魔術師になりました(泣)   作:アーロニーロ

3 / 4

すみません長引きました。


絶体絶命

 あれから、2日ほどかけてできるだけ遠くに移動した。今更ながら俺がアホにしかお前なかった。獣が少ない理由なんて考えればわかるくらい単純だろうに。圧倒的な捕食者から逃げるため。それだけだろう。ていうか、それ以上に何でガララワニがいんだよ!ワンピースの世界だろ!?似た生き物!?にしても似すぎだろ!いちトリコファンとして、怖かったけど感動したわ!!いやはや、すごかったなぁー。あはは………。

 

「う」 

 

 ああ、本当。

 

「ううううっ」

 

 いや、マジで。

 

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」

 

 何一つとて笑えねぇんだよ。

 

 ああ、クソ。悔しい、情けない、みっともない。逃げることもできず、ただただデクみたいに突っ立っていて何も出来やしなかったじゃないか。相手の意識がされてしたことと言えば、襲うのではなくここまでみっともなく逃げることだけだった。弁明のしようがないほどに惨敗だった。いや、敵とすら見なされてなかった以上、敗北すらできなかったじゃないか。

 

 別に俺は誇り高くあれとか、敵に背を向けるなとかそういう暑苦しい思考とは前世でも今世でも無縁の存在だった。実際、俺自身逃げるのは恥ではないと思ってるし、命大事にをスタンスにしている以上、やばければ敵に背を向けるよ。

 

 しかし、それでもあれはない(・・・・・)

 

 武器が無かったのなら納得できた。戦い方を知らないのなら納得できた。しかし、俺はそのどれも出来なかったのだ。世界最強になりたい訳じゃない。ハーレム築いて女に溺れたいわけじゃない。そうだ、俺は。

 

 自分に対して胸張って生きれるような生き方をしたいんだ。

 

 これを譲ってしまったら、もう2度と自分の足で歩けないような気がする。自分らしくもなく、そして自分を殺して生きてるなんて死んでるも同然だ。

 

 強くなろう。いや、強くなってやるこれ以上俺を殺さないためにも。

 

 ひとしきり泣いた俺は大きく顔を両手で挟み込むように叩く。少しジンジンしたが立ち上がる。

 

「よし、ウジウジすんのはお終いだ。切り替えて行くぞ」

 

 未だに胸の内を悔しさが燻るが今は過去を振り返らずに未来を見ようと思い、ティルフィングを持ち直す。腰につけていた水筒の中身を飲み干して歩みを進めようとして、ある事実に気がつく。

 

「あれ?」

 

 右を見る。

 

「あれ?」

 

 左を見る。

 

「えーっと……」

 

 そして最後に来た方向を眺める。360度余すことなく観察し見えるのは、

 

 傷ひとつないマングローブ林(・・・・・・・・・・・・・)だった。

 

 額から変な汗が流れ出る。いや待て、まさかそんな。頭の中によぎるのはおおよそ考えられる限り最悪の想定。だがその予想はほぼ間違いがなく……。

 

「道に、迷った……のか?」

 

 バジル・ホーキンス。マングローブ林にて遭難。

 

 

 ○島流し×月○日、晴れ

 

 全くもって洒落になってないことになった。ついさっき理解したがこの前後左右、どこを見ても同じ様な景色しかないマングローブ林で完全に迷子になった。じゃあ、元に戻ればいいって話だろうけど、あのデカブツから逃げるのに必死で入り組んだ道をジグザグと移動しまくったせいでどこから来たのかもわかんねぇ。地図までどこにもねぇし……。

 しかも、さっき水筒にあった水一気飲みしたからもう水がねぇんだよ。いや、二日間ぶっ通しで動き回ったせいで体が水分を求めていたのもあるんだろうけどさぁ。何であんなことしたんだろうか?俺は。馬鹿なのだろうか?

 しかも、ここ陸地じゃなくてマングローブ林だから蛙みたいな動物は居ても普段見かけるデカいサーベルタイガーみたいな奴の生息域じゃないから血で水分を補給することができない。

 

 え?これ本当にヤバくないか?

 

 ○島流し×月●日、晴れ

 

 やばい、本当にやばい。同じところぐるぐると回ってる様にしか感じられない。ティルフィングで傷をつけまってるからここが通った場所であることはわかる。それでも似た様な光景を一日中ぶっ通しで見続けてると吐き気がしてくる。目が回りそうだ。

 食料もやばい。ガザミっぽい蟹やら魚やらは沢山いるしここがとあのワニの居住区ではないのはわかる。だけど、足場が沼地みたいにドロドロなためか火がつけられないため調理ができない。蟹は論外として魚に関しては川魚ではない以上、ギリギリ生でもいけるが労力と結果が全く釣り合わない。普通の足場なら問題ないけども泥というか足場がぬかるんでて動くのにもやたらと力がいるため、ゴリゴリと体力を持ってかれる。

 あと、寝場所がない。地面で寝ると夜間になると潮が満ちて窒息するため木の上で寝ているのだが、寝ずらい上に朝起きたら身体バッキバキになってて痛い。これは本格的に身の危険を感じる。

 

 ○島流し×月◆日、晴れ

 

