続! キングコング対ゴジラ   作:マイケル社長

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―プロローグー

平成12年 8月11日 ソロモン群島 ファロ島沖

 

 

 

 

 

「おーい!ファロ島だぞぉー!」

 

通訳兼案内人のコンノ二世が甲板から声高に叫んだ。ようやく船酔いにも慣れ、夢うつつ気分だったTTV(東亜テレビ放送)ディレクターの桜井良太郎は顔を上げ、眠気覚ましに両頬をパン!と叩くとデッキに出た。

 

ところどころ白波がそそり立つ紺碧の海原の向こうに、いくつかの頂をたたえた島が見えてきた。同行のテレビ局員(皆、日本での過酷なテレビ局勤務で桜井同様寝ぼけ眼である)たちも、コンノ二世が指差す先を仰いだ。

 

「なになに?着いたって?」

 

下階から、娘の真佑をあやしていた妻、桜井睦実が階段を駆け上がってきた。勢い良く足を跳ね上げたためか、ようやく泣き止んでいた真佑はまた泣き出してしまった。

 

「ああー、ゴメンゴメン!」

 

両腕を揺さぶり、どうにか真佑のご機嫌を取ろうとする睦美。

 

「よしよーし、もうすぐ着くからねー」

 

良太郎も加わり、真佑に笑顔を向ける。しかし真佑はなかなか機嫌を直してはくれず、周りのクルーもファロ島より真佑に注目してくる。

 

「・・・やっぱり、叔母さんたちに預けてきた方が良かったんじゃないか?」

 

心底弱った顔で、良太郎は睦美に言った。

 

「・・・でも、ファロ島のみんなと家族ぐるみで仲良くしていこうっていうのは、お義父さんの強い希望だったじゃない。叔母さんだって、そういって送り出してくれたんだから」

 

「それはそうだけどなあ・・・ファロ島のみんなは優しいが、やはり2歳になるかどうかの幼子をこんな長旅に連れてくるっていうのは・・・」

 

「でも、このロケに局アナの誰も行きたがらなかったでしょ?だからあたしが立候補したんだから。大スポンサーと桜井家の両方顔を立てた妻の気持ちに敬意を表してほしいもんだわ」

 

睦実は口を尖らせ、頬を膨らませた。これは参った、娘だけでなく、妻のご機嫌も取っていかなくてはならないのは、家庭だけにしてくれよ・・・。

 

サンサンと照り付ける太陽だったが、ふと涼しい海風が吹いた。心地よい風はむずがる子どもの機嫌を癒してくれたのか、真佑が泣き止んだ。

 

「驚いたぁ、南の国でこんな気持ち良い風が流れるなんて」

 

一陣の優しい風は、どうやら睦実の機嫌も直してくれたようだ。

 

「たぶん、どっかでハリケーン起きてる。そうすると、渦巻きの周りは涼しくなーる」

 

コンノ二世が注釈してくれた。

 

「おい、それじゃあ、この辺りもハリケーンに巻き込まれるのか?」

 

この穏やかな風が、ロケはおろか帰りの船便予定も狂わせると一大事だ・・・そう考えた良太郎は訊いた。

 

「ダイジョブダイヨブ、風西から吹いてる。なら、ハリケーン東に行く。ダイジョブダイヨブ」

 

コンノ二世はそう言うが、突然涼しい風が強まり、コンノ二世がかぶっていた帽子が宙に舞ってしまった。

 

「ああーっ!シャッポ!シャッポがあ!」

 

ひらひらと海に舞い落ちる帽子に、コンノ二世は叫ぶ。

 

「シャッポって・・・コイツいつの時代の人だよ」

 

時代遅れの単語と慌てふためくコンノ二世の様子に、良太郎は笑いをこらえるのに難儀した。

 

「コンノちゃん、これで頭隠しな」

 

睦実はそんなコンノ二世に笑いを隠さなかったが、首に巻いていた紫色のスカーフを手渡した。

 

「ムツミさん、ありがとう。サンキュー、シェイ・シェイ」

 

