魔術師になりました(泣)   作:アーロニーロ

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 最悪の世代って……いいよね……。




俺の名は……

 嗚呼、神様。私はあなたに何かしましたか?

 

 ギャア、ギャアとジュラ○ックパークでしか聞いたことのないような音を聞きながら俺はふとそんなことを考えていた。

 

 こうなったことを説明するには、そうだねぇ、時は大体、18年前に遡る。

 

 

「なぁ、お前さぁ」

 

「ん、何?」

 

「ワンピで好きなキャラ誰?」

 

 夕暮れの帰り際。男二人で帰るというむさ苦しくも、どこか侘しい光景を作り上げる二人の間に突如として沸いた質問。そんな質問に対して俺は、

 

「……いや、そんな顔すんなよ」

 

「いや、だって、お前。大学生にもなってする会話でもねぇだろ、おい」

 

 残念なものを見る目で俺は友人を見た後にその場にしゃがみ込みながら深いため息をつきながらそう言った。

 

「しゃあねぇだろ!話す内容特にねぇんだから!」

 

「今日出されたレポート課題っていう話題があんだろうが!何で、ワンピの好きなキャラ聞いてくんだ!中坊か俺たちは!?」

 

 明らかに(人によって感覚は異なるだろうが)大学生らしからぬ話題の振り方に十年来の付き合いの友人に対して割とオーバーに絶叫する俺に対して、流石に自身も思うところがあったのか友人も反論をすることはなかった。が、しかし。

 

「ま、まあ、いいじゃねぇかよぉ、なぁ?たまには心を若返えらせてこういう話題で盛り上がんのもさぁ」

 

「よかねぇよ。俺たちもう20超えたんだぞ。つーか、俺ワンピース見ねぇし」

 

 立ち上がり、歩みを再開しながら俺がそう呟くと足音が一つ分減ったことに気がついた。はて、と怪訝に思い疑問に思い後ろを振り返る。そこには未開の地から現れた蛮族でも出くわしたかのような顔をした友人がそこにはいた。

 

「いや、待て。人間誰しもワンピースを見てるとは限らないだろ?」

 

「いやいやいや!日本の誇るオタク文化における最上位に位置付けられてる作品だぞ!?逆にお前何見てんだよ!?」

 

「え?フェアリーテイルと呪術廻戦、BLEACHに、あとトリコ」

 

「何でトリコ見ててワンピース見てねぇんだよ!?何回かアニメでコラボしてんだろあの作品!?つーか、読んでる作品の内4分の3はジャンプ作品じゃあねぇか!」

 

「基本的にアニメは見ねぇんだよ」

 

 そう言うと友人は信じられねぇ、とでも言いたげな顔をしながらこちらを見てくる。流石にうざったく感じ始めた俺はとりあえずこの話を終わりにしようとした。が、

 

「とにかく。知らねぇ以上は好きも嫌いもないからこの話はおしまい」

 

「だったら知れキャラ達を。ホラ、画像を見せるから。まずは女性キャラからな」

 

 やたらと食い下がる友人に俺は渋々と言った様子で見せられた画像に目を通す。そこに広がる多種多様なキャクター達。ワンピースって作画が悪くなかったっけ?とか思いながら目を通していく。が、

 

「悪い。多すぎてよくわからん。もう少し絞れないか?」

 

 結果、答えは出なかった。魅力的なキャラクターで溢れていたがそこから絞り出すにはあまりにもキャラが多かった。

 

「しゃあねぇなぁ。じゃあ、最悪の世代から選べ」

 

「最悪の世代?」

 

「おう。主人公の同期で強い奴が何人かいんのよ。それを作中では最悪の世代って言うのよ。はいどーぞ」

 

 そう言って再度こちらにスマホを向けてくる。それに目を通すと今度は十人程度になっていた。意外と多いな。と思いながら見ていく。すると、あるキャラクターに目が入った。

 

「こいつ」

 

「ん?」

 

「この男。いいね」

 

