物心ついた時から、俺は一人が好きだった。
友達といるのも嫌いではなかったが、どうにもずっと
一緒にいると気を使って気疲れしてしまう。
そういうタイプの人間だった。
それ以外は普通の奴で、普通に生まれて、普通に学校
に通って、普通に部活をして、普通に就職して、普通に
老いぼれていった。それなりに仲のいい友人もいた。
ただ、結婚はしなかった。
部活は剣道を選んだ。一人で何も考えず
ただ剣を振るのが性に合った。
高校の時に全国優勝したことが俺の中で
何よりの自慢だった。
何故か俺はそこそこ永く生きた。
命の最後を悟ったとき、誰も看取ってくれないのを
ほんの少し寂しく思った。
何もない寂れた部屋の隅で
俺は静かに目を閉じた。
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腹に何かが乗っている感覚で目が覚めた。
目を開くと、紅葉の隙間から見事な秋晴れの空が
顔を覗かせていた。
(はて、俺は死んだはずでは?)
確かに俺は死んだはずだった。あの寂れた部屋の隅で
命の灯が消えたはずだったのだ。
(…もう考えるのを辞めてもう一度眠ってしまおうか…)
などと考えていると、腹の上からチリンと鈴の音が聞こえた。
そこには鈴のついた刀が置いてあった。
(何でこれがこんな所に…)
この刀は俺の家の家宝のようなものだ。
ただの無銘刀だが、俺はこいつを鈴刀と呼んでいる。
「よいしょっ…おぉ!。」
本来、齢百を超えている俺の体は起き上がるのに
相当の苦労をするはずなのだが
羽のように軽く起き上がることができた。
「おぉ!…おぉっ!!」
俺の体はあのシワシワの骨の脆い体ではなく、
若かりし頃の健康的な体に戻っていた。
「…どういう原理だ…」
少し考えてみるが考えはまとまらず、
「…とりあえず喉乾いた」
そう言って男は川のせせらぎの音に向かい歩き出した。
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思いのほか近くに川があった
水を飲もうと水面に近づき…ある異変に気付いた。
「角…?」
紛れもなく角だった。自分の頭から二本の白い角が生えている。
中々に壮観だった
しばらく唖然としているとガサッと茂みが揺れる音がした
そちらを振り向いてみると、
赤と青を基調とした奇抜な格好の女が
驚きと恐怖を顔に貼り付けてこちらを見ていた
女が口を開く
「お…鬼!?何故こんなところに…」
そう呟いてその女は走って逃げていった。
…どうやら俺の二度目の人生はヒトとしては生きれないらしい。
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