あれからしばらく歩いていた俺は、かつてない悪寒と激痛に足を止めた。
(…これは不味い…!)
転がるようにして茂みに体を隠した俺は、辺りを見渡し、誰もいないのを確認すると、おもむろにズボンとパンツを降ろす。
「ふぅ…」
一通り排泄行動を済ませた俺は、安堵のため息を吐く。
…やはり急な腹痛というものはいつの時代も時と場所を選ばないものだ。
などと適当な事を考えて現実から逃げるのをやめ、己の肛門に向き合う事にしよう。
「紙、ねえなぁ…」
ハンカチすら持ってねえよ…と独り言ちながらどうするかを考え、一つの結論に辿り着いた。
「あれをするしかないか…」
そう言ってずり下げていたパンツを脱ぐと、感情を殺してそれで尻を拭いていた。
その時だった
パキッ…パキッ…と木の枝を踏む足音が聞こえて来る。それもこちらに近づいてくるもので、
不味い…そう思った俺は尻が焼けるんじゃないかという早さで拭くが…
(間に合わん…!!)
こんなところを見られたら、署までご同行を願われた後に、銃刀法違反&公然わいせつ罪のダブルパンチで、早くも人生ノックアウトである。
だが世界は非情である。あと一歩のところで真後ろの茂みに足音が到達する。
(終わった…)
そう思いながらゆっくりと振り返る。不思議と恐怖感は無かった。そこに立っていたのは…
ギンギンにキマった目、鋭すぎる爪、臭そうな体毛に覆われた一般的に熊と呼ばれるには大きすぎる熊だった。
「何だ熊か…」
そう言って俺は本日何度目かの安堵のため息をつく。やれやれと言った風に立ち上がり、脱ぎ捨てていたズボンと刀を手に取ると、全力で走り出した。
「無理無理無理!!死ぬ!、死ぬう!!!」
などと叫びながら走るものの、熊の走行速度は時速40km程度であり、人間の俺には逃げ切れる訳が無いのである。
なら、どうするか…そう、人間は策を弄する生き物である。俺は、左手に握りしめたパンツを熊に投げつけた。
人生は運である…という話には反対派だった俺だが、人生は運というのは本当かもしれない…とこの時だけは思った。
投げたパンツが偶然鼻に直撃し、悶えて転げ回っている熊を尻目に俺は近くの洞穴に逃げ込んだ。
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はあ…と本日n回目のため息をt「きゃッ!」こうとすると、短い悲鳴が聞こえてくる。そちらに顔を向けると、見覚えのある青赤ファッションをした女が目に入った。
「あぁ…さっきの…」
急に入ったのは俺だが叫ぶのはちょっと失礼じゃないか?と思い渋い顔をしていると、女が怒ったように口を開いた。
「早くしまいなさい!」
しまう?何を?刀をだろうか。だけどこれは仕舞えるようなもんじゃないしな…などと思いながら自分の体に視線を落とした。
「おぉ…」
思わず感嘆の声を漏らす…俺が最後にソレを見たのはしわしわになったジジイの頃で、ソレは弱々しい錆びた小太刀という感じだった。
だが今はどうだろう、俺のソレは大太刀と言って差し支えない程の大きさ、重厚感、そして堂々とした佇まい、まさに名刀である。
などと感心していると、見られている興奮からか俺の大太刀が上を向き始めた。
…不味い、このままでは大太刀どころか大朴刀になってしまう。そうなってしまえば俺は社会的に死ぬ。そう考えた俺は口を開いた。
「すまない…刀の手入れをしていたんだ」
その俺の渾身の言い訳は
「いいからさっさとしまいなさい!」
と言いつつ彼女が投げた石が、覚醒しつつある俺の大太刀についた2つの鈴に激突し、激痛によって失神することで遮られた。
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彼の股間はラスプーチン並です