 そう言って俺が指差した男を見ると友人は微妙そうな顔をした。

 

「え?何?そんなにやばいキャラなの?こいつ」

 

「あー、いや、こいつ。やばいってより微妙……」

 

「はぁ?」

 

「まあ、わかんなぁよな。簡単に説明するとだな」

 

 そう言うと友人はいくつかの画像を交えてそのキャラについて語り始めた。俺は一通り聞いてみた結果、ある答えに行き着いた。それは、

 

「ようは噛ませ犬的なキャラなの?」

 

「まあ、そんな感じ」

 

「へー」

 

 この顔でかませ犬かぁー。とか、思いながら改めてキャラを見てみる。先程聞いた悪魔の実の説明も相まってやはり好みだと思いながら、前を向く。

 

「今度何巻か貸してやるよ」

 

「ん。ありがとさん。それじゃあ、又明日」

 

「またねー」

 

 そう言うと互いに分かれた道と別の方へ向かう。家に帰ってワンピについて調べてみるか。と軽く思いながら前を向く。数分ほど歩いて青信号になった横断歩道を渡ろうとした瞬間、

 

 体に今まで味わったことのない衝撃が走り、とてつもない浮遊感に襲われた。どうゆう訳か景色が後ろに流れていく。はて、どういうことだ?そう思っていると今度は頭に強い衝撃が走った。

 

 何が起きた。そう思い自身の状況を確認しようとする。しかし、体がピクリとも動かない。しかもどういう訳か体の末端部分から少しずつ冷えていき、それに比例するように頭から温かいなにかがこぼれていく。歪んでいく思考に反響するように沢山の声が聞こえる。しかし、それも一瞬のこと声がどろどろと溶けていく、大事な何かがこぼれていく。意識が体が何かに引き摺り込まれるように動かなくなる。意識が完全に飲まれ気がつくと俺は……

 

「オギャァァァ!オギャァァァ!!」

 

 体が縮んで赤ん坊になっていた!

 

 

 はい、回想終了。あの後、いきなりの展開で思考が追いつかず慌てふためくこともあって大変だった。

 落ち着いて考えてみると多分俺ってあの時車に撥ねられたんだろうな。で、そのまま……。

 赤子時代にそれを理解した瞬間、赤ん坊の体もあってか年甲斐もなくギャン泣きしたね。

 

 あれから15年たったけどなんでこうなったかは未だにわからない。とりあえずわかったのは車という道具は異世界に行くための特別な秘密道具であるということだけだった。

 でもまぁ、0歳から1歳まではマジで地獄だったわ。ただただゆりかごの中で20時間以上おもちゃのケツを眺め続けるだけだったんだから。しかも、飯も赤子体を考慮してからめちゃくちゃ味が薄かったし。

 特にキツかったのはおしめ変えてもらう時だった。意識は大学生の上、ご生憎と赤ちゃんプレイに興奮できないたちだったから。下が緩いからか勝手に出てくるため屈辱というか、羞恥というか情緒がぐちゃぐちゃになりそうなことがあって酷かったのだ。

 

 そして、そんな酷い状況は今なお続いている。理由は単純、

 

「我が愚息よ!本日をもってお前を我が一族から追放し!島流しの刑に処すものとする!」

 

 今世における我が父親に島流しを通告されたからだ。

 

 え?なんでこうなったのかって?理由は俺の生まれ育った島にある。我が今世における生まれ故郷、『フォーチュンテリング島』は占いを商いにしている一族が率いる島なのである。当然占いだけが全てではないが、商いの大半は占いなどのオカルトじみたものだった。

 

 当然、前世では理系であった俺は聞いた当初は鼻で笑った。んな、非科学的なと。しかし、その嘲りは的中率が9割越えという事実を知って消え失せた。探し物から何かしらやらかした犯人の捜索に至るまで全て占いで行い、その悉くを的中させていくのを見て冷や汗が垂れたほどだった。

 

