ウマチューバーメイショウドトウ   作:ブリンカー

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ロジカル

 メイショウドトウと会話を終え、ため息をつきながらベッドに寝転がるエアシャカール。現役を終え、祖国に帰って行った親しい友人のファインモーション。エアシャカールにとって太陽とでも言うべき存在を失い、仕事もせず、毎日だらだらと過ごす日々。幸い、現役中に稼いだ賞金がたんまりあるので、お金には困っていないが、それでもこのまま堕落した日々を過ごしていいのか自分でも悩んでいた時にきた1本の電話。その見た目や言動で避けられがちなエアシャカールにとって頼ってくれる人がいるというのは嬉しいものだった。

 

 めんどくさいがやることのない虚無の日々が変わるかもしれない。それに頼られるというのも悪くはない。元々お節介やきな一面をもつエアシャカールは学生時代の同室のよしみでもあるドジな先輩のためにひと肌ぬぐことにした。

 

 

 

 「ドトウ1人にやらせるとどうせとんでもねェことになるしな・・」

 

 

 

 そう呟くとベッドから起き上がり、パソコンを立ち上げ、動画に関する情報を集める。元々データを収集するのは得意なため、ささっと必要な情報を集めることができた。メイショウドトウに再び電話をかけ、何か自己紹介的な動画を携帯でとって送るよう指示を出す。――わかりましたぁ~。という間延びした返事が学生時代を思い出させる。部屋の掃除をするのに何故か散らかったり、忘れ物を取りにきたと思ったらまた忘れ物をするというドジの化身ともいうべきメイショウドトウ。

 

 

 

 「なつかしいなァおい」

 

 

 

 独り言が思わずもれる。メイショウドトウから動画が送られてくる間、他のウマチューバーの動画をみて、参考にできるものがないか確認する。まずは無難にコツコツとこなしていき、認知度を広めるのが先だ。それに自分の編集能力も素人同然なのだから凝った編集はできない。

 

 

 (どうせやるなら勝ちにいかなきゃおもしろくねェ)

 

 

 送られてきたドトウの動画を自分なりに編集して最終確認をするエアシャカール。

 

 

 メイショウドトウちゃんねる

 

 

 

 あとワンクリックで自分が携わった作品がこの世界に解き放たれる。エアシャカールはたじろいだ。だがメイショウドトウは既にやる気になっている以上ここで引くのも彼女に申し訳ない。

 

 

 (やってやンよ)

 

 

 投稿後してしばらく待つ。すると、たちまち再生数が増えていく動画。なんども更新ボタンを押し、増え続ける再生数を見てエアシャカールはにやけが止まらなくなった。画面に映っているのは自分ではない。だがそれでも嬉しさや達成感に似た何かを感じた。

 

 

 (つかドトウのやつ機材を自分で用意するって言ってたな・・アイツにそれ関係の知識あンのか?)

 

 

 いや、ない。自分の中で確信めいた答えを導くと、即座に機材関係をネットで調べる。1番いい物を。というわけにはいかない。コスパに優れた優秀な物があればそれにこしたことはない。メイショウドトウ自身の予算の兼ね合いも考えて、グレード別の物を候補の中から適当に見繕うと、メイショウドトウにメールを送り、複数の候補から後は自分で選ぶように言っておいた。何もわからない状態でイチから調べるより、あらかじめ選ばれたものの中からの方がメイショウドトウも選びやすいだろう。

 

 

 (問題は内容だな)

 

 

 編集するのは別に構わない。だが問題はメイショウドトウから送られてくる動画の内容だ。メイショウドトウにポンポンわく企画力があるとは到底思えない。最初の方は周りのやつがやっているありきたりなことでいいだろうが、問題はその後だ。ネタを出し切った後のことも考えて、エアシャカールはその日遅くまでウマチューブの動画を漁りまくった。

 

 

 

 

 

 「すっ、すごいですぅ~!!こんなに沢山の方が見てくださってくれるなんて私ぃ・・感激です~」

 

 

 

 休日、機材を購入し、自宅にエアシャカールを招き入れ、久々に会う旧友との会話を楽しみながら動画の話題に移る2人。メイショウドトウは自分の思った以上に再生数があったことに感激していた。

 

 

 

 「つかお前確認してなかッたのかよ・・・」

 

 

 

 「すみませえぇぇん」

 

 

 

 「いや怒ってねェから。思ったより人気あンだなドトウ」

 

 

 

 「こんな私をみんながまだ覚えてくれて私は本当に幸せ者ですぅ」

 

 

 

 投稿した動画には様々なコメントで溢れていた。中にはごく少数の否定的なコメントもあったが、大多数は応援しているなどの温かいコメントだらけだ。

 

 

 

 「いいか?こういう否定的なコメントもあるだろうが気にすんじゃねェ。こういうコメントの内容はだいたい中身がないやつばッかりだ。ンなもんロジカルじゃねェ。大事なのはお前を応援してくれるファンだ。これを大事に囲っていく」

 

 

 

 「とっ、とりあえず頑張りますぅ~・・」

 

 

 

 「そういえばそういうやつだッたよお前は・・」

 

 

 

 やれやれとした表情でメイショウドトウをみるエアシャカール。――あわわわと慌てふためきながら謝るメイショウドトウを諫め、昨日自分が考えていたことを話す。元々勢いで始めたこの企画。いずれこのままではネタが尽きるだろうと思ったメイショウドトウだったが、かといってどうすればいいのかわからない。再び頭をぐるぐるとまわし悩み始めた。

 

 

 

 「まァいまのとこはなンとかなるだろ。とりあえず今考えている動画の内容とかはないのか?」

 

 

 

 「えっとぉ・・特には・・」

 

 

 

 「前途多難だなこりャ」

 

 

 

 「はわわわわ。こんなだめな私ですみ――あっ、そういえばこんなものがありましたぁ!」

 

 

 

 そう言いながら収納部屋から何かを取り出してきたメイショウドトウ。手には長方形の箱を持っている。

 

 

 

 「なんだそれ?」

 

 

 

 「ジェンガですぅ。トレセン学園事務員の忘年会のビンゴ大会の景品で当たったんですよ~」

 

 

 

 「それ需要あンのか?」

 

 

 

 「ですよね・・・」

 

 

 

 そう言いながらわかってましたと言わんばかりに項垂れるメイショウドトウ。まぁ何もないよりかはましかもしれない。エアシャカールは取り出すように指示をだすと機材の準備をする。メイショウドトウはパァっと表情がたちまち明るくなり、ジェンガを箱からだして綺麗にそろえた。

 

 

 

 「じゃあ早速やっていきましょう。先行はどっちにしますかぁ?」

 

 

 

 「いや、オレはやんねェから」

 

 

 

 「えっ?」

 

 

 

 こうしてメイショウドトウの1人でジェンガを最後まで抜き取って積み重ねることができるかチャレンジが始まった。 

 

 

 

 

 

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