続! キングコング対ゴジラ   作:マイケル社長

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ー油断大敵ー

 

 

 

 

一方その頃、ファロ島の沖合付近にて。

 

自然豊かで文明の利器が及ばないこの島にはまるで似つかわしくない、エンジンをフル回転させている10名乗りの高速艇がファロ島へ向かっていた。

 

「時速33ノット。現在の速度を維持すれば、およそ30分後に島へ上陸できます」

 

元海軍の操舵手が告げると、一行のリーダーであるフォ・インシクはコクリと頷き、傍らで韓国・大宇製のアサルトライフルを握っている血の気が多い部下、ユ・コンテクに向き直った。

 

「それにしても時間がかかったな」

 

「ええ。いくら衛星携帯電話でも、島の極まで行かないと電波が入らず、しかもとてつもなく電波が不安定だったそうで。たった2行のSMSを送信するだけでも、10回以上は失敗したとか」

 

「原始時代に遡ったようだな。ま、その方がこちらとしても島の連中による抵抗などタカが知れているから、楽で良いがな」

 

そう言うと、フォはケースからやはり大宇のアサルトライフルを取り出した。2年間の兵役でさんざん使いこなした銃だ。飛び道具など持たぬ野蛮な原住民などひとたまりもなかろう。

 

船の中はさほど広いわけではないが、そこを埋め尽くすほどの荷物であふれている。いずれもアサルトライフルや弾薬、あるいは指向性炸薬やプラスチック爆弾など、およそ平和なファロ島に持ち込むには物騒過ぎるものばかりだ。

 

「ヘリコプターで向かっているコンのチームより連絡です。あちらはもう少し早く、島へ到達するだろうと」

 

「うむ。原因は不明だが、島の周囲はあらゆる電波が通じにくいそうだ。当初の打ち合わせ通り、島の集落を避けつつも我々とハサミ撃ちで侵攻を開始する」

 

フォが言うと、ユは早くもライフルの安全装置を外した。

 

「軍では、日本へ上陸した場合の演習をさんざん提案しましたが、クソ上官に却下されました。そこで同じ意志を持つ連中と独自に、少人数による上陸作戦を訓練しました。いまこそ、成果を発揮できますよ」

 

元より人を撃ちたくて仕方がないユは、ギラついた目つきで言った。

 

「警戒すべきは日本人の若造らに雇われたオーストラリア人の傭兵だ。アサルトライフルが一挺に減ったとは聞いたが」

 

「何言ってんです。どうせ予備の弾薬もマガジンも知れたものでしょう。こっちはヘリコプター隊を含め30名近いんだ。制圧なんて片目つむってもできますよ」

 

「あともうひとつ。キングコングだ」

 

するとユは黙りこくった。

 

「話では、キングコングは普段里からだいぶ離れた洞穴の中で暮らしているそうだな。ヤツが動き出す前にすべてを終わらせないといかん」

 

「だから、いまこそオレが考案した上陸作戦案が役に立つんですよ。コイツはね、海岸線から2キロも離れた日本の集落を想定している。比べて今度はどうです?海岸線からわずか1キロもない辺りが原住民のボロ家群らしいじゃないですか。作戦所要時間は30分。良い勝負ができそうだ」

 

ユはライフルをかまえると、向かう先の島へ銃口を向けている。窓の向こうのファロ島は、さきほどよりだいぶ近づきつつある。

 

「頼もしい限りだがな、ユ。最低1人は島民を生捕りにする必要があるんだ。調子に乗って全員殺害してしまっては元の朽網だぞ?」

 

「わかってますって」

 

そう返事するユは、どこか不満げだ。今回の「仕事」を遂行するに当たり「組織」から送られてきたこの男、極めて高い戦闘能力を持っていることは紛れもないのだが、粗野で凶暴な性格を惜しげもなく披露してくれたことから「狂犬」だの「気狂」だのといったあだ名をつけられている。本人はそれすらも栄誉と捉えているようだが、その凶暴性故に軍を不名誉除隊となったというのも理解できた。

 

「お、早速見えてきましたね」

 

「ヘリコプターか?」

 

「ええ。ホラ、島の上空ですよ」

 

ユは指摘するように、ファロ島の上空を飛び回るものが見える。だが距離が開いており、ここからだと豆粒くらいにしか見えない。フォは双眼鏡をつかむと、覗き口を両眼にくっつけた。

 

「島に近づくものには災いが降りかかる。たしか、出港前に現地のジジイに警告されたんでしたな。ところが実際はこうして、海からも空からも容易に近づけるではありませんか。迷信深い原始人め」

 

ユはそう毒づき、景気づけに焼酎を原液のまま口に流し込む。

 

たしかに、島の上空に飛行する物体が存在している。だがそれは綺麗に円を描くように島の上空を旋回しており、ヘリコプターの挙動にしては不自然だった。何より、回転翼が確認できない。

 

「おかしいな、あんな旋回などできるものか・・・・・!?」

 

思わずフォは双眼鏡から目を離した。島を飛び回る存在とは別に、黒煙を噴き出しながら落下するヘリコプターが視界に飛び込んできたのだ。それも編隊を組んでいた2機、同時に落下している。

 

「ヘリ隊に連絡を取れ!」

 

フォが怒鳴ると、通信手がヘリ隊に応答を求めた。いずれも不通の場合流れる雑音が響くばかりだった。

 

いま一度、フォは双眼鏡を掲げた。黒煙は薄れ去り、今度ははっきりと島を舞う存在が確認できた。

 

「・・・猛禽類・・・あれは、コンドルか?」

 

フォがつぶやく。異変に気づいたようで、ユや他の乗組員たちもこぞって双眼鏡に群がった。

 

「いや・・・ここからあれほどの大きさに見えるとなれば・・・」

 

そのときだった。

 

フォたちの後ろを航行していた高速船からものすごい轟音が炸裂した。金属がちぎられる不快な音が鼓膜を揺らし、神経が痺れるような感覚が全身を駆け巡る。

 

フォが後方を振り返ると、真っ二つに裂かれた高速船が宙を舞っていた。いや、船が真っ二つとはどういうことだ?こんなことが、あり得るものか・・・?

 

視覚から飛び込んでくる情報を思考が処理できない。唖然としていると、操舵手が叫んだ。

 

「本船真下に、正体不明の物体!すぐ近くですそこだ!」

 

最後はほとんど金切り声だった。同時に、本当の金切り声が聴こえた。鉄を切り裂くような音で、金切り声。

 

「あっ!ハサミだ!」

 

見たまんまのことを、ユが叫んだ。赤く巨大なハサミが海面から突き出し、高速船をえぐった。フォの視界は一気に90度真上に傾くと同時に、それまで足をつけていた床が垂直になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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