アホ鳥オペレーター   作:クロス電源

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そうだ、アイドルなろう。

「う…あぁ、ノイルの兄貴…スポット…俺たち何時間働いた…?」

 

「覚えてねえ、考えたくもねぇ…」

 

「もう…純金は見たくない…。頭がイカれそうだ。」

 

「それな…」

 

やあみんな、ランナーだ。

俺たちは抜け殻だ、セミになったんだ。

 

事は俺とノイルの兄貴、スポットの3人で純金加工の製造所に入った所から始まる。

密室に男3人、何も起きないはずもなく…?

とかいう面白い展開は起きず。あったのはひたすらの残業。まさか製造所に寝袋を引く事になるとは…こんちくしょう。

 

とっくに体力は尽きているだろう身体に鞭を打ち、俺たち3人はある場所へ向かった。

 

 

 

「…はい、はい。ランナーさん、ノイルホーンさん、スポットさん。計37時間の労働となります。こちらをお受け取りください。」

 

「「「うおおおおぉぉぉぉお!!!」」」

 

目の前の機械から出てきた茶封筒を見て俺たちは勝利の雄叫びを上げた。あまりの労働にテンションがおかしくなっていたのか分からないが、俺は天井に張り付いてほふく前進を初め、ノイルの兄貴はその場でステップを踏みブレイクダンスを踊り、スポットは円周率を数え出した。その時の情景はあまり覚えてはいないが、受付の人の顔がこの世の者では無い物を見るような目でこちらを見ていたのは酷く覚えている。阿鼻叫喚とはこういうことを言うんだろうなぁ…。

いやぁ恐ろしい。

 

「よっしゃ金だ休みだ!2人とも時間あるか!?飲みに行こうぜ!」

 

「あぁ…悪いけどランナー、先客だ。ヤトウのやつに呼ばれててよ。」

「ヒュー!お熱いねぇ!」

「うるせ。」

「あだっ。」

 

煽ったせいか頭を小突かれる、でも実際アツアツ(噂の範疇)だし、まぁ仕方ねえよなぁ!?爆発しちまえ。

 

「スポットは?」

「俺はミッドナイトに誘われてるんだ…悪い。」

「ミッドナイトかぁ、いいなぁ。絶対楽しいじゃん。」

「また時間が合えば付き合うよ、それじゃ。」

「おうおう、そんじゃまたなぁ〜!」

 

ノイルの兄貴とスポットは給料を大事そうにポケットに入れると手を振って小走りでこの場を離れる、どんなに楽しみにしてるのかがよく分かる。羨ましいなこんちくしょう。

 

おれ…?もちろん俺は今から酒を飲んでパーリーするつもりだ。誰と…って?そりゃもう俺の愛しのCastle-3をお誘い(誘拐)するに決まってる。うん、そうしよう。

 

「Castle-3ぃぃぃ!!来てくれぇぇ〜!!」

 

目いっぱい叫び声を上げたが、タイヤの擦れる音すら聞こえない。感じるのは受付の人からの冷たい視線だけ、まあでもさっきからこの調子だし、通報される事は無いよな…?

 

そんなことは置いといて、いつもならすぐ飛んでくるCastle-3が来ない。

 

「あぁ…?おかしいな…。何かあったのか…?」

 

ひとまずこの空気から逃げるためにCastle-3のことを気にかけている体を装って堂々と部屋を出る。

 

部屋を出て、さっと左右を確認する。いつものあの灰色の機体は見えない。

 

「…」

 

確かにあの灰色の機体は居ない。しかし左の通路の角、明らかに『居る』。本人は隠れているつもりなのか知らないけれど確かに居る。羽毛をピコピコ、尾をゆらゆら、確実に見えている。

あまりにバレバレ、ツッコミどころが多すぎる。俺は一体どうしてやればいいんだ…?

