アホ鳥オペレーター   作:クロス電源

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活動報告から、BSW組メインのお話です。


Bomber!Stan!WARNING!

「あ!ランナーさん!ドクターが探してましたよ!」

「お、悪ぃなアルケット。助かる。」

「いえいえ、大したことじゃないですよ!それよりランナーさん、ランデン修道院のお酒を見つけてきたんです!また今度どうですか?」

「おっ、いいねぇ。楽しみにしとくわ。」

 

「えへへ…、ランナーさんの部屋に行きますのでよろしくお願いしまーす!」

「おーう!…っておいバカ!それは無理だ!」

「……。冗談に決まってるじゃないですかぁ!まだまだウブなんですねぇ、ランナーさん!」

「はぁ!?お前に言われたかねぇわ!ガキかよ!」

「ガキじゃないですっ!んんっ!それではまた。」

 

少しの咳払いの後、アルケットは俺の行き先の反対方向に歩いていった。あいつ、自分から煽ったりするのに煽り耐性低いからガキっぽさが増してるんだよな…。

 

…っと。やあ、みんな!ランナーだ!何があったのか、ドクターからのお呼ばれがあるらしい。

俺、()()()物壊すことも少ないのになぁ…?

まあ、ケルシー先生からの任務をドクター経由で伝えられるって事が大体の流れだって俺は知ってる。

 

もし特別給与が無かったら、ドクターの大事にしている非常食用オリジムシを全部食ってやるんだ。

 

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「よっ、ドクター!早速だけど用事って何だ?」

 

「ああ、ランナー。はぁ…ドアを蹴って開けるなとあれほど…」

 

「んな細けえこと気にすんなって!」

 

執務室のドアを蹴り飛ばして中へ入る。…なんでかって?しらね()

 

「はぁ…。それでね、本題なんだけど…フランカとリスカムは知ってる?」

「当たり前だろ、オペレーターの中じゃ屈指のコンビネーションだって有名だぜ?」

「知ってるなら良かった。それで、彼女らの契約先…BSWとのお話なんだけどね?そろそろ期限も迫ってたから契約更新の手続きをしたんだよ。」

「BSWねぇ…ジェシカとかバニラもそこ所属だったな。」

 

BSW、全称『ブラックスチール・ワールドワイド』クルビアに本社を構える、個人にセキュリティーと軍需品に関するサービスを与える会社だ。まあ、一言で言うなら警備会社って所。

…ん?警備会社…契約…。嫌な予感がするぞ。

 

「まさかとは思うんだけどさドクター。俺を派遣する、とか…言わないよな…?」

「…君のような勘のいいガキは嫌いだよ。」

「こんの覆面変態スタイルゥゥゥ!!」

 

覆面変態スタイル…覆面変態スタイルか…まっ、まあ待て、ランナー。もちろんタダでとは言わないよ?」

「…詳しく聞かせてもらおうじゃねえの。」

 

「…任務完了の特別給与。18万龍門弊なんてどうだい?」

「よし、ドクター。俺は何処へでも行きますぜ。」

 

「…チョロいぞ、チョロすぎるぞランナー。」

「なんとでも言え、そんで?クルビアまで走れと?」

「いやいや、さすがにそんな事はさせないよ。バッドガイ号を用意しておいたから、今から45分くらいしたら甲板に出て。その間に自分の用意でも…ってランナー?」

 

「バッドガイ号!?あのバッドガイ号か!?ドクターほんとサイッコーだぜ!!」

 

「お、おぉ…喜んでくれたなら良かったよ。それじゃ、任務遂行の幸運を祈るよ。」

「ありがとなドクター!」

 

予想外の収穫だ。こりゃあ楽しみだ!

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「おーい!オペレーターランナー!」

 

「あぁ!悪ぃな、すぐ行く!」

 

途中の人混みをひとっ飛びで超えて操縦士の目の前に着地する。

 

「すまん!ちょっと準備が長くなった!」

「なあに、いいってことよ。…噂に聞いていた通り本当に凄い足だな。」

「おーっと、触るな。怪我するぜ?」

「誰が触るか、野郎の足なんて。さっさと乗れ。」

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「おっ…!おお、操縦桿だ!なあなあ、これちょっと触っていい?」

「ダメに決まってるだろ、ガキか。」

「えー…んじゃ、計測器で我慢するよ。」

「おいやめろ、墜落させる気か!?」

 

バッドガイ号に入れる時間は約5時間ほど、あっという間にすぎてしまった。

 

「行ってくるわ!ありがとなぁ!」

「お…おう…気をつけて…」

 

ただ操縦してるだけなのになんでこんなやつれてんだか、…そういや、乗ってる間ずっとぶっ続けで話かけてたけど、それが原因な訳ないよなぁ…?