コンノ二世は別に頭が禿げているワケでもなく、くせ毛激しいワケではないが、頭部が露わになることをイヤがる節がある。なんせ、来日して熱海の温泉旅館に連れて行ったときも、風呂場で帽子を脱がず旅館とひと悶着起こしたくらいだ。

 

「さあ、もーすぐ着岸。準備しよ、準備」

 

コンノ二世はそう言うと、船員たちにも地元の言語で同じように言った。すっかり泣き止み、近づいてくる島に興味津々の真佑を下ろすと、睦実は夏用の白いジャケットを羽織り、『世界驚異シリーズ』と描かれた襷をかけた。

 

「もういい加減恥ずかしいんだけど、何とかならないかなあ、この襷」

 

不満気に口をすぼめる睦実。

 

「仕方ないだろう、スポンサーの要請だし、長い伝統だ」

 

そう窘める良太郎自身も、とっくに平成になり、それどころか21世紀を迎えようとしている時勢に、こんな昭和趣味な襷をかけて番組を作ることには大いに抵抗があった。

 

だがこの『世界驚異シリーズ』スポンサーであり、TTV他番組にもたくさんの広告出稿をしてくれるパシフィック製薬の多胡社長が昭和の頃から続けている方針なのだ。

 

「しょーがないよね、昭和モーレツ時代を生き抜いた人が80過ぎても居座ってるんだもん」

 

ため息をつく睦実も、その辺は理解していた。

 

「それにウワサじゃ、あんたとこの局アナ、この襷かけるのイヤだからこの仕事断ったって話じゃない」

 

「・・・ウン・・・ム・・・まあ、当たらずとも遠からず、かな」

 

良太郎はじっとりと見てくる睦実から目を逸らした。

 

『世界驚異シリーズ』

 

パシフィック製薬が昭和36年からスタートさせた長寿番組である。最初は地球温暖化やそれに伴う海水位上昇、止まらぬ核実験によって生じた放射性物質の解説など、科学の解説を中心に据えた番組だった。

 

当然そんなマジメ番組など視聴者の興味を得られることはなく、視聴率はわずか5%以下。パシフィック製薬一社提供とはいえ、何度も打ち切りを検討される始末だった。

 

だが昭和37年、ソロモン群島・ファロ島に眠る『巨大なる魔神』なるものを探すドキュメンタリーを番組内で放送したところ、その年に実際日本へ上陸した『巨大なる魔神』事変もあり、番組名に恥じぬ驚異的な視聴率を獲得。その後は科学の解説から地球の大自然、辺境を旅し冒険するドキュメンタリーに様変わりした。

 

海底2万マイルを探索する調査船への密着、南米の秘境ギアナ高地探検、南極調査に命をかける男たちへの同行取材と、毎週土曜日夜7時から1時間放送される内容は視聴者の目を引き、昭和40年には平均視聴率38%を記録する、TTVのドル箱番組へと成長した。

 

その後は昭和55年までレギュラー放送を続けていたが、当時のドラマとコントブームにより通常放送からは撤退した。だが以後も概ね4か月に一度、番組改変期の特別番組として制作が続けられ、平成を10年も過ぎた現在も視聴率は20%を下らない、根強い人気を誇っている。

 

それほど長きにわたる番組に仕上げたのは、TTVでカメラを担ぎ精力的に世界各国をロケして回った良太郎の父であり、またパシフィック製薬現社長で、当時同社の宣伝部長を務めていた多胡氏であった。

 

良太郎も父の背中を追い、テレビ局に入社。撮影畑一筋だった父とは異なり、番組制作に興味があったことで、志願して特番『世界驚異シリーズ』制作に参加。いまはこうしてディレクターとなり、普段は主に警察24時や実録!日本のお仕事、といった密着系番組制作の傍ら、年に3回放映される『世界驚異シリーズ』へも積極的に参画していた。

 

