鬼だーってなったのもここらへんみたいね。アルビノっていうんだっけ。そういう体質とかも理由の一つらしいけど、ここでの無敗伝説も妄想が加速するきっかけになったんじゃないかな」

 

 私が前に語った情報と、自力で入手(ハッキング)した情報を合わせて本城が相手の内情などを推理していく。私も異論はないので黙って頷いた。こういうとき、三人の中で一番頭が働くのは遊佐だ。現に今も、一番に挙手して発言許可を求めている。別に好きに話せばいいのだが、たぶんノリだろう。

 

「はいはーい。それじゃ、こいつは割と蓮じゃなくてもシバけんじゃねぇの。

 だってよ、それぞれの願望っつーか、渇望を(ルール)として発現させるのがおまえらの永劫破戒(エイヴィヒカイト)なんだろ? ってことは、こいつ吸血鬼の弱点突けば素直におっ死んでくれんじゃねえか?」

「それはグレーゾーンじゃない? 最近は弱点が克服されてる吸血鬼だって出てくるしさ。まるまる人間が吸血鬼になる能力かどうかも分からないわけじゃん。司狼が言ってた感じの能力なら、むしろ吸血鬼(ドラキュラ)ってより串刺し公(ドラクル)でしょ。そっちなら吸血鬼由来の弱点なんか知ったこっちゃないだろうし。……ベルンちゃんは、そこんとことどう思う?」

 

 二人の意見はどちらも正鵠を射ている。あとは黒円卓に実際に所属している私が答えるべきだろう。本城から話を振られたわけだし、とりあえず私の推理だけでも述べておこう。

 

「たぶん、串刺し公要素はアイツが契約してる聖遺物の影響だと思うんだ。確かヴラド公の血液だったと思うから。ゆえ、私は遊佐の意見に同意したい。可能性はゼロじゃないだろう。ただ……」

 

「ただ、なんだよ、ベルン。続きがあるなら言ってみろや」

 

 ―――ふいに、聞き覚えのある声が聞こえた。どす黒い殺意、鬼気、間違えるはずもない。

 

「おーおー。お早いご登場じゃねえか。いつの間に入ってきたよ」

 

 本城がモニターを覗けば、血濡れの監視カメラ映像が映っていた。話し込んでいる内に、どうやら侵入を許してしまったらしい。一番入口に近いのは私、その反対側に遊佐と本城。位置取り的に、私が盾として機能できることは幸運だったが、なにせ不意打ちだ。

 

 

 聖槍十三騎士団黒円卓第四位、ヴィルヘルム・エーレンブルグ=カズィクル・ベイ、此処に見参。

 

 

「逃げ――」

退けよ

 

 私の叫び声は空しく蹴散らされた。ベイの右足がムチのようにしなり、蹴り飛ばしたのだ。蹴りが直撃した顔面は熱を帯び、鼻からは今にも血が噴き出しそうで、あまりの痛みに視界が白くなっている。

 

「俺の相手がこのガキなんだよ。外野は黙ってろ」

 

 余程の急所に当たったようで、私の意識はぼんやりと離れかけていた。いや、幾ら何でもそれはありえないだろう。注視すれば、ベイの身体から無数の杭が生えており───。

 

 ベイの形成による吸精で、今現在自分が動けていないことを自覚した。

 

「くそ………」

 

 意識が遠のく。力が抜ける。

 

 最後に見えたのは、遊佐と本城よ、のいたずらっ子丸出しの笑顔だった。

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