とりあえず国境を超える。いくつかの簡単な質問を終えると、クルビアの観光用パンフレットを渡される。仕事だって言ったんだけどなぁ?

 

「集合は明日だっけか…」

 

ただ今の時刻は18:47P.M.任務の内容自体はまだ明かされてない。とりあえず今日はこのクルビア国境付近の都市のトカロントにて外泊するという予定。ちなみにその外泊費用は経費で落ちる、最高かよ。

 

「とりま1番高級な宿にでも…!…ん?あれは…」

 

「開拓者の皆様ー!今月もお疲れ様でした!鉱石病抑制剤の配布はこちらでーす!1列に並んで、お受け取りください!」

 

「…あんな薬、見たことねぇ。そもそも、抑制剤なんてそんな簡単にできるもんじゃねえのに…。」

 

そういえば前ドクターから聞いたことがある。偽りの薬を配布して利益を得る…って、そのままあれの事か。

 

「ママジョンズ…ね。なんか見たことあるわ。」

 

なんか見たことあると思ったらこれあれじゃん。ドッソレスのクーポンのどこの会社か。一体どこからあんな資源仕入れてるんだと思ってたけど理解出来た。

 

「感染者は食い物…ねぇ。」

 

見ていて胸糞が悪くなったが流石にここで暴動を起こす訳には行かない。流石にそこまでアホじゃない。

 

「石付きを受け入れてくれるホテルにでも泊まるか…」

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「シッシッ!出ていきなッ!ここはお前さんが来るような所じゃないよ!」

「えぇ〜?1日くらい良いじゃねえかおばさーん!」

「無理と言ったら無理なんだよ!」

「…そうかい。チッ、ケチだなぁ…わかったよ。」

 

いい所なんて夢のまた夢だなこれ、そもそも普通のホテルに泊まれるかも怪しくなってきた…ちくしょう、明日はしっかりして行かないと任務に支障がぁ…。

 

「…お困りのようですね。」

「えっ、誰?」

 

突然後ろから声が聞こえてくる。振り返るとそこには上品な感じに形繕ったおっさんが居た。

 

「えっ、誰おっさん。」

おっさん…私はただのしがない没落者さ。」

「胡散臭い、帰れ。」

「ちょっ、ちょっと待ちなさい。君は今ホテルを追い出された直後だね?いい所を紹介しますよ。」

「…行くだけ行ってやる。」

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「ここだ、裏道の方にある良い隠れ場所さ。」

「あれ、意外と綺麗なところだ。」

「勿論感染者でも滞在することができる。…まぁ、少々お高くつきますがね。」

「金なら大丈夫だ。経費で落ちる。」

「経費…何かの仕事中ですか?そのロゴマークを見るに、君は()()()()()()()()()から来たのですか?」

「おっ、知ってんのか。そうなんだよ、BSWまで行かなくちゃならねえんだ。」

「BSW…落ちた経験があります。うっ…ううっ…!」

「おっさん!?何泣いてんだよ!?」

 

このおっさん、胡散臭いとかそんな次元じゃねぇ!情緒不安定だ!!

 

「おっさんこんな所で泣くな!おっさんだろ!?」

「ううっ……すまない。取り乱してしまった。なんの運命か、私もここに泊まっているんだ。実は私にはここの店長との()()があってね。私の友人扱いにして少しばかり値引きしてあげよう。」

「えっマジ?ありがとうおっさん!」

 

前言撤回、こいつ神様かもしれない。

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「…っはぁ、意外といい所だなぁここ。サービスもいいし…。」

「そうでしょう。私自慢の一宿です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なんでお前まだいるんだよッ!?」

 

「おや、私も泊まっているのですからどこに居たって関係は無いでしょう?」

 

