自分が小説の中のキャラクターになったことに驚いた。
いやどちらかと言うと前世?どっちが本体と言えるのか分からない。記憶はこっちの世界の方が多い。記憶が人格を作るのであれば、今の人格を作ってるのはこちらの世界の記憶だろう。
......頭がゴチャゴチャしてる時に邪魔が入る。
誰かが近づいてくる。気配というものが分かる。戦闘慣れしてる体さばき、この世界じゃそこそこ強い。分かるのはこの程度だった。
ドアまで残り5歩、4歩、3歩、2歩、1歩
入ってくる。
「......ノックも無しか?」
「相変わらず口が悪いなクソガキ。」
入って来たのは土の神官長だった。
この世界の人間の中では上位に位置する実力者。元漆黒聖典の一員である。
俺と比べれば大した事ない雑魚だ。だが、経験と知識を持っていることは認めている。
いつものように生意気な口をきく。
「今さっき起きた所だ。俺が体調を崩したのがそんなに面白いか?」
俺って本当に口悪いな。そして舌がよくまわる。
「起きているなら構わん。神人が体調を崩すという事に慌てふためいているのだ。」
神官長は顔を顰めながら言う。
「人間は弱い。俺がいなければ人間なんてすぐ滅びる。」
いつものように憎まれ口を叩くが、
この言葉を聞いて神官長は鼻で笑う。
「いつまでも調子に乗るなよクソガキ。元々予定していたが、そうだな。........3日後だな。3日後にはお前より強いやつに会わせてやる。」
動揺が顔に出ないように取り繕う。
「....俺より強いやつがいるのか。竜王でも連れてくるか?」
まだ神官長は笑っている。俺が動揺してるのがバレてるのかもしれない。腹立つが対人交渉の経験はむこうの方が上だ。
「いや、この国にいる。しかも竜王と戦えるくらいの強さはある。」
「はっ?何だそりゃ見たことないぞ。」
「お前が本調子になるまで三日空けてやるんだ。楽しみにしておけ。」
そして神官長は出て行こうとしたが、振り返って付け加えた。
「言ってなかったが、これは最高機密だからな。神官長以外に話すなよ。」
神官長は今度こそ出て行った。
俺の強がりが続いたのはここまでだった。
神官長が出ていくまでは生意気そうな顔をしていた。
だが、内心はビビってる。
俺がこの国の中で最強だと思っていた。昨日までは。
いや正確には前世の記憶を戻すまでは。
記憶を完璧に引き継いだわけではないが、思い当たることがある。
おそらく、いや十中八九あいつだろう。
嫌だな。馬の小便で顔を洗うのは。