白梟と火喰鳥
「いっけなーい!死ぬ死ぬぅ!」
やあ!俺は『ランナー』!今年で20になるバリクソ青年の製薬会社勤務のリーベリの平社員!
…え?なんで死ぬのか、だって?それは…
「死ねっ!レーヴァテイン!」
「滅菌…消毒…発射ッッ!!」
「汝…己が存在を自らに問え…!」
「動き回るな…そうすればお互い手間が省けるだろ…?」
「うわぉ!みんな目が血走ってるねぇ!!」
「「「「誰のせいだと思ってる!?」」」」
「悪かったって!アイスとか薬剤倒したりチェスや機械ブチ壊したりしたけど許して〜!」
「レーヴァテインッッ!!」
「ぐぎゃぁぁあ!?焼けるぅ!?ラグナロクはやばいってオイ!」
「しぶといな…もう一回だ!!」
やっっば、もう一発は流石に死ねるわ…ヤッベ、行き止まりだわ。
「…こっちに来なさい。」
「はっ?誰。」
突然ものすごい力で腕を引っ張られた。あれ、助かった?
「やっと会えたわ…『ランナー』?」
「あっ…駄目だこりゃ。」
目の前には銀髪長髪の美女、背中の大剣を見ても、まだ羨ましいと思うか?…ないか、帰ろ。
「何逃げようとしてるのかしら?さあ、私を連れて海の上を走ってみなさい?」
「馬鹿野郎!絶対嫌だね!!」
「…なら、あなたの死に様をしっかりと見届けなさい?」
「…さよなら。」
「「「「見つけた。」」」」
「………oh。」
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「なぁ…ドクター、酷いと思わねぇ!?」
「…その話だけ聞いてると、君が悪いと思うな。」
「罪の意識はあるぜ?でも、流石にアレはやりすぎだろ…ラグナロ銀斬LM2トレッツァは流石の俺でも効いだぞ?」
絶対また仕返ししてやる、アイス倉庫のアイス全部食ってやるんだ。
「それで打撲と切り傷だけで済んだ、という方がおかしいと思うのは私だけでしょうか?」
ドクターと話しているはずだったが、横から声が聞こえてきた。白髪のリーベリ、喋り方だけ機械族の『フィリオプシス』だ。
「あ、起きた?じゃあこのアホ鳥を何処かにやってくれないかな?」
「ドクターの要求。実行します。」
「おいドクター、やめてくれッ!俺の安息の地はここしかないんだぁ!フィリオプシス!要求!ここに居させて!」
「ランナーの要求。拒否します。」
「なんでだよぉ!!」
こちらに手を振りながら仕事へと戻るドクター、なんだアイツ?さっきからずっと仕事してたぞ…1回休め。
まあいいや。後で絶対飛び蹴りして強制的に休ませてやろう。
「ランナーの邪悪な思考を感知。」
とうとうコイツも危険人物になってしまった。やっぱ俺の味方はドクターしか居ないわ、ほんと。
「俺の頭の中を読むな。…はぁ。」
「ランナーの精神的疲労を感知、このアイスを上げましょう。」
「えっ?マジ?やった!」
前言撤回、こいつ味方だわ。
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「あー、いいもん食えたぜ。ありがとな。」
「ランナーからの感謝の言葉を検知、フィリオプシスの感情の高まりを検知しました。」
「まさかお前がアイスを持ってるとは思わなかったぜ、いやーうまかった。どこで買ったんだ?」
「先日、スルトさんのアイス倉庫から拝借しました。」
「…え?」
「そして、シルバーアッシュさんが予約をしていました。」
「ヒュッ…」
オイオイオイ、俺死んだわ。
「冗談です。そんなコマンド、フィリオプシスには実行できません。」
「だ…だよな。ビビったー…」
「本当はケルシー先生の物です。」
「…」
「ランナーの意識消失を感知、対処します。」
ゴンッッ!!