このおっさんはワインを飲みながら答えた。何故かワインを飲む姿がしっくりくる。

 

「まぁそれもそうか…んで?なんで俺に話しかける。」

「あなたが面白そうでつい…ね。」

「きも。」

「ヴッ…!心に…ダメージが…」

「冗談!冗談だって!」

「はぁ…、ロドスってどんな所ですか?」

 

おっと、なんだこのおっさん。急に聞いてくるな。

 

「…やりがいがある。同僚も個性豊かな奴ばっかでどこにいても飽きない。ま、ちょっとばかしブラックなとこもあるけど、その度に補填の給料とか休暇とかくれるし、オペレーター一人一人を大事にしているいい所…って感じかな。」

「なんて理想的な会社だ…ずっと就職失敗していた頃の私に教えてあげたい…!」

「あんたもなかなか面白いよな。」

「そうですか……あ、そういえば。ロドスはライン生命と協約を結んでいると小耳に挟んだことがありますが。本当なんですか?クルビアの会社なので聞いておきたくて。」

「ライン生命?俺のダチにライン生命の奴がいるぜ?鉱石病にかかって機械みたいな話し方になってるけど、よくジョークも言うし、昔にあったロドス内での祭りでは『ライン製麺』とか言ってラーメンの丼被っててさ!!俺がロドスに入って1ヶ月くらいから交流があるんだ。」

「ライン…w製麺…www」

「だよなぁ!?訳わっかんねえよな!?」

「あとサリアって言うめっちゃくちゃ強え重装オペレーターのヴィーヴルの奴がいるんだよ。」

「…ほう、ヴィーヴルですか。その人には何か面白エピソードはないんですか?」

「うーん…俺自身はあんまりそいつと会話するー、みたいな事は少ないんだよな。けどさ、そいつ最近任務にずっと引っ張りだこでさ。そろそろ疲れが溜まってきた所なんじゃないかって。仲良くなる為に何かプレゼントでも送ってやろうかな。」

「…そうですか。大変ですが、それほど人望もあるんでしょうね。」

「あぁ、俺も任務で同じになった時はめちゃくちゃ信頼してるぜ。」

「…そうですか。」

 

なんかおっさんが静かになっちまった。ロドスのいい所だけ言いすぎたかな。…ってかこいつ。隠しきれてないけど、強者のオーラが出ている。オーラってなんだ?って思ってるけどそんな感じがこいつからする。もしかしなくても、ロドスに来たらなかなかの戦力になってくれるんじゃないかな。

 

「…もしさ、職が無いんなら。ロドスに来てみたらどうだ?経歴不詳、もし感染してたら手当も受けられる。今は多分龍門辺りに停泊してると思うけど。」

「ご勧誘感謝致します…が、今は職が見つかったんですよ。まあ、あまり喜ばしい職ではないんですがね。」

「なーんだ。職あったのか。」

「あって悲しむものでも無いでしょう。じゃあ、それでは私はここで。」

「おーう、それじゃあなおっさん。」

 

おっさんは俺に向かって少し会釈をして帰って行った。惜しい人を失くしたぜ…

 

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「明日の準備よし、爪の様子もよし、羽毛のセットもよし。」

 

よし、後は寝るだ『ピピピピピピッ!

 

「おおっ!?なんだぁ?端末端末…」

 

俺としたことが、端末の音量を下げとくのを忘れてた。画面を見てみると、そこには見知ったオペレーターの名前が。

 

「あー、もしもし?」

『あら、ランナー。元気してる?』

「元気してるぜ。急にどした?フランカ。」

『明日のあなたのお迎え役があの優等生サマって事を伝えておきたかっただけよ?』

「…ハハッ!なら良かった、せっかく持ってきたこれが使えなくなるかと思ったぜ。」

『あらぁ!準備万端じゃなーい!余程あの子に喜んで欲しいのね?』

「お前…また殴られても知らねぇぞ?」

『大丈夫、大丈夫!それじゃあまたね〜。』

「おう、そんじゃ。」

 

…そうだった。アレも入れとかないとな。

 

 

 

 

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「羽毛よし、服装よし…っと、行くか。」

 

部屋を出て階段を降りる、チェックアウトをしようとすると、店員に声をかけられた。

 

