麺処・ロアナプラ亭~悪党達に愛されたとある料理人の生き方    作:37級建築士

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 ブラックラグーンの二次創作が書きたい。あまり日常もの的なのって無いなぁと思い、なので自分で書いてみました。

 この作品は、オリ主ラーメン店主がブラックラグーンの登場人物たちにラーメンを提供する、原作キャラとオリ主の関係をラーメンという要素で描いていくストーリーになります。




(1) 営業開始

 とある場所、ロアナプラの繁華街の一角にその店は小さくたたずんでいる。四階建ての手狭なビルを丸々所有して、何を営業しているのかといえばその店は飲食店であった。

 

 ここ、ロアナプラは非合法組織の人間、現代のならず者たちがひしめく悪徳の都、愛すべき暗闇の都市だ。人の生き死にはbgmのアクセント、パーカッションが一つなるたびに魂は弾痕を抱えて地獄へと召されていく。ここはそんな街だ。

 

 戦争狂いのロシア人、地獄を取り仕切る香港の黒スーツ集団。ギャグの寒いイタリア人に、コカの葉のにおいが抜けきらない南米コロンビアのチンピラ達、そんな連中がひしめく街であっても、街が街である限りそこには営みがある。

 

 銃や売春、ドラッグだけでは悪人といえど生きられない。それらは悪人を悪たらしめる嗜好品であって、生きるための糧にはならない。

 悪党も人間、ゆえに飯を食わねば飢えて死ぬ。死なないためには食わねば、食う場所はどんな街にでも存在するのだ。生きる限り、人間は暖かい飯を口に放り込む、冷たい死肉では腹は膨れない。

 

 どんな人間にも料理は必要、そして料理を作る料理人も。

 

 

 

 

~ラチャダストリート~

 

 

 

 

 

「…………~~♪♬」

 

 陽気な鼻歌、奏でる曲は遠い故郷のアーティスト、ここでは誰も口ずさむことのない、平凡なJ-popを自分だけのメロディーにしたとしても咎められはしない。

 

 下手なアレンジ、陽気でのんきに、彼は大なべを抱えてガスレンジの前に立つ。

 

 

 

「ふぅ……あぁ、凝るなぁ」

 

 

 

 日々の調理という労働で慣れているはずが、体格の限界か手足は細くすらっとした体つきのまま。彼は自分の容姿があまり好きではない。

 

 大きな目、男にしては高い声、鼻は高く顔立ちも柔らか、セミロングのヘアーが余計に中性的な様子にしているが、以前短くしてみるとミスマッチ具合にうなだれて、以来髪型を変えることは諦めた。

 

 短くポニーテールに束ねて、エプロンもつけてしまえば正直疑いようがない女性的な姿。だが、調理場に立つ以上店員の姿なんてのは逆に気にならないもの、と思いたい。自分はただラーメンを作るだけだ。

 

 

 

「……さて」

 

 

 

 ラーメンを作る。いつものごとく、昼間に仕込みを始めて夕方の営業に間に合わせるのだが、作るラーメンは日替わり。

 

 だが、それは店主の趣向ではなく、単に仕入れが不安定ゆえに、だ。

 

 

……今日の材料じゃ、作れるのはオーソドックスな醤油ラーメンか。

 

 

「……ものたりない、かな?」

 

 

 彼は顎に手を、髭の一本も生えていない、なんとも美麗な肌で中性的な自分の顔を手でなぞり一人考える時間にふける。本人は何も見せる意識など持たないが、自然とその振る舞いは視線を集める仕草である。

 

 カーゴパンツにタンクトップ、荒っぽく仕上げたファッションも、その中性的な見た目ゆえにあまり意味をなさない。さらに身に着けたエプロンもかわいらしいマスコットが映っているという点も付け加えておこう。それも某有名な、アンクルサムのかわいいネズミは今にもかん高い笑い声をあげそうで不気味だ。

 

 

「今からだと、ろくな材料は売って…………はぁ、でもないよりはましか。仕方ないなぁ」

 

 

 店の火を落とし、男はバイクに乗り市場へと乗り出す。

 

 

 市場への買い出し、エプロン姿のまま男は町へ繰り出す。売春の娼婦、悪徳警官たちの横を平然と通り過ぎ、さらには道行くヤクザに声をかけられては適当に手を振る。男は町の住人に周知されている、ゆえにエプロン程度何も問題ではない。

 

 だが、男にはエプロン等の衣類よりも、

 

……ヘイ、ケイティ!!

 

 

……相変わらず良い顔だな!!

 

 

……部屋に呼んでいいか!最近あっちがご無沙汰でよぉ!!