「…はっ!」
「目が覚めましたか?」
「覚めましたか?じゃねぇよ!誰のせいでそうなったと思ってんだ!?痛えし!」
「…?」
「首を傾げるなよ!?お前だよお前!」
「あなたの反応が面白いので、つい実行してしまいました。」
「寿命縮むわ…」
ほんとコイツは読めない。無表情だし、機械的な話し方をするし、真面目かと思ったら急にエゲつない冗談をブチ込んでくる。とんだドSだなぁ…
「…爪が欠けています。爪のケアは済ませましたか?」
「別に必要ねーよ。この方が相手に刺さる面積が多くていいんだよ。」
「ランナーの嘘を感知、この前も爪が当たって購買部のものを倒していました。」
「なんで知ってんだよ…、はいはい、やってくるからじゃあなー…」
「いえ、私が実行します。」
「…はぁ!?いやいや!自分でやったほうがいいから、な!?」
「あなたが切ったあとは形も歪で痛々しく見えます。なので、私がします。」
「俺の事は俺がする。いいな?」
「いえ、譲れません。…それなら、前にスルトさんのアイスを盗んで食べていた事を暴露します。」
「是非ともやってください!」
「それでいいのです。」
こう言われると、俺は何も逆らえない。コイツは俺の弱みを色々と握っている。まあ大抵、スルトの奴関連だけれど。
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「…また大きくなりましたか?しかも硬さも増しています。」
「あー…もう、やっぱ慣れねぇわ。ってか、その言い方をやめてくれよ、フィリオ。」
「…そうですか?これはナイトメアさんに教わったものなのですが…」
「あんの裏人格ぅ…!もっと
「ナイトメアさんも、グロリアさんも、どちらも主人格にはなりえます。」
「ん…まぁ、そうだけれどさ…あ"あ"!痛えっ!」
「申し訳ございません、あと少し耐えてください。」
「わ"か"っ"だ"ぁ"…」
…俺はリーベリの中でもかなり異端者だ。何故か足と足の爪が異常発達していて、足のデカさが普通の人と比べておよそ1.7倍はある。種族特性か
利点はその足で天井とか壁を走れる。以上!
「…終わりました。」
「…おっ…おお。凄え。」
自分でやるとささくれまくってた足の爪が棘1つなくなってる。まるで機械で切ったみたいに正確だ。
「喜んで貰えれば幸いです。フィリオプシスの感情の高まりを検知。それより今からしょ『あっ、わりぃ、電話だ。』」
「えー…はい、ケルシーせんせ?仕事?えっリターニアまで!?遠いっすよ……えっ、給料1.8倍!?行きます!」
「…」
「わりい、フィリオ。今から仕事だ。」
「…」
「…ちょっと?何か言ってくれよ?」
「…スー…スー…」
「…寝てんのか。ここでか…」
こいつは
そして今俺の目の前で寝た。どうする?
「運ぶしか無いかぁ…。」
無論、ここで置いていくなんてできない。せめてドクターの執務室までは送ってやんないと。
「あーよいしょっと。軽いなぁ…飯食ってんのか…?」
こいつを背負って走り出すー…盗んではないぞ?だよな?
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「おいドクター、入るぞ!」
「入った後に言う事じゃないけどね…あれ、フィリオプシス寝たの?」
「そういう事だ、置いてくぞ。これから仕事なんだ。」
「トランスポーターも大変だね、まあ、頑張って。」
「たりめぇよ!これ終わったら給料1.8倍〜♪」
「部屋出るの速っ…………フィリオプシス、起きてるよね?」
「…いえ、フィリオプシスは今スリープモードです。」
「その冗談はランナーでも気づくよ。」
「そうでしたか。」
「…どうだった?」
「…速かったです。」
「まぁ、そっか。彼は何も?」
「軽い、と言っていました。」
「率直な意見だなぁ…」
「ドクター。」
「何?」
「速いの他に…暖かかったです。安心するような感覚に包まれました。」
「…そうか、それはいい感じ方だと思うよ。」
「そうですか…それが何かを質問することはできますか?」
「それは、自分で考えるものだよ、フィリオプシス。」
「…理解不能。」
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初めて会った時は、初任務の時。俺がロドスに入ってからだいたい1ヶ月半がたった頃だった。
「今回初任務になります!前衛オペレーターのランナーです!よろしくお願いします!」
「…はい、よろしくお願いします。今作戦の内、この小隊の隊長を務めさせていただきます。フィリオプシスと申します。」
「…あの。」
「どうされましたか?…初任務でしたね。緊張されていますか?、状況によっては私が貴方のメンタルケアを実行させていただきますが。」
