神鍋のいびきに苛まれていた宏樹がようやく微睡に落ちたのは、おそらく日付が変わった頃だった。この日、エビラに勝利したキングコングが赤い汁をたらふく呑んで眠った後、村人たちからトカゲの肉を振る舞われた宏樹たちだったが、腹が満たされて満足したのか神鍋が一番早く床についた。
仕方なしに宏樹と飯島は隣の小屋で睡眠を取ることにしたのだが、なんと闇夜をつんざき神鍋のイビキが届いてくる始末だった。
機嫌を損ねたらしい飯島は耳をふさいで転がったまま。宏樹は隣の小屋へ赴き、神鍋の鼻をつまむ等手を施した。功を奏したのかイビキが小康状態になり、ようやくホッとひと息つくことができた。
だが、今度は隣で寝ていたはずの飯島がおかしな声を出し始めた。
「聡くん?」
寝ぼけ眼で問いかけるが、返事がない。ずいぶんと息が荒く、暗闇でも汗をびっしょりかいているのがわかった。
明らかに普通の様子ではない。宏樹は身を起こすと、飯島を少し揺さぶった。
「聡くん、どうしたの?」
すると触れた手に、びっしょりと汗がついた。いくら南国の夜とはいえ、宏樹はここまで汗をかいていない。
「聡くん!」
肩を揺さぶると、荒い息づかいの飯島が仰向けになった。
「ちょ、どうしたの?」
「・・・おかしい、なんか・・・・身体が熱いのに寒気するんだ」
ぜえぜえ息を切らしながら、飯島は答えた。宏樹はとっさに飯島のおでこに手を当てた。
「うわっ、すごい熱・・・」
すると飯島は宏樹の手を払い除けた。邪険な行動に思わずムッとする宏樹。
「触らない方が良い・・・もしかしたら、赤痢とかマラリアとか・・・感染症にかかってるかもしれない・・・」
そんなバカな、と言いたくなったが、旅をテーマに動画を作っている飯島の言葉には説得力があった。そういえば、飯島が前に上げた動画でインドを訪れた際、屋台で糸を引いたカレーをうっかり食べてしまった後、3日間高熱に苛まれた様子を投稿したものがあったことを思い出した。
ふと、隣の小屋が気になった。神鍋の豪快なイビキが聞こえてこない。迷惑この上ない神鍋のイビキだが、ここまで静かだと何かあったかも、と気にならずにはいられなかったのだ。
宏樹は隣の小屋に入った。イヤな予感は的中した。神鍋も息が荒く、ずいぶんと汗をかいている。
「鍋ちゃん!」
「ヒ・・・ヒロキン・・・?」
3人のiPhoneは持ち込んだ発電機で充電中だ。灯りがなかったが、暗がりでも神鍋が苦悶に満ちた表情をしていることは理解できた。
「な、なんか・・・インフルエンザかな?熱っぽさすごくて・・・関節痛ぇ」
ただごとではなかった。アップルウォッチを見ると、午前4時を回ったところだ。一応冬に当たるため日の出はまだ先だが、かまっていられない。
「夜中困ったトキ、わたしたちココいる」
コンノ親子が教えてくれた小屋へ走り、寝ているときも帽子をかぶったままのコンノ親子を叩き起こした。寝ぼけ眼の2人に事情を説明すると、起き上がって来てくれた。
「三世、ランプ持ってクル」
コンノ二世が息子に指示した。この親子、普段から日本語で会話しているのがなかなかに不思議だったが、いまはそんなことどうでも良かった。
三世がランプを持ってくると、まずは神鍋、続いて隣の飯島の全身を照らした。三世は不安げだが、二世は心当たりでもあるのか、落ち着いて2人の身体を観察している。
「ヒロキンさん。2人ともムカデに刺されたネ」
「ム、ムカデ??」
「コレ、見るネ」
そういってランプに照らされる飯島の左ふくらはぎに、カサブタのような傷ができているのが認識できた。
