続! キングコング対ゴジラ   作:マイケル社長

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―海外旅行でカッコつけて英語話すと、上手な日本語で返される―

・8月31日 14:03 ミクロネシア連邦 コロニア市

※日本時間より2時間進んでいる

 

 

 

 

 

さてさて、ファロ島探検隊の様子に戻るとして・・・。

 

カンタス航空機でミクロネシア連邦・コロニア市に到着した宏樹たちは、ミクロネシアへの入国を済ませた後、荷物を受け取るとファロ島の案内人となるコンノ三世と落ち合った。

 

シマシマ柄のシャツに短パン、そしてクリーム色の帽子にチョコレート色の肌。宏樹は対面した途端噴き出しそうになった。修じいちゃんが見せてくれた、彼の祖父にあたるコンノという通訳兼案内人とまったく同じ姿をしていたのだ。

 

「ソウですか、桜井さんの親戚サンね」

 

身分を名乗ると、コンノ三世は明るい声で握手してきた。

 

「ワタシのおジイさんとオトーさん、桜井さんにとってもお世話になってまシタ。一緒に探検したの、スゴク楽しかったって話してまシタ」

 

力強く握られた手を、宏樹は握り返した。もちろん初対面なのだが、まるで旧くからの友人に会えたような懐かしさを覚えていた。

 

ひさしぶりに元気な表情を見せた宏樹に、神鍋はホッとした表情を浮かべた。飯島は滅多にこれないミクロネシアの空港撮影に夢中だった。

 

「港まで送りまスネ。ここから20分くらいで着くヨ」

 

そういってポンコツのワゴン車に乗せられ、未舗装の道路を走り出す。南国の暑さは日本のソレとはだいぶ異なり、猛烈な日差しと熱帯の熱い微風が外から流れ込んでくる。車内のエアコンは稼働音こそけたたましいが、冷風はちっとも流れてこない。

 

「こりゃたまんねーなぁ、新潟より暑い」

 

一生懸命手で扇ぎながら、後部座席の神鍋がぼやいた。

 

「ジャワ島やバリ島と一緒だ。熱帯に来た感じでオレはテンション上がるけどね」

 

対照的に飯島はコロニアの様子をiPhoneで撮影しながら、汗を浮かべつつも言った。

 

「コンノ三世、ファロ島もこのくらい暑いの?」

 

助手席に座った宏樹が訊いた。

 

「うーん、そうだと思うんだケド・・・」

 

現地人ということもあるのか、コンノ三世は暑がる様子を見せない。

 

「実はネ、ワタシも小さいころオトーサンに連れられてファロ島へ渡ったきりで、ずっと行ってナイ。電話でも話したけど、ファロ島に近寄ると良くないことばかりオキルね。だからワタシも最初はお断りしたサ」

 

「じゃあ、なんで引き受けてくれたの?」

 

宏樹が訊くと、コンノ三世は宏樹をじっと見つめた。

 

「・・・ホントはね、ファロ島が危険なこともあるけど、オトーサンのコンノ二世、22年前に桜井さんの息子サンと一緒にファロ島行って、帰ってコナイ。だから、ワタシ悲しいから行きたくナイ。でも、日本から桜井さんが来てくれるなら、お手伝いしなサイ。コレ、ワタシのおジイさんのときから一家の掟ネ」

 

宏樹は押し黙った。神鍋と飯島も神妙な顔で黙りこくった。

 

「ダイジョウブ。もしファロ島、行けたら、オトーサン生きていて、また、会えるかもしれない。ワタシ、そう願ってる」

 

しんみりした雰囲気にしてしまったことを打ち消すように、コンノ三世は明るい声色で言った。

 

「・・・話は変わるけど、今回は韓国企業の船でファロ島へ行くんだろう?ミクロネシアには韓国企業の進出がそこまで盛んなの?」

 

今度は飯島が訊いてきた。

 

「ウン。韓国の朝進グループ、知ってル?この辺りの海運事業、全部引き受けてるネ。今回、朝進グループの支社長も一緒ネ。で、その人たちが警備会社も手配してくれたオ」

 