 

「…。」

「…!」

 

あっ、今明らかに目が合った。尾をピンと張ったかと思えば、すぐに角に隠れるヤバいやつ。

すると、数秒もしない内に角から身を乗り出した。その手には1本の酒瓶が握られている。

真顔のまま酒瓶だけ揺らすその姿は、なんかシュールだ。まぁちょうどいいな…

 

「よ、アルケット。んな回りくどい事しなくても、呼んでくれりゃ付き合ってやったのに。」

「先客がいるかと思いましたので…、様子を伺っていただけです!」

「あーね、ならその心配はないぜ。なんせお前が一番乗りだからな。今日はCastle-3も居ねえみたいだし…。」

「一番乗り…ですか、ふふ。じゃあ時間も惜しいですし、早く行きましょう!私の部屋かランナーさんの部屋。どちらにします?」

「ええ〜?その二択だけかぁ?ラファエラんとこのバーとか話すならオススメだぜ。」

 

いい提案をしたと思ったのもつかの間、アルケットは頬を膨らませて俺をにらみつけた。アルケットのやつ、考えていることが分かりやすすぎる。

 

「ランデン修道院自家製のミルクパンも持ってきたんです。ランデン修道院のお酒と一緒に嗜もうかと楽しみにして持ってきたんです。…あなたと共有したいから誘ってるんですよ?」

「そりゃあ嬉しいこった。んじゃ、俺の部屋来いよ。勤務中に録り溜めしてたテレビ番組もあるし、飲みながら2人で見ようぜ。」

「…はい!行きましょう!」

 

──────────────────────

部屋に着くなり俺とアルケットは荷物を置き、アルケットが持ってきた酒瓶を開けてコップに注ぐ。

 

「「乾杯!!」」

 

カツン、といい音が響く。俺はその余韻を感じながら注がれた酒を飲み干した。

 

「ーーッ!最高かよ!」

「いい反応ですねぇランナーさん!!やはりあなたと飲んで正解でした!!」

「酒が美味いのは勿論だけどよ、その前に純金製造地獄があったせいでさらに美味く感じる…。」

 

今頃ノイルの兄貴とスポットも同じような感覚を味わってんだろうなあ。

けど、飲んでる酒がいちばん美味いのはきっと俺のはず。

 

「パンもうめえなぁ!勤務中ろくなもん食ってなかったからマジでうめぇ、マジで。」

「当然ですよ〜ランナーさん!だってこのパンは私が焼いたんですよ!何せ私はランデン修道院第377回発酵食品大会の優勝者なので!」

「はぁ〜そりゃまたすげえ大会だこと…。」

 

ふんす、と自信満々な顔を向けるアルケット。なんか、話を聞けば聞くほど修道院と言うもののイメージが崩れていく。いやまあきっとそこ(ランデン修道院)が特例なだけだとは思うけど。

信仰を習慣にして、平穏に暮らす。美味いビールとパンだって付いてくる。決して贅沢な暮らしではないが、そんな暮らしも幸せなのかもしれない。

 

「そこで暮らすのは、きっと楽しいんだろうなあ…。」

「…!?」

 

俺がそう呟くと、アルケットの目の色が変わった。

 

「ランナーさん…、修道院での暮らしに興味がお有りで!?」

「えぇ?ああ、興味が無い訳じゃあないぜ?平和な暮らしってのもいいよなぁって。」

「じゃっ、じゃあ!行きましょう?今すぐとは言わないですし…。」

「あっはは、馬鹿言え。俺じゃあまだ行けねえよ。」

「…どうしてですか?」

「そりゃお前、俺はまだまだ戦わなくちゃ行けねえからな。ドクター達置いて離脱とか、そんなん出来ねえし。」

 

この前ユスティナにも再会したし、噂話も広がってしまった。ドクターやクロージャにも手伝ってもらったが、全員が疑問を持っていないかと言われると決して『はい』とは言えない。つまり、これから面倒になるってことだ。

 

「んな顔すんなってアルケット。やること片付いたら考えてるかもしれねえしさ。じゃ、俺は2杯目行こうかな。お前から誘ってきたんだし、お前も飲めよ〜?」

「…ふふ、そうでした。さあ、ランナーさん!二日酔いは覚悟しておいて下さいね!」

「へっ!上等だ!」

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

ちゅん…ちゅん………ちゅん?

 

…鳥の声がする。そっか、朝か…。う"っ!?あったまいてぇ…。なんか頭にもやがかかったみたいで気持ち悪い。

 

…なんか、おかしいぞ。家具が天井に張り付いている。俺の目はおかしくなったのか?

わけも分からず辺りを見回すと、ベッドの上で俺の枕を抱いて座り込んでいるアルケットがいた。どうやら寝ているらしい。

 

…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃああああぁぁッ!?!?」

 

「んう…何ですかランナーさ…んぎゃぁぁッッ!?!?

 

 

ドスンッ!