「鍋サンの足にも、おんなじ傷あったネ。コレ、ファロ島にいるムカデの仕業。ムカデ刺されると、高熱出ル。ひどい風邪ひいたときみたいナ熱、出るネ」
「そんな・・・ねえ、2人は大丈夫なの?」
「ヒロキンさん、ダイジョーブ。ファロ島、薬の島。ムカデに刺されてもヘッチャラな木の実アルね。島の人たち、普段から木の実食べてるからムカデ刺されてもヘーキ。でも木の実食べてないお客さん、刺されると熱出るケド、木の実食べて大人しくしてると1日で良くなるヨ」
ホッと胸を撫で下ろすと、熱にうなされる神鍋と飯島にその旨話した。夜明け前ではあったが、コンノ三世が村人を呼びに行ってくれると、ほどなくして深く皺を刻んだ男性と、チキロ酋長がやってきた。
老父が紫色の木の実を潰して出てきた汁を2人に含ませている傍らで、チキロ酋長は笑顔で宏樹の両肩をバンバン叩き何かを告げた。
「心配だと思うケド、この木の実口にすればダイジョーブ。次、日が沈むくらいには良くなる、言ってマス」
コンノ二世が翻訳してくれた。安心した宏樹の顔を見て、チキロ酋長はしっかりと宏樹の両肩を抱いた。
ふと、宏樹は思いを巡らせた。村のはずれにある、マックスたちのテント。彼らは大丈夫だろうか。
事情を話してランプを持ったコンノ三世とテントへ赴くと、案の定、ブンチャヤとボロロが神鍋や飯島と同じように唸り声を上げていた。
「やっぱり・・・大丈夫?」
横になって苦しそうにするブンチャヤとボロロに声をかけるが、マックスに制された。
「近寄らない方が良い。感染症だとすれば厄介だ」
マックスは薄いゴム手袋をハメ、バンダナで口と鼻を覆い2人に経口補水液を与えている。
「ねえマックス、実は鍋ちゃんと聡くんも同じ症状だったんだ。ムカデに刺されたんだって」
「なに、ムカデ?」
宏樹とコンノ三世が事情を説明し2人を照らすと、それぞれ膝と肘にかさぶた状の傷が確認できた。
「村にある木の実のめば、1日で良くなるっていうから、2人にも・・・」
そこまで言いかけて、宏樹は言い淀んだ。そうだ、マックスたちは村人に歓迎されていないのだ。
「こういう商売なんでなぁ、解熱剤や栄養剤は用意している。それでなんとか凌ぐさ」
マックスはそう言ったが、宏樹はコンノ三世に顔を向けた。
「ねえ三世、チキロ酋長に頼んでみたい。ブンチャヤとボロロにも木の実ほしいって」
するとコンノ三世は宏樹の意を汲んで頷いたが、チキロ酋長のしかめ面も同時に思い出し、渋い表情になった。
「ウーン・・・」
「ほっとけないでしょ!」
宏樹の強い口調で、コンノ三世は意を決したように頷いた。そこまでしなくても、といった表情を浮かべるマックスをヨソに、宏樹とコンノ三世はチキロ酋長の元に走った。
事情を説明すると、チキロ酋長は困った顔になった。そこまでマックスのような白人に嫌悪を抱く理由があるというのだろうか。
「酋長、お願いします。あなたたちがどうしてマックスみたいな白人を嫌うか、それはわからないです。でも、このまま放っておくのはすごくかわいそうだと思うんです。どうか、この通り」
宏樹は大きく頭を下げた。ふと、このお辞儀がファロ島の住民に理解できるものなのか、気になった。
するとチキロ酋長は険しい顔をしながらも、宏樹に何かをしゃべった。それを聞いたコンノ三世は明るい表情になった。
「よろしい。宏樹サンの頼みなら、良いでしょう。木の実、あげマス、言ってマス」
宏樹は頭を上げると、チキロ酋長の手を握りガッチリと握手した。もしかしたらファロ島には握手の習慣はないのかもしれない。頭にはてなマークを浮かべながらも、チキロ酋長は宏樹の手をギュッと握り返してくれた。