「朝進グループ?そういや、新潟にもビルあったなあ」

 

神鍋が腕組みをした。

 

「朝進グループ、海運業において、台湾のエバーグリーングループに次いでアジア第二位の規模だ。当然日本にも海路が多いし、特に日本海側には陸上輸送分野でも進出してるはずだ」

 

「さすが聡くん、詳しいね」

 

「韓国財閥は、株式投資家にとって魅力的な投資先だからね。ただ気になるのは、てっきり韓国財閥のツテで、韓国系の警備会社が手配されるものと思ってたんだけど・・・オーストラリア籍の警備会社になったのはどういうワケなんだろう?」

 

「ソレはワタシもわかんナイ。デモ、オーストラリアの軍隊や軍事企業、この海域の海賊やギャング取り締まりに来るの、珍しくナイ」

 

そんなものなのかなあ・・・宏樹はそう思ったが、飯島は何やら熟考している様子だ。神鍋は犬のように舌を出し、少しでも涼を取ろうとしている。

 

「コンノ三世、君はオージーイングリッシュしゃべれるか?」

 

飯島が訊いた。

 

「ムリムリ!オージーどころかイングリッシュダメ!ムリ!日本語シカわからナイ」

 

大げさなくらい手を振ると、飯島は黙り込んだ。

 

「でも聡くん、英語話せたろ。問題ないんじゃない?」

 

「鍋ちゃん、話はそう簡単じゃないよ。鍋ちゃんだって気づかないうちに新潟の方言出るだろ。たまにオレたち君が何言ってるかわかんないときあるんだから、英語だって同じだよ。増して国が違うんだから」

 

「そういうモンかなあ」

 

「うまく意思疎通できれば良いんだが・・・」

 

そうこうしているうちに、港へ着いた。その規模は想像していたより大きく、既に客船クラスの船が2隻、停泊している。ハングル文字の下に漢字での記載があり、「朝進」の文字が確認できた。

 

コンノ三世が車を降りて声をかけにいくと、腹の出た中年の冴えない男性が出てきた。何かやりとりすると、ニコニコしながら宏樹たちに寄ってきた。

 

「こんにちは。朝進海運グループの南洋支社長、チェ・ジョンヒといいます。よろしく」

 

そう言って握手を求めてきた。呆気に取られる三人。

 

「ん?みなさん、僕の顔に何かついてますか?」

 

「いえ、日本語でくるとは・・・」

 

神鍋は驚きを隠せなかったが、「そうか、考えてみれば不思議じゃないな。飯島です」と、握手する飯島。

 

「韓国では日本語教育が盛んだから、違和感ない」

 

そう小声でささやいた。

 

「それにしても、でっけぇ船ですね。これで運んでくれるんですか?」

 

神鍋がその様子をiPhoneで撮影しながら訊いた。

 

「そ。こっちと・・・あっちの船も同行します」

 

「・・・え?こんなおっきな船が、2隻?」

 

神鍋は目を丸くした。

 

「おかしい、ここまで大型の探検隊とはきいてませんでしたよ?」

 

飯島が訊いてくる。

 

「それが・・・今朝になって、本国の本社から指示がきたんです。危険多い海域だから、重量のある船で向かえとは、あらかじめ言われてたんですよ?ホラ、うちの国おっきな海難事故起こしてるから。ところが、本社の重役が、もう一隻、万が一の際救助できるから、って・・・。あのね、わたしも南洋支社長なんてエラソーな肩書ついてますけど、実際はここ左遷されてやってきたに過ぎないし、本社の命令に逆立ちできないモンで・・・」

 

チェの弁明に、飯島は不思議そうな顔をしたのち、どこかへ電話をかけた。

 

「伝通の太田さん、会議中で電話に出ない。あまりにも当初の予定とかけ離れている」

 

飯島の疑念はもっともだった。

 

「でもさー、不測の事態に備えてってことだろ?こんだけ態勢整ってれば安心できるがーて」

 