「ランナーさんですね?代金は要りません。どうぞ優雅な旅を。」

「えっ?はっ?どういうこと?」

 

「あれ、聞かされてないんですか?昨日あなたと来た人があなたの代金を払っていかれましたよ?」

「えっ、あのおっさんが?なんで?」

「彼によると…『彼には貴重な話を聞かせてもらったからね、これはその代金ですよ。』だそうです。」

「oh…マジかよ。すげえ人もいるもんなんだな。」

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「…あのおっさん何者なんだ…?職が見つかったってなんなんだ?」

 

いくら考え込んでも答えは出てくるはずもなく、うだうだ歩いていると前に大きな建物が見えてきた。

そのすぐ横のベンチに青いツノが生えているヴィーヴルの電気ウーマン、リスカムが端末とにらめっこしていた。何やってんだあいつ。

 

「おーい!リスカム?何やってんだお前。」

 

少しばかり大きな声でリスカムを呼ぶ。声が聞こえたのかハッとこちらを向いて早歩きで向かってくる。

 

「ようリスカム、お偉いさん方から話は聞いてるか?」

「あなた、時間遅れてるの気づいてないんですか!?何回端末に連絡したかわかってるんですか?」

「ん?端末?」

 

急いで端末を確認すると時間は8:18A.M.、待ち合わせ時間は8:15A.M.だから…3分の遅れか。リスカムからメールが8件、電話が6件もかかってきていた。さすが優等生と言った所か。

 

「まあまあ、そうカッカすんなって。」

「してませんが。」

 

そう言って俺は右ポケットから青色の飴を取り出して1つ口に投げ込む。

 

「お前も食うか?美味いぞ。」

 

リスカムに向かって左ポケットから取り出した黄色の飴を渡そうとする。

 

「もう騙されませんよ、また引っかかるとでも思ってるんですか?さっきの青色の飴をください。どうせまた黄色のは酸っぱいんでしょ?」

「はぁ、なんてこった…ほらよ。」

「あなたも学習してくださ…ってすっぱ!!??えっ!?嘘なんで!?」

「くっはははは!!!やっぱ面白い反応するよなお前って奴は!!」

 

左ポケットの飴はブラフ!黄色の飴なんて基本酸っぱそうに見えるし、俺がさっき食べた方が安全に見えるだろう!ちなみにさっきの青い飴はシージに貰った超酸っぱい飴。黄色の飴はヘラグのおっちゃんがくれた甘いやつ。…え?俺が食っても大丈夫なのか。だって?

フッ、俺は毎日シージの所に通って飴を貰って鍛えてたんだ。本人は呆れてたけど。

一方リスカムは顔を顰めてゆっくりと口の中で飴を転がしているみたいだ。

 

「噛み砕いた方が速えんじゃねぇの?」

 

言った直後からガリゴリと飴を噛む音が聞こえてくる。

素直か。

 

「うぅ…まだ口がすっぱい…」

「あっはは!悪かったな!お前ってほんっといい反応するよな、フランカの気持ちも分かるってもんだ。」

「分からなくて結構ですよ!…って、だいぶ大荷物ですね。一体何が入ってるんです?」

「おっ、良くぞ聞いてくれた。まず端末、カンパン、保存水、足研ぎ用のヤスリ、飴…」

「…結構普通じゃないですか。」

「まだあるぜ。救急箱、マスターキー、ガラスの小鳥…」

「う…うん?」

「コイン式おもちゃ、安全試薬第073番、ブレイドダンス…」

 

「ちょっと待ってください!?」

「なんつー物持ち歩いてるんですか!?こんなのBSWに入れること出来ません!没収です!」

 

「えぇー!?せめてブレイドダンスだけでもぉ!」

「ダメに決まってるじゃないですか!!」

 

為す術なく全部没収されてしまった、あれを売ってくれた鎧のおっさんには謝っておかないと。

 

「仕方ねえなぁ、じゃあこのヘルメットと防護ゴーグルで我慢するか…」

「一体あなたはBSWをなんだと思ってるんですか!?」

 

「えっ?そんなの…

 

B Bomber!

S STAN!