神鍋と飯島の症状が緩和され、少し仮眠を取るために横になった宏樹だったが、ふと気がつくとすっかり夜が明けていた。
2人が気になって隣の小屋を覗くと、コンノ三世と木の実を用意した老人が何かを話しているところだった。
「宏樹サン、おはようございマス」
「おはようコンノ。ねえ、2人は大丈夫?」
心配する宏樹をよそに、モソモソと起き上がる神鍋と飯島。
「おうヒロキン。おかげさまでだいぶ熱が下がったよ」
そうはにかむ神鍋。たしかに明け方、木の実を与えられる前よりかはだいぶ元気そうだが、今ひとつ表情は冴えない。
「心配かけたね、ヒロキン」
飯島も同じだった。熱は下がったのだろうが、まだ病中、といった雰囲気だ。
「お2人トモ、今日1日、ゆっくりする良い。そうすればスッカリ元通り」
「でもさコンノ、そしたら今日は動かない方が良いってことなの?」
今日は黄色い木の実、通称ファロラクトンεの調査探検に向かう日だ。ファロ島の滞在はあと2日。明日は予備日として確保しているのみであり、できれば今日のうちに調査を済ませておきたいところだ。
「ウン。病中病後、療養大切ネ。無理するの、良くナイ」
それはそうなのだが・・・宏樹と神鍋、飯島は互いに視線を向け合った。
「おい、ちょっと良いか」
ふいにマックスが小屋に入ってきた。コンノ三世は平常だが、傍らの老人に狼狽の色が浮かんだ。
「ブンチャヤとボロロだが、熱は下がったが倦怠感を訴えている。今日の調査警備は同行させられない。どうする?」
マックスが訊くと、ますます困惑する神鍋と飯島。そこを尻目に、宏樹が手を挙げた。
「あの、僕とマックスに、コンノパパの3人でどうかな?」
「・・・なんだと?」
「ねえコンノ、黄色い木の実がある辺りまでは、そんなに遠くないんでしょ?」
「う、うん。そうですガ」
「なら、鍋ちゃんたちは休んでてもらってさ、僕らだけでなんとかできちゃえないかな?」
神鍋は忸怩たるものがあるのか唇を噛んだが、この体調では致し方ない。飯島は宏樹の提案を含み締め、案に賛成するように頷く。
「ヒロキン、簡単にいうが、昨日オレたちがしてたことを見なかったのか?オレたちも撮影しながらお前たちの警備に当たってたんだ。だいたい、オレたちの撮影機材は片手で扱えるiPhoneじゃないんだぞ。ここはやはり、無理せず全員の回復を待ち、明日に移すべきだ」
「それなら大丈夫。あのビデオカメラ、使ったことあるよ」
「・・・・なに?」
「アタッセス社製のやつだったでしょ?音声もクリアに拾えるやつ。オレたち、数年前に富士山の未探訪風穴探検したんだけど、そのとき使った機材と一緒だもの」
そういえば、と神鍋は顎に手を当てた。あのときはiPhoneの照明では光量不足の可能性があるため、比較的軽量の業務用撮影機材をレンタルしたのだった。その際は撮影クルーも数名ついたのだが、手狭な洞穴を探る場合などは3人で代わりばんこにカメラを持ち、撮影したものだ。
「思ったより軽かったし、オレひとりでも抱えて歩けると思うんだよね。で、撮影したデータもらって、こっちで利用できそうな部分編集さえさせてもらえれば」
宏樹の提案にマックスはしばし思案していたが、やがて得心したように頷いた。
「わかった。それならその形で進もう」
支度をしてくる、とマックスは小屋を離れた。すかさず神鍋と飯島が宏樹に寄ってきた。