当時他局のアナウンサーを勤めていた妻の睦実とは、業界の交流会で親しくなった。活発でアクティブな睦実に、良太郎は1も2もなく惹かれた。3年前、夏のボーナスをすべてはたいて購入した結婚指輪と共に結婚を申し込むと、「こんなことなくても、貴方と結婚したいと思っていた」という言葉と共に一緒になってくれたのだ。

 

それから睦実は勤務していた局を退社。真佑の出産を経ていまはフリーアナウンサーとして芸能事務所に所属している。娘がまだ小さいこともありレギュラー番組こそ持たないが、単発の報道番組や選挙報道、ラジオ番組の代理出演など、コンスタントに仕事が舞い込んでくる。

 

そんな睦実だが、『世界驚異シリーズ』のレポーターを務めるのは今回が初めてだった。普段であれば良太郎も公私混同はせず、慣例に従い局アナにレポートをしてもらうようアナウンス室に依頼を出したところ、今回は誰も出せない、という返答だった。

 

理由は明白だった。

 

1カ月前、中国が自国西方地域にて臨界前核実験を実施した。2年前のインド、パキスタンによる核兵器保有宣言後、微妙な外交関係を続けているインドへの牽制、という見方が一般的だった。

 

そしてどうやらそれは事実であったらしく、それから1週間後にはインドが国際社会からの非難にも関わらず臨界前核実験を実行。そのわずか2日後にはパキスタンが同じく臨界前核実験を断行した。

 

また同時期、ロシアによるグルジア、カザフスタンへの軍事侵攻が勃発した。ロシア連邦成立後、一向に回復しない国内経済による政権への不満をかき消すべく、酔っぱらいの大統領が軍事侵攻への同意書にサインしたためと言われている。現段階では憶測にすぎないが、両国への軍事行動が思いのほか手こずっているらしく、事態打開のために戦術核兵器の使用がささやかれている。

 

このような深刻さを増す国際情勢下においてはいつ緊急報道が入るかわからないため、自局アナウンサーを長い期間ロケへ帯同できない、というのが理由だった(ただし、時代遅れのダサイ襷なんかかけたくない、という声が若手アナウンサーから聞こえてきたこともたしかだった)。

 

「あそこの砂浜に着岸させる。でもギリギリまでムリ。ボートで行く」

 

上陸準備を終えると、コンノ二世が声をかけてきた。相変わらず穏やかな風は心地よいが、本当にハリケーンはやってこないのだろうか。

 

不安を呑み込み、良太郎はまず機材、そして真佑をボートに乗せると、マイク一式を持つ睦実の手を貸してボートを進めた。

 

聞けば、ファロ島では常に高台で見張りがいて客人(あるいは外敵)を監視しているらしい。友好的な上陸であることを示すべく、コンノ二世は紫色の旗を立てて目立つようにグルグル回した。

 

一行は砂浜に上陸し、機材を下ろしてボートの空気を抜く。ロケ期間は3日間。チャーター船が迎えにくるこの間に、良太郎たちは島民の協力を得て、島を探検し『巨大なる魔神』と再会できれば、今回のロケは大成功だ。

 

「おい、どうしたんだ?」

 

良太郎は周囲をキョロキョロ見回し、戸惑い気味のコンノ二世に声をかけた。

 

「おっおかしい、誰も出てこない」

 

するとコンノ二世は、どこからそんな声が出るんだというくらい甲高い雄叫びを上げた。しばらく反応を待ったが、誰かが出てきたり、何かしら合図を送ってくる様子もない。

 

「おかしい。サクライさん、なんかオカシイよ。ここへ来ることは伝えてあったのに」

 

「伝えてあったと言っても、このご時世に手紙で、だろう。日時勘違いしてるんじゃないのか?」

 

ファロ島は2000年代に突入した現在にあっても、インターネットはおろか電話も何もない。ひと月に一度、ソロモン連邦政府の連絡船が互いの書簡をやり取りしに訪れる他、接触を図る機会はない。

 

メラネシア。大洋州でもニューカレドニアなどとは異なり、この辺りの島々は観光地化には消極的である上、とりわけファロ島の住民たちは文明への同化を頑なに拒んでいる。それは自分たちが信奉する『巨大なる魔神』への祈りをささげるためであり、日本風に表現すると『神聖にして、侵すべからず』といったところらしい。