 朝日に殺意を覚える今日この頃。雲一つないため太陽が直に俺に襲いかかるため水分の消費量がまぁえぐい。唯一の救いはマングローブ林であるが故に木影が多くて直射日光を浴びることが少ないことだろうか。飯に関しては問題なく、夜間に魚やらが大量にいたため捕まえるのに慣れてきたのも相まって腹は満ちている。

 未だにめまいの一つもなく、大量の汗と喉の渇きがあるうちに早く水場を見つけたい。そして、服をそろそろ洗いたい。

 この際動物の血で構わないから喉を潤したい。

 

 

 ○島流し×月A日、晴れ

 

 またしても晴れである。雲一つない晴天がじわじわと俺の体力を蝕んでいく。唇が乾燥してし過ぎたせいか切れて血が出てきた。満ち潮になった時のマングローブ林に広がる海水が天の救いに見えて来る。実際、今日無意識に飲もうとしてたし。

 でも、だめだ。海水を飲んだら寿命を縮めることくらい前世の俺ですら理解できてる。ついさっき、蛇を見つけた。前世における錦蛇より少し小さい程度だったが仕留めて喰わせてもらった。当然生で。血を啜って水分の代わりにした。途中で何度も吐きそうになったが気合いで堪えた。足りたか足りないかで言えば圧倒的に足りなかった、プラスマイナスで言えば圧倒的にマイナスだった。でも、満たされたという実感が心地よかった。

 

 ○島流し×月B日、曇り

 

 今回は曇っていたこともあり、普段よりも涼しく感じられて基本的に楽に行動できた。それでも昨日みたいに血をもった生き物に出くわすことはなく、少しだけ体調が悪化した。具体的には頭痛、倦怠感がひどく、立ちくらみが起きて飯を食べようにも食欲がなかった。それでも何も食べないのはまずいと思い、必死になって無理矢理口の中に詰め込んだ。日記があってよかった。同じところをぐるぐると回ってるせいか何か書いてないと少し気が狂いそうだった。

 

 ○島流し×月C日、晴れ

 

 つかれた。ティルフィングを杖代わりにしなければならないほど疲弊してきた。流石にそろそろ水場を見つけたい。

 

 ○島流し×月D日、晴れ

 

 1日  に数回ほ  ど吐瀉  物を撒  き散らし  た。口に  含ん だも のが全  然 喉をを通 らい  手が  痺れて  きた。め が 回っ  てき た。

 

 

 ○し なが に ×月E日

 

 

 ○しな が し × がつ えふ 日

 

 

 ○ し な が ×が じ に 

 

 

 ○島流し×月H日

 

 危なかった……。

 

 

 拝啓、お母様。あなたは今いかがお過ごしですか?ティルフィングを筆頭にあなたに渡された様々な道具は私の生活の大変役に立っております。え?今の私はどうしてますかって?はい!それはもう!

 

「ぅ……ぁ ぁ ぁ」

 

 絶賛死にかけておりまする(白目)。いや、やばい。変な回想が俺の頭の中をよぎったよ?今。

 

 ハハハハ、ヤベェよ、ヤベェよ。どうしよう体に力が全く入らないんだけど。一歩一歩歩く事すらティルフィングがなければ出来やしないんだけど。意識がブヘッブレで視界がひん曲がって見えるんだけど。そのくせに胸の鼓動や血流の流れる音が鮮明に聞こえてさらに頭が痛くなってるよ。

 えっと、重度の脱水症状って確か血圧低下に脱力、意識障害や頻脈だったっけ?

 

 ……あれ?全部該当してね?

 

 そう考えた瞬間、とうとうその時は訪れた。

 

「うぁ」

 

 ティルフィングが手からすり抜ける様に零れ落ち、自重を支えなれなくなった俺はその場に倒れ伏した。必死に立ちあがろうとするも力が入ることなく崩れ落ちた。そして悟る。ああ、俺はここまでなのだ、と。今までの記憶が走馬灯の様に過ぎていく。しかしそれでも、

 

「いや、だ」

 

 諦められなかった。どこにもあるはずのない力をもって這いつくばりながら湿地を進んでいく。泥に塗れ、汚れていく。情けなくて泣きそうだ。でも、

 

「まだ、何も」

 

 納得できない。だって俺は

 

「まだ、何も、なし得ていないんだ」

 

 蚊の鳴くような声でそう呟きながら這いずっていく。1分か、5分か、はたまた、10秒にも満たないのほどか。俺は謎の木にぶつかった。

 

 マングローブ林かと思い目線だけでも上を向ける。しかし、マングローブではなかった。なんだと思いさらに目線を上に向ける。そこには果実がなっていた。それは表面が渦巻き、藁苞の様な形をしていた。それは少しだけ禍々しいように感じられた。

 

 しかし、そんなこと気にもしなかった。気がつけば俺は木に縋りつき果物に手を伸ばした。木になっていた果物は死にかけの俺ですら簡単にもぎ取ることができた。枯れ果てたはずの水分が唾液となって溢れ出る。震えた手で俺はその果物に必死になってかじりついた。

 

 この日、俺は一生お世話になる能力を手に入れた。





 次回、能力確認編。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。