「なあヒロキン、本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫でしょ。オレたちあのカメラ持って1日近く富士宮の地下探索したじゃん。それに比べたら」
「そうじゃなくて」
「あのマックスという男と一緒というのは、いささか危険じゃないか?」
飯島が被せてきた。
「危険、て、ああ・・・ファロラクトンεのことだよね?まあ・・・その辺りも含めて探り入れてみようかなって」
「大丈夫か?」
飯島が訊くと、神鍋も表情で訴えかけてくる。
「なんとか大丈夫でしょ。コンノだってきてくれるし。おかしなことにはならないんじゃないかな」
宏樹はそう答えた。実のところ、神鍋や飯島の懸念も理解しているが、マックスがそこまで危険な人物だとは宏樹には思えなかった。むしろ、彼が抱える秘密が、今回の冒険に大きく関わってきそうな雰囲気を感じていた。そこを知れるチャンスだとすら思っているのだ。
しばらくの後、支度を終えた宏樹とマックス、コンノ2世と3世親子、そして神鍋と飯島から同行を頼まれたチェ支社長一行は集落を出発し、昨日とは異なる山道を進んでいた。
「支社長って言っても最近入手した若手社員と変わらない。本社の言うこと絶対でわたしは小間使い。偉くもなんともない。だから本社から横ヤリ入らない今日だけは昼寝たっぷりさせて」
そういって昨日は集落に残り、早くから焼酎をかっ喰らって居眠りしていたチェだが、なんと昨夜のエビラ騒動の間も眠りこけていたらしい。話をきいてあきれるばかりだったが、飯島によると韓国の財閥系企業はどこも似たようなものらしい。本社と支社のヒエラルキーは想像以上に大きく、拒否権どころか対話すらできず一方的に命じられる関係性のようだ。
先頭を地理に明るいコンノ2世が務め、カメラを抱えた宏樹と、アサルトライフルを携えたマックスが並ぶ。最後尾にカメラのバッテリーや飲料水、食料を持つコンノ3世とチェが続く。
なるほどアップダウンな獣道を繰り返した昨日に比べ、大小さまざまな礫岩が散乱して靴底を圧迫こそするも平坦な今日の道の方が身体は楽だ。
それに今日は目指す場所まではそう時間はかからないらしい。休憩をはさみながらでも、昼過ぎには調査と探検が終わりそうな予感がする。
とはいえ肩にカメラを担いで歩くのはまあまあしんどい。富士宮の地下空洞は冷たく湿った空気だったが、こちらは南国の暖かい風と強烈な陽射しが降り注ぐ。肩当てのタオルがだいぶ汗を吸い込んでいるのがわかる。
「どうだヒロキン?もし大変ならば、チェ支社長に撮影代わってもらっても良いんじゃないのか?」
マックスが訊いてきた。いつもならズケズケと物申すところなのだろうが、疲労の色が濃いとはいえカメラをしっかり使いこなしている宏樹を見て、当初の敵愾心もだいぶ薄れてきたように思える。
「いや、平気。もうちょっと進んだ辺りで休憩させてもらえれば」
「そうか。もう少し進んだら、撮影箇所に注文をつけさせてもらう。そのときはしっかり頼むぞ」
「OK」
というか、当のチェはでっぷりと出た腹を揺らし、ぜいぜいと荒い息遣いで歩いている。とても彼にカメラ撮影を頼む気にはなれない。
「てゆうか、マックスはこのカメラで何を撮影しようとしてるの?」
なるべく穏やかに訊いたつもりだったが、一瞬マックスは顔を顰めた。あまり話したくないらしい。もしかしたら、コンノ親子がいないタイミングなら切り出しても良いかもしれない。気まずい沈黙はチェの座り込む声と音でかき消された。
ガブガブ水を飲むチェだったが、噴き出る汗の方が多そうだ。マックスへの警戒もあり神鍋と飯島が同行を頼んだのだが、人選に間違いがあるような気もしてきた。