 

その中でも、昭和37年の一件以来日本人には好意的だったらしい。良太郎の父は当時の一件以降も何度かファロ島を訪れ、交流を持ったそうだ。ただひとつ、島に戻ったとされる『巨大なる魔神』には、一度も会えていないらしかった。

 

「仕方ナイ、集落まで行ってみよう」

 

日本人に好意的とはいえ、いきなり不穏な空気が漂う。番組のためとはいえ、良太郎はクルーたちとコンノ二世、何より睦実と真佑を引き揚げさせることも考えた。

 

「・・・ねえ、あれって?」

 

睦実が海上を指差した。良太郎は双眼鏡を覗いた。

 

「・・・ホバークラフト、だなあれは。黒いのが2艘。でもなんだありゃ?」

 

「島から離れていくみたいだね」

 

良太郎から双眼鏡を借りた睦実がつぶやいた。傍らの真佑は、両親を不思議そうに見上げていた。

 

「コンノ、あのホバークラフトはなんだ?」

 

そう尋ねたが、コンノもピンと来ていないらしい。怪訝な顔をして首を傾げるばかりだ。

 

「なあ、ロケは中止しよう」

 

良太郎の言葉に、睦実もコンノ二世も、クルーたちも目を丸くした。

 

「何言ってるの、ここまで来て!」

 

睦実が声を張り上げた。

 

「どうもイヤな予感がするんだ。引き揚げた方が良さそうだ」

 

そう言って、良太郎は真佑を抱き寄せた。無垢な視線で見上げてくる。

 

「でも、何かの事情で誰も出てこないだけかもしれないじゃない」

 

「そうだが、普段いるはずの見張りがいないことといい、あの妙なホバークラフトといい、空気感が妙だ。オレたちだけなら良いが・・・」

 

良太郎はつないでいる真佑の手をギュッと握った。良太郎の懸念が理解できたのだろう、睦実も二の句を告がなかった。

 

「チョット待って、何か聴こえる・・・」

 

コンノ二世が口に指を当て、片方の耳に手を当てて澄ませた。

 

「島の誰かか?」

 

「イイヤ・・・なんだろうか・・・」

 

すると、良太郎たちの耳にも聞こえてきた。ズン、ズン、ドン、ドン・・・。

 

「アレか。聞くところの太鼓の音じゃないか?」

 

『巨大なる魔神』が太鼓の音色に反応するというのは、父から聞かされていた。もしかしたら、魔神への祈りの時間やらで、島民が出払っているとか・・・?

 

「・・・違う、チガウ。もっと別な・・・・」

 

そのときだった。島の奥の方から、猛獣の咆哮らしき音がした。

 

「まさか・・・」

 

魔神か、と言いかけたとき、コンノ二世が手のひらを向けた。

 

「違うナア。別な声だと・・・」

 

いよいよ、良太郎と睦実は顔を見合わせた。クルーも顔を強張らせている。

 

長旅の上文明の力が及ばないこの島へ幼い娘を連れていくことに、抵抗はあった。だがファロ島の人々とは父の代から家族ぐるみの付き合いだったし、真佑には小さいころからファロ島に馴染んで、将来はもっと仲良くなってほしい・・・そんな叔母や睦実の意見もあり、今回は公私混同を避ける自身の方針を曲げて家族ごと訪れることにした。

 

だが予感とはいえ危険な事態が考えられるのなら、話は別だ。相手とは連絡を取る手段がないため、状況を窺い知ることができない。万が一のため衛星電話は持ってきており、いまなら一度離れたチャーター船に連絡を取り、戻ってきてもらうこともできるだろう。

 

「あっ!!」

 

コンノ二世が大声を出したのは、そのときだった。砂浜から先、そそり立つ絶壁のてっぺんを指差していた。

 

人だった。何人かが叫びながら、頂を駆け回っている。だが様子からして、こちらには気づいていないようだ。

 