「あぁ、いや。そういう事じゃないんすよ…。」
「…では何の用ですか?」
「何でこの小隊…2人なんすか?」
困惑した顔を見せるランナーに、フィリオプシスはアーツロッドの調整をしながら答えた。
「…この小隊は、この付近で起こった戦闘で負傷した人の救護、そして回収作業を行います。そのためこの小隊は少人数だと。ドクターから通達されたはずでは?」
「えっ、ドクターが?…あっ、ヤベ。通信読んでなかった…。」
フィリオプシスは無表情のまま変わらない。ただ、少し呆れたようにランナーを見つめた。
ランナーはその視線の意味を理解したのか分からないが、少し大袈裟に反応して見せた。
「そんな目ぇしないでくださいよぉ!俺が悪いのは分かってます!でも、今覚えました!」
「…そうですか。今回、戦闘は避けてください。あくまでも、私たちに課せられたコマンドは救護と回収です。」
「コマンド…?まぁいいや、戦闘がねえのは素直にありがたいっす、楽なんで。」
ランナーはフィリオプシスにニカッと笑って見せた。
「そうですか。…それと、あなたは気にしていないようですが、この話し方は鉱石病の症状によるものです。」
「鉱石病かぁ…、あ!気にしなくていいっすよ。俺もなんで。」
ランナーがそう言うと、フィリオプシスの視線は下にシフトした。
「脚…ですか。」
「そうなんすよぉ!ま、見たら一発ですけどね。中々かっこいいでしょう?」
「…後悔など、していないのですか?」
ランナーは少し頭を捻る。1分ほど考えた後、ランナーは口を開いた。
「後悔?するしない以前に、もうしたくないっすね。なっちまった物は仕方ないっすから。」
「そうですか、貴方は強いですね。」
「へへ、そりゃどうも…。」
2人が話を弾ませていると、突如として携帯端末のアラームが鳴った。
「スタートの時刻です。それではコマンドを実行しましょう。」
「了解っす!行きましょう!」
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救護と回収作業は順調に進んで行った。
そうして最後の区画に入った、その時だった。
「ん…?あっ!隊長、向こうで人が倒れてます!大人の男1人と女の子が1人!」
「はい、見えます。行きましょう。」
2人は対象へと走り出した。
途中でランナーは彼らに「おーい」と呼びかける。
その声に気づいたのか、女の子がゆらゆらと立ち上がった。
子鹿のように足を震わせていて、今にも倒れそうだ。
…なにやら様子がおかしい。
「ランナーさん、止まってください。」
「え、なんで?」
「彼女、手で✕の字を作っています。来ては行けないとの事でしょうか。」
「えぇ?なんでっすか?今助けを……ッ!?」
「…!?」
ランナーはフィリオプシスを勢いよく突き飛ばした。先程まで彼女がいた所には、1本の巨大な矢が突き刺さっていた。
「敵襲ですか。」
「そうみたいっすね…!建物の影からゾロゾロ出てきやがりました…!」
「囲まれましたね。逃げられません、ここは連絡をして彼らの要求を…」
「…すんませんフィリオプシスさん。ちょっと抱えます。」
「…?」
フィリオプシスの返答を待たずして、ランナーはフィリオプシスを横抱きで抱えた。いわゆるお姫様抱っこというものである。
「跳びます!」
「どういう事ですか。」
そう叫びながらランナーは力強く地面を蹴ると、敵の頭上をひとっ飛び。無事に倒れている人の元へたどり着いた。
「フィリオプシスさん、女の子の方を頼みます!俺は男の方抱えて逃げるんで!」
フィリオプシスからの反応は無い。
ランナーがフィリオプシスの方を向くと、そこにはへたりと膝を着いたフィリオプシスの姿があった。
「フィリオプシスさん?フィリオプシスさん!?」
「申し訳…ありません、私を置いて…その人達と…逃げ…。」
「えっ!?ちょっ!?なんで!!」
うつらうつらとしながら抗おうとするが、悲しくもその眠気が収まることは無い。大量の敵が向かってくる情景を最後に、フィリオプシスの意識は途絶えた。
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冷たな小さい手で揺さぶられ、フィリオプシスの意識は徐々に覚醒していく、ようやく目の前が見えるようになると、目に飛び込んできたのは真っ赤に染められた地面だった。
「はぁッ…はぁッ…」
鼻につく血液の匂い。顔を上げると、ボロボロになったランナーの姿があった。
「ランナー…さん?」
ランナーは荒い息のままゆっくりと振り向いた。
「あぁ…フィリオプシスさん、良かった…」
そう言った後、ランナーは勢いよく膝を着いた。