WWARNING!』

 

に決まってるだろぉ!?」

 

「サンダーストーム!!」

 

「あぎゃぁぁぁぁぁあ!?!?」

 

それから数分後、あまりの遅さに様子見に来たと自称するフランカが、まっ黒焦げになった俺とアーツの反動で動けなくなったリスカムを見つけて運び出してくれた。

絶対こいつどっかから見てただろ。

 

「あらあらランナー、そんなまっ黒になっちゃって♪」

「うっせ、せっかく羽毛セットしてきたのによ。」

「悪いのはランナーですからね?あんなツッコミ待ちみたいな事されたら誰だってそうします。」

「いやなんでだよ!?」

「あら、私だってそうするわ。」

「ええ…」

 

二人の感性を疑いながらBSW内を歩く。この中でも2人は何かの言い争いを続けている。よく飽きないなほんと。

 

「…指名手配書。こんな通路の所にでかでかとよく貼るよな。」

「犯人の顔を効率よく覚えるためです。こういう所に貼ってあったら、誰でも覚えるでしょう?」

「そりゃあな、…あっ、この手配書!マウンテ…う"っ!?」

「バカですかあなた…!こんな所で大きく名前を叫んだらあの人の居場所がバレますよ…!」

「おっ……とやべえ事しかけたな、助かったよ。リスカム。」

「気をつけてください。」

 

少しばかり咎められた後、再び手配書を眺める。…ん?

 

「ジェッセルトン…ウィリアムズ?」

「…ん?ああこれ、まだ貼ってたのね〜。」

 

眺めていたらフランカがベリッと一気にその手配書を剥がす。

 

「おっ、おい。それ剥がしてもいいのか?指名手配犯だろ?」

「いいんですよ、それはもう必要ありませんから。」

「必要無い…って?」

「このおじさん、獄中死したのよ。数ヶ月前に火葬されたって聞いたわ。」

「あー…そうだったのか。なーんか見たことあるような気がしたんだけど…」

「そっくりさんでも見つけたんじゃない?確かにこの人は火葬されたんだから。骨まで残らず燃やされたって話よ?」

「そうか…」

 

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かなりの数の階段を登りきり、最上階。目の前には何ともありきたりな2つの重厚な扉。ゲームでよく見るラスボス前の部屋みたいだ。

 

「すこし待っててくださいね。」

「おっけー」

「あいよー。」

 

ほんの数分間…だと思っていたが、それより長くリスカムを待つ、リスカムの言う「少し」はかなり長いみたいだ。その最中、フランカが不意に声をかけてくる。

 

「リスカムへの『アレ』ちゃーんと成功したみたいね?」

「代償もデカかったけどな。」

「ウフフ…あの子、本当にいい反応するから飽きないのよね〜。ほんとかわい子ちゃんなんだから。」

「お前らがロドス屈指のコンビネーションって呼ばれてる理由も分かるもんだな。」

「あらぁ、急にどうしたのランナー?今更気づいたの?」

 

フランカと他愛のない話をしていると、静かに扉を開けてリスカムがゆっくりと出てきた。

 

「お…お待たせしました…」

「何をそこまでやつれているんだか。」

「所長のお話が長くて…まさか任務の内容を口頭で全部説明するなんて思ってもいませんでしたよ。」

「データで渡してくれればいいのにね〜」

「それで?任務ってのは何だ?」

 

そう聞くとリスカムは息を吸って真剣な眼差しで説明を始めた。先程までおどけていたフランカも目付きが変わりリスカムを見つめる。流石だ。

 

「敵はトカロントに巣食う、感染者のみで構成されたテロ組織です。」

「へぇ、目的はなにかしら?」

「情報によると、クルビア上層部に主に源石兵器での攻撃を行い、上層部に感染者の苦しみを味あわせる…との事です。」

「…最低だな?」

「…ええ、これ以上感染者は増えなくていいわ。」

「構成人はおよそ50人、ボスは最近裏で名を挙げている武器商人だそうです。捕まえることがベストですが、最悪の場合、生死は問わない…と。」

「奴らのヤサはどこだ?」

「案内します。…ランナー、決して前に出すぎないように。」

「…わかった。」

 

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「こちらリスカム、例のテロ集団のアジト前に到着、今から突入します、オーバー。」

 

現場には緊迫した空気が張り詰める、BSW本社よりも空気が重苦しい。

 

「私が一般兵を引き受けます、フランカは重装兵を、ランナーは狙撃、術士兵を担当してください。」

「あいわかった、任せとけ。」

「フフ、任せてね♪重装甲なんて貫いてあげるんだから。」

「行きますよ…。3…2…1…」

 

バギャンッッ!!