「オーイ!」

 

コンノ二世が呼びかけるが、反応がない。何やら慌ただしく、大声を上げながら頂の向こうへ走り去っていってしまった。

 

「いったいどうしたんだ?」

 

「わからナイ。様子、おかしい」

 

とにかく様子をうかがうことになり、良太郎は睦美や真佑たちをその場にとどまらせ、コンノ二世と絶壁の向こうへ行ってみることにした。

 

「いいか、あくまで様子を見るだけだ。何か危険なようだったら、すぐに戻るから。真佑を頼む」

 

「う、うん」

 

ただならぬ雰囲気に、睦実もクルーたちも喉を鳴らした。真佑だけは、遠くを見つめていた。まるで絶壁の向こうで起こっていることが、理解できているかのように・・・。

 

コンノ二世はライフル銃を持ち、撃鉄を起こした。これで、いつでも弾丸を放てる。もちろん人間相手でなはい。彼にとってファロ島の人々は家族も同然だ。

 

島には体長1メートルを軽く超えるトカゲが跋扈し、その鋭い歯は人間を骨ごと噛み砕いてしまうという。また大型の蛇や猛禽類といった野生動物も多く、そのためのライフル銃だった。

 

絶壁を回り込み、集落が見える辺りまで来るとコンノ二世は双眼鏡で様子をうかがった。

 

「ヤッパリ変。だーれもいない」

 

「そんなことがあるのか?あれか、魔神への祈祷とか」

 

「それだったら、あそこの麓の祭壇にみんな集まる。そこも、誰もいない」

 

「じゃあ、これはどういうことだ?」

 

それはコンノ二世にも見当がつかないらしく。首を横に振るばかりだった。

 

だがズン、ズン・・・ドン、ドンという音は島の奥地から変わらず聞こえてくる。それに加え、良太郎は足元がかすかに揺れているような感じがした。

 

集落の向こうには、剣のように尖った山がいくつかそびえている。この奇妙な音はそちらから聞こえてくるように思えた。

 

「みんな、あっちへ行ったのかな」

 

「あっちは魔神の住処。みんなあんまり近寄らない。そして魔神もみんなのために、あそこから出てこない。お互いさま、オタガイサマ」

 

だが集落に人の気配がない、ということは、住民たちは皆あの山の向こうへ行ったとしか考えられない。あるいは・・・良太郎はさっき目撃した、黒いホバークラフトを思い起こしていた。

 

「コンノ、せめて集落までは行ってみよう。誰かいるかもしれない」

 

「ウ、ウン・・・」

 

コンノ二世はライフル銃を握り、ゆっくり進んでいく。良太郎も息を殺して後に続く。

 

ふいに、地響きが強くなり、足元が大きく揺れた。

 

「地震か、それにしては・・・!」

 

突然、山のひとつが大きく崩れた。鼓膜をひどく揺らし脳髄に届かんばかりの音がして、噴火したような煙が舞って良太郎は視界を奪われた。

 

煙が落ち着くと、猛獣のような咆哮がより近くに聞こえた。地響きが足元を揺らし、咆哮が周囲を震わせた。

 

「・・・ゴジラ・・・!?」

 

崩れた山の向こうに鎮座する巨体。紛れもなく、昭和37年に北極海より出現し日本・松島湾に上陸後、富士山麓での決闘を経て相模湾に沈んだはずの、原子怪獣ゴジラだった。

 

足元の岩を蹴散らし、こちらへ向かってくるゴジラ。そのとき岩と瓦礫が吹き飛び、中からゴジラと同程度の何かが飛び出した。

 

「キングコング!!」

 

良太郎が叫んだ。今回の『世界驚異シリーズ』の目的である巨大なる魔神・・・南海の巨神・キングコングが目の前に出現したのだ。

 

大きく吼えたキングコングは、ゴジラの背後から走り込んで背中に蹴りを喰らわせた。前のめりにつんのめったゴジラにまたがり、ゴジラの肩から首にかけて拳を叩きつける。

 