 

──────────────────────

あ…ありのまま今起こっていることを話すぜ…!

 

俺の部屋にアルケットがいる、これについてはまあわかる。昨日夜通しで飲んでいたからだ。当然の副産物として、俺の部屋がとんでもないことになっている。まあそれは置いといて。

 

本題はこっち、先程俺が感じた世界反転の謎。その答えはあまりにも単純明快なものだった。それは…

 

「えっ、えぇっ??ランナーさん!?大丈夫ですか!?」

「頭から行かなくてマジでよかった…マジで死んだと思った…。」

 

俺は、天井からぶら下がっていた。

 

 

 

「あー…ヤバいわ。」

「なんでそんなことになるんですか!?あぁ…頭いたい…。」

「なんでって…俺だってそんなこと…。」

 

そこまで言いかけた時。俺の頭に、あるワンシーンがフラッシュバック。吊られていた時に頭に血が上り、幸か不幸かその時の情景をいち早く思い出すことが出来たみたいだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜

「んん…ランナーさん、私眠くなってきちゃいまひたぁ…。」

「なんだぁ?もうギブか?んじゃ、俺のやつ勝手に使っとけ〜。」

「んぇ?いいんですか?じゃあランナーさんは一体どこで寝ると言うんです?」

「俺は…あ、そうだ。この前浮遊の訓練用に天井に足を引っ掛けるフックを買ったんだ。これをこうして…こうじゃ!」

「えぇ〜!ランナーさん凄いです〜!」

「くっはは!当然だ…!あぁ…なんかぼーっとしてきた…。」

〜〜〜〜〜〜〜

 

「…。」

 

「ランナーさん…?頭を抱えてどうしました…?まさか、私に何か破廉恥な行為を…!?」

「ない。」

「あっはい。」

 

…アホすぎる。一体どうして何を考えたら天井にぶら下がるコウモリスタイルで寝なきゃいけねえんだ。

俺が思ってる以上に俺がアホすぎる…??

…とりま、一旦これは置いといて。とんでもないことになっている俺の部屋をどうにかしないと行けない。一緒になって飲んだアルケットも多分同罪だし、少しは手伝ってもらおう。

 

「アルケット、寝起きで悪いけど部屋片付けんの手伝ってくれ。」

「ええ、勿論です。私にだってこの状況を作り出した責任がありますし…。」

「まじでありがとう。」

 

マシなことに部屋に散乱しているものは大量の酒瓶とつまみの袋、散らばった飴。どちらも吐いていないってのが本当に運が良かった。

おっ、これは…まじで運がいい。散らばった飴の中から1つをアルケットに放り投げた。飴は見事に頭の上に乗った。

 

「うん…?ランナーさん。今私頭痛くて…頭はやめてくれません?…飴?」

「ウルサスから仕入れたもんだ、二日酔いに効くとか何とか。」

「そうですか…ありがとうございます。」

 

俺もその飴を開け、口の中に放り込んだ。塩と砂糖を塗りたくったオレンジの味がする。

味はそこそこだが、効果は本物だ。飴を舐めながら掃除を続けていると、開かれた数冊の雑誌を見つけた。

 

「アイドル雑誌?俺こんなとこに置いたっけ…」

 

疑問に思いながらアイドル雑誌を拾い上げると、間から一枚の紙がはらりと落ちてきた。それも拾う。

 

「ランナーさん。何を見つけたんです?」

「アイドル雑誌、なんか紙が挟まってんだわ。何が書かれてるんだか…。あれ、どしたんアルケット。」

 

急にうんうんと唸り始めるアルケット、何か思い出そうとしているのか。

数秒後、アルケットは血相を変えて俺持っている紙にに手を伸ばした。

 

「渡してください!今すぐ!」

「えぇ?一体どうしたってんだアルケット。」

「今すぐです!」

 

俺の腕に飛びついて紙を奪おうとしてくるアルケットの猛攻を食い止め、何が書いてあるのかを確認する。

お世辞にも綺麗とは言えないサインが書かれてあった。

その瞬間、突如脳内に溢れ出した、存在した記憶。

 

〜〜〜〜〜〜

「ランナーさん、こんなの見られるんですね。」

「ん〜?アイドル雑誌?んなもん引っ張り出してきやがって。この子可愛いだろ、オススメ。」

「ふーん…私にだってできますよ、ほら!」

「ん?いやいや、同じポーズとっただけじゃ足りねえよ。もっと笑顔でぇ〜!」

「こっ…!こうですか!?」

「いいじゃねえの!かわいいぞ〜アルケット〜。」

「もう…ランナーさんてば…、サインしてあげちゃいます!」

「ヒュー!」

〜〜〜〜〜〜

「…あぁ、うん。そういや撮ったっけ…。」

撮った!?!?