何が起きたのか分からないまま、すこし唖然としていると、再び小さな手で揺さぶられた。
「リーべリのお姉ちゃん!早くあの人を助けてあげて!」
「彼の方が酷い怪我をしているんです。私は大丈夫なので…!」
声の主は先程の少女と倒れていた男だった。
「はは、俺はまだいけるっす…。俺、頑丈なんで…」
「大丈夫です、ランナーさん。私の治療アーツは範囲内を対象とするので。」
フィリオプシスのアーツロッドから、まばゆい緑色の光が放たれると、多少の傷が少しづつ塞がっていく。
数分もしない内に、ランナーは勢いよく立ち上がった。
「よっしゃ!元気全開ッ!」
おどけてガッツポーズを見せるランナーに、少女は笑顔を見せた。
「フィリオプシスさん、この人らを安全な所に連れていきましょう!」
「はい、急ぎましょう。」
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連れていく最中、フィリオプシスは少女に詳細を聞いていた。
「お姉ちゃん、急に寝ちゃうんだから…そんなに疲れてたの?ブラック企業なの?」
「…申し訳ありません。鉱石病の症状により、寝てしまうのです。」
「病気…私もなの。だから、辛いのはわかるよ。」
「…私が睡眠中、何があったのですか?」
「それはね…!」
少女は目をキラキラさせながら興奮しがちに話した。
『逃げろ…だって?んな事…してたまるかッ!』
『来い!お前ら全員、蹴り飛ばしてやるよッ!』
「お兄ちゃんね!そう言って敵をバタバタなぎ倒していくんだよ!かっこよかった…!」
少女はランナーのことを戦隊ヒーローでも見たかのように話した。
「そうだったのですか…。回収地点はこの座標です。それでは、お気をつけて。」
「ありがとう!リーべリのお兄ちゃん、お姉ちゃん!」
手を振って別れを告げる少女と、お辞儀をしてヘリに乗り込む男を見送ると、ランナーとフィリオプシスは小隊の集合地点への道を歩き始めた。
「ランナーさん。本日は本当にありがとうございました。」
「へへっ、それほどでも。本当に貴女が無事でよかった、本当に。」
「症状の事を全て話していなかった、私の落ち度です。貴方が謝ることではありません。今回の戦犯は私です。何もしていませんので。」
「…何もしてない?そんな事ないっすよ。」
「私が何かした…と?」
「ええ、貴女言ったじゃないですか。『私を置いて逃げて』って。」
「…?ええ。それがどうして?」
「俺、過去にそう言われて。本当に逃げちまったんですよ。そりゃもう一心不乱に。」
「…そうなんですか。」
「あの時、貴女は同じことを言ったんですよ。…昔と情景重ねちゃって。…もう、後悔したくないんです。」
「…そうですか。」
「ま、それ以前に、貴女を死なせたくなかった。ってのもありますけどね!はは!」
そう言って笑いだしたランナーの背を見て、フィリオプシスは思った。
(あなたは…強い。本当に。)
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「フィリオプシス…?フィリオプシス…!!」
「…ドクター…?私はまた寝ていましたか?」
「まぁ、そうだね。何も言わず寝始めたからびっくりしたよ。夢でも見てたの?」
「…何故わかるのですか?」
「いい顔してたよ、フィリオプシス。」
「…ドクター。ケルシー先生に伝えますよ?」
「ごめんなさい!!」
「冗談です。所でランナーはいつ帰ってくるのでしょうか?」
「ん?もう帰ってきてるよ、結局レッドがやってくれたみたい。『俺の給料がぁ〜!』って騒いでたっけ。」
「フィリオプシスの感情の高まりを検知。やはり彼はこの感じがいつも通りです。」
「なぁにがいつも通りだフィリオ!」
「あ、来た。」
「私はそのようなランナーさんの方が良いと考えます。」
「じゃあ金かしてくれよぉー!今月やばいんだよォ!」
「子供か。」
「拒否します。」
「あ、そういや俺。ドクターに飛び蹴りしようと考えてたんだ。」
「え…ちょっと待って、君に蹴られると医療部じゃ済まない…」
「けっ…フィリオならわかってるぜそんなの。」
「 ええ、ドクターは焦りすぎです。」
「「冗談です。」」
「…フィリオプシス、やっぱそのアホ鳥出してきて。」
「嫌だぁ!やめてくれドクターァ!!」
「ならフィリオプシスと食事にでも行きましょう、おごりますよ。」
「えっマジ!?やっぱサイコーだぜ!行くぞぉー!」
「要求、実行します。」
「……手のひら返しが上手いなぁ。」
フィリオプシスです。あのファイルの新しい見方を考えてみた結果こうなりました。
『読みにくい』や『誤字脱字』などありましたらドンドンご指摘ください。
感想などくれると筆者が喜びます。
では、次回もお楽しみに。