吼えるゴジラの尻尾をつかむと、そのままひきずって後ずさる。まるで集落からゴジラを遠ざけようとしているようだった。

 

地面に爪を立てて抵抗するゴジラは身を反転させると、瞬時に背鰭を光らせて口から青白く光る息を吐き出した。

 

キングコングの右腕が燃え上がり、悲鳴を上げて手を放しのたうち回る。立ち上がったゴジラは白煙を上げる右腕をさするキングコングに突進した。

 

弾き飛ばされたキングコングは絶壁に背中を叩きつけられ、膝をつく。ゴジラは尻尾を大きく振り、キングコングの顔面に叩きつけた。

 

転げ回るキングコングを追うゴジラ。すると頂の先から、島の住民たちが槍やら石やら、ゴジラに向けて投げつけているのが見えた。

 

「ああ、アレじゃあ・・・!」

 

コンノ二世が悲鳴じみた声を上げる。

 

「コンノ、戻ろう!」

 

良太郎はコンノ二世の手をつかみ、睦実たちの元に戻ろうとした。衛星電話を預けてある。一刻も早く救援を呼び、あまつさえ、近隣諸国・・・まともにゴジラを張り合えそうなのはオーストラリアかニュージーランドか・・・に軍の出動を要請さすねば!

 

「良太郎!」

 

ふいに、道の先から睦実の声がした。

 

「なん、で・・・」

 

2歳にもならない真佑が、こちらに走ってきていた。それを追いかけ、睦実もやってきたようだった。

 

地響きは相変わらず強く、向こうではゴジラとキングコングががっぷり組み合ってもみ合っている。おぼつかない足取りでこちらへ走る娘の元へ走ろうとしたとき、ひときわ大きく地面が波打った。

 

真佑の身体が地面に弾かれ、宙に舞う。良太郎は怒声を上げながら真佑を救うべく足を踏ん張ったが、地面が横倒しになった。

 

視界の先で睦実が跳ね飛ばされ、姿が見えなくなる。

 

良太郎自身の視界が360度めぐった。ゴジラとキングコングは周囲の山が崩壊した土砂が覆いかぶされ、激しい粉塵の向こうに見えなくなった。

 

「真佑!真佑―!!」

 

娘の名前を叫びながら、良太郎の身体は地面を転げ回る・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




~主要登場人物~



・桜井 宏樹

年齢:30歳

ICA(イメージアクター):菅田 将暉

企画系Youtuber。登録者数540万人で愛知県在住。



・神鍋 順一郎

年齢:37歳

ICA:鈴木 亮平

筋肉系Youtuber。登録者数505万人で新潟県在住。



・飯島 聡

年齢:36歳

ICA:平岡 祐太

交通系Youtuber。登録者数245万人で神奈川県在住。



・高畑 敦也

年齢:38歳

ICA:松山 ケンイチ

教養系Youtuber。登録者数680万人でドバイ在住。



・太田 学

年齢:48歳

ICA:阿部 サダヲ

大手広告代理店「伝通」第二広告部長。



・二宮 砂和子

年齢:30歳

ICA:伊藤 沙莉

パシフィック製薬株式会社宣伝部主任。



・浅見 省三

年齢:61歳

ICA:船越 英一郎

静岡県警本部長。



・只山 正仁

年齢:57歳

ICA:高橋 克典

陸上自衛隊陸将・中部方面総監。



・亀田 勲

年齢:57歳

ICA:寺脇 康文

陸上自衛隊陸将・東部方面総監。



・唐津 孝三郎

年齢:59歳

ICA:尾美 としのり

城南大学薬学部教授。日本製薬学会の重鎮。



・重沢 正明

年齢:53歳

ICA:西島 秀俊

城南大学生物工学部教授。



・デヴィッド・マクシミリアン(通称マックス)

年齢:52歳

ICA:ジェレミー・レナー

民間軍事会社『NET』代表。元オーストラリア軍特殊部隊所属。



・アモ

年齢:(推定)24歳

ICA:景井 ひな

ファロ島の巫女。日本人のようだが・・・?





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