 

リスカムのカウントダウンと同時にドアを思いっきり蹴飛ばして破壊する。そして。

 

「お前らは今日で終わりだァッ!遺言を言う前に全員蹴り飛ばしてやるよッッ!!」

 

「やだぁー!重装甲なんてちょうこわーい!」

 

「…えぇ、ノリノリじゃないですか…。」

 

決まった…言ってみたかったんだ、こういうの。フランカまで言うとは予想外だったけども。

さて、作戦は予定通りに進んでいる。リスカムが一般兵を抱え、フランカが重装兵を翻弄しながら1人ずつ処理していく。後は俺の仕事か…

 

「いち、に、さん、し…26か、一気に終わらせてやる。」

 

足でしっかりと地面を捉え、一気に蹴り上げる。天井まで到達した後に、地面と同じ要領で天井を足でしっかり掴み、勢いを付けるためにアーツを使い反動を利用する。

弾丸のごとく突っ込んだ俺を見て、敵は逃げる暇もないのか一瞬で倒れていった。正直弱すぎる。

2人の方はどうだろうかな…。

 

「チャージ!…サンダーストーム!!」

「弱点、みーっけ!燃えなさい!」

 

全然問題無さそうだ。2人とも殲滅し終わり、奥へと進んで行った。

そういえばボスがまだだったな。

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奥の方には大きな扉、既視感がある。

耳を当てると、1人の男の怒声ともう1人、ゆったりとした話し方の男がいることが分かる。もう少し耳をすませてみる。

「一体いくらでお前を雇ったか分かってるのか!?何故今さっき戦いに出ない!」

「意味がないからですよ、そして、私に頼まれた依頼はあなた自身の護衛であり、他の人を護衛する義務はありません。」

「…っ!使えないやつだ!もういい!私は逃げる!」

「…おやおや、気づかないのですか?もうこの扉の後ろに3人ほど来ていますよ?」

 

っ!?バレてるっ!?なんて奴だ、ここのボスは正直弱そうだが、その護衛がだいぶヤバそうだ。…にしてもこの声と話し方…どこかで…

 

「ランナー、フランカ、突入します。いいですか?」

「ええ、行きましょう。」

「…っと、そうだな。行こう。」

 

リスカムの声に現実に戻される。ボスだけは絶対に逃がさない。再び扉を蹴り飛ばす。

 

「ひぃっ!来たッ!守れ!」

「…ほう。…分かりましたよ。」

 

「あ…あん時のおっさん!?!?!?」

「えっ?知り合いなの?」

「あぁ、トカロントのホテルで会ったんだ。職ってこれかよ…」

 

何も話さなくなったリスカムを見ると、信じられないと言った様子でおっさんを見つめていた。どうしたんだこいつ。

 

「…ッ!?あの傷…種族…まさかッ…!ジェッセルトン・ウィリアムズ!?」

 

…は?何言ってんだこいつ、さっき言ってた指名手配犯の名前を叫び出したぞ。

 

「ちょっとリスカム、それはもう死んでるはず…!」

「いや!あの傷は絶対そう!なんでまだ生きてるっ!?」

「えっ…?ガチなん?」

「…なんだ、まだ私の事を覚えている人がいたのか。そうだ、私はジェッセルトン・ウィリアムズ。元殺し屋、現フリーの傭兵さ。」

「あなたっ…!マンスフィールド監獄で獄中死した後火葬されたはずッ!!」

「フッ…フフ、私はあの場所で一生分の屈辱を受けた。だから私は脱獄を試みたのさ、誰にもバレない…足がつかない完璧な計画をね…。」

「マジかよおっさん…」

「…今、ここにいるということは私と君達は敵同士。悪いが、消えてもらおう。」

 

おっさんが黒い塊に覆われたかと思えば、一瞬で塊はヒビを生やして崩れ去る。塊の跡地には所々に黒い塊を纏い、手の代わりに一対の巨大なブレードが付けられている。

おっさんの纏う空気がまるで殺し屋と対峙したかのような緊張感を放つ。鉄臭い香りが漂う。

 