 

覚えがあったので携帯端末を開いてみる。あるわ…。すっごい笑顔。

 

「…俺は、いいと思うぜ。」

「フンッ!」

「あべしっ!」

 

雑誌で引っぱたかれてしまった。本当にいいと思っただけなのに…どうして…。

飴もほとんど口の中で消えかけた頃。部屋の片付けの終わりが見えてきた。今日が休暇で本当に良かった。もし任務の一つでも入っていたらと考えるとゾッとする。

 

「お前今日なんかある?」

「いえ、何にも。こうなることは予想してましたし…。」

 

「今日何しようかなぁ…」

「ですね…。」

 

 

ピロンッ!

 

「あっ、ランナーさん。メール来てますよ。」

「こんな時間から…?任務とか辞めてくれよドクター…?ケルシー先生からならモウマジムリ…………。」

「えっ、どうしたんですかランナーさん。固まって…。」

 

俺は震える手を抑えつけながらアルケットに端末の画面を見せた。

 

「…『今から採寸に伺います。』バイビーク。」

アルケットは会話の履歴に目を向けた。彼女はそこで見てしまった。先程まで見ていた。とびきり笑顔でポーズをとっている自分の姿だった。

 

「どっ…」

 

「…どっ?」

 

 

「どうしてくれるんですかランナーさぁぁぁん!!!?」

 

──────────────────────

おまけ

 

泥酔状態のランナーを見た各オペレーターの反応(妄想)

──────────────────────

(フィリオプシス)

 

「ランナーさん、おはようございます。」

「おぉ…フィリオ、よっす。そんじゃ……」

「ランナーさんの不調を感知、これより対処コマンドに移ります。」

「ガヴィルのとこだけはやめてくれぇフィリオ!」

「寝ましょう。おやすみなさい。スリープモード移行中…」

「???」

 

 

(ラ・プルマ)

 

「もう、ランナーさんてば。またやっちゃったの?」

「あぁ…ラファエラ。気にしないでくれ、じきに治るから…。」

「むぅ…よいしょ。大丈夫、わたしそういう事には詳しいから。」

「えっ、俵持ちマジ?どこ行く気ですかラファエラさんんんッ!?!?」

 

(エリジウム)

 

「やあランナー、調子はどう…って聞くまでも無いね!」

「エリジウム…俺絶賛二日酔いだわ…」

「ちょっと待っててね……、はいこれ。スポーツドリンクとビニール袋、あとゼリーね。ソーンズにも一応連絡しておくから、気をつけてね〜。」

「…オカンだ。」

 

(セイロン)

 

「ランナーさん、二日酔いには水分補給が最も大事だと言われておりますの。」

「ほう、つまり?」

「私と一緒に紅茶をおしばきしましょう。」

「おしばきってどこの方言だよ?」

「…極西?」

「何処だよそれ。」

 

(ソーンズ)

 

「アイツから聞いたぞ、ランナー。二日酔いなんだってな。」

「そうなんだよソーンズ。なんか二日酔いに効く薬とか作ってねえの?」

「フッ…そう言われると思って用意していたさ。」

「さすが!んじゃ早速…」

「ゲームをしようじゃないか、ランナー。今ここに2つの試験管がある。俺の持っている試験管の液体を注ぐと、正解なら二日酔いの薬が完成する。」

「じゃあハズレは?」

「即時爆発だ。」

「乗った!」

 

ちゅどーん。

 

(サリア)

 

「あ"ぁ…やっべ。きっつ…。」

「見るからに体調が優れないようだが、どうした?」

「ようサリア、いやぁちょっと二日酔いで…」

「お前、これから予定は?」

「えっ、ないけdグエッ。」

「…おい、そこのお前。ランナーを医療部にまで運んでおけ。最悪廊下の端っこで寝かせておいてもいい。」

 




お酒のくだりは完全に想像です。
『読みにくい』や『誤字脱字』などありましたらドンドンご指摘ください。
感想などくれると筆者が喜びます。
では、次回もお楽しみに。
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