Dies irae -elysium-   作:湯瀬 煉

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恋愛ってどう書けばいいんだろう……


第十七話 HELDIN

「アーーーンーーーターーー!」

 

 響く絶叫。鼓膜に来るビックボイス。やかましいこの声は、香純に違いない。

 

 なんとか俺とルサルカの喧嘩に巻き込まずに済んだらしい、が。………ちょっと待った。今の状況、不味くないか。

 

 外国から来た留学生(の設定)のロリータを押し倒した俺。そして下から体を持ち上げキスしているルサルカ。ついでにいうと俺は櫻井と付き合っている(設定である)。

 

「櫻井さんと付き合ってるんじゃないの!? 女だったら誰でもいいわけ!? カーーッ、卑しか男ばい!!」

「おまえはどこ出身なんだよ」

「うるさい!」

 

 駄目だ。荒ぶる香純を止める術はない。ズカズカ進撃してくる様は巨乳というより巨人。地ならししてそう。

 

「まあまあカスミも落ち着きなさいよ」

 

 更に、もっとめんどくさい女に俺は股がっているわけで。

 

「なーーんか喧嘩別れしちゃったみたいだから、私が(略奪愛)っちゃったの。だから健全よ、ケンゼン」

「どこが健全なのよっ!!」

 

 この女は、完全に確信犯である。場を乱すのが趣味というか、すごく楽しそうな顔をしていやがる。

 

「こいつ…………」

 

 さっきぶっ殺しておくべきだったと、俺は後悔した。

 

 

 

 ──────────

 

 

 

 

 藤井の狭い部屋はいま、物凄いことになっていた。

 男子高校生を高年齢軍装女性で囲っている感じである。綾瀬という騒がせ役がいないだけまだ静かだろうが、それにしたって男女比率がバグってらっしゃる。

 なお、香純は藤井に失神させられ、今は隣の、本人の部屋で休眠中である。

 

「………で、そちらの金髪碧眼の女の子は誰だよ」

「五代目トバルカイン」

 

 聖槍十三騎士団黒円卓第二位、死を喰らう者(トバルカイン)。これはかなり特殊な立場の団員となる。

 これの説明は、()()()である櫻井が説明を始めた。

 

「シスターリザの隣にいた団員がいたでしょう。あれがトバルカイン。黒円卓の聖槍(ヴェヴェルスブルグ・ロンギヌス)っていってね。櫻井の家系だけを狙って魂を食らう聖遺物があるんだけど、それと契約するとああなるの。

 私は、次代のトバルカインになるはずだった。

 トバルカインはそんなわけで、代替わりを繰り返していて、この人が、五代目………って感じよ」

 

 後半につれて言葉につまる櫻井。まあ、気持ちは分かる。

 

「さらにいうとこいつは元聖槍十三騎士団黒円卓、第五位。ベアトリス・ヴァルトート・フォン・キルヒアイゼンである」

 

 藤井の「うん?」という顔。

 そう、トバルカインは櫻井の魂しか狙い撃たないわけで。ばっちりドイツ人である彼女を狙うはずなどないのだが。

 

「つまりこいつは、四代目のトバルカインこと櫻井の兄ちゃんとチョメチョメして櫻井夫人になったということだな」

「ばっ………!?」

 

 バシン、バシン、と照れ臭さなのか殺意なのか分からない平手が私の背中を襲う。私が綾瀬だった場合たぶんこの場で破裂して死んでいただろう。気軽に人を叩くとかシンプルにやめていただきたい所存。

 じゃれつく私たちをジト目で眺める藤井。なんだその目は。

 

「はいはい、尊い尊い。それで?

 黒円卓の過半数くらいはこっちにいるわけだし、これからどうする?」

 

 超適当な賞賛と共に、切り出される質問。

 すなわち、これからどうやって黒円卓と戦っていくかという話である。

 

「正直、戦力的にはあんまり、というか向こうの方が強いくらいなのよね。だから下手に突っ込んでもいいことはないというか……」

「まあとりあえずは、向こうが動くのを待ってから各個撃破がいいと思うぞ。聖餐杯もいるからな」

 マレウスや私の言葉に、キルヒアイゼンとレオンが頷く。

 

 聖餐杯――ヴァレリア・トリファ=クリストフ・ローエングリーン。

 聖槍十三騎士団黒円卓最強は、ハイドリヒ卿で間違いない。それは直接対決した藤井が一番よく分かっていることだろう。であるならば、最()はヴァレリア・トリファだ。

 

 何をするか分からない。何を考えているのか分からない。だが動きを完全に読み切ったように確実な一手を打ってくる嫌な奴である。

 

 少なくともあいつがいる限り、積極的に動くほど袋小路に陥るという可能性は否定できない。ここは動かないでおくのが一番安全だろう。

 

「………なるほどな。あの神父、確かに警戒しすぎて駄目ということは無いか」

 

 一先ず、対応は決まった。

 あとはこちらからやることは無い。

 

 よって。

 

「ちょ、ちょっと……ベアトリス?」

「それじゃあ私たちは」

「ここで失礼するぜ!」

 

 ベアトリスがレオンを押し、私がそれに続いて部屋を退出しようとした。したんだが。

 

「いや待て。ちょっと待て。さすがに狭いったって香純の部屋とか司狼の部屋とかあるだろう。

 お前らどこ行くんだよ」

 

 藤井に引き止められてしまった。しかし、これ。女から言わせるのは如何なものか。

 目配せをすると、ベアトリスがわざとらしい咳払いと共に、真意を明かした。

 

「いやあ、めでたくマレウスと結ばれたみたいだし? 我々としては二人の欲求を大切にしたいの」

 

 つまり、そう。

 

「後は若いふたりでねー、うん」

 

 そう言い残して、私たちは部屋を出た。

 その直前、マレウスの目が獣のように輝いたこと、私は見逃していない。

 

 

 さらば、藤井の童貞。さらば、藤井の純潔。

 初体験が淫らなロリババアなんて、羨ましいと思う界隈もいるんだからありがたく受け取るがいい。




2人のエッチシーンも、要望があればR18タグ付けて新作作って書いてみようかなと思った次第。
マレウス√はどのルートよりどエロいんじゃないかと個人的に思ってます。
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