「これが…ジェッセルトン・ウィリアムズ…!?」

 

こいつは…危険すぎるッッ!!一旦引こうとリスカムとフランカに伝えようと後ろを向いた時、ボスが扉からこっそり逃げようとしている所を見つけた。

 

「リスカム、フランカッ!ボスが逃げる!俺がこいつを抑えるから追ってくれ!」

「大丈夫なのッ!?」

「大丈夫だ!早く行けっ!!」

「ご武運を!」

 

すぐさま2人を追わせて逃がす。目の前のおっさんが2人を追いかけようとしている所に蹴りを入れ込んで止める。

 

「君、こちらは急いでるんだ。通してくれないかな?」

「おっさん…お前犯罪者だったのかよ……悪いけど、ここで倒すッ!!」

「…若造が、君如きが私に勝てるとでも?」

「…ッ!やってみなきゃわかんねぇだろッ!!」

 

おっさんに向かって飛び出す、相手に攻撃の隙を与えないように蹴りの激しさを緩めない。

 

「おかしいだろッ!なんで効いてないんだ!?」

 

先程からずっと蹴り続けている、全部敵の急所に当たっている。けどダメだ!爪は弾かれ蹴りはまるで手応えがない。まるで鉄を蹴っているような…!

 

「君は…まだまだ弱いな。」

「…ッ!!くそったれがぁぁ!!!」

 

おっさんの煽りと言うことはわかっているが、どうにも止められない。1番力を込めておっさんの顔面に向かって蹴りを入れ込む。だがしかし。

 

ガギンッ!!!

 

「…?何か蚊でも止まったのですか?」

「まっ…!全く効いてねぇ!?」

 

何故なんだ、全く歯が立たない。意味がわからない。

 

「…私はあの監獄で屈指を味わった後、必死で勉強したんだ。仮死状態なる物をね。心臓の動きを限界まで抑え、鼓動を無くす。そして死んだと思わせれば、後は火葬されるだけ。私は火葬の隙を着いた。私の鉄元素を操るアーツさえあれば、鉄を身に纏い火に絶対的な耐性を持つ事が可能なのだよ。」

 

「ちくしょう…!ちくしょう!!」

 

「…畜生、畜生と繰り返して、品がない。君にはもう無理だろう。」

「うるせえッ!」

 

再び奴の顔面に向かって蹴りを繰り出す。奴の顔面に当たる前に奴は手を顔の前に出し…ストン、と何かが落ちる音が聞こえた。

 

「…はっ?…あっ…ああっ!!足がァッ!!」

 

俺の右足は、足首から下がスッパリと切断されていた。

 

「品、アーツ…どれをとっても私には届かない。分からないか?」

 

あぁ…そうか…ただ単純に、これが力の差ってやつか。

 

「なんで…なんでおっさんは俺と接触したんだ?」

「…君がロドスだったからです。実は私、人を追っていましてね。…サリアって言うんですけど。」

「ッ!?」

「君は口が軽くて助かりましたよ、どんどん情報を話してくれるんですから。」

「嘘…だろ…?」

「情報料として、あなたの命は取らないでおきますよ…とは言っても、急がないと、あなた片足になってしまいますよ?」

「まっ…待て!逃げるなッ!!」

「…逃げるな?ハハッ、ご冗談を。私はこの仕事なんてどうでもいいのですよ。全てはあのクソ野郎に復讐をする為に…それでは、二度と会わないことを願いますよ。」

「くっ…クソォォォォ!!!!」

 

あっ…もうダメだ…意識が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_________________

「うっ…眩しっ…」

 

「ドクター!ランナーさんが目を覚ましましたっ!」

「何だって!?」

 

周りから大きな声が聞こえる、俺は確か…おっさんとの戦いで……おっさん!!

