「…と、言う訳なのよ。」
俺のゴールデンをボンバーした少女こと八意永琳は、簡単に俺のいる状況について説明してくれた。
この世界が太古の日本であること。
神や妖怪の存在する世界であること。
俺の見た目は、鬼という存在と特徴が一致していること。
彼女は月夜見様が築いた月の都に住んでいること。
月の都の住人は基本的に不老で、その在り方を脅かす穢れと呼ばれるものを嫌っていること。
俺も含め妖怪は穢れの権化とされていること。
などなど、わかりやすく簡潔な説明だった。流石医者というべきだろう。
「で?その穢れとやらである俺を、何で気絶している間に殺すなり逃げるなりしなかったんだ?」
「それは…」
「それは?」
「股間を抑えてうずくまる貴方あまりにも惨めで無様だったから…あと一つは…。」
聞かなきゃよかったでござる。ただまあそれだけでは無いんだろうが、もう一つの理由は想像がつく。
「あの化け物熊か。」
「そう…あの妖怪はここら一帯の穢れの主。下級な妖怪じゃ歯が立たないけれど、鬼ほどの上級妖怪なら何とかなるんじゃないかと思って。」
「と、言われてもなぁ。ほんとに俺は鬼なのか?」
そもそもの問題である。
「ええ、というかそこまで角が大きいなら相当な数の人間を食べていると思うのだけれど…記憶がないの?」
どうやら俺は人間を食べて生活してきたらしい。極悪人である。
「食べてねえよ。というか俺は元人間だし。天寿を全うして、死んだと思ったら寝てたよくわからん所で寝てた訳で」
「元人間の妖怪なんて聞いたことないわ。それでも貴方から感じる゛穢れ ゛は本物よ。それも相当な量のね。」
「…まあやるだけやってみるが、な?その…失敗しても文句は言わんでくれよ?」
「言わないわよ、だって失敗したときは死ぬときですもの。言いたくても言えないわ。」
「なら問題はないな。」
「殺すわよ。」
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と、なんやかんやあって外に出た俺だが、絶賛熊とにらめっこ中である。
「勘弁してくれよ…」
ちなみにあの女は洞窟から顔だけを出してこちらの状況を伺っている。ちくしょう…
「ちぇっ…」
世の中の不平等に向けて放たれたその舌打ちと、それとともに蹴り飛ばされたそこらへんの小石は、途轍もないスピードと内包したエネルギーによって、熊の首から上を吹き飛ばした。
「「えぇ…」」
崩れ落ちる熊の体を見て絶句する俺と少女。
取り敢えず、めでたしめでたしと言うことで洞窟に向かって歩き出した。
「その…ありがとう。」
「おう、どういたしまして…」
気まずいのである。
少女は、思ったよりヤバかった妖怪に対する恐怖と緊張で、
妖怪は少女の恐怖と緊張を感じ取った居心地の悪さでそれぞれ黙りこくっていた。
「今日は本当にありがとう。このお礼はまたいつか。」
そう言って彼女は立ち上がった。
「おう、じゃあな…ああそうだ、これを持ってけ。」
そう言って妖怪は刀から外した鈴を放った。
「これは?」
「熊除けだ。と言っても、あんな化け物には効かんと思うけどな。」
そう言うと、女はフッと笑って。
「貴方みたいな変わった妖怪、初めて見た。また、来るわ。」
「おう、いつでも。」
そのやり取りを最後に、彼女は帰っていった。
妖怪は、すっかり鈴が無くなってしまった刀を見て、
「もう鈴刀とは呼べんな」
と、呟いた。
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