「ここ過ぎれば、荒涼とした広場出る。そうすればもうひと息ヨ」
コンノ2世の説明に、マックスは黙って頷く。宏樹は急激に気温が上昇したことでレンズに曇りが生じてきたことに気づき、レンズの外側を外して中の部分を軽く磨いた。
「ほう、細かい部分まで気がつくな」
その様子を見たマックスが声をかけてきた。
「一応、YouTuberだからね。こういうことも仕事のうちだよ。このままじゃレンズに水滴できて画面埋め尽くされちゃうから」
するとマックスは感心したようにふんふん頷いた。
「オレはYouTuberなんてのは、人様を笑いものにして金を稼ぐ低俗な連中としか認識していなかったが。なるほどいろいろ苦労や努力があるんだな」
何の気なしに発した宏樹の言葉だったが、マックスの雰囲気はだいぶ険しさが解消されたように思える。
「まあね・・・決してやってて楽しい仕事ともいえないし」
「ほう?事前のにわか知識だが、お前たちは日本でトップクラスのYouTuberなんだろ?」
「そうだけどさ・・・いろいろ、ね。いや、鍋ちゃんや聡くんはすごいよ。マッスルに農業に旅・・・得意分野を売りにして発信できてるんだから。オレなんて、最近他のYouTuberがやったことをマネしてばっかりで、あの2人みたいに芯がないんだなって思えてさ」
不思議そうな顔をするマックスに、思わず宏樹は口を押さえた。
「ああ、ごめん。つい愚痴っぽくなった」
マックスは言葉に出さず、うんうんと頷いた。神鍋と飯島がいないことで、つい本音を話してしまったのだ・・・。
そろそろ出発するよ、とコンノ2世が呼びかけたとき、またあの法螺貝が聞こえてきた。同時に、妙な方向から風が吹き込んでくる。
「みなサン、ちょっとそこの岩場に隠れまショウ」
コンノ2世が少し慌てた様子で声をかけてくる。
「あれは・・・!」
空に注目したマックスは、咄嗟にアサルトライフルを向けた。人間の倍以上、いやそれどころか大型トラックくらいの大きさだろうか。大きな鳥が飛んでいたのだ。
「アモが笛で存在知らせてる。ダイジョーブ思うけど、ホラ、早く物陰に」
コンノ2世が小声ながらも強い口調で呼びかける。ライフルを構えたまま、マックスは宏樹を後退させた。
「な、なんだありゃあ?」
真っ先に岩場に隠れたものの、その巨漢ぶりが物陰からはみ出ているチェが素っ頓狂な声を出した。
「コンドル。空の王者ネ」
「コンドルって・・・あんな大きいのが?」
「そう。コンドル現れてから、島に近寄る飛行機みんな襲われたネ。ときどきには地表の動物も襲う。デモ、ダイジョーブ。アモの笛、あれば」
コンドルは地表の宏樹たちに気づいているようだが、アモの笛のおかげなのか、それ以上近寄らず飛び去っていった。
「なるほどな。海から近寄るのは昨日のエビの化け物。空から近寄るのはあの大コンドルが襲っていたわけだ」
マックスが宏樹に言った。
「でもさ、オレたち上陸したときはエビラもアイツも出てこなかったよ。どうして・・・」
「今だから言える、宏樹サン、あなた方運がとっても良い」
コンノ2世は宏樹の肩をポンと叩いた。
「あのときは雷、なってた。雷がくると、ボー、気が立って強くなる。それを、海の悪魔もコンドル知ってる。だからおとなしかったネ」
「じゃあ、我々がここに上陸できたのは、本当に運が良かった、ということか」
マックスの言葉に、宏樹は背筋が冷たくなった。もしもあのとき、雷鳴が天に鳴り響いていなかったら・・・・・。