 

 

 

「……うるさいッ」

 

 道行く皆は、彼を呼ぶ際にケイティと、その中性的で美人な見た目をからかうように女性的な名前で呼ぶのだ。ヘイ・キューティと、中にはそのままかわいこちゃんと揶揄するものもしばしば。

 

 

 

……苦手だ、本当に。

 

 

 

 この町に来て長くなる。だけど、まだ一向に慣れたりはしない。それはきっと、心のどこかでまだ日本に住む常識人だと心が日和っているからだろうか。

 

 まあ、いずれにせよ、自覚のあるなし関係なく自分はここで生きている。であれば、生きるために営みを続けなければ。

 

 そう、自分が今もシーメール専門パブで奉仕をせずにいられるのは、持ち前の腕でいっぱしの店主をやっているからだ。

 

 

……はやくしないと、開店に間に合わないっ

 

 

 アクセルをふかし、男は今日も食材を求めて市場へと赴き、そして店にこもり料理を仕上げる。

 

 彼の名はケイ・セリザワ、この地に住まう珍しい日本人であり、そしてロアナプラで唯一日本式のラーメンを提供するシェフである。

 

 

 ここはロアナプラ、人種入り混じる雑多な街では食べるものは多様、アメリカンなBBQやフライドメニューが並ぶ横でパクチーの匂いが強烈なフォーだって売っている。なんだって探せば見つけられる。

 

 食は土地を選ばない。選ぶのは人だ。求められる限り、彼ら作り手はそれを提供するのみ。

 

 

 ゆえに、その店もまた、この絶望的に狂った街で。

 

 

 

 来る客すべてに、最高の一杯を提供するのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「よお、ケイティ……今日も相変わらずめちゃんこうまそうなにおいさせてんよぉ」

 

「……」

 

 開店にはまだ少し早い、日が落ちきる前にこの人は訪れる。

 

 アフロに派手なダンサー衣装、日本では本当に昔に流行ったバブリー世界の住人を思わせる出で立ち。一目見てかかわりたくない人ではあるが、これでも大事な付き合いのお隣さんだ。

 

 こんな風体だけど、風俗業ならここロアナプラではけっこうなやり手の経営者だ。名はローワン、店の常連客でもあるし、大量注文で気前のいいお得意さんだ。

 商売上、大切にしないといけない相手だ。だけど、

 

「……ローワンさん、その名前」

 

「おっと、機嫌損ねちゃったかな?けどなぁ、お前さんマジに男にするにはもったいない別嬪さんなんだけどなぁ……なあ、いっそダンサーやってみねえかい?うちの嬢もよろこぶとおもうけどよぉ」

 

「……冗談を」

 

 相も変わらず、自分に対してのその呼び方はやめない。というか、ケイティはもともとこの人が始めたあだ名だ。名前のケイにキューティを混ぜてケイティ。このあたりの娼婦、ダンサーのお姉さん方もこぞって真似をしてケイティと呼ぶ。

 

「……男ですから。変な勘違いされるじゃないですか」

 

「問題ねえと思うんだけどなぁ……あ、これ支払いね。んじゃ、今日もうまいラーメン頼むよ」

 

「あ、ちょっと………………ども、まいど」 

 

 雑に置かれた封筒、中にはそれなりに厚みのあるドル札が。仕出しで夜食に提供するラーメン代だ。

 

 失礼かもしれないけど、その場でお金を出して枚数を確認。きっちり値段通り、もらいすぎなぐらいだがそこはチップの分も入っている。

 

「いただきました、じゃあまた深夜に……」

 

「そうだな、じゃあ夜に皆で足を運ぶよ」

 

「はい」

 

「かわいい女の子、お前さんに会いたがってるむちむちな美女ばかり、うまい飯のお礼はしねえとな」

 

「……はぁ」

 

「店に顔出してくれって、あいつらもうるさくてな……お前さん相手なら特別サービスも割引!これがこれでこれもんよ、もうずっこんばっこんしちゃっていいのよ?」

 

「………………はあぁ、ん、ごほん……帰れ」

 

 声色を変えて、高い地声を抑えた低音ボイスで冷たく一言。こうでもしないとこの人は止まらない。壊れたジュークボックスに手足を生やしたような人間なのだ、このローワンという男は。

 

 ダルがらみ、心底面倒くさいダルがらみ。失礼ではあるがこうでもしないとこの人はひかないのだ。静かにしないと、いい加減調理にも集中ができない。これでも、この店は繁盛しているからたくさん仕込みがいるのだ。

 

 火にかけた鍋をかき回し、ローワンを無視して調理に集中する。そうしていれば、勝手に黙って外へ。

 

「お、そうそう、一個忘れていたのよ。面白い話、興味どうだい?」

 

「……」

 

 と思ったけど、今日は妙に食い下がる。

 

「……お帰りを」

 

「時間は取らせねえよ……ケイティ、お前さんの故郷、日本に関係する面白い話、聞きたくねえかい」

 

「……日本?」

 

 手が止まる。日本の話、つい視線を向ければローワンはしてやったりと楽し気にほほを吊り上げる。

 

 不覚、しかしこう反応してしまっては。

 

「……なんですか」

 

「お、気になるよなぁ……ここじゃ珍しい同国人だもの」

 

「……ええ、そうですね」

 

 からかいで上機嫌なローワン、出し渋るように間をとってから答えた。結局、ただの支払い手続きで30分もからかわれた。

 あの人も仕事があるだろうに。やはり慣れない、銃構えていなくてもこの街の住人は癖だらけだ。

 

 

 

 けれど、最後の話。

 

 

 

 

……同国人、か。

 

 

 

 

 

 今更、日本人に会えるだなんて思ってもいない。仕入れだって中国人等のアジアブローカー頼り、もう会うこともないだろうと高はくくってしまっていた。だから、そう。

 

 

 

「日本人、か…………まあ、面白い話だな、うん」

 

 

 

 




次回、客人をおもてなし


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