呑気なもので、神鍋は不思議に思わないらしい。

 

「まあ、このまま行ってみようよ。たしかに人数多い方が良いだろうしさ」

 

宏樹が言うと、怪訝な顔をしながらも飯島は頷いた。

 

「ああー、そうそう。警備担当のスタッフ紹介するヨ」

 

チェは大型船に横づけされた、小型の黒い船に案内した。中から大きな黒いアタッシュケースを抱えた男性が三人、降りてきた。

 

「民間軍事企業の・・・えーと、NETか。こちら、代表のマックスさん」

 

そう言ってチェは、金髪ソフトモヒカンの男性を紹介した。少し緊張気味に飯島が「Nice to meet you.We are・・・」と言いかけたところで制するように手を広げた。

 

「デヴィッド・マクシミリアン。通称マックスだ。よろしく」

 

言葉少なめに言うと、宏樹たちを一瞥して荷物を抱え、乗船しようとする。

 

「おいおい・・・日本語じゃねえか」

 

神鍋はあんぐり口を開ける。

 

「今回、言葉の問題はなさそうだね」

 

宏樹が飯島に言う。 

 

「・・・驚きました、日本語が堪能ですね」

 

飯島がマックスに言った。

 

「昔、オーストラリア陸軍の特殊部隊にいてな。世界の主要言語はある程度話せるよう訓練した。無論、ファロ島の言葉はわからんがな」

 

マックスは宏樹たちにさして興味がないのか、目も合わせず荷物を持って乗船用のタラップを進む。同行する彼の部下は2人。タイ系オーストラリア人のブンチャヤと、アボリジニ出身のボロロと紹介した。彼らは日本語が話せないらしく、雇用主に倣って愛想のない顔で進んでいく。

 

「な、なんか強そうな人たちだね」

 

気後れ気味に、宏樹は言った。

 

「あの筋肉・・・無駄がない。さすが軍人のトレーニング」

 

そう目を輝かせる神鍋に「そこかよ」と思わずつっこむ宏樹。

 

そのまま宏樹たちが乗船すると、十分程度で出航した。元々は貨物船らしく、客船に比べれば設備は粗末かもしれないが、「新日本海フェリーの内装に似ているな」などと妙なところに感心している飯島。

 

ここからが長く、ファロ島までは海路で20時間程度かかる。

 

「さあ、ここから先は何が起きるか・・・」

 

神鍋は期待半分、不安半分といった様子だ。

 

「これまでの遭難事故を調べたんだが、これほど大きな船の沈没はないらしい。そのうえ当初の計画とは異なるが、同程度の船2隻。安全面でいえば、たしかに過去最大で多少のアクシデントにも耐えられるかもしれない。しかし、ここまで想定して費用を算出してきたのか・・・」

 

ブツブツと語る飯島。

 

「それにしても、なんだか落ち着いたら眠くなってきたな。筋トレしようって思ったけど、まずはひと眠りでも・・・」

 

大きくあくびをする神鍋だったが、飯島が慌てた様子でそれを制してきた。

 

「いいや鍋ちゃん、寝る前の有酸素運動してきた方が良い睡眠得られるらしいよ。筋トレしてきな」

 

「そうかあ?かえって意識覚醒するんじゃないかぁ??」

 

「いいから。そっちのデッキ前に広いスペースあったし、筋トレにはもってこいじゃないか。移動時間長かったんだし、やってきなよ」

 

どうにか神鍋を筋トレに追いやると、顔にはてなマークを浮かべている宏樹に「いまのうちだヒロキン、先に眠ろう」と声をかけた。

 

「なんでさ?眠たいんなら寝させてあげれば・・・」

 

「またあのいびきを聞きたいか?」

 

「・・・」

 

宏樹は黙ってブランケットを取り、固い床へ横になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




追加の主要登場人物


・チェ・ジョンヒ

年齢:55歳

ICA:ソン・ガンホ

朝進グループ海運部 南洋支社長。
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