 故に、あの島の連中の大半の考えが『占いこそ至高!それ以外は全てゴミ!』というものにもなっていた。実際、占いを専業にせずに交易などを仕事にしていたオッチャンがメッチャ白い目で見らてたのを知ってる。ああはなりたくないと思えた俺はすぐに占いの勉強を始めた。幸運にも親父が島の長的な立ち位置にあったため、漁れる資料は多かった。

 

 それも相まって俺は占い師としての頭角をメキメキと露わにしていった。周りから褒められ、やれ「神童だ!」やら「将来有望だな!」などと褒められたものだから有頂天になっていった。全てが順調に思えた、というか順調だった。

 

 ――――弟が、俺が島に災いを起こすという予言をするまでは。

 

 初めそれを聞いた俺は固まって、すぐさま立ち直り否定した。周りの連中も何かの間違いでは?と聞いていた。次に親父とその取り巻きが同じく占った。結果は弟と同じ。さてここで問題です。

 

 問:占いが全ての島で災いを起こすものがいるという結果が出たらどうなるでしょーか?

 

 答え:島総出で災いの元を断つ。

 

 ええ、それはもうすぐさま取り押さえられましたとも。周りはすぐには信じなかったが、占って結果を出したのは新米の弟だけでなく島の長である親父も同じともなれば信憑性は増すというものだ。

 

 初めはここが何処(どんな世界)なのか知っていたため鍛えてた俺はある程度抵抗はできた。それでも多勢に無勢。挙句、ゆいいつのりょうしんである母を人質に取られた俺はあえなく撃沈。適度にボコられた後に牢屋にぶち込まれましたとも。

 

 因みに占いの結果は親父と弟のでっち上げ。理由は利害の一致。親父は自身の身分を脅かす俺を疎ましく思い、弟は純粋な嫉妬かららしい。証言はボコボコにされて血まみれの俺に対して弟がウキウキしながら話してくれましたよ、クソッタレ。

 

 そして現在、俺は両手両足を縛られた状態で小舟に乗せられドナドナされている。漕いでるのは我らが弟様。理由はせめて最後に兄と話したいからだそうだ。みんなが弟を褒め称え、弟は恍惚の笑みを浮かべていたのを見て「親父に似たなぁ……」と嫌でも思わされたよ……。船に揺られ、休みも込みで丸一日。ようやく到着した島に俺は転がされた。

 

「ぐえッ」

 

 みっともない声をあげて転がる俺を見て弟は呵呵大笑しながら俺を蹴り飛ばしたり踏みつけ始めた。その際、「目障りだった」や「ざまぁない」や「やっとあんたを見下せる」だのと酷い言いようだった。ひとしきり蹴り終えて満足したのか弟は後ろを振り返る。

 

 その隙をつき俺は何故か緩く締められていた(・・・・・・・・・・・・)縄を抜けて弟の首に片腕を回してもう一方の片腕の肘の裏あたりを掴み、もう一方の手で相手の後頭部を押してそのまま絞める。いきなりの出来事に暴れていた弟だが、体格も筋力も俺に負けてるため叶うはずもなく意識はすぐに落ちていった。

 

 それを見届けると俺は弟の両手両足を縛った。そして、弟を船に乗せ、指示通りに(・・・・・)船底の出っ張り部分を壊して中のものを取り出す。中には俺の足から腰にかけての長さより長い大きな剣と大きめの手帳とペン、そして水筒と説明の書かれた紙切れがあった。その紙切れに目を通すと今度こそ俺は弟を乗せた船を海に送った。

 

 

 はい、ここで冒頭に戻る。俺の不幸な人生は今に至るというわけだ。いやー、手厳しいね。「ハハッ」と乾いた声が口から漏らしながらマングローブで更生された島に足を運んだ。

 

 ああ、そう言えば自己紹介がまだだったね。

 

 今世における俺の名前はバジル・ホーキンス。後の、最悪の世代に数えられる人物……だったはず。

 

 神様、「いいキャラだね!」は「転生したい」って意味ではないんですよ?




 とりあえず1話目です。
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