 

「ハッ!?はぁ…はぁ……はぁ…」

 

「ランナー、落ち着け、落ち着くんだ。」

「どくたー…?」

 

意識が覚醒すると、俺はベッドの上で寝かされていた。

聞きたいことが多すぎて、頭が混乱する。一体何から話せばいいのか分からない。

 

「落ち着いて、頭の中を整理するんだ。ほら、深呼吸して。」

「スゥー…ハァー…」

 

何回か深呼吸を続けていると、知りたい話の順序というものが分かるようになってきた。ドクターは、なんで頭の中が読めるんだか。

 

「ドクター、ここは?」

「ロドスだ。君が同行していた任務は、リスカムとフランカが首謀者を捕まえて終わったよ。」

「あぁ…そうか。良かった…ってそうだ!俺のッ…俺の右足はッ…!!?」

 

「落ち着いてランナー、1度切断されてはいるが、今は縫合されて元通りだ。リスカムとフランカが直ぐに私達に連絡して、君を運び出し、応急処置を済ませてくれたから君の足は今元通りさ、また会ったらお礼でも言っておいで。…にしても、まさか君の足がスッパリいかれてしまうだなんて。」

 

「おっさん……そうだ!サリアに合わせてくれ!サリアが狙われてるんだ!ジェッセルトン・ウィリアムズってやつに!」

「ジェッセルトン…わかった。私から伝えておこう。」

 

「…悪い、ドクター。俺はそいつと戦って、手も足も出なかった。これは完全に俺の実力不足だ。」

「…いや、それは違うよ。ランナー。」

「…ん?何が違うんだ?」

「これは私の責任だよ、ランナー。私は君の実力をまだ完全に引き出せていない。正直な所。君の人材育成は止まっているんだ。すまない。」

 

ランナーはこちらを向いて頭を下げる。どうかやめてくれドクター。罪悪感がどんどん積み上がっていくんだ。

ドクターが頭をあげた後、再びドクターは話し始めた。

 

「本当に、タイミングが悪くてすまない。実はこの任務が終わったあとに君の2回目の昇進をしようと考えていたんだ。」

「昇進?2回目の?」

「昇進祝い金は、見舞金と一緒に君の口座に振り込んでおく。とりあえず今はゆっくり休んでくれ。」

「…はぁ。畜生…!」

なんとも言えない不甲斐なさに、両目から大粒の水滴が溢れてくる。あぁ、今の俺はなんと情けない姿をしているんだろうか。

 

ドクターが病室から出ていったのを見計らってか、2人の見知った顔が入ってきた。

 

「リスカム…フランカ…。」

「ランナー…ごめんなさい。」

「本当にごめんなさい。ランナー。」

「なっ…なんでお前らが謝るんだ!?」

「あの時、1番危険だったのはジェッセルトンだった。本来なら一番危険な敵に人数をかけるべきだったのに、私たちは保身を選んで楽な方に行ってしまって…」

「大丈夫だって!それでボスは捕まえたんだろ?なら、任務は大成功じゃねえか!それに、気絶した俺を足と一緒に運び出してくれたんだろ?本当に感謝しかねえぜ。」

「…ごめんなさい、私たちがもっと強かったら…!」

「…大丈夫だ、リスカム、フランカ。ちょうど俺も同じこと考えてたんだ。もっと強くならなきゃ。ってな。お互い様ってことだ。だからそんな気に留めるんじゃねえよ!」

「…ありがとう。ランナー。じゃあ、お大事に。」

「おう。それじゃあな。」

 

…同僚を相手にする時はできるだけ明るく振る舞う。今回もこれは守ることが出来ていただろう。

 

体を起こして、端末を確認する。日付を見ると、2日ほど過ぎていることが確認できた。

足の刺すような痛みを堪えながらゆっくりベットから立ち上がり、服を着替え、部屋から出る。時刻は23:35A.M.

やるべき事はやっておかないと。

この時間なら訓練室に件の人はいるはずだ。

 

これは、自分との戦いだ。

 

 




就活失敗おじさんって、散々みんなからサンドバッグ扱いされてるけど、普通に考えて第2形態から攻撃力+700
防御+1000って相当やばいと思うんですよね、ステータスだけ見れば。高台とスルトさえいなければおじさんはもっと強かったはず…そう信じております。まあ俺は借り物のスルトとカー姉さんで復刻したおじさんをぶっ飛ばしたんですけどね()

『読みにくい』や『誤字脱字』などありましたらドンドンご指摘ください。
感想などくれると筆者が喜びます。
活動報告に書いて欲しい!というキャラが居たらコメントをどうぞ、ゆっくりと消化させていただきます。
では、次